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第7話『対面』


どんなに嫌がっても明日は必ずやって来る。それならば同じその日をどのように迎えるのか。
唯人は「その日」を、やる気に満ち溢れた心で迎えた。
「椎名君!」
教室に入ると真っ先に雅が駆け寄ってきた。
「おはよう。心配かけてごめん。」
まだ不安げな表情を浮かべている雅に、そう笑って返す唯人。
遅れて順平も唯人の近くへ歩いてくる。
言葉は交わさなかったがハンドシグナルで大丈夫だと伝えた。
ちょうどその時、真後ろの扉が開いた。
振り返ると、立っていたのは神野。
唯人は眉を寄せた。彼は隣のクラスのはずだ。となれば自分に用があるとしか思えない。なにしろ昨日の今日だから。
果たしてそれは正解だった。
「今夜九時、商店街裏の山。」
たったそれだけをつぶやくように告げて、神野は自分の教室に戻っていった。

授業が始まると、唯人はここ数日の遅れを取り戻すかのように熱心に聞き入った。
それは周りから見ると恐ろしさを感じるほどのものだったという。
チャイムが鳴ってからも、分からない部分を真っ先に聞きに行き、教師によって感心されたり不審がられたりだった。
「どうしたんだお前、熱でもあるのか?」
いつもなら噛み付く言葉にも、爽やかに白い歯を見せて返す。
「自分のやるべきことが分かっただけだよ。」

充実した時間はあっという間に過ぎてゆく。
学校が終わって家路につくと、唯人はいつもと違い真っ先に宿題に取り組んだ。
それが済むと今度はしばらくサボっていた家の掃除を始めた。掃除機を掛け雑巾を掛け、徐々に綺麗になっていく家の中が気持ちいい。
ちょうど帰ってきたつかさの夕飯作りを手伝い、食べ終わる頃には出発にぴったりの時間になっていた。
玄関でジュニアを抱きかかえるつかさは、最後に唯人に念を押した。
「本当に行くの? 罠かもしれないよ?」
「大丈夫。それにどうせいつかは戦わなきゃならないんだ。」
そして唯人は、ポケットからステッキを取り出し祈りをささげた。
身体中の触覚が失せ、重力さえも感じなくなる不思議な感覚。徐々に感覚が戻ってくると唯人はピンクの衣装に身を包んだ少女となっていた。
「じゃあ、行ってくる。」

どこも閉店していて切れかけの街灯だけが点いている商店街。
その不気味さを振り切るように唯人はアーケードの中を疾走してゆく。
最後の看板をくぐるとそこは闇の世界。一歩一歩踏みしめるにつれて、唯人の姿が闇に溶けてゆく。
足元に注意しながら山を上り、広い平地になっているところに、仮面の男はいた。
いたのだが、どちらが神野なのか分からない。というのも、その場所で二人の仮面の男が戦っていたのだ。
二人は全く唯人に気付いていない。二本の剣が時々月の光を反射して輝きながら激しい金属音を立てる。
唯人は今ようやく分かった。自分を助けてくれた男は神野とは別人だったのだ。
しかし一体どちらを応援していいのか分からない。
唯人が戸惑っているうち、その時はやってきた。
片方の男の剣が緩んだ。その隙を狙って攻勢に転じようとした男は、逆に足を払われて体勢を崩した。
その顔を鋭く剣が襲う。仮面が宙を舞った。月が映し出した神野の顔。
次の瞬間、神野でないほうの男が神野の耳の辺りを正確に突いた。そして、神野は倒れた。

神野を倒した男は自ら仮面を脱いだ。現れた顔は知らないはずなのに、どこかで見たことがあるような気がする。
「彼は操られていただけだ。」
顔をぼーっと眺めていた唯人は、その声にビクッとする。男は神野の耳から取り出した宝石を見せた。
それから、こう続けた。
「私の祖先は昔魔族からこの剣を奪い、代々守り続けてきた。
 この剣には魔物を惹きつける力があると言っただろう。どうやら使い方によっては魔物を操ることもできるらしい。
 彼が持っている剣はレプリカで完全な力が出せなかったんだ。」
「それで取り戻しに来たって訳か。」
神野のほうを見やる唯人。倒れているその姿に近づこうとした瞬間のことだった。
「危ない!」
声が聞こえたのとまばゆいばかりの光球を感じたのはほぼ同時。
直後、男の肩が唯人を弾き飛ばした。
唯人は男に光球が直撃するのを、ただ見ていることしかできなかった。
そのまま弾き飛ばされる男。
彼が倒れたとき、破れた袖から見えたのは、あの日唯人が雅に渡したブレスレットだった。

元レス
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220262396/247-249
最終レス投稿日時
2009/02/05 14:21:36