【MPE 9】


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   9


 ×××××は口を大きく開けて硬直していた。
 視線の先では、××が「うっ」とうめいてずるずる横に倒れていった。わき腹のあたりから鮮血が噴き出し、ブラウスを濡らしていった。
「いやぁああ、××ちゃぁあん」
 ×が自分の頭を両手で抱えて叫び、絶望を表現する。とっさに駆けつけるが、××は銃で撃たれた痛みに苦しみ喘ぎ、歯を食いしばっていた。
 ジュンは拳銃を懐にしまい、静かに言った。
「××だけは、不合格だ」
 ×××××もよろよろと××に近づき、怪我の様子を見る。幸い急所は外れていた。それからジュンをきっと睨んでこう声を荒げる。
「どうして、どうしてこんなことを!」
「用済みだからさ」ジュンはそう言った。「××は君との戦いで倒れた。そう、エリザベートには説明しておく」
「こんなことしなくたってぇ!」と、×が泣きながら怒鳴る。
「どうってことはない。××もそこの×××××も、結局のところエリザベートに魂源力を抜かれるんだから」
「そんなぁ・・・・・・やだ、ひどいよぉ。せっかくここまでやったのにぃ・・・・・・」
「ふふふ、こんな奴なんてどうでもいいじゃないか・・・・・・」
 その発言に、×も×××××も大きく目を見開いた。
「クチだけで全然強くない。そんな情けないやつの、いったいどこがいいんだい?」
「やめて・・・・・・! ××ちゃんの悪口を言わないで・・・・・・!」
 ジュンは前に出た。ずかずか×に接近して××から引き剥がし、無理やり立ち上がらせる。そして居間のじゅうたんに突き飛ばした。×は「きゃっ」と悲鳴を上げた。
「何かと目障りだったんだ、僕にとって」
 ×が上体を起こしたときには、すでにジュンの顔が目の前にある。強引に押し倒されてしまった。
「僕ね、君のことが好きなんだ、×」
 奔放すぎるジュンの振る舞い。×は何も言い返すこともできず、ただただ信じられなかった。「この人、どうしてこんなことするの?」と。
「××はどうもいけ好かない。君の隣にいるアイツが気に入らなかった。だからね、ずっと消すタイミングをうかがっていたのさ・・・・・・」
 たったそれだけのことで、××をあんなかわいそうな目に合わせたのか。
 たったそれだけのことを、こいつはこうでもしないとできないのか。
 人に愛を告げることや、欲しいものを手に入れることを、こいつは暴力に訴えない限りできないのか。それで本当に欲しいものや欲しい人の心が、手に入るとでも思っているのだろうか? いや、力ずくで得られるものなど何もない――。
 さぁっと×の心を黒い感情が支配する。ジュンに触れられただけで、ジュンの顔を見ただけで、ジュンと目と目が合うだけで、とてつもない不快感がこみ上げる。不快感はやがて怒りとなり、心のうちがめらめら燃える。
「さあ、×。もう邪魔者はいないよ。今日このときから僕らはずっと一緒だ」
「やめて」
「僕と一緒になって、エリザベートに力を捧げて。地獄の底まで君は僕のもの」
「やめて・・・・・・!」
「愛してるよ、×・・・・・・」
 ジュンはそうささやきて、×の唇を奪おうとする。
「嫌ッ!」
 うっとジュンがうめき声を上げた。×がガリッと彼の顔を引っかいたからである。
 彼は無言で頬に手を当てる。斜めに赤い傷が走っており、出血を確認する。ジュンのこめかみに青筋が走った。
「このッ!」×の頬を打った。「どうして言うことを聞かない! おとなしく僕のものになってしまうんだ!」
「触らないでぇ!」
 次の瞬間、ジュンは×から弾き飛ばされていた。宙を舞い、床に叩きつけられた。
 背中から叩きつけられたジュンは、びっくりして×のほうを向き直る。彼女は球状の結界に守られて立っていた。神聖な結界によってこの下種を弾き飛ばしたのである。
