【真琴と孝和 奇妙な凸凹コンビ 3-3】


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真琴と孝和 奇妙な凸凹コンビ 三節


――正午 双葉区北部 港湾地区~岸壁
 襲撃から12時間経った頃、一部の政府関係者と陸海航空自衛隊の陸将・海将・空将(いずれも他国の軍人階級では『中将』と同じ)が双葉学園に来訪してきた。
 その理由は言うまでもなく昨日の襲撃だが、全員の表情は非常に重苦しく政治家の視察に見られるような談笑混じりな様子は微塵もなかった。
 所謂『特務機関』とも言えるこの双葉学園がピンポイントに襲撃された事実についての重大性と、この事実によって可能性が出てきてしまったテロへの脅威は、宛ら喉元に刃を突き付けられた様なものだからだ。
「……おかしい! 居住区への被害がまるで無い」
「監視カメラが破壊された跡もないぞ」
 これら政府系の人物を半分護衛する形で、大学部や教員もこれに混じって調査をしているが、余りにも怪訝な状況に唖然としている。
「あれだけの数の襲撃ならば、人的にも物的にも被害が出る筈だ……終結して12時間は経っているのに何かしらの被害届が出てもおかしくないのに」
「ただ通過しただけ、とでも言うのか? 合理的じゃねぇな」
 双葉学園関係者はポツリポツリと言葉を漏らすが、政府関係者は双葉区に来る前よりも表情が青ざめていた。
「戦い方は……陸戦は文化レベルの低いものだが……行軍方法は見事だな」
 陸将の一人はこう漏らした。港湾地区を始め、岸壁や人工浜を順に歩いては行くものの、時が経つにつれて空気は徐々に重苦しいものとなっていた。
「カメラの写る場所を『通っただけの』ラルヴァは、所謂『見せ金』な意味合いだろう。しかも、下手に迎撃させないためにワザと通ったのも計算づくだ」
「下手に迎撃すれば挟撃されるかも知れないし、被害がかさむからなぁ。双葉学園の判断は間違っちゃいなかった」
「中世ばりの戦いをするラルヴァが、ここまで組織的に動けるのは不気味だよ」
 政府関係者は各々に率直な自分の感想を一言一言漏らしていく。確かに、アーミー・ラルヴァの死体などは回収して双葉区にその死体が転がっているという状況だけは回避した。
 しかしながら双葉学園がやったことは夜明け前までのこの掃除だけであり、被害現状を機密会議後に政府関係者と検証する手筈だった。だが、これら謎だらけの現状視察は首をかしげるのと共に、言い様の無い不気味さにただただ青ざめる事しか出来なかった。
「無防備な居住区を一切手付かずに、静かにさらりと行軍するとはな……俺達は、今回のラルヴァを甘く見すぎているのかも知れん……」


