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第5話『俺ってガチホモ!?』


「はぁ……。」
学校からの帰り道、唯人は大きな溜息をひとつ吐き出した。
「今日もダメだったか。」
思いつきで買ってはみたものの、よく考えると、何でもないのにいきなりプレゼントを渡してくる男なんてどうなんだろう。
唯人は例のブレスレットを雅に渡すきっかけが掴めずにいた。
とぼとぼと歩いていつの間にか家の前。ドアを開けるといつものようにジュニアが尻尾を振って出迎えてくれた。
「ただいま、ジュニア。」
「わんっ!」
続いて、これもいつものことだが、ジュニアの様子に気付いてつかさも玄関に出てくる。
「おかえり。」
「姉ちゃんただいま。」
「ちょっと買い物行って欲しいんだけど、大丈夫? ユイちゃん。」
「……うん。」
ショッピングモールのハイパーマンショーに突如現れた魔法少女は、一躍地域の有名人となっていった。
そこで、何を思ったかつかさは唯人にある脅しをかけてきたのだ。
それはお願いを聞かないと唯人が例の魔法少女であるということをバラすというもの。
人のいないところで変身しろと言ったのはつかさ自身なんだから、そこだけ考えれば本当にバラすとは思えない。
しかし人にバレてはいけない理由があるのかどうかも分からないし、なにより、この姉の性格をよく知る唯人には彼女ならやりかねないと思えてしまう。
そういうわけでつかさは好きなときに弟を女にする権利を得た。

悲しいかなすっかり慣れた手つきで着替えを済ませ、財布を預かって再び家を出た。
ちなみにステッキはいつも持っていろと言われているので大きな買い物バッグの中にある。
夕日を背景に自転車を飛ばす唯人。
運転中、いろいろと考えをめぐらせるのが癖だ。
「そういえばあいつは一体なんだったんだろう。」
仮面の男のことである。山で会って以来一度も姿を見たことがない。
結局敵だったのだろうか。だとしたらなぜあれから積極的に襲ってこないのか。
商店街まであと少しというところで足と思考が止まった。
空を見ると大きな紫の雲のようでいてもうちょっと透き通った何かが浮遊している。魔物だ。
別に何を襲うわけでもなさそうなので放っておいてもいいのかもしれないが、気になるので追いかけることにした。

立ちはだかったのは険しい崖。
実はこの山は商店街をはさんでまったく表情が変わる。
向こう側はいつかジュニアに導かれて行ったなだらかな遊歩道だが、こちら側はこのように人はまず立ち入ることができない。
この上に先ほどの魔物は姿を消した。
普通の人間ならここであきらめるのだが、そこは魔法少女、ステッキを取り出すと地のパワーを自分に一振り。
「よっ……ほっ……はっ……。」
超人的な跳躍で崖をぴょんぴょんと上がっていく。地のパワーは力の象徴、肉体を強化することにも使えるのだ。
高さとしてはかなり登ったと思えるところで、踊り場のようになっているところを発見した。
一際強く岩肌を蹴って、空中でくるっと前回り。見事にやわらかい地面に着地した。
「ん? やわらかい?」
そこは魔物の巣窟だった。まさに四面楚歌。いや、唯人が着地のときに踏みつけた魔物が一匹、さらに飛んでいるのもいるので六面かもしれない。
「や、ちょっと待て、ここは穏便に……な?」
などと弁明しても通じるはずもなく、魔物達は一斉に襲い掛かってきた。
唯人もそれに応じて慌てて魔力を解放。すさまじい爆発が起きる。
畳み掛けるようにあらゆる能力をむやみやたらに放つ唯人。その度に弱点を突かれた魔物が消滅していく。
「はぁ……はぁ……。」
さすがに無駄撃ちしすぎたのか肩で息をするようになってきたが、残る魔物もわずかとなってきた。
「よし!」
火の力を逆に利用し、熱を奪ってスライム状の魔物を凍りつかせる。
あと一匹。機械仕掛けの魔物だけが残った。しかしこれがかなり頑丈で何をしてもびくともしない。
「ひょっとして電気でも流すのか? でもやり方が……。」
考えている間にも襲ってくる。避けようと思ったところで膝をついてしまった。
まさかこんなに消耗していたとは。逃げられない。強烈な一撃がやってくる!
その時、唯人の背後、崖の上の方から人影が降りてきた。
それから先は一瞬の出来事。まず唯人のいる地面がぐらつき始めた。かと思うと影にぐいっと引き寄せられ、岩場ごと魔物が落ちていく。
影は仮面の男だった。大剣を抜いている。信じられないことだが、これで崖の先端を切り落としたのだ。
「君には生きていてもらわないといけない。」
だが男の言葉は唯人の耳には入らなかった。顔が近い。それに、力が入らないので唯人は男に寄りかかる格好になってしまっている。
心臓の鼓動が、聞こえているんじゃないかと心配になるくらいの大音量に思える。早く離れてくれないものか。
しばらくして、男は一言だけ告げた。
「もうすぐだ。」
「え?」
それっきり、男はまた行ってしまった。

「もうすぐだ。」
「え?」
順平の言葉にさほど考えもせず聞き返す唯人。
「もうすぐ雅の誕生日だって言ってるんだよ。」
「ああ、ごめん。」
「本当お前ここ何日かぼーっとしてるよな。」
「うん、ごめん。」
唯人の一番の関心は、もはや仮面の男に移ってしまった。
何者なのか。あの剣にはどんな力が秘められているのか。どういうつもりで自分に接してきたのか。
このごろ唯人は一人の時に意味もなく変身してみることが多くなっていた。
こんな調子なので、つかさもつい気になってしょうがない。
「最近どうしたの?」
「別になんともないよ。」
これだけはバレたくないので隠す。ところがさすがは姉。
「あの人のことが気になって夜も眠れない、とか?」
「なっ!」
別につかさは具体的に知っているわけではない。だが「あの人」などと言われると、心当たりがあればつい反応してしまうのが人間。
「やっぱり恋の悩みなのね。で、どんな子?」
男だとは思われていないようだが、ショックを受けたのは「恋」という単語が出てきたことだった。
まさか……俺が男に恋している? つかさの言葉で唯人は余計に眠れぬ日々を過ごすこととなった。

人気のない公園に制服の男女が入ってくるのが見える。
雅を呼び出したとき、唯人は一旦は決心を固めていた。
「海瀬……。」
でも、こんな中途半端な気持ちで想いを告げることなんてできるのだろうか。
「誕生日おめでとう。」
結局唯人は逃げを打ってプレゼントを渡すだけに留まった。
「ありがとう。……わあ、かわいい!」
ほんのり赤く染まった笑顔に胸を打たれる。
やっぱり、雅のことも好きだ。
だからこそ自分が、自分と雅を裏切ることが許せない。
「じゃあ、また。」
男の涙なんて見せるものじゃない。
公園を出るとき、唯人は一度も振り返らなかった。
今まで生きてきた中で一番重い荷物が唯人の心にのしかかっていた。

元レス
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220262396/231-235
最終レス投稿日時
2009/01/17 18:26:00