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『「う、嘘だろ・・・。」
己の胸についているやけに大きな二つの塊が俺の呼吸とともに静かに上下している。
「まさか!」
とっさに自分の股間へ手を滑らせる。のっぺりした手触りに見慣れたモノの感触はない。
そばの鏡に目を走らせる。
「これが・・・俺・・・?」』
「うーむ、やっぱりTSモノのSSはいいねぇ。ラノベとかよりも断然こっちだなw。」
そういって俺はパソコンの画面を見つめながらひとりごちる。
「あーぁ、どこかで「○○」みたいなかわいい女の子に変身できるようなアイテムとかないかなぁ。」
もちろんそんなものが存在しないなんてことは先刻承知、まだ俺は現実と幻想の境界くらいはきちんとわきまえている。
まぁときどき踏み越えてしまいそうにはなるけど。
「さて、今日はもう寝るかな。」
と、俺は今まで読んでいたネット上にアップされていたテキストをメールで携帯に送る。
明日の昼休みにでも読もうという魂胆だ。
昼休みの教室。クラスメートたちがわいわいがやがやと騒いでいる。
「あっちゃん、何午前中の授業全部で寝てるのよ。夕べ何時に寝たの?」
「うるせぇなぁ。美香に言われたくはねぇよ。お前も朝のホームルームで爆睡してたじゃねぇか。」
「はいはい二人ともストップ。俺にはどんぐりの背比べにしかみえないよ。」
「背比べって何よ!午前の授業全部を睡眠学習してるような奴と比べないでよ!私は」
「はいストップ。落ち着いて食べようよ。」
この女は飯原美香。かなり気が強くてことあるごとに俺と口げんかしている。
男のほうは篠原光也。結構無口な性格でいつも俺と美香の仲裁役である。そんな役どころからか俺と美香からは『センセイ』って呼ばれている。
2人とも俺とは幼稚園からの腐れ縁で今でもよくつるんでいる。
ちなみに俺は高橋淳司。自分で言うのもなんだがごく普通の男子高校生である。まぁ、強いて普通じゃないところをあげるとするならばTSモノの小説が好きだってことくらいかな。
飯を食っている間はさすがに美香も静かである。この間に夕べの小説を少しでも読み進めようと俺は携帯を開く。
「何食べながら携帯いじってるのよ。」
といいつつ携帯の画面をヒョイと覗き込む。
「あー!なんかエロいの読んでるー!!!」
「ちょ、勝手に覗き込むなよ!」
と言いつつあわてて携帯を閉じる。
「いーけないんだーいけないんだー せーんせいに・・・」
お前はどっかの小学生か。
「まぁ、あれだ。真昼間からいかがわしいものを読むってのはあんまり感心できないぞ。」
「センセイまでそんなこというか。別にエロいものじゃねぇよ。」
「へぇぇー、そんなこと言うんだー。じゃあお姉ちゃんにみせてごらーん?」
「ちょ、うわ やめろtt・・・」
そんなこんなで今日も学校は平和であった。
そしてその夜のこと、俺は今日もTS関連の小説を読んでいた。
『「これさ、実は皮なんだよね。
こうして胸の前で爪を立てると――
ほらね。中身は男だろ?」 』
「こんな皮があったら絶対にほしいもんだなぁ。」
ため息をつきながらぼやく俺。
独り言を言いながら寝間着のシャツをまくりあげ
「それを着てさ、胸の真ん中あたりで爪を立ててこーしt・・・ってええええぇぇぇぇ―――っ!!!」
目の前の現実が信じられなかった。まさに目をうたがうとはこのことだろうと俺は思ったね。
だって信じられるか?まさにパソコンの画面に映っている小説の登場人物のごとく俺の胸の前がパックリ割れていたのだから。
あわてて裂け目を閉じる俺。するとその裂け目は何事もなかったように閉じてしまい、元に戻ってしまった。
すぐに閉じてしまったが今度はシャツを脱いだ上でもう一回爪を立ててみる。そもそも人間、特に男なんて生き物の目の前に「好奇心」という餌がぶらついてたとしたら、それをみすみす見過ごすか?否、俺なら絶対に見過ごさずに喰らいつくね。
何度か開けたり閉じたりを繰り返すうち、だんだんと開ける大きさが大きくなっていく。俺の目は裂け目の中の暗闇に吸い込まれていた。
幅にして20cmくらい開いたところだろうか。突然視界が真っ暗になった。
完全に真っ暗というのではなく一部分に穴が開いているようで、そこから部屋の景色が見えていた。
顔に手をやってみる。ごわごわしたものが自分の皮膚を覆っているようである。しかも頭だけではなく手もそれで覆われているらしい。
どうも体全体がなにかで宇宙服のような感じにすっぽりと覆われてしまっているのだと理解するのにそれほど時間はかからなかった。
どう好意的に考えても異常な状況なのだがそのときの俺の頭は正常な判断能力を失っていたようである。
まるで脱皮する動物のように、腕を、頭を動かして胸の前の裂け目から外に出ようともがく。
程なくして上半身が外に出る。脱いだ皮のようなものを見てみるとまるでどこぞの怪盗が脱ぎ捨てた変装用マスクを全身バージョンにしたようなものの上半身が力なく横たわっていた。
「ふぅ―、暑いなこれは。これはいったい・・・。あれ、なんだか声が・・・。」
はて、何故か声がおかしい。というかこれはもしかしてアレのお約束のせりふじゃないか。
脳がアドレナリンを大量放出しているのを感じる。
ふっと胸元を見る。男とは思えないほどに膨らんだ二つの塊が鎮座していた。
右手で包み込むように片方の固まりを触ってみる。大きすぎず、小さすぎず、そんな手で覆うのにちょうどいいくらいの大きさでそれはそこにあった。
「ゴクリ・・・」
俺が生唾を飲み込む音だけが部屋に響く。心臓の音が階下にいる両親に聞こえるんじゃないかってくらいに激しく波打っている。
ゆっくりと、震えながら、俺はまだ皮に包まれている股間に手を滑り込ませる。
果たして、其処には何もなかった。何もないというのには語弊があるかもしれない。正しくは其処にあるべき男性のシンボルがなかったというべきだろう。
俺は今や、完全な女になっていたのである。
つづく?
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:元レス|[[http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220262396/43-44]]
:最終レス投稿日時|2008/09/15 04:37:39