【MPE 5】


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   5


 ××たちの妨害により、×××××と××と××××は、×××××を奪還することなく撤退してきた。奪還するどころか、×××までも相手に渡してしまうという散々な結果である。
 三人は××のラボに帰ってきた。戦闘を繰り広げてきたので、ひとまず怪我の手当てを済ませた。
「面倒なことになりましたわねぇ・・・・・・」
 デスクに肩肘をついている××がそう言った。
「×××××も、×××さんもいない。みんなバラバラだね」
 椅子に座って寂しそうなのは××××である。触手の化物に襲われて、××の鱗粉が舞うなか緊急離脱してきたので、××によって急遽ボディの点検が行われた。異常や破損箇所は無かった。
 ×××××はというと、壁際で膝を抱えたまま黙って座り込んでいる。もうかれこれ三十分は黙り込んでいた。××も××××も、心配そうに×××××のことを見守っている。
 無理もないだろう。親友の×××××を奪われただけでなく、×××も相手に捕らわれてしまった。しかも××と×がまさかエリザベートの手先になってしまうなんて。
 時間だけがどんどん過ぎていく。どうすることもできずに××が頭をかきむしったときだった。
「夢を見るんだ」
 唐突な×××××の発言。××と××××は同時に彼女のほうを見た。
「×××さんが殺される夢」
 二人はぎょっとして目を丸くする。どんな内容の夢かと思えば、そんな酷いものだとは。
「どんな夢ですの?」
「×××さんが焼死体で発見される夢。それだけじゃない、××も×も惨たらしく殺された。私も×××××も誰かに襲われた。誰がとか、何のためにとか、そういうのはわからない」
「私たちはどうなっているのかな?」
「あなたたちはいなかった。どこか遠い国に行っちゃったみたい。ふふ、今みたいにみんなバラバラになっちゃうすごく悲しい夢」
「×××××・・・・・・」
「この夢、すごく現実味があるの」×××××がぎゅっと両肘を持つ。「まるでこれが私たちの運命であるかのようにね。私、やだよ。みんな全てをやりかけなままで、中途半端なままで殺されちゃうなんて」
 ××がデスクから離れ、そっと×××××の隣に座る。
「あなたたちも普通に暮らしたいでしょ? 普通に友達と遊んで、普通に恋人を作って。でも、何かを変えていかないとダメなの。意識を変えて、本当に大切なものを見失わないで。そうしないと何かとても大きなものが失われてしまう。そんな気がする」
「私だってそんな悲しい世界はごめんですわ。どうせなら、みんなが幸せになれる未来がいいですわね。ねぇ×××?」
「うん。みんなで幸せになりたいな」
 ××と××××がそう同調してくれたことで、×××××に笑顔が戻った。
 誰かが幸せになるために、誰かが苦しむ。涙を零す。血を流す。
 それが宿命であるのならば、七人の少女たちは抗う権利がある。×××××たちは知らない。自分たちが悲劇の螺旋に取り込まれてしまっていることを。そして、本当に幸せな未来を掴み取るために、彼女たち七人が見えない壁を打ち破る未来があってもいい・・・・・・。
「私は戦うわ」ようやく×××××は立ち上がった。「×××××と×××先輩を助けに行くわよ。明るい未来をこの手で掴み取るのよ!」
「やれやれ、やっと元気になりましたわね」
「×××××はそうでなくっちゃ」
 前にも×××××は同じようなことを言って××××××の仲間たちに呼びかけていた。学園に反乱する。醒徒会に復讐する。何かこう必死で、切実な気持ちに満ちていた。
 だけど今は違う。今の×××××は力強くて、どんな困難や苦難の荒波も乗り越えてまぶしい明日を勝ち取れるような気さえ感じられた。


「××ちゃん、×××××、これを見て」
 ××××がモバイル学生証の画面を二人に見せた。××は丸い眼鏡を動かしてそれをまじまじと見つめる。そして驚いたようにこう言った。
「×××さんのGPSが生きてますわ・・・・・・」
 モバイル学生証のGPS機能は敵側にとって厄介な存在だ。居場所や隠れ家を発表して配信しているようなもので、拠点が判明され次第、学園に攻めこまれてしまうことだろう。
 ××の申告によってモバイル学生証はとっくに処分されているものだと思っていた。ちなみに中等部生の二人は学生証を学生鞄に入れており、携帯していなかったそうだ(そのため捜索が難航していた)。
 連中のところにあるとされる学生証は、×××××と××と×のものである。××と×のものは自分たちの目の前で破壊されてしまったし、×××××のものは途中で反応がなくなったので処分されてしまったことだろう。
 しかし、×××のGPSはどういうわけか生きている。××たちも、学生証が一つ増えたことを失念しているのか?