 魂源力が静かに×の全身から放たれている。彼女の涙が左右にゆっくり泳いで流れていくのがそのしるしだ。
「××ちゃんを悪く言ったあなたを許さない・・・・・・」
 ×の足元に白く発光を見せる魔方陣が出現したと思ったら、それが一気に床全体に広がった。「なんだ!」。これほどの力の具現を、島の外で暮らすジュンは見たことがない。
 ×を包む結界が膨張を始めた。術者の少女を守る鉄壁のごとき甲羅は、下心に満ちた卑しい感情など一切許容しない。
「防御しかできない君に何が出来る!」
「あなたなんか」
 結界はどんどん膨らんでいく。どこまで膨張するんだとジュンは固唾を呑んだ。
「あなたなんか・・・・・・!」
 いや、違う。
 ジュンはようやく気がついた。これは身を守るための結界ではない。
「消えてしまえばいい!」
 ドンと、×は出せる限りの魂源力を解き放った。球状の結界はそれに反応して一度振動すると、怒りの爆発をそのまま描写するかのように膨れ上がっていったのだ。ジュンに向かっていく。
「ぐ、ぐぉおおお!」
 両腕を前に突き出し、ジュンは×の結界を受け止めた。いくら彼が両足を使って踏ん張っても、彼はどんどん後ろへ押し込まれていった。
「結界で攻撃に出たか・・・・・・やるな!」
 断固たる姿勢を貫き通すが如く、結界はジュンをどんどん押し出していく。まるで生きているかのような結界の壁だった。憤怒。拒絶。×の感情そのものがジュンに襲い掛かっている。
「だがそれでどうなるっていうんだ! 馬鹿な真似はやめ――何ぃ!」
 ジュンは後ろを向いて愕然としたのであった。
 そこには、居間を保護するために×に張らせた一枚目の結界があったのだ。ジュンは結界と結界に挟まれようとしているのだ。ズシンとついに結界どうしが衝突する。
「ぐぎゅううおぉおお、×ぅ、×××ぃいいいいいいいい!」
 壁と壁に圧迫されて、めきめきとジュンの体が潰されていった。
「あなただけは絶対に許さないんだからぁ!」
 両目をぎゅっと瞑り、最後、×は全力でジュンに向かって叫んだ。その瞬間、星が爆発を起こしたかのように結界が最後の膨張を見せ、部屋全体が閃光に包まれる。
 力を全解放した×は両膝を付き、座り込んでしまう。最初に貼った結界も解除され、戦いで荒れた居間がもとの姿を取り戻した。
 ぼたぼたと、壁際で何かが落ちた。
 それは結界に押しつぶされて平面となってしまった、醜いジュンの死体であった。


「助かったわ、×。本当にありがとう・・・・・・」
 顔面を脂汗でべったり汚している。生命力が高いのも異能者の特質だろう。
 そんな二人の前に×××××がやってきた。そう、彼女たちにとって戦いはまだ終わってなどないのだ。毅然と二人にこう言った。
「馬鹿な真似はやめて、私たちと島に帰ることね」
 くっと真横を向き、××は×××××の顔を見ない。
 みんなを裏切ってエリザベートに付き、混乱に陥れた××と×。×××××は、今更二人がどんな抵抗をしてきても連れて帰るつもりでいた。
「×××××、××ちゃんを責めないで」
 負傷した××の傍らについている×が、懇願するようにそう言う。
「××ちゃんはね、×××××を助けたくてわざとあいつらについていったの」
 はぁ? と×××××の目が丸くなる。
 つまり何だ。×××××を助け出すためにわざわざ双葉島の倉庫で戦い、学園やみんなを捨ててここまでやってきて、こうして大怪我してまで死闘を繰り広げたとでもいうのか。
「それだけじゃないわ。親玉を暴いてやりたかった」
 ××は相変わらずそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに言う。
「何度も言ってるでしょ? 私はただ活躍したかっただけなの」
