※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

ジョゼフ・コンラッド
(Joseph Conrad)
(1857~1924)

略歴

 ポーランド出身で船乗りを経て作家に転身し英国に帰化した、異色の経歴の作家。幼い頃に父がポーランドの独立運動に絡んで、シベリア送りにされ早くに両親を失くす。文学を愛好していた父の本を、幼い頃から読みふけっていたという。16歳の時、船乗りとなる。船乗り時代にはかなり危ない橋を渡ったらしく、その経験は後の作品に活かされている(いくつかのエピソードに関しては創作との説もある)。努力して英語を覚え、批評家・編集者であるフォード(Ford Madox Ford,1873~1939)の助力で処女作を出版したのは、40歳の時であった。彼はロシア語、ポーランド語、フランス語、そして英語を話せたが、それは主に必要に迫られて現場で学んだものであり、そのために言い回しなどが独特の雰囲気をかもし出している(それが最後に習得した英語に凝縮されたとも言えよう)。1924年、心臓発作により没する。

作品

 処女作は『 オルメイヤーの阿呆宮(Almayer's Folly,1895)。これは船員時代にマライ群島で出会った実在の人物をモデルとしている。密林の中で破滅する白人男の姿が描かれている。続編として主人公オルメイヤーの若き日の姿を描いた『 文化果つるところ(A Outcast of the Islands,1896)がある。
 『 ナルシサス号の黒人(The Nigger of the Narcissus,1897)は、海洋冒険小説の傑作とされる。一人の黒人船員の存在によって船内に不和が起こり、さらには嵐にも遭遇してしまう物語で、迫力のある自然描写と共に船員たちの複雑な心理が巧みに描かれている。
 『 文化の前哨線(An Outpost of Progress,1898)は、次の『闇の奥』の前奏曲ともいえる短編。象牙収集の代理人として派遣されたアメリカ人が、本国の法や倫理と隔絶されることで、次第に堕落していく姿を描いた。
 『 闇の奥(Heart of Darkness,1899)はコンラッドを代表する作品の一つ。これは船乗り時代の経験を基に書かれた、一種の秘境探検物語である。しかしながら、実際にはそういった秘境としての奥地ではなく、その極限状態に置かれた人物の狂気を描いている。それ故にタイトルの闇の奥とは、密林の中心という意味の裏に、心(ハート)の闇という意味をも表している。
 『 ロード・ジム(Lord Jim,1900)もまた人間の内面に深く切り込んだ作品である。主人公のジムは船乗り時代に暴風雨にあい、自分は逃げて九死に一生を得たが、乗客を見捨てたために免許を剥奪されてしまう。彼は罪を背負い、マレー半島に隠れ住み現地民から次第に尊敬を勝ち得ていく。しかし再び危機が訪れた時、今度は決然として自らを犠牲に差し出すのである。
 『 青春(Youth,1902)は、水夫マーロウが若き日に初めての航海に乗り出した時のことを語る短編。
 『 台風(Typhoon,1903)では、中国人のクーリーを乗せた小汽船が、南シナ海で台風に襲われる。船長はこの自然の猛威に敢然と立ち向かう。
 『 ノストロモ(Nostromo,1904)では南米北部の架空の国コスタグアナが舞台。その国の東部で反乱が起こり、西部にある主要都市スラコも危機に瀕する。スラコの豊富な埋蔵量を誇る銀鉱の持ち主グールドは、銀塊を米国に運び去ろうと画策する。そして英雄ノストロモと記者ドクーは無事銀塊を持ち出すことに成功するのだが、その先には悲劇が待ち受けていた。
 『 西欧人の眼に(Under Western Eyes,1911)は帝政ロシア時代末期、その中で革命の渦中に巻き込まれることになった一人の学生の物語であり、複雑な構成が目を引く。
 『 運命(Chance,1913)は偶然に左右される人間の営みを描いたもので、この作品は経済的には成功したが、これ以降次第に創作力は衰えを見せ始めた。
 遺作は『 サスペンス(Suspense,1925)というナポレオン時代を描いた歴史小説であったが、未完に終わった。
 このようにコンラッドは近代文学への過渡期に現れた作家であり、活力を失い始めていた英国文学に、コンラッドやジェイムズなどの海外からの新しい血が入ることによって、新時代へと歩み始めることになる。