ワシントン・アーヴィング
(Wahington Irving)
(1783年~1859年)

略歴

 ニューヨークに生まれた。11人兄弟の末っ子で父は富裕な商人だった。早い段階で学校教育を捨て、法律事務所に入った。しかし健康を害し、1804年から病気療養をかねて欧州諸国を歴訪、1806年に帰国し弁護士となるが、その後作家となる。その間には婚約者の死も経験し、生涯独身を通した。その後はしばらく創作をから手を退いていたが、事業の失敗から生活のために再び筆を取った。1842年にはスペイン公使にもなっている。

作品

 初期の作品にはスウィフト流にジェファソンの民主党政府を風刺した『ニューヨーク史(A History of New York,1809)がある。これはニッカポッカー氏(オランダからの移民の典型)なる架空の人物が語るもので、アメリカ人による初めての風刺文学とされる。
 彼の代表作としてよく知られているのは「リップ・ヴァン・ウィンクル」(Rip Van Winkle)や「スリーピー・ホロウの伝説」(The Legend of Sleepy Hollow)などの短編であるが、これが収録されているのが『スケッチ・ブック(The Sketch Book,1819-1820)である。作家として再び筆を取った彼を、スコットが大いに励ましたという。これは全部で32編の短編とエッセイが収められている。これらの作品には現在のアメリカに満足感を抱けず、古き良き時代を追い求めるノスタルジックな心情がある。アーヴィングは今のアメリカ人の性急な成功への野心を皮肉っている。それ故に、彼は同時代の英国の批評家から「アメリカ生まれの最良のイギリス作家」と評されている。
 他に彼は『ブレースブリッジ・ホール(Bracebridge Hall; or The Humonist,1822)という主にヨーロッパの伝説を基にした『スケッチ・ブック』の続編ともいうべき物語集。全部で49の短編と随筆が収録されている。『一旅行者の物語(Tales of a Traveller,1824)は同様にドイツやイタリアを舞台としたもの。コロンブスの生涯を描いた『コロンブス伝(A History of the Life and Voyages of Christopher Columbus,1828)。スペインの歴史に魅せられ、歴史ロマンス『グラナダ陥落記(A Chronicle of the Coquest of Granada,1829)を著している。またスペイン版『スケッチ・ブック』とも言うべき『アルハンブラ物語(Alhambra,1832)も有名である。他に毛皮商人として成功を収めたジョン・ジェイコブ・ウェブスターを題材とした『アストリア(Astoria,1836)などがある。





最終更新:2009年03月16日 23:21