四人の男がアパートに上がってきた。田中、山田、村山、そしてここの住人である中村だ。
彼らは会社の同僚で、皆独り者である。
中村の部屋に入ると四人は準備を始めた。
買ってきた野菜を切る。コンロを取り出す。鍋にパックの煮汁をあけ火をつける。
ひととおりのセッティングが終わると、中村以外の三人はコタツに着いた。

「全員ポン酢でいいな?」
中村はキッチンに立つと、冷蔵庫からふたつのビンを取り出した。
ひとつはさきほどの発言どおりポン酢。そしてもうひとつは、中国に行ったときに買ってきた秘薬だ。

「中村! 電話鳴ってるぞ!」
誰だ、邪魔しやがって。と思ったが、すぐに部屋に戻る。
「もしもし? え? いえ、違いますが……。」
間違い電話だったようだ。

さて、気を取り直して液を小鉢に注ぐ。まずはポン酢を全員に。そして秘薬を自分以外の分に。
「ふふふ、これで俺も勝ち組だな。」
不敵な笑みを浮かべる中村。
なんでもこの薬には古い言い伝えがある。
昔々呪いによって男子しか生まれなくなった村があった。その村が存亡をかけて生み出した女体化の秘薬がこれだというのだ。

湯気が一気に部屋の中に広がる。
「さて、じゃあ鍋パーティを始めますか。」
「パーティって柄じゃないだろ。」
「はい、皆さんジョッキを持ちましてー。カンパーイ!」
四人はアツアツの鍋をつつきはじめた。

「おい、中村、大丈夫か?」
早くも酔いが回ったのだろうか。少しして中村は強烈なめまいに襲われた。
「ん。ちょっと横になるわ。」
三人の変化を目の当たりにできないのは残念だが、目が覚めたら三人の美女が……と思うと楽しみでもあった。

「ん……。」
「気がついたか。」
薄目を開けると三人の男たち。まだ効いてなかったのか。体を起こそうとしたそのとき。
「あれ?」
目の前には二つの山。声も、出してみて分かったが高い気がする。
ぺたぺたと体を触ってみる。
「うそ……なんで俺が……。」
中村は気付かなかった。電話から戻ったときビンを取り違えていたことに。そして――おそらく製造者も――知らなかった。ポン酢に秘薬を打ち消す効果があったなんて。
美女になったのは中村のほうだった。
「その口ぶりは私達の身に起こるはずのことが自分に起こった感じだな。」
「しまっ……いや、そ、そんな……!」
「なるほど、これはお仕置きが必要だな。」
「えっ……ちょっと……いやあああああ!」

冬の夜は長い。

元レス
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220262396/144
最終レス投稿日時
2008/12/05 00:14:51

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最終更新:2008年12月05日 01:15