チャールズ・ブロックデン・ブラウン
(Charles Brockden Brown)
(1771~1810)

略歴

 アメリカ最初の職業作家と称されるブラウンは、フィラデルフィア出身で、大学では法律を学んだが、作家への道を選んだ。この時代は連邦主義とジェファソン流の民主主義の確執の時代であった。彼は当時の政治情勢に興味を抱くと共に、フランス革命時のジャコバン党のような過激思想に興味をもった。しかし、その後は過激思想に反発し、保守的な立場に立った。その作品は英国のゴシック小説の影響を強く受けているが、その人間心理の探求の精神は、後世のポオホーソーンに受け継がれていくことになる。

作品

 ブラウンの代表作は『ウィーランド(Wieland,1798)である。ある女性の書簡体小説で、物語は狂信的な父親の奇怪な死、そして旧来の頑なな信仰と当時の急進的な思想とのせめぎあいが描かれている。語り手である女性には次から次へと恐ろしい体験が訪れ、それは彼女の好奇心を動機として進行していく。物語はかなり唐突な展開を見せ、例えば腹話術によって彼女に接近しようとするカーウィンという謎の人物が登場したり、また語り手の兄が遺伝による発狂から一家を惨殺するなど、物語の整合性には難がある。(なお、カーウィンに関しては「カーウィンの回想」なる断片が残されており、彼が過激派結社の一員であった、などの『ウィーランド』を補完するような記述が見られる。)
 『エドガー・ハントリー(Edger Huntly,1799)は推理小説仕立ての物語である。友人の不審な死に疑問をもった主人公は、殺害犯と思しき男を尾行して暗黒の荒野をさ迷い歩き、その道々では残虐なインディアンや野獣が現れる。しかしながら物語りは奇妙に夢と現実が混乱し、交差しあって超自然的な極限状態が描かれている。
 他に田園と都市との対比を黄熱病の蔓延を通して描いた『アーサー・マーヴィン(Arthur Mervyn,1799-1800)という作品がある。



最終更新:2008年10月16日 18:33