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第3話『反作用』


眩しい。
オレはまだ寝たりない頭をムリヤリ起こし、硬いソファーから起き上がった。
目の前のテーブルには朝日に反射して輝く銀色の刃。
そして、自分の手に目を向ける。
やや力を入れるとボンヤリを浮かぶ十字紋。

「まさか、たった1ヶ月でここまで使えるようになるとはねぇ」

寂れた事務所の奥から姿を現した女性こと『柊優子』はコーヒー片手にそう呟いた。
確かに、オレに魔術的な才能は当初皆無『だった』
されど、何の因果か教えられたことに対してすんなりと体が受け入れた。
感覚としては、昔から知っているものを呼び起こしたような。そんな感じだ。
そんなオレを尻目に事務所のデスクに落ち着いた優子は新聞を広げ、タバコに火をつけうまそうに紫煙を楽しんでいる。
まったく、こっちはここ1ヶ月死に物狂いだったと言うのに。

「いい?一応使い物にはなってるけど、あまり無茶しちゃ駄目だから。なんせ、それの対価は・・・」

「分かっている」
オレは気だるそうにコートを羽織り、事務所を後にした。






―分かっている。





何が分かっていると言うのだろう。
オレには分からないことだらけだと言うのに。





なんだかめんどくさくなったオレはその日、学校をサボった。






―ピッ

いつものワンルームで寝ていたところへメールが入った。
差出人の名は、『野田康治』
内容は至って簡単なものだ。
メールを流し読んだオレはアパートを後にした。
もちろん、腰にはナイフを携えて・・・。




『石田、昨日の件で話したいことがある。
 いつもの廃屋で待ってる』




ビルの隙間を縫って歩くこと数分。
桜門学園の裏手にそびえるかなり古い廃屋がいつもオレ達が落ち合う場所だった。
歩くたびに感じる、何者かの波動。
これが魔術を扱う者となった人ならざる人の直感なんだろうか。
オレにはいまいち分からないが、それでもオレは歩を進めた。
廃屋のぶっ壊れた扉に手を掛ける。
そこは古びた倉庫のようで、いろんなものが乱雑に放置されている場所。
目の前の風景に変わりはない。
いつものオレ達の場所だ。
されど、違うものが一つ。
真っ白の防護服に身を包み、その腰には銃を下げている執行者


野田康治がそこに居た。



「・・・石田」



オレは腰に手を宛がり、銀色の刃を突き出した。
それは、相容れぬ存在としての対峙。
執行者として野田が向かい合うと言うならば、こちらもソレ相応に答えるのが礼儀だと思った故の行動だ。

「・・・隠してて、ゴメン」


「それでも、僕は・・・」
「御託はいい」

「オマエがあの学園の執行者だということは分かった。ただ、それはオレと刃を交える覚悟があって、か?」

そう。
執行者の表向きの役割は『学園都市の治安維持』
目の前に暗殺者がいる。
平和を乱す者が立っている。
ならば、ヤツは道理に則って、オレを排除しなければならない義務がある。

「オレを、殺すか?執行者・・・!」


「僕は・・・!!」


その瞬間、お互いの距離が一気に縮まった。








2月最後の日、28日。金曜の朝を迎えた。

今日の学園はテスト明け休暇だが、きっちり部活だけはある。
部活動所属の人間にとっては無意味な休暇制度だ。

そして今日は鬼師範が週一で道場へやってくる日。
師範の性格は簡単に言うと、遅刻したら即破門にされかねないという超堅物の師匠だ。
そのことがサッと朝のボケた頭を横切り、目が覚めた。
自室から出て、キッチンへ向かう。
パンの焼けた匂いがしたので朝食はすでに用意されているとわかった。
「おはよう、母さん」
「おはよう、康治。コーヒー?紅茶?」
この人は『野田 歩』
一応ボクの母親だ。