 バシンと×××××が頬を叩いた。叩かれた××はようやく彼女の顔を見る。×××××はとうとうこらえきれずに、ぼろぼろ泣いて××に抱きついたのである。
「私たちがいるじゃない! 力を合わせればよかったじゃない! 何よもう、心配させて!」
 胸元でわんわん泣き喚く×××××。しばらくぽかんとしてから、××にも笑顔が戻る。
「まったく、怒ったり泣いたり。表情豊かね・・・・・・」
 ×××××を××は優しく抱きしめた。×は安心して肩をなでおろしている。
 本当は自分たちだけでアジトを突き止めて、ジュンとシホに負けたとき、もうこうすることしか生き延びる手段がなかっただけのことだった。
 情けなくてたまらなかったと思う。良心も痛んだだろうと思う。そして悪の手先となるのは屈辱的だったと思う。
 でも×にはなんとなくわかる。××は活躍したかったからだけではなく、×を守るためにプライドを捨て、生き延びるためにあがいたことを。
 ×はしっかりと前を向いた。二人にこう言う。
「何か手当てできるようなもの探してくるね。××ちゃん、待っててね!」
 弾むように駆け出して、×は居間を出て行った。残された××と×××××は、そんな彼女の後姿を見ながらくすっと笑った。
「気持ちの切り替えが早い子ね。私、何だか×が恐ろしいわ」
「×はただ、あなたについていっただけなの?」
「え? ま、まあそうでしょうね。まったく、いっつもあの子は私に」
「×はね、きっと本当にあなたのことが好きだから付いていったのよ? 仲間を捨てて、悪者になってまでね。ちょっとは感謝しときなさいよ」
「う、う~ん。まぁ、いい友達を持ったと思うわ・・・・・・」


「うむ、いい友達を持ったもんじゃないか」
 ビクッと二人は驚いてドアのほうを向く。完全に油断しきっていた。得体の知れない人物の声だ。
 そして目に飛び込んできた光景に、××はひどく驚愕する。
「×!」
 ×は意識が無いのか、襟首を掴み上げられている。
 腕と足をぶらりと下げて、返事も無い。そんな彼女を片手だけで掴み上げているのは、赤いドレスに身を包んだ西洋風の少女であった。背丈も×とほとんど変わらないのに、とんでもない力だ。
「私のお友達も、それぐらい素直でおりこうだったらよかったのにな・・・・・・?」
 隣に転がっている汚い死体に目をやってから、二人に苦笑を見せつけた。
「あんたがエリザベート!」
 初見となる×××××はわなわな震えながら声を荒げる。×××××を拉致させその手にかけようとしている宿敵だ。
「そうとも呼ばれている。なかなか気に入ってるがな」
 赤いボブカットに赤い瞳。肌は白い。エントランスホールの肖像画の通りだった。彼女こそがジュンとシホの親玉であり、この洋館の主・魔女・エリザベート。
「×をどうする気!」と、××が叫ぶようにして言う。
「君には教えたじゃないか? こうするんだよ」
「まさか、嘘でしょ?」
 愕然とする。こいつは最初から自分たちを仲間として見ていなかったのだ。
 敵を欺くはずのつもりが、結局は敵の言いように扱われていた。学園に二度目の背信をし、×××××を裏切って、不本意ながら悪に染まった結果がこれでは、あまりにも馬鹿げていて空しすぎるではないか。
 もはや誰の味方でも敵でもない。涙を散らして懇願することぐらいしか、裏切り者の彼女にはできなかった。
「ダメ、やめて――――」
 ぱっと手を離した瞬間、×の体がふわりとその場で浮いて静止する。それをエリザベートは背中から抱きしめた。×が赤いドレスに包まれる。
 きゅんという、何かが発火したような音が×××××を驚かせる。×の肌や髪、瞳が真っ白になってじゅうたんに崩れ落ちたとき、彼女は物も言えないぐらい衝撃を受けた。彼女の始めて目撃する「魂源力強奪」の瞬間であった。
「・・・・・・ものすごい力だ。やはり双葉学園の生徒はいいモノを持ってるなぁ。あっはっは」