「これはチャンスかもしれませんわね。このまま×××さんの学生証が頑張ってくれれば、私たちは敵の本拠地に乗り込めますわ」
「双葉大橋に向かってるわね。あそこは島内警察によって封鎖されてるわ」
「突破できるのかな・・・・・・?」
 ×××の位置を示す赤い点は、ゆっくり橋の手前にまでやってきた。その場で五分ほど停止していたので、やはり無理だったかと感じたそのときだった。
 赤い点が再び動き出し、橋を通過しだしたのだ。
「なっ・・・・・・どうやって!」
「ま、×××さんの暗示と×の結界があるんだから、これぐらい余裕なんじゃない?」
 ぽりぽりと後ろ頭をかきながら×××××は言う。
 しかし三人にとって、彼らに島を出てってもらったほうが好都合である。本拠地がわかれば仕返しとばかりに乗り込めるからである。×××がジュンたちに拉致されたことは、今のところ×××××たちにしか知らない。
「アリバイ工作をしましょう。×××さんは今もこの島にいる。醒徒会や風紀委員には黙っててもらうわ。これは私の指示よ」
 この決断に××と××××は瞠目した。
「正気ですの? そんなことをしたら×××××の処分がますます重くなりますわ!」
「それに、私たちだけじゃ敵に勝てるのかなぁ・・・・・・」
 醒徒会の力は「最強」だ。つまり彼らの力を借りれば、たとえ相手がジュンだろうがシホだろうがついにはエリザベートだろうが、難なく捻り潰すことが出来るのである。××だって醒徒会連中に頼るのは癪だと思いつつも、彼らに任せることがベストだと考えていたぐらいだ。
「ダメよ。そんなことしたら、××と×が処分される」
 ××は言葉を失った。何を考えているかと思えば、×××××は自分たちを裏切った二人の心配をしていたのである。
 醒徒会が出れば事件はあっという間に解決する。しかし、エリザベート側についた上げは立ちには重い処分が下ることはまず間違いない。
「×××××、まだあの二人のことを」
「当然じゃない」××××に対してそう言った。「××も×も、大事な私たちの仲間よ。友達よ。絶対にエリザベートから奪い返してやるんだから!」
 その後、×××の弟と連絡を取り「しばらく泊りがけで×××を借りる」と嘘をついた。×××がいなくなってまず不安に駆られるのが彼女の弟だろうから。
 弟は中等部の学生寮に住んでいるから、普段は×××と会うことはないのだろう。でも連絡ぐらいは取ることもあるだろうから、手を打っておくにこしたことはない。
「ねぇ××ちゃん。奉仕活動、行かないとまずいかもね」
「ですわね。今日はみんなでサボりましたから、風紀委員長カンカンですわ」
「いいわ、明日の午前中は奉仕活動に出て。私も今から懲罰房に戻るわ」
 そろそろ×××××たちへの監視の目が厳しくなってきた。×××××が拉致されたことは、×××××たちにもわかっているものだと醒徒会は考えていることだろう。
 だとしたら、彼女たち×が島を出て無茶をはたらくといった展開になることは容易に想像できる。事実、三人はもうすでに敵の陣地に乗り込むことを決めていた。
「明日の午前中はおりこうに過ごしましょう。醒徒会たちを安心させておいて、夕方以降に島を飛び出そうという寸法よ」
 それから細かな打ち合わせを終えた後、×××××は懲罰房へと帰っていった。「俺、明日みんなで島を出るんだ」などと死亡フラグを立てて去っていった。今日も今日で朝から一日中脱走していたので、こっぴどく怒られることは確定的だった。
 ××××もボディの調整を行ってから、二十二時過ぎに寮へと戻っていった。それから××が一人で明日の突撃で使用する武器の製作を行っていたところ、電話が掛かってくる。風紀委員長・逢洲等華だとわかったとき、「ゲッ」という声を出していた。
『おい、お前たち今日奉仕活動に来なかっただろう!』
「あは、あはは。ちょっと立て込んでましてねぇ」
『あはは、じゃない! 謹慎中の立場を忘れたか!』
「そんなことございませんわー。ちゃあんと反省してましてよー。オホホホ」
『明日は今日の分までみっちりやってもらうからな! 学園内全部の建物の掃除だ! わかったな!』
「はぁ? ちょっと! あの学園にいくつ建物があると」