常に元気が座右の銘で、そのままほんとにいつも元気なのだ。
逆に深刻そうな話をボクは、生まれてこの方聞いたことがないんだけど。

しっかりしているものの、歳の割りにキャピキャピして近所からは「一緒にいて楽しい人」としての人気があるとかないとか。
まあ、そんなんだから親が参加する学園行事にはすべて出さないようにボクはしている。
クラスメイトの前でキャピキャピされたりでもしたら・・・。
僕の学園生活はそこでピリオドを打つことになりそうで怖い。

「で!どっちなの!?コーヒー?紅茶!?」
「・・・コーヒー」

どうがんばっても朝からこのテンションについていく気にはなれない。
ボクはすでに出されている食パンに噛り付きながら新聞を覗き込んだ。
めぼしいニュースはない。
と、いってもボクはもっぱらテレビ欄と一面しか見ない派なのでめぼしいニュースなど見つかるはずがない。
コーヒーを手に持った母さんが戻ってきた。

「そういえば地方面にさ、『行方不明の女子高生未だに戻らず』なんてニュースが載ってたわね。物騒な世の中よねぇ~」
ボクのコーヒーを啜りながらそんなことをいい始める。

「どうでもいいけどそれボクのコーヒーじゃないの?」
「だれが淹れてくるって言った?それぐらい自分でしなさい!」
この母あってこの子あり。
ボクがそこそこ口が立つのはこの人譲りなのかもしれない。

「・・・行方不明か。どうせ家出して帰ってこないとかそういうオチっぽいけど。」

その答えに母さんも同意していたらしく、『私も昔は親の目を盗んで・・・』とか長い昔話をし始めた。
こうなっては、もはや誰も止められない。
ボクは適当にその話を聞き流し、朝食を胃へ流し込んだ。

「それじゃあ、行ってきます」
「それでね、私が初めて家出したときに兄さんが・・・って、もう行くの!?私の話は!?」

学園よりも私の話とやらを優先させる母さん。
ボクはため息をついて、もう一度『行ってきます』と念を押して家を出た。




扉が閉まる直前まで、母さんの昔話は加速していた。





ボクはひたすら自転車をこぐ。
軽く自己ベストは更新しただろう。
最後のコーナを全力で曲がりきる。
ゴールは目の前まで迫っていた。
僕は鉄ごしらえの無駄にでかい門を潜り抜けるとすぐさま右のポケットから時計を取り出す。
「12分前・・・かぁ・・・」
結構早めについたことに少し後悔する。
あぁ。布団が恋しい。
5分でも長く眠りたいボクの性格はたぶん一生治らないだろう。治ってたまるか。
駐輪場に自転車を置いて、部室へ急ごうとした。


そんなとき、ふと理科棟へ目をやってしまったのが間違いだった。


その棟窓の奥にいる担任がタバコの紫煙を撒き散らしながらコッチを向いて、笑顔で手招きをしているのが見える。

部活をとるか、学園存続を取るか。


ここで下手にあの手招きを断ればボクの楽しい楽しい学園生活は残り一年を残して終わりかねない。
それほど担任に対する立場は弱いものだった。
しかし、部活でも無断欠席したら師匠になんて言われるかわからない。
それほど師匠に対しても、立場は弱いものだった。

どうしよう、と少し葛藤してみる。

葛藤時間、ものの数秒。
むしろ最初から答えは出ていた。



「・・・携帯で部長に連絡入れとこう・・・はぁ・・・」
腹痛とか適当に理由作れば破門だけは免れるだろうと考えたボクはすぐに連絡をとった。






―ピッ

なんとか口実は作れた。
今日のボクは「腹痛で理科棟トイレに引きこもってる弓道部員」ってことになった。
我ながらすごいウソをつけたと関心し、踵(きびす)を返して部室とは逆方向に位置する『理科棟物理準備室』へ足を運ぶことにした。



私立桜紋学園。
この地方の中枢核となっている学園で、元々女子高だったところを経営難から10年ほど前に男女共学にしたという私立の学園。
校舎は3錬。
理科実験室などが軒を連ねる「理科棟」
職員室や事務系の部屋が多い「教職棟」
そして生徒が日々勉学へ精進する場所「学生棟」
この3つはそれぞれ2階に連結橋なるものがあって、学生達はそこを行き来して日々の集団生活を送る。