3-3 覆う陰


――正午 大学部カフェテラス。
 政府関係者や一部学園関係者が視察している一方で、大学部の一部は学舎の中心にあるカフェテラスで休憩していた。
 主に学園北西・北東地区に元々司令や指揮官として参加した者や援軍として派遣された者達ばかりが集まり、食事を取ったり仮眠を取ったりしている。大学部にて待機していた面々は三時間交代の巡回を始めており、カフェテラスに居る面々は直接『現場』に立った者だけである。
「よう星崎ちゃん」
「貴方も今朝食か……遠藤君も居るのね」
 美沙や討状、遠藤雅等に至っては休む間もなく会議に出席させられ、今ようやく休憩出来た。休憩できたとは言えこうやってバラバラなので、取り敢えず一番馴染みのある人間とつるむのは人間の性という物だろうか。
 見れば、遠藤はサンドウィッチを二包み程食べてパックの珈琲牛乳を飲んだ後包み紙も片付けず、身体をテーブルに突っ伏して眠っていた。しかもサンドウィッチの一つを握りしめたまま動かない。先程討状と偶然会い、話しながら食事をしていたが、いつの間にか突っ伏して寝ていたという。
「遠藤君熟睡ねぇ」
「遠藤ちゃんは疲れたのか、こうやって眠ったままだ。まぁ、無理もないだろうけど」
 美沙も討状も、遠藤の姿を見ながらこう呟いた。美沙と討状は北東地区に大学部の『援軍』として参戦したが、この遠藤は北西地区司令の一人として最初から現場に立っていた。
 しかも、大学部からこの双葉学園に入った明らかに『経験不足』の彼がである。
「残念。起きていたら、真琴に言って面白い子を紹介しようと思っていたんだけど」
「絵理ちゃんだな?」
「御名答。やっぱり、女の子に関しては抜け目ないわねぇ」
 美沙の言葉に即答する討状に、『フンッ』と鼻で笑いながら呆れ顔で彼女はこんな言葉の切り返しを行う。
「ちょっ! それはないぜぇ星崎ちゃん」
「事実でしょ。あんたね、何時も組んでいる『漣汀(さざなみ みぎわ)』さんが『討状殺す』とか、『マジでセクハラされた』とか言いたい放題言っているのよ? 中学生から!」
 やれやれと言わんばかりの呆れ顔で美沙はこう答えた。
「ちょっ…! 何で知って……そうじゃなくて絵理ちゃんと言えば、数少ない癒し手だぜ? それに星崎ちゃんが絵理ちゃんを教えているじゃないか。そんな事を知らない訳無いぞ?」
 彼女は『どうだか』と言わんばかりの苦い顔して討状の言葉を聞いている。
「はいはい、分りました」
 聞いた振りをして華麗に話を流した美沙は、もう一度机に突っ伏している遠藤を見つめた。
「取り乱していたようだけど、後衛の仕事はきっちりこなしていたって聞いているわ……緊張から解放されたのね」
 美沙は一言こんな事を言い置く。
「随分、遠藤ちゃんを持ち上げるんだねぇ」
 にやにやして討状はこう言い置くが、美沙は至ってクールに切り返す。
「純粋な癒し手が増えると言うことは、命綱が増えることなのよ?」
 美沙は大人びた微笑を浮かべてこんな言葉を言い置いた。
「何かあったときの仕事が減るし、頼れるようになれば彼はこの学園全体で心強い存在になるからね」
 実際、この双葉学園に於いて即決に傷や病気を癒せる『癒し手』の異能者は、対ラルヴァや他の後衛型異能者の数に比べると圧倒的に少ない。
 学園や異能研にも『異能に依らない』治癒技術が存在するが、とても時間が掛っていたり、闘争状態で落ち着いて使うことなどとても出来る代物ではない。この時に美沙や遠藤、絵理、そして宮子と言った能力者が居ると、精神的に心強いのだ。
 現在の定石として、双葉学園は傷が浅く苦しんでいない場合は結城宮子が引き受け、重くなっていく毎に三浦絵理、遠藤雅、星崎美沙と続いていく事がセオリーと成っている。
 それでもこの双葉学園に於いて4人の癒し手と言うのは絶対的に人数が少ない上に、当然の話だが限度という物もあるので癒し手が増えることは望ましく、一人でも増えるとこれらヒーラーは大いに助かる。
「今にして思うけどさ、上層部はどうしてこの遠藤ちゃんを北西部の司令の一人として配置させたんだろうねぇ」
 討状は遠藤を見ながら思わずこんな事を漏らした。
「ああ、それね。私が聞いた話によると、実戦経験少ない遠藤君に経験を積ませる為って話だけどね」
 討状の疑問に美沙は珈琲を一口、口を付けながら言う。
「遠藤君は大学から双葉学園だから、叩き上げの面々(初等部・中等部からの学生)から見れば、圧倒的な経験不足で何より緊張感がまだ現実味を帯びていない、と言うのが職員や大学の見解」
「確かに、『2016年』の諸騒動を経験していなかったり、実際に緊張感を肌で感じていないんだよなぁ」
 美沙は持ってきた卵のサンドウィッチを一口、二口と食べながら、討状と話を続ける。
「だから司令に配置したのよ。一つの小競り合いが『一つの戦い』と数えられるのだから、彼は力を発揮できた事でしょう。まぁ、西で良かったねって所かしらね」
「西はまぁ、存外呆気なく守り切っちゃったもんなぁ……でも、それにしても上は思い切った事をするよな。『援軍』ではなく、最初から配置するなんてな」
 討状の言葉に、少し溜息を漏らしながら美沙はこう言い置いた。
「……私達(大学部)や高等部の生徒は、軍人の、しかも上級士官並みの待遇受けているって気付いてないでしょ? 遠藤君も例外じゃないんだよ」
「そうだっけぇ?」
 とぼけたような言い方をする討状だが、美沙は実にクールな表情のままこう言い置いた。
「何処かの誰かさんは、その金や政治家の親御さんからの『お小遣い』でキャバクラやソープランドで遊んでいるから、覚えてないんじゃないの? と言うか、前にキャバクラから出て来るのを見たんだけど、流石にあれは引いたわ」
「ちょっ!! ほ…星崎ちゃ~ん……止めようぜぇ、僕すっごい白い目で見られているよぅ」
 美沙の言葉に、周囲で食事を摂っていたり、お茶を飲んでいる女子学生はまるっきり軽蔑な目で討状を見つめたのだ。
「さておき、将来を保証されてるんだ。少しくらい無理して貰わないと困るのさ、上も」
 珈琲にミルクを多めに入れながら美沙は話を続ける。
「遠藤君も、何時も行っていた模擬戦や訓練、机上での戦術関連の授業と講義を頭に叩き込んでいるでしょうし、素人を行き成り投入って事でもないよ」
「あの訓練の一部は防衛大や士官学校のソレだもんなぁ」
 討状はそんな風に美沙に相づちをすると、彼も自分の珈琲カップに口を付けて珈琲を口に含む。
「ま! 見ている人は見ているって事よ。こういった混乱時に動き回れたのは良い経験だし、遠藤君は単にのほほんとこの大学でキャンパスライフを送っているわけじゃないって事よ。私と一緒に名前が出たと言うことはさ、『癒し手』として目立った経験積んでいるでしょうしね」
「おお、星崎ちゃん凄い自信だ」
 宛ら自信満々に言う美沙に、珈琲を口に含みながら相づちするように討状が言い置く。
「自信じゃないわ、修羅場って経験がモノを言うのよ。後で西に行っていた子から遠藤君はかなりスムーズに行動取れていたって聞いたけど、それってやっぱり色々と手練れだったからだよ」
 そして目を瞑り、胸を張って誇るように美沙は言い放つ。
「それに緊急的な怪我人が出たら直ぐに私が呼ばれるのよ? それ位の評判はご褒美じゃない?」
「そりゃそうだ」
 にこりと微笑みながら、それでいてクールな対応に討状は茶化す事無く美沙に相づちする。
 美沙自身は決して自信過剰から来る言葉ではないが、彼女の持つ年齢不相応な大人な雰囲気はこんな言葉を言い表しても嫌味を感じさせない不思議な空気があり、例え高飛車な発言でもそうは見せない雰囲気があった。