 ブツ。ツー、ツー。
 しばらくぽかんとしてから、××はコードレスの受話器を放り投げる。
「なるほど、徹底的に私たちをマークしにきましたわね・・・・・・」
 ため息をつきつつ、作業に戻ったのである。


 ××××から××のもとにメールが届いた。
 やはり寮長にすごく怒られたという。自分たち××××××への監視が厳しくなっていることはもはや確実だった。
『×××さんは千葉に入ったようだね。明日はどうやって千葉に行こうか』
 ×××は今、千葉県内を南下していた。房総半島の先を目指しているようだ。
 間もなく日付が変わろうとしている。戦いは千葉へと舞台を移す。


「待ちなさいよ。ねえ、仲間に入れてくれないかしら?」
 ××たちがジュンの潜伏しているアジトを突き止め、攻め入ったときのことである。返り討ちに合ってしまい、今にも殺されるか、エリザベートへの生贄として差し出されるか、絶望的な状況に陥っていた。
 ジュンはさばさばとした冷淡な無表情で、××を見下ろす。
「最低なタイプの命乞いだな。美しくない」
「勘違いしないで? 私はただ自分の力を使えればいいのよ。こんな学園なんかよりも、もっと思いっきり力を使える場所を探してたんだから」
「そんだけのことで、私たちに付こうっていうのぉ?」シホは意地悪そうな笑顔を崩さない。「私たちもけっこう必死なのよぉ? そんな軽い気持ちで務まるもんじゃないの。おとなしくエリザベート様の糧となっちゃいなさぁい」
 しかし××も引かなかった。あくまでも強気な態度で二人に食いかかる。
「私たち、あの醒徒会相手に戦争起こしたのよ」
「醒徒会に?」
 これにジュンがやや驚いた。双葉学園醒徒会の名声は、外部の異能者にも伝わっている。
 とりわけ島の外で好き勝手やっているエリザベートらにとって、双葉学園――醒徒会は危険な存在だった。これまで何度、双葉学園から調査の人間が派遣されてきたことか。
 ジュン、シホ、そしてエリザベートは「特定外部××××××」に指定されているなどと聞いた。学園側は、島の外で活動する危険な異能者を何としてでも双葉島内に取り込み、管理したかったのだ。
 これまでごく普通の異能者がやってきたから対応できたものの、いつ醒徒会が直々にやってきて自分たちを制圧するかわからなかった。ジュンたちにとって、双葉学園の醒徒会は脅威そのものだったのである。
 話に食いついてくれたジュンを前に、××は気をよくして妖しげな視線を投げかける。
「そうよ? 小生意気なあいつらをね、あと一歩のところまで追い詰めたんだから。ウフフ、後にも先にもそんな問題児私たちだけね」
「何が言いたいのぉ?」
「私が学園の生徒を拉致してきてあげるわ。あんな学園の女の子でよければいくらでも召し上げることね」
 ジュンもシホも××の言動を前に黙り、何も返さない。検討してくれているのだろう。あともう一押しだ。
「モバイル学生証って知ってるかな。内蔵のGPSで居場所がバレちゃうよ」
「×」
 ××は×のほうを向く。彼女もまた××を追って敵側につくつもりなのだ。
「GPSだと・・・・・・そうか、それで君たちはここまでやってこれたのか」
「中学生の二人は何にも持ってなかったけど、×××××ちゃんが持ってたのねぇ」
「私ね、『結界』が使えるんだ。表から見えなくなる結界だよ。この家に貼ればまず学園に見つかることはないし、車にかければ難なく橋も突破できるね」
「ほう・・・・・・」
 ジュンはにっこり笑顔になる。××の強がりなどよりも×の「結界」のほうがよっぽど実用的で魅力的だったから。×が付けば、自分たちの工作活動にかなりの負担が減少するのは間違いない。・・・・・・とは言うものの、本当は××××という女の子が気に入っただけのことなのだが。
「どうだいシホ。××はともかく、×はかなり使えるぞ。結界師だぞ」
「うーん。ま、このぶんだとあの橋も封鎖されちゃってるかもしれないしねぇ」
「ともかくとは何よ、ともかくって」と××が毒づく。「そこの×××××だって本当は危ない子なんだからね? 体にウィルス取り込んでて、下手したらあんたたちも動けなくなるんだから」