そして理科棟だけはもう一つ、別の大きな渡り廊下で連結されていて、その奥には『時計塔』が聳え立つ。
これは学園の象徴として存在しているだけだ。
足を運ぶ生徒は皆無だと言ってもいいほど。

ボクたち理科系進学コースの人間はほとんど「理科錬」で過ごすことが多く、文学系の生徒との関わりは極めて薄い。
まさに「隔離」とも言うべき指導体制。
そんなところに混ざってしまったボクは当然「落ちこぼれ」になるのは目に見えていた事実である。
石田もその1人に該当し、まあ・・・似てるもの同士が一緒にいることはさほど珍しいことじゃない。

俗に言う「馬が合う」といったところ。
そんなボクたちの世話を受け持ってしまった不幸な担任が、今目の前にいるこの「鶴谷国重(つるたにくにしげ」、その人である。







「先生。ボクは部活のために学園へ来たんですよ?」
ムッとした顔でイスに座ってコーヒーを飲んでるのんきな先生を凝視した。
「まあそう硬いこと言うな。コーヒー飲むか?」
朝母親に飲まれたことを思い出し、いただくことにした。

「・・・今日はなんの用です?この前整理した『ナマズ』の観測データはあれでいいはずですよね?」

ボクはちょくちょく先生に物理準備室に呼ばれてはパソコンでナマズの観測データやら物理資料のデータの整理をさせられていた。
『うちの学園の爺さんどもではパソコンを効率よく動かせないだろう?』という簡単な理由からボクは呼ばれているらしい。
たしかに学園の教職員の平均年齢は46、7歳ぐらいだと思う。
んでもって、ボクが爺さん達よりパソコンを効率よく使えるのは確かだ。
それでも一応生徒に雑務をやらせるこの先生の思惑はいまだよく分からない。
なに考えてるんだろう。

「野田君は分かっているようで分かってないな。今日呼んだのは別件だよ。とりあえず、今朝新聞読んできたか?」
「一応読んだことは読みましたけど、テレビ欄と一面だけです。スポーツとか芸能とかには興味ないんで」

淹れたてのコーヒーを啜りながら準備室にある古いソファーに腰をかける。
「おまえらしいといえばそうだが・・・。私が言ってるのはテレビ欄のちょうど裏側の記事のことだよ」
テレビ欄の裏側・・・今朝母さんが言ってた「アレ」のことかな。

「それってどこかの女子高生が行方不明で未だに帰ってこないって記事ですか?」
渋い顔をして先生はうなずく。
古臭いイスをキィキィ鳴らしながらボクのほうを向いた。

「それと今日呼ばれたのと何か関係が?」
先生は意外そうな表情をしている。
なんか、マズイ事でも言ったかな。

「・・・今朝は妙に飲み込みが早いな。そう、すごく関係がある」

ボクは今朝で何度目かのため息をついた。
今月も平和に終わりそうではない気がしてきた。
今は気のせいだと思いたい。

「実は『どこかの女子高生』はうちの学園の子でねぇ。行方不明、それだけ聞くとただの家出娘のようにしか世間は聞き取らない」

「されど、我々の世界での話をするのであれば、行方不明になったその時刻の観測データから少量のデヴァイス使用の反応が検出されている」


「と、言いますと・・・やはり彼らの仕業ですか」

デヴァイスの使用反応・・・すなわちI.V.O.L.Sの犯行の可能性が高い。
嬉々としてデヴァイスを振り回し、それを偶然目の当たりにした不運な女子高生は消された・・・と、いつのも事例だとこんな感じなんだけど。