「だけど、こう言っては何だが実際情報操作は上手くやっていると思うさ。この規模の争乱事態の報道を封殺しているんだもんな」
「新人じゃない政治家や自衛隊、警察もラルヴァに関してはアメリカのソマリア『モガディシュの戦闘』並のトラウマがあるのさ」
 ある程度食べ物を腹に収めて一息ついた所で、美沙はポツリとこんな事を言うと、討状は何時になく真面目な顔で相づちをするかの様に美沙に答えた。
「下手に報道したらどうなるか、そんな事はバカでも分かるよ」
 討状は珈琲を口に含みながら一言、付け加えるように言い置いた。流れているテレビの報道を見る限り、昨日の襲撃事件は取り上げられていない事がその言葉を裏付けている。
「特に2016年は警察や自衛隊にも酷い『傷痕』を残してね、『マンイーター』を始め、あの年は特にトラウマなのよ。私達もだけれど」
「覚えているさ、忘れられねぇーって! ダチ一杯死んでるんだぜ? 追悼集会はもう出たくもねぇよ」
 討状はぐいっと珈琲を飲み終えると立ち上がり、もう一度珈琲を注ぎ直して戻ってきて席に座り直すと、話を続けるように言葉を発した。
「何も知らない新人議員は、報道関係に直接声を出して言っている訳ではないが、『金の無駄』とか言っている馬鹿が居る。だが、大概内情を少しでもかじったら、震えが出て裸足で逃げ出すんだぜ」
 討状は純白のリボルバーを懐から一回取り出して、じっと見るとそのまま懐に仕舞った。
「結局は、誰かがやらなくてはいけない。そうなればラルヴァ関係は双葉学園にしかできないのよ」
「何だかんだ言っても手に負えないし、何と言っても出来れば関わりたくない事だしな。無駄に騒ぎを大きくするだけだし、公表しても誰が解決するんだとなれば閉口するのがオチだからねぇ」
 美沙の言葉に討状はこう言い置くと、おかわりした珈琲を熱いまま口に含んで喉の渇きを潤した。
「だが、今回は死人が出なかったのが良いねぇ。今年の四月の『3-Y』みたいな状況にならなかったのが、救いだよ」
「それも思い出させないでよ……今回も『3-Y』に重傷負った子居るんだからね。私と遠藤君が処置して、後は異能研の『治療機器』で治癒させているけど」
 『3-Y』とは高等部三年Y組の事だが、このクラスは新年度(4月)早々大勢の死者を出してしまっており、縁起の悪さと生徒の減少で他のクラスと合流させようとまで話が持ち上がったクラスである。だが、亡くなった者を無にしない為なのか詳しい理由は定かではないが、現在も三年Y組は健在である。
 高等部の、世間での『高校生』でも、どんなにふざけた話をしていても、生徒同士のカップルが並んで歩いていても、このクラスの前を通るときは哀悼の意を込めて一礼して通るほどである。