 ぞっとした様子でジュンとシホは×××××を見る。×××××はシホの麻酔薬で深い眠りについており、しばらく目を覚ますことはないだろう。それによってBC兵器の力「レミング」も効果が最小限になっていた。
「・・・・・・聞いたことがあるわ」
「知ってるのか、シホ」
「昔、研究所の事故で体内にウィルスを取り込んで、生物兵器になっちゃった子がいるって」
「それがその×××××なのか」
 ××と×は立ちあがる。一度はボロボロに痛めつけられて立ちあがることもできなかったが、時間を稼いだので少し回復していた。
「この島にはあなたたちの知らないことがいっぱいよ? 学園のこととか、異能者のこととか、これから攻め込んでくるかもしれない子たちのこととか」
「絶対に力になってみせるよ。双葉学園の女の子をたくさん集めて、エリザベート様に差し出すから」
 フフフ、とジュンが笑った。
 自分たちはただ女の子を捕まえればいいだけと思っていた。こんな風に、エリザベートに加勢したいと名乗り出る子が出ようとは夢にも思わない。
「変わった奴らだ。・・・・・・まぁ、この島を何のあてもなく探し回るのも危ないかなと、うすうす感じてたんだ」
「間違ってもエリザベート様の機嫌を損ねて、食べられないよぅにねぇ・・・・・・?」
 こうして××××と××××は双葉学園を裏切り、×××××らを裏切り、エリザベート側についたのである。
「×、本当にいいのね・・・・・・?」
「大丈夫」手を握られる。「私は××ちゃんとずっと一緒。ずーっと一緒。これからもずっと――」


 房総半島の山中にある洋館には、夜遅くに到着していた。
 往路のように館山自動車道や東京湾アクアラインを経由せず、全行程、一般道を飛ばしてきた。手配の早い双葉学園のことである、警視庁や千葉県警の異能者組織がとっくに動いているに違いない。車も一台増えているので、検問のたびに結界を使用するのは×に大きな負担がかかる。
 廃村を思わせる荒れ果てた集落。その高台に位置する場所に、エリザベートの洋館は存在していた。周囲が荒廃しているなか、小奇麗な状態を保たれているその建物は、異様な不自然さが感じられた。
 薄暗くて、だだっ広い一室。壁も床も天井も石で固められており、壁にかけてあるろうそくの明かりで××と×の姿が浮かび上がっていた。
 ×はひどく緊張していて前に組んだ両手をぎゅっと握りしめ、××はほとんど物怖じを見せない強気な仁王立ちの姿勢で、赤いドレスの女性に視線を送っていた。
「仲間に・・・・・・なりたい?」
 赤い髪で赤い瞳をしていて。とにかく赤い女性。「ああ、これが魔女なんだ」と×は感じていた。
「そうよ。私は××××。××××××の『最強』異能者。そしてこの子は友達の××××」
「え、あぅ、どうぞよろしくお願いしますぅ」
 ぼーっとしてエリザベートを眺めていたら、挨拶するよう××に小突かれた。×はあわあわとしながら挨拶の言葉を述べた。
「シホ、ジュン。これはどういうことだ」
「仲間になりたいって言うから連れてきたんだ。×は結界師だ。×のおかげで三人も女の子連れて帰れたんだぞ?」
「あの島は思ってた以上に複雑だし、学園生も想定以上に強かった。この子たちの力を借りたらずっと楽になりますわぁ」
 よくわからない、と言った感じでじっとり睨んでくるエリザベート。シホやジュンよりも背が低く、×と同じぐらい顔も子供っぽい。
「私を誰だと思ってここまで来た。遊びでやってるわけじゃないんだぞ?」
「暴れられるんでしょ? 暴れさせてよ。学園相手に思いっきり鱗粉を使えるなんて今からゾクゾクするわ」
「私も双葉学園が嫌いです。奴らは私たちを不当に差別し、戦うことすらさせてくれません! 活躍の場に飢えていたんです!」
 二人の押しの強さに黙るエリザベート。しばらく不機嫌そうな表情を崩さなかったが、
「変わった奴らだ。好きにしろ」
 と言ったことで、ようやく××も×も安堵の息を漏らしたのである。
 エリザベートは椅子に座ってふんぞり返るわけでもなく、目の前でしっかり立っている。その両隣にジュン、シホが着いていた。
 そもそもこの部屋はなんだろう。 石に周囲を固められているだけで、何もない。ただ広いだけの、じめじめした地下の部屋。