「いやぁあああああああああ・・・・・・」
 ××は居間に泣き声を響かせた。いつも自分の後ろについて周り、懐き、共に戦い、時に守ってくれた親友が、無残にもやられてしまった。×を守ってやれなかったことがとにかく悔しくて、情けなくて、悲しい。
 ボンとエリザベートの近くで爆発が起こる。魔女はすかさずそれを避ける。
 ボンボンと爆発が連続して起こった。弾幕を貼ったような強力な攻撃だが、エリザベートは踊るように避けながら二人のところへ突っ込んでくる。
 魂源力の回復した×××××が、エリザベートにエクスプロージョンで攻撃しているのだ。
「××! あなたは逃げて!」
 ××はうつぶせになったまま、動かなかった。じゅうたんにうずくまったまま、長い黒髪を背中と床に散らばしてしくしく泣いている。
「大怪我してちゃ戦えない! 早く逃げて! ねぇ、聞いてるの――うっ」
 ×××××は喉元を掴まれた、瞬時に重力から解放されたように体が浮き上がり、天と地がひっくり返る。
 彼女の体が横の壁に叩きつけられた。エリザベートに投げられたのである。頭を強打したため出血を起こし、右目にべっとりかかった。「何てすごい力なの・・・・・・!」
 しかしすぐにはっとしてエリザベートのほうを見る。彼女はとうとう××のところに到達し、毒牙を伸ばそうとしているのだ。
「次は××××、君だ」
「いけない! ××、××ぁー!」
 ×××××は必死に××の名を呼んだ。
 ××はそれでも動かなかった。床に伏せたまましばらく固まっていた。
 そして、フフッと一人で笑い出したのだ。エリザベートも怪訝そうな顔つきになり、手を止めた。
「馬鹿ね私ったら。力とか強さとかよりもっと大事なもの、あったのに――」
 気が強くて、強がりで、みんなに美しい黒髪や鱗粉を見てもらうのが大好きな少女。これからも彼女は周囲に力を見せ付けるために、活躍をして実力をひけらかすために自分の戦いを続けるのだろう。
 でも、本当に彼女の神秘的な鱗粉はそのためだけに使われるべきものなのか? ××はついに自分にとって大切なものを見つけた。××××という、守りたい人を守れなかったという悔しさから。
「君は何を考えて――?」
 エリザベートがそう言ったとき。×××××は、××がスカートのポケットから何かを取り出したのを見た。「マッチ箱」だ。
 青ざめる。××が何をしようとしているのか一瞬で理解したのだ。
「ダメ××ぁ! そんなことしたらあなたは――」
 汗や汚れで湿っていた黒髪に魂源力が流れ込み、一瞬にして艶や揺らめきが蘇る。背中に張り付いていた後ろ髪がグワッと一瞬にして逆立ち、大粒の鱗粉が無数に発生した。ものすごい形相で××は赤き魔女を睥睨する。
「死ねぇええええええええええええええええええええ!」
 マッチに火が点ると同時に、××の両目にも点火して怒りの炎が爆裂した。
 ×××××が能力を活用してかきあつめてきた水素たちは、激しい烈風と爆音でもって××の怒りに応えた。さすがのエリザベートも「うぉおお?」と片腕で顔面を覆い、そして爆発に巻き込まれていったのである。
「××ぁ――――!」
 爆発を手で覆ってしのいでから、×××××は叫ぶ。なんという壮絶な攻撃だ。鱗粉を最大限に発生させ、それを爆発で相手に浴びせたのだ。当然、爆発による破壊力も秘めたとんでもない自爆攻撃である。
 もちろんこの攻撃は××自身もただじゃ済まない。煙幕が晴れるのを待ちながら、×××××は××が無事であることをひたすら祈った。
 そして、彼女はその美しさに心を奪われてしまうのである。
 制服が破れ、切れ端を埋めるかのように鮮血が全身を濡らしていた。それでも堂々と××××は直立している。黒髪は燃え盛るような揺らめきを持って、翼のように輝いていた。
 まさに、ボロボロの羽を背にたたずむ美しいアゲハチョウ・・・・・・。