「でもよ星崎ちゃん、遠藤ちゃんは何というか、一回り歳の小さな女の子が好きだって話だぜ」
「ああ、遠藤君はロリコンで有名だしね。最近はおっぱいの大きな女の子も好きになったって聞くけど、その辺りは人畜無害でしょう」
 討状の言葉に、美沙はきっぱりと言い放つ。
「なんでよ?」
「はははは……だって貴方じゃないしぃ」
 ヘラヘラと笑いながら美沙は断言した。遠藤も男で相応の趣味嗜好もあるが、何よりも討状の女好きが目立ちすぎている為に余計にそう思えてしまう。
「おいおい星崎ちゃん……俺はそこまで見境無くないぜ?」
「良く言うよ。ウチの真琴を紹介しろって言ったの誰? 何度も顔を合わしているクセしてさ」
 真琴は美沙とセットで良く討状と会ってはいるのだが、真琴の方が彼の軽さに嫌気が差している為に会っていても宛ら無視をしていた。
「つうかアンタさ、ふみちゃんにも手を出しただろ。あの子を割とマジで口説いているところを見たときは節操ないなぁって思ったし、引いたわ」
 美沙の口から出てくる嫌味とも苦情とも取れる言葉の数々に、討状はキョロキョロと左右を見ながらあたふたし、困惑していた。
「ふみちゃんが怒らないのを良いことに、耳触ったり髪触ったりセクハラだよ」
 『ふみちゃん』こと川又ふみは、美沙の高等部時代ではクラスメイトで、犬の耳を生やした所謂『ラルヴァとのハーフ』の学生である。その容姿や独特な一人称、加えて人懐っこい性格は学園では有名で、宛らマスコット的な立ち位置だ。
 そんな彼女に手を出した、と言う不穏な言葉が美沙の口から出てきた瞬間近くの学生達の視線は討状に向けられ、福本伸行漫画の独特の効果音が思いつくほど、ざわざわと一瞬場を支配した。
「それだけじゃない、園部さんにも手を出したよね? 園部奈津子さん。周囲からボコられていたけど」
「勘弁して下さい……割とマジで」
 もう止めてくれ、とでも言いた気な程困惑している討状に、美沙はトドメとばかりに次々と言葉を紡いでいく。
「で、その時負った傷を治したのは誰なのよ?」
 美沙の勝ち誇ったような表情と共に紡がれる言葉に、討状は下を向いて項垂れるように、
「……星崎ちゃんです……」
 ポツリと呟くように言い置いた。
「程々にしておかないと、そのうち夜道歩けなくなるわよ?」
 美沙の忠告を聞き終えると、討状は顔を上げて気分を切り替え、改めて美沙にこう言い置く。
「でもよぅ……絵理ちゃんは好物じゃないのかい? モロに対象だぜ」
「大丈夫大丈夫……それにそんな事すれば、ネコ耳生やした女の子にみっくみく……いや、ボコボコにされるだろうから」
 美沙は目を瞑りながら珈琲を啜りながらこんな事を言い置くと、目を開けて遠藤の寝顔を覗き込み、微笑みながら見つめて締めくくった。
「あの子、もし遠藤君が浮気したら嫉妬深そうだもんねぇ」
「あー……なるほど……」
 討状も釣られたように美沙と共に遠藤の寝顔を覗いていた。


――正午 学食前の入り口。
「あううう……並んでくださ~い!!」
 学食前の入り口では、大学部の学生が長机を置いて高等部と中等部の生徒を並ばしていた。中でもタイトスカートを履いている川又ふみと園部奈津子は目立っており、右往左往している様は余計に引き立てて目立っている。
「ふっ…ふみ先輩! 何ですか、この『ペリカ』って……」
「俺知っているぞ! 確かコレ『カ○ジ』って言う漫画のオリジナル貨幣だろ!」
「ふみ先輩! 俺達はいつから借金塗れになったんですか!!」
 しかし、高等部と中等部の生徒達は一様に動揺しており、目立っているふみと園部に半ば詰め寄るように次々に言葉を投げかける。
「話も聞いてくださ~い!」
「ほらっ! 静かにして下さいっ! 説明が出来ないじゃないの!!」
 訳の分らない程に混乱している状況にふみと園部は声を出すくらいしかできず、困惑していた。
 ふみと園部をはじめとする大学部はここに来て、高等部と中等部の生徒に『とある券』を配り、その使い方を説明しろと言われて来ただけである。しかも極々少人数で来たために、ここまで場が混沌とするとお手上げだった。
「あっー!! 龍河ー! 美沙ー!! 助けてー!!」
「ああ!? 川又さんがオーバーヒートした!」
 混乱している状況にふみは思わず龍河や美沙の名前を上げて叫び、見た目でも分るほど混乱してしまった。見ている園部も、どうふみを宥めて良いか分らず彼女もあたふたとし始めてしまった。