 昼食を豪華な食堂でとっていたときだった。ジュンとシホが「エリザベートに会わせてやる」と言ったのだ。エントランスホールではすでに秘密の地下通路が口を開いており、階段を下りるとこのような隠し部屋にたどり着いた。
 真っ暗で何も見えなかったが、シホにマッチを受け取り、壁際のロウソクに一本一本火をつけていった。マッチ箱は今も××がスカートのポケットに入れている。
 明かりに照らされて顕になった石作りの部屋。やがて赤いドレスのエリザベートがやってきて、××と×は冷や汗を流しつつも彼女との対面に至ったのである。
「さっきも言ったが――。これは遊びではない」
「え?」
 ××は少し目を丸くする。話はこれで終了ではなかった。エリザベートと会って、味方として認めてもらうだけの内容ではなかったのか? そのために、この部屋に連れてこられて・・・・・・。
 と、そのとき奥の暗がりから、シホが何かを台車に乗せてやってきた。
「なっ!」
 それは麻酔薬によって眠り続ける、中等部二年生の×××であったのだ。
 動くことのない×の体を、シホが起こして直立させる。糸のつながらない人形のように、×の両腕はだらんと下がって指先が細かく揺れ動いている。
「な、何をするの?」
 ×が恐る恐るきいた。そのとき、エリザベートの目尻が下がって、初めて悪質な笑顔を二人に見せたのである。
「君たちに見せておくだけだ」
 ×の体が、赤いドレスに抱きしめられ包まれる。
 そのとき「きゅん」という高い音が響いた。二人がそれを、魂源力を抜き取られる音だと理解したのは、ドサッとエリザベートの足元に落ちて、真っ白に変色した×の姿を目撃したときだった。
「あ、あぁあああ・・・・・・」
「・・・・・・っ!」
 ×はがくがくと震え、××も絶句する。エリザベートは二人に、双葉学園の女の子をその手にかける瞬間を見せつけたのだ。
「どうだい、エリザベート」
「くく、すごいじゃないか。これが双葉学園生の魂源力か。そこらの野良娘の何十倍も力に溢れているぞ・・・・・・!」
 自分の体を抱きしめて無邪気に喜ぶエリザベート。そんな彼女にシホも、「それはよかったですわぁ! さ、次の子もどんどん食べちゃってください!」と嬉しそうに勧めた。
「あ、××ちゃぁん・・・・・・」
「く・・・・・・しっかりしなさい、×。私たちはもう、こいつらの・・・・・・」
 二人がそうして愕然としているときにも、シホは捕らえてきた双葉学園の子を連れてきてエリザベートに差し出した。次は×××××であった。
 ジュンとシホは××××××と××××××を標的にしていた。だが途中で共に見失ってしまい、仕方なく、たまたま周囲にいた×と×××を拉致してきたのである。
 きゅん、という魂を抜き取られる残酷な音。
 学園を、クラスを賑わせる少女が散った瞬間であった。髪も肌も真っ白に変色した×××はその場で座り込むように崩れ、そのまま真横に上体が倒れていった。
 処刑を終えたエリザベートが、なおも機嫌よさそうにしてクククと笑っている。そしてとうとう、抑えきれない歓喜を爆発させるのであった。
「すごいぞ、これが双葉学園か! 気に入ったぁ! ジュン、シホ、学園の女子をたくさん捕まえてこい! 小学生中学生高校生、大学生幼稚園児なんでもかまわないッ!」
 ××と×は鳥肌を隠し、唾を呑み込んだのを隠し、目線を落としたのを隠す。気づかれないよう下唇を噛み、両目をぎゅっとつぶる。決して全身を覆いつくす嫌悪感に気づかれてはならないのだ。
「×、これが僕たちの全てだよ? これでも僕に付いていく気なのかい・・・・・・?」
 ジュンは×の肩を抱き寄せ、直接彼女の耳元に囁く。×は自分の内なる感情に必死に抵抗していたが、やがて堪えきれず涙が一つ流れていった。
「当然よッ!」代わりに××が怒鳴る。「あんな学校の連中でよければ、いくらでも食えばいいわッ!」
 怒声が地下室に共鳴する。ロウソクの炎が揺らめく。彼女の握りこぶしは激しく奮えていたのであった。


「××××、××××、君たちを歓迎しよう! 学園少女を生け捕りにするんだ! あっはっはっは、あっはっはっはっは・・・・・・!」



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