「見事だ、上出来だ」
 ××はひどく顔を歪ませた。非常に悲しそうな顔になり、ぶるぶる小刻みに震えて宿敵の声がしたほうを向く。
 自分の全力を持ってしても、大好きな×の仇をうてなかった。実力が足りなかったことよりも、そのことのほうがよほど辛かったからだ。
「しかし、自爆は哀しみしか生まないんだ・・・・・・!」
 煙幕が晴れたとき、エリザベートの赤い髪と瞳とやや幼い表情が現れる。そう××に言う赤い魔女の顔は、どこかもの哀しげであった。
 それよりも、彼女は信じがたいぐらい残酷な光景を目撃してしまうのだ。
「××××という子がいなければ、君の自爆攻撃で無様に干からびていたことだろう――」
「何者・・・・・・なの・・・・・・あんた・・・・・・」
 ××は思わずそう言葉を発していた。眼球を細かく揺らし、がちがち歯を鳴らす。×××××もまた、魔女が見せた本当の力を前にして絶句させられていた。
 エリザベートの真正面に、見慣れた透明の「結界」が展開されているのだ。××はその力のことをよく知っている。魔女はその結界で爆発から身を守ったのである。
「最後の最後でお友達の力に殺されるとは。裏切り者にふさわしいマヌケな結末じゃないか」
「×××××。私を殺し――」
 ××がそう呟いたときには、エリザベートは「おっと」と彼女の喉を掴んで黙らせていた。華奢な黒髪の少女を、自分よりも背の高い××を、ぎゅっと抱きしめる。
 きゅん、という魂を根こそぎ抜き取られる音。直視できず、×××××は悔しそうに横を向いた。
 黒髪が一瞬にして毛先まで白くなり、台無しになってしまった。両腕もだらんと下がり、両膝もがくんとじゅうたんに付く。そしてその場に倒れ・・・・・・。
 ・・・・・・倒れなかった。
 ××はもう一度、自分の足で立ち上がってみせたのだ。
「ほう・・・・・・?」
 この珍しい事態に、エリザベートがニヤリと笑う。
「×・・・・・・」
 自慢の黒髪も老けたかのように真っ白。そんな無様な姿でもなりふり構わず、××は前へと歩き出した。輝きを失った濁りきった瞳が目指す先は、先に倒れていった×の体である。
「×、どこ? どこなの・・・・・・?」
 やがて彼女は×のもとにたどり着けず、とうとう倒れこんでしまう。右腕を前に投げ出し、うつぶせに倒れた。学園や仲間を捨てて魔女の駒となった××と×は、結局エリザベートによって魂源力を奪われ、空しく散っていったのである。
 最後、××はこう呟いて残した。
「一人にはしないから・・・・・・×」
 彼女の白く枯れ果てた指先は、×の指先に触れていた。


「・・・・・・素晴らしいじゃないか。これが××××の、××××××の魂源力かぁ」
 ウサギのような赤い瞳を小さく絞り、嬉しそうな哄笑を見せたエリザベート。
「無尽蔵に沸いてくる精気、異能力。奮えてしまいそうだ。あっはっは、これが欲しかったんだよ・・・・・・!」
 そして、エリザベートに異変が生じる。
 赤いショートカットの毛先から、みるみるうちに黒い影が伸びていった。それは「髪」だった。彼女に黒の後ろ髪が生えてきたのだ。
 ロングヘアーになった魔女は、ばさっと片手で優雅に髪を払う仕草を見せた。
「優れた力を手にしたようだ。もう、この意味がわかるよな、×××××?」
 ×××××の姿はなかった。
「逃げたか」クククとエリザベートは笑う。「賢い選択だ。マクスウェルの悪魔か。『欲しかった』――」
 そして、真っ白に朽ちた××を見る。背中からは白髪となった後ろ髪が放射線状に伸び、床に散らばっていた。
「カピカピに干からびて標本にもならないじゃないか! 汚いちょうちょだ、あっはっはっはっは・・・・・・」


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