「はいはいは――――い!! オスガキにメスガキ、黙って4列に並びやがれっ!!」

 場が混沌としている中を割ってはいるように一人の女性が大きくパンパンと手を叩き、怒鳴るように声を張り上げると、まるでモーゼの十戒の様に生徒達が道を開けた。
「グチグチうるせぇなあ! 大学部の先輩達の言う事もまともに聞けないのかい!!」
「生徒課のおば……いや、六谷さん!」
 園部は思いもよらない人物を見て、歓喜にも似た声を出す。普段学生課の事務を勤めている、この学校の卒業生である六谷幸子が年齢不相応な強面で来たのである。
 六谷幸子の怖さは高等部・中等部にも広く知られている程の存在感と威圧感、そして畏怖に近い感覚でもって認知されているため、園部にとって大変心強い助っ人だった。
「園部聞こえたぞ! まぁいい説明は私がするから、お前はそこで混乱しているリアルストライクウィッチーズを我に戻せ!」
「はいっ」
 幾分か焦りの混ざった笑顔と共に、園部は混乱しているふみを少し裏に連れて行った。
「ふぅ……じゃあガキ共、園部の代わりに答えてやる。今から配るモノは校内だけで使用できる学校ルールの貨幣、漫画を読んで思いつきで『ペリカ』って名前を付けた。文句有るかい?」
 あまりにも簡潔な説明に、生徒達は目を見開いたまま言葉を発する事すら出来なかった。
「し…質問!」
「言ってみろ」
 そんな中、一人の生徒が手を挙げて六谷幸子に質問する。
「そ、そもそもその券は何なのですか? 何に使えるのですか教えて下さい」
「今回のご褒美でお前等に配る、学園内で『のみ』使える金券さ。学園内の購買、学食、カフェテラスで金の代わりに使えるものだ」
 六谷幸子は一息置いて、説明を続ける。
「金券だから現ナマの代わりに使える。それを各々個人に二千円分今から配ろうって事なんだよ、それが分ったら黙って並びな。『ペリカ』は学生証提示で頒布だ、用意しておけよ」
 一通り説明が終わったかに見えたが、六谷幸子は掌に自分の拳をポンと落とす仕草をして付け加えるように話を続けた。
「そうだお前等肝心なことを忘れていたが、その金券で買い物するときは『元の売価のまま』だぞ。今は緊急事態で学園内が半額になっているが関係ない事と、金券自体に極めて特殊な細工を施しているから偽造したら分るからな」
 ニヤリとしながら六谷幸子は、舌で唇を舐めながら〆とばかりに実に楽しそうにこう言い置いた。
「偽造したら、即懲罰台+αだぜ」
 生徒達はサディスティックに語る六谷幸子と咄嗟に目を背けつつ、静かに列を作り並んだという。


――午後4時 2年C組教室。
 休みになったこの日の教室は立ち寄る者がおらず、雑談にはもってこいなこの場所には誰も居なかった。大体が学食かカフェテラス、もしくは学食に併設されている合宿所に居るからだ。
 住まいが学園内の寮ではない者はそこで寝起きしなくてはいけないのに加え、テレビ等が設置されているため必然的にそう言う場所に人間が集まる。
 そんな誰も居ない教室で真琴は一人自分の席に座り、缶コーヒーを飲みながら本を読んでいた。
「三浦君、時間通りに来てくれたのね」
 2-Cの教室に普通だったら見掛けることがない三浦孝和が静かに入って来ると、真琴は本に栞を挟んで机に置き、三浦の方に顔を向ける。
「真琴さんどうしたのです? こんな所に呼び出して」
 真琴は折を見て三浦に声を掛け、そっと呼び出していた。
「渡したい物があるから、そこの席に座ってよ」
 真琴が三浦にこう言い置くと、彼は真琴の前の席の椅子にミリタリーのゲームや映画で軍人が座るように、背もたれを正面に向けて跨ぐように座る。
「近い、マジで近いって」
「いやぁ、椅子を動かすの面倒くさくて」
 女が持ちうる本能と言うか、男の考えそうなあからさまな欲求というか、そんな感情から瞬時に『違う』と感じ取ったが、敢えて無視するように真琴は話を始める。
「渡したい物があってね。受け取ってくれるかな?」
「ん? 何かな?」
 真琴はバックを開け、三浦の目の前にプラスチック製の眼鏡ケースを、静かに丁寧に彼の目の前に置く。
「眼鏡ケース?」
「中を見てみてよ」
 真琴に催された三浦は丁寧に眼鏡ケースを手に取ると、静かに眼鏡ケースを開ける。
「サングラスだ」
 眼鏡ケースを開けると、三浦の目の前には縁の細いサングラスが出てきた。しかも新品同様であまり使った形跡がない。
「三浦君にあげるよ」
「これを……俺にくれるの?」
 そう言うと、三浦には殆ど見せたことのない笑顔と共にこう答えた。
「そう。サイズ合ってないし私じゃあ使い道無くてね。眠らせて腐らせるよりは活用できる身近な人にあげるのが、このサングラスも喜ぶと思うから」
 真琴はこんな事を言うが、三浦はまじまじとサングラスを見つめたまま動かなかった。
「貰っちゃって良いのかな」
「ねぇ折角だからさ、掛けて見せてよ」
 だが、動かなかった三浦の背中を押すように真琴は言う。
「……真琴さんが言うなら、着けないといけないな……どうかな?」
 真琴が着けたら大きめのサングラスも三浦が着けると非常に丁度良い大きさに収まり、実にしっかりとフィットする。三浦は眼鏡から手を離し、真琴に意見を求めてみた。
「うん、やっぱり三浦君なら似合うよ! これなら心置きなく三浦君にこのサングラスをあげられるよ」
 自分の手の平を正面で合わせるような仕草をしながら、真琴は素直にこう述べた。
「授業中以外に掛けると良いよ、アクセサリー一つで雰囲気ががらりと変るし。女の子のお尻を追っていない真面目な顔は、凛々しくて良いしね」
 真琴の言葉に、三浦は固まったまま彼女の顔を見つめていた。
「あのさ……最後に一つだけ言っておきたいんだ三浦君……昨日はありがとう」
 真琴にこう礼を言われると、普段の女好きな雰囲気とはかけ離れた程顔が赤らめ、三浦は照れていることに気付く。
「あ……俺としては、こんな事しか脳がないからなぁ」
「あはははは」
 普段の三浦は自惚れに近いほどの自信を持った発言が多いが、自分を控えめに言う三浦の姿に真琴は思わず笑ってしまう。
「真琴さん笑わなくても良いじゃん……」
「ははは……ごめんごめん、こんな三浦君は初めて見たからさ」
 そして真琴は手で口を押さえて笑いを抑えると、真面目な顔をして無言で三浦の顔を覗く。
「真面目な顔なら、周囲の見る目も変るだろうに」
 小声でこう独り言を言うと、三浦の顔に自分の顔を近づけて一言だけ言い置いた。