「執行者、野田康治。執行部権限により彼らの討伐。拉致された女子高生の保護を急務とし、今夜任務に当たれ。」

「まあ、相手のデヴァイス使用の反応もかなり弱い。執行者候補生として実戦訓練と言うことだ」


先生は引き出しから黒い何かを取り出して、机の上に置いた。
それと同時に銀色に輝く銃弾を1発。

ボクは何も言わずその銃と弾を手に取ったのと同時に、久しぶりの感触に違和感を覚えた。

「前のより結構重くなってませんか?・・・。」
愚痴をこぼした。
大体2キロほどだろうが、細腕のボクにはひどく重く感じられる。

「文句を言うな。一応使い勝手はそのままにしたんだが、強化する過程で重くなってしまってな。まあ、問題はないだろう」

対I.V.O.L.S用兵器『Device』
人としての能力が数倍まで引き上げられている彼らに対抗する唯一の手段。
警察が何人束になっても太刀打ち出来ない者に対し、基本執行者は一人で立ち向かう。
それが執行者。
『魔を断罪するもの』の名を馳せる由来だ。

執行者候補生であるボクにはまだDeviceの携帯許可は出ておらず、毎回任務のたびに先生に手渡しされる。
今回の装備はかなり軽量で、12発銃弾が装填されているカートリッジと銀色に輝く特殊弾が1発。

これで、ボクは何度目かとなる『不可思議な戦い』へと足を運ぶこととなった。

本当はこんなことしたくないんだけど、コッチ側の世界のモノが関与しているなら行くしかない。
ボクは覚悟を決めて、その場を後にした。





―時計塔の針は午後7時半を指そうとしていた。
今まで情報収集やらなんやらで走ってたらこんな時間になっていた。
図書館でいろんな文献を調べたり、親友に連絡を取ってイロイロ聞いてみたり。
聞き込みができない状況だったのでそこそこ大変だった。
まあ、ほとんど先生からもらった資料だけで『誰がこんなバカげたことをやっているか』なんてもんは予想がついた。


当然、学園内には夜の静けさが広まろうとしている時間帯だ。
部活動のほとんどは午前中で打ち切られ、今学園内にいるのはボクと警備員のおじさんぐらいだろう。
いや・・・もう1人ぐらいはいるか。
酷く冷たそうな廊下の床を足音も立てずに歩く。
こんなことをやり始めて身についた芸だけど、未だ身を助けたことはないムダなものだ。

―窓の外には月が雲で見え隠れしている。

あの日の晩もこんな感じの月だったろうか。
今ではあやふやになりつつある記憶の中に、唯一焼きついている光景・・・その1つに『月』があった。
白く光る月を見て、ボクはとても悲しい気分になったのを覚えている。
それぐらいしか覚えていない。
あとは忘れてしまった。

ボクは制服の上からお気に入りの黒いジャンパーを羽織り直して学園を歩き回った。
さすがに2日連続でこの学園に来るとは思えないけど、だけど

―なんとなく、今夜も来るような予感があった。

そんなことを思慮しながら夜は無常にも更けていった。








―警備員のほかに誰か知らない人が混ざってる・・・
私は屋上からそいつが学園をうろついている様子を観察していた。
メガネを掛けていて黒いジャンパーの・・・なんとなく影の薄そうな少年を監視している。
「あの人は確か・・・。あぁ。目当ては私かな?」

「私だといいなぁ」
自然と笑みがこぼれる。
この超不自然現象の起こるゲームに考えてもみない飛び入り参加が舞い込んできた。
それだけで私は満足だった。
そう。この学園の誰でもいい。ちょっとぐらい障害となる人物ぐらい出てこないとなぁ。

―セミロングの髪が風に揺れ、その顔が月下の光にさらされた。
「そう・・・早く私を捕まえないと・・・どんどんエスカレートしちゃうんだから」

そう言い残して、彼女・・・本田千尋(ほんだちひろ)はその場を後にした。





冬の冷たい風を掻き分けて、私は理科棟を走った。
薄暗い廊下はそれだけでも気持ちが悪いというのに、私は自分の快楽のためにいまココにいる。
普段の私ならキャーキャー騒いで真っ先に走って逃げるに違いない。
普通の女の子のように振舞うに違いない。
それでも私は知ってしまった。

