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それは2月に入ってまもなくのこと。
椎名姉妹は夕食を食べ終わってコタツでテレビを見ていた。
「そういえばさ、あんたバレンタインどうするの?」
姉のつかさが尋ねる。
「ん、姉ちゃん今年は何かくれるの?」
みかんを片手に妹の唯が答えた。
「あのねえ……。バレンタインよバレンタイン。何の日だか知ってる?」
「女の子が好きな男にチョコあげる日。」
正しくは「今の日本では」が付く。
「そうそう。で、あんたはどっち?」
「どっちって……あ――っ!」
まだ女の子としての自覚が足りない唯だった。

「という訳で朋、手伝って。」
女になってからの唯は一気に女友達が増えた。その中でも特に仲良くなったのが朋である。
「いいねえ、ラブラブで。」
「かっ、からかうなよ!」
顔を真っ赤にして反応する唯。それがイタズラ心をくすぐるのだということを本人は知らない。
「じゃあ、十三日に私ん家ね。」
「さんきゅ。」

お菓子作り当日。買い物を終えた二人は朋の家に向かった。
「ただいま。」
「おじゃましまーす。」
朋に続いて唯も玄関に入ってゆく。
スカートなので足を後ろに跳ね上げて靴を脱ぐ。つかさに教わったやり方だ。
中に上がると朋の母親が出迎えてくれた。
「あら、お友達? いらっしゃい。」
「お母さん、キッチン使っていい?」
「ああ、そうね。……どうせ買い物してくるんだったら頼めばよかったわ。」
「今から行くの?」
「そうよ。すみませんね、バタバタして。」
最後の一言を唯に向けて放ち、朋の母親は出て行ってしまった。
「さてと、じゃあやろっか、愛しの雅ちゃんのために。」
不意打ちに雅の名前が出たのが気恥ずかしくて、つい朋をにらんでしまう唯。
朋はそんな初々しい唯を眺めるのが大好きなのだ。だからしょっちゅうからかってしまう。

その後、二人はキッチンに入って準備を始めた。
「料理はよくやるの?」
「うん、姉ちゃんと二人だから。でもお菓子は作ったことないな。」
「大丈夫、混ぜながら順番に入れてくだけだから。」
話している間にも準備は整った。今回二人が作ることにしたのはクッキーだ。
唯は最初のバターをボウルに入れる。
ヘラを取り出そうとした朋を唯は制止した。よく見るとバターは勝手にやわらかくなっていっている。
「魔法?」
「ボウルの中の空気を回しているんだよ。」
「……いつもこんなことやってるの?」
「だって体動かすより楽だもん。」
「……太るよ。」
「大丈夫だよ、毎朝トレーニングしてるから。」
呆れたり羨ましかったり、複雑な思いを抱く朋。
「よし、全部混ぜ終わった。」
「あとは小さくこねてオーブンで焼くだけだよ。」
「魔法で焼いちゃダメ?」
「うちを火事にする気か!」

クッキーを焼いている間、二人はジュースを飲みながら話していた。
「で、雅ちゃんとはどこまでいったの?」
危うく噴き出すところだった。
「どどどどどどどどどこまでってキスだけだよ!」
「えー、つまんない。」
「つまんないってなあ……俺、男だったんだぞ?」
「知ってるよ。」
「だから、その、まだ……。」
恥じらう唯が可愛すぎて、朋は笑ってしまった。
「ま、あんたたちなら大丈夫でしょ。ゆっくり大人の階段上っていきなさい。」
そう言って唯の肩を叩く朋。
なんだかんだ言って良い友達だな、と唯は思った。

翌日、教室ではさまざまな思惑が渦巻いていた。
一触即発、そんな空気をよそに、登校してきたばかりの唯は雅に話しかけた。
「雅、これ……。」
「え? あ、ありがとう。」
なんだか様子がおかしい雅。
「実はね、くれるとは思ってなかったから、こっちでも用意してたの。」
換わりに赤い紙で包装された箱を受け取る。
なんだ、そういうことだったのか。唯は自然とにやける。それにつられて雅にも笑顔が浮かぶ。誰にも入れない二人の世界がつくられていた。

少し遅れて、順平が教室に入ってきた。順平と雅の席は前後同士で、唯は今度は席についた順平に話しかけた。
「よう、お前にもいろいろ世話になったから、これ。」
「なんだ?」
「バレンタインの。」
「お前なあ……彼氏の目の前で他の男に渡すなよ。」
わざと強調された「彼氏」の言葉に唯が真っ赤になるのは言うまでもなかった。

元レス
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220262396/265-268
最終レス投稿日時
2009/02/13 23:33:51