「個人的な話なんだけど私としてはさ、無闇に他の女の子のお尻を追いかけるのは、もう止めてほしいんだよね」

 三浦は真琴の一言に返す言葉が無かったばかりか、次の言葉を紡ぐことも出来なかった。
「君の悪口は、あまり聞きたくないから」
 最後に真琴はこれだけ言い置くと、『じゃあね』と一言だけ言い残してテレポートで何処かに消えてしまった。
「真琴……さん」
 いつもの雰囲気とは真逆な、三浦にとって名状しにくい真琴の雰囲気に、彼女の名前を口にする事が精一杯だった。

「ねぇ、なんで三浦君が2-Cに居るの?」
 真琴がテレポートで姿を消したのと入れ替わりで、2-Cの委員長である笹島が教室に入ってくると見慣れない三浦の姿にこう言葉を掛ける。
「あぁ、笹島か……何でもない」
 不意に入って来た笹島に、三浦は返答らしい返答が出来なかった。そんな様子の三浦に笹島は訝しげに彼を見つめるが、普段見られない一部分をを発見して言葉を続けた。
「サングラス! 学校に関係のないものを使うな……って、言いたいところだけれど、三浦君は似合っていると思うよ」
 そして笹島には珍しい微笑みながら、三浦を見つめた。
「それさ、星崎さんから貰ったんでしょ? 彼女からプレゼントね」
「い…いや、笹島……まだ付き合っていないんだぜ……付き合いたいけど」
 鋭い洞察と笹島にしては珍しい茶化す言葉に、三浦はこんな言葉しか発せなかった。
「何言ってるんだか。自覚してないだろうけど星崎さんとセットで考えられているのよ? これを彼氏彼女の事情って思われない方がおかしいよ」
 いつもの笹島なら、『不潔』だの『嫌らしい』等と言いそうだが、ある種の挑発に三浦は帰す言葉が無かった。
「『目は口ほどにものを言う』。サングラスを掛ければ雰囲気変るから、イメチェンも兼ねて授業中以外は掛けていた方が良いかもよ?」
 笹島はこれだけ言うと、真琴同様『じゃあね』とそのまま教室を出て行ってしまった。
「……笹島ってあんなキャラだっただろうか……」
 三浦は首を傾げるが、思考と答えが結びつく事はなかった。