―破壊する楽しさを、誰かを犯す快楽を。

私は破壊衝動に身を任せ、様々なものを破壊していった。
廊下のノルタイル、窓ガラス、そして・・・。

「ひ・・・バ、バケモノ・・・!?」

グシャリとひしゃげる首。
飛び散る鮮血に私の心は高揚した。
やっぱり一番、人の死に際が美しい。
つい数秒まで人だったその物体は肉隗と化し、もう一人の警備員の目の前で転がっている。
そして、もう一人の警備員は私の前で『タスケテ』と懇願していた。

「タスケテ・・・?こんなに楽しいゲームなのに?助けるも何も・・・」


「あなた達、げーむおーばー」


私の身長よりも遥かに大きいその男は、まるで赤子の手を捻るかのように軽く吹き飛んだ。
しかし、ブツかったところがよかったのかまだ息がある。
彼にとっては生き地獄に近い状況なんだろう。
大丈夫。
私は生き地獄を続けさせるような非道な人じゃないから。

一気に、楽に、殺してあげる。






―なんか楽しいそうだけど・・・いったい何が楽しいの?

やさしい問いかけ。
この声には聞き覚えがある。
私のクラスメイト・・・いつも影の薄そうな「ただクラスにいるだけ」という存在の人がなんでこんなところに?
私は少し身を震わせた。
いるはずがない。

じゃあなんで?

あ。

そっか。
屋上から見えた黒いコートの少年は・・・今目の前にいる少年自身だ。
バカだ私。
感動に打ちひしがれてる場合じゃない。

さぁどうしようか。
まだこの『力』の本当を見たことがない。
今後の実験がてら、彼で試してみようかしら。
警備員の人たちはとっても弱くて、ゲームにならなかった。

正直、飽きてきたところだった。

彼はどうやって私に懇願してくるのだろう?
恍惚とした顔を浮かべ、私は彼へ近づく。

「楽しくなりそう・・・アナタ、ハ、私を満たしてくれる?」



私はさらに彼へ近づく。

黒いコートにクセっ毛のある髪、メガネを掛けていていかにも貧弱そうな体。
あぁ。
彼が泣き叫ぶ姿が見てみたい。
私に助けを求め、叫び、狂う姿を見てみたい。


漆黒のグローブに力をこめる。
あとは言葉を発するだけ。
私が口をあけると同時に彼も口をあけた。
「あ。待って。ボクは別にキミと戦いに来たわけじゃなくて・・・えー・・・」
私はあっけにとられた。
彼の緊張感のなさに呆れた。
今私はあなたでゲームをしようとしているのにも関わらず・・・。

「やっぱり・・・戦わなくちゃいけない?」

この人・・・前から分かってたけど相当なバカだわ。
そんなの・・・答えなんて分かりきったことなのに。


私はキッと彼を睨んだ。


「いや。こんな楽しいゲーム、私は降りたくない」

一瞬、集中下駄箱が静寂に包まれる。
彼はハァ、と言うため息をつく。
そして、その瞬間この場の空気が変わった。


「・・・人殺しがゲーム・・・ね。」


「先生には確保を頼まれたけど、そんな生ぬるいことで終われない・・・かな」



そして、右手をポケットから出し中空へ晒す。
それは私の同意の意志を示すもので。

彼にもその意思は読めたみたい。

―磨かれたノルタイル廊下が二人の姿を映し出す。

―それはまさに「鏡」のような床

―わずかな光も反射して、両者の顔を照らし出す。

―1人はセミロングの髪を揺らしたセーラー服の少女。
―もう1人はクセっ毛にメガネを掛けた黒いジャンパーの少年。

彼らのとった距離は約6m。
周りは誰もいない。

ただ、存在(あ)るのは。



「アナタは、私を満たしてくれる?」



2月最後の夜、無秩序な破壊衝動・・・『狂気』を持つ異端者が野田康治の前に対峙した。



「・・・ボクは、キミを止める」

そうして、彼は黒き剣を手に執った。

第3話『反作用』END