――午後9時 双葉学園内 歳之瀬師走自室。
 双葉区が既に闇に包まれた時刻、『戒厳』の所為で警備の大学部生徒達が右往左往しているために何時もよりも慌ただしく、宛ら賑やかなものだった。
 そんな中を夜陰に紛れて春奈・C・クラウディウスと逢洲等華が教員の寮に走っていく。
「クラウディウスに逢州か、早く入れ」
 目的地の歳之瀬の自室前の明かりは全て消されており、遠くから見通せないとは言え春奈と逢州は歳之瀬の部屋の戸の前に駆け込むと、周囲をキョロキョロと気にしながら素早く彼の部屋に入った。
「状況が状況とはいえ、心臓に悪いよな」
 二人を部屋の中に引き入れた歳之瀬は思わずこんな事を洩らした。
「仕方有りません、成るべく姿は晒さないようにしなければいけませんからね」
 こんな言葉に春奈はこう相づちすると、彼は軽く溜息を付く。
「そりゃそうだな……じゃあ二人とも、テーブル前の座布団に腰を掛けてくれ」
 歳之瀬に催されると春奈と逢州は言われたとおりに座布団に腰を掛け、その間歳之瀬はオーディオ機器に電源を入れて今朝同様に重低音の効いたハードロックを流す。
「……相変わらず、心臓にまで響きそうな音楽ですね」
「無駄かも知れんが、念のための盗聴防止の一手だ。悪いが我慢してくれ」
 きつめの重低音に思わず眉をしかめる春奈だが、歳之瀬は宥めるように春奈に言い置いた。盗聴器を欺くにしては極めて古典的だが、科学的に音を仕分けないと会話の内容を吟味できなくなるため、未だ有効な手段と言える。
 歳之瀬は準備が整うと春奈や逢州と対面する位置に立ち、彼女達と同様に座布団に座る。
「よし、顔を近づけろ。小声且つ伝達できるレベルを維持したまま、話すんだ」
 歳之瀬の言葉に従い机に乗り出すように顔を近づけると、逢州が口火を切るように話し始める。
「まずは詳しい被害状況から……会議でも伏せられていましたが、学園関係の被害は人的被害は西と東を合わして死者0、重傷者6人で内2人は復帰、軽傷者は85人ですが既に全員復帰しています。そして施設の被害は北西部では無しですが、北東部はゲート部が大破、外壁が小破されたものの、それ以外の直接的な被害は軽微だったようです」
「伏せられていただと? ……逢州はどうやってこの情報を引き出したんだ」
 逢州の言葉に歳之瀬は素朴な疑問を呈すると、それに対して逢州はこう答えた。
「ログを探す一環で学園地下に納められている『メインフレーム』を、精査する一環で風紀委員の持つ『スーパーユーザーアカウント』を用いて保全ノードからデータを引き出しました」
 双葉学園の地下には、極めて内向きのネットワークと防火等設備の制御の為に大幅に拡張された『メインフレーム』が配置されており、そのメインフレームをさらにネットワーク上から守る無数のミニコンピュータが配置されている。
 『スーパーユーザーアカウント』とは、そのシステムに於ける全ての権限を持つアカウントであり、簡潔に言ってしまえばこのシステム内では何でも出来てしまう。基本的にはこのメインフレームのノードは全て監視されているが、スーパーユーザーは紙に記録されたログを除くその痕跡すら消すことが可能なのである。
 このアカウントは、双葉学園では醒徒会、風紀委員、初・中・高等部の校長と大学部の学長、そして双葉管理の7つのみしか存在しない。
「被害状況を伏せたのは何となく分るが……怪我人が復帰したのは何故だ」
「遠藤雅さんと星崎美沙さん、それとうちの神楽、一年の結城宮子さん、そして彼らの補助で中等部の三浦絵理さんが出来る限りの治癒を行ったためです。ですが、4人は重傷で星崎さんや三浦さんの『疲労』の関係と、遠藤さんの『回数制限』の足枷、結城さんは痛みを伴うので不可能。これにより治癒しきれませんでした」
「この為、現在は異能研究所の『治癒装置』を用いて治療中です」
 歳之瀬の質問に逢州と春奈は静かに答えた。
「情報を悪戯に報告するのを躊躇ったのかも知れません。悪いことに今治療装置で治療受けている重傷者4人中2人が『3-Y』の生徒なんです。他の2人は東地区で負傷した教員と、2年の子なのですけれど」
 元々鉄仮面的な無愛想の逢州の眉に更に渓谷のようにしわが刻まれ、春奈も眉を顰める。
「『3-Y』か……伏せて置くのが適切かもな、四月のトラウマは記憶に新しすぎる」
「しかも被害が軽微である、と言う情報は特に知らさない方が得策でしょう。あの『アーミー・ラルヴァ』の目的が分らない今は、些細な情報も伏せておくのが得策かも知れません」
 逢州に続けて春奈はこう言い置くと、続けて話を切り出した。
「どうしても、この動きは『情報が漏れている』と言う事を、前提としているように思えてならないんです。水面下で『犯人捜し』が行われているのかも知れません」
 春奈の言葉に、歳之瀬と逢州は言葉を詰まらせた。
「状況は、一日経たずに予想を遙かに上回る程悪化していると言うことか」
 やっと出た歳之瀬の言葉と言えばこんなものだった。だが、それに追い打ちを掛けるように逢州が口を開く。
「私達風紀委員は、電話による通信ログとネットワークによるログの監視を続けました。大半は電話による学園内に居を構えていない生徒や教諭や教授の、外部に住む家族宛のものが殆どでした。ですが……」
「どうした?」
 逢州は深く刻まれた眉間のしわを、更に深く刻むように目を細めながらこう言い置いた。

「高等部教諭の『水下 六郎(みずした ろくろう)』と中等部教諭『田上 昌明(たうえ まさあき)』の2名が、執拗に外部と連絡を取り合っています。内容までは分りませんが、家族では無い事は確かです」

「何だと!?」
 歳之瀬は思わず声を上げる。双葉学園自体がアクセスポイントである事と、『スーパーユーザーアカウント』権限を持ちうる風紀委員はこのアクセス記録を閲覧する事を許されている。
「今現在、ログを監視する者の少人数残してこの2名が連絡を取り合っている先を懸命に調べています。ですがとにかく時間が掛ります。警察をはじめとした色々な組織に協力を仰がなくては成りませんので」
 双葉区内のログは調べられてもアクセス先を調べる事は容易ではない。この学園内ではハッキングをはじめとするネットランニング技術に長じている者は多いが、それには取り敢えず形式だけでも『筋』を通さないといけないからだ。特務機関とはいえ理由も無く法を破る行為は好ましくない。
 また協力を得られれば、しかるべき措置を執った上で双葉学園に情報を提供してくれる事も有るため、単独で迂闊な行動は取りづらい事も上げられる。
「嫌な予感は現実の物に成りそうって事かい」
 大きく溜息を付いた歳之瀬は、直ぐに表情を戻すと春奈に目線を送った。
「クラウディウス、明日一日この2人から目を離すな。とても嫌な予感がする」
「了解しました……ですが、その前に……」
 歳之瀬の指示に春奈はこくんと頭を前に振る。だが、春奈は指示を承ると逢州に続けてもう一度口を開いた。

「歳之瀬先生、この学園に『ネクロノミコン』があると言うのは本当ですか?」

 春奈の突然とも受け取れる質問に、歳之瀬と逢州は目を見開いて彼女の顔を見つめた。
「『ネクロノミコン』!?」
 逢州は思わず声を上げた。言わずとも知られている、『禁断の魔導書』の最たる物と目される『ネクロノミコン』の名が出ることを想像していなかった事に加え、彼女自身この書物そのものを眉唾物と考えていたからだ。
「……クラウディウス、何故知っている?」
「他にも『襲われる』原因がないかを、風紀委員と平行に私も調べたのです。そこには、学園の地下にある『稀少図書保管室』にあると銘記されていました」
 震える声を抑えつつも歳之瀬は春奈に問い合わせると、春奈も声と身体の震えを隠しつつも、静かにはっきりとこう答えた。
「この学園には、確かに『ネクロノミコン ラテン語版』が納められている……が、あの『稀少図書保管室』は一重二重と厳重な警備が敷かれている……それにだ」
 春奈の言葉に、沸き上がる不安を払拭するかのように歳之瀬ははっきりした口調で春奈に言い置いた。
「『ネクロノミコン』は内容が危険ではあるものの、普通に解読するにせよ斜め読みにせよ膨大な時間が掛る上に……例え解読が『目的』でなくとも稀少かどうかは価値には関係ない。それに譲渡しようものなら、確実に芳しくない人物の注意を引く」
 淡々と語る歳之瀬の言葉を聞き入るように、春奈と逢州は下を向く。
「心配は杞憂であって欲しいものだがな……この本は公では『ミスカトニック大学図書館』、『ハーバード大学ワイドナー図書館』、パリの『フランス国立図書館』、『ブエノスアイレス大学図書館』にしか無いと言われているしな」
 これだけ言うと、逢州に顔を向けて目線を合わした。
「逢州、念のために明朝朝一に稀少図書保管室の警備を厚くするように指示を出してくれ。あくまで念のためだ」
「分りました」
 逢州が歳之瀬の指示を承るのと同時に、部屋中に鳴り響いていた重低音のハードロックの曲が演奏を終えてフェードアウトするように部屋に静寂をもたらすと、3人は顔を離して普通にテーブルを囲むように座った。
「取り敢えず話は終わりだ……疲れただろう、珈琲くらいは飲んでいってくれ」
 歳之瀬の言葉に春奈と逢州は無言で頷くが、一方では春奈は子どものような大きなあくびをしている。無理もない、3人とも昨晩より一睡もしていないからだ。彼が珈琲を用意して彼女達の前に置くと、静かにカップに口を付けて静かに啜る。
「それにしても、不気味ですよね……目的の見えない襲撃なんて」
「意味のない襲撃なんてのは大概そう言うものだよ、クラウディウス」
 ふいと言う春奈の言葉に、静かに歳之瀬は言葉を返した。実際、相手の目的が全く見えてこないこの状況はこう思うしかないのだろう。
「しかし、暫く寝られない日々が続きそうだ」
 歳之瀬は珈琲を啜りながら、呟くようにこう言い置いた。


3-4に続く



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