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D・H・ロレンス
(David Herbert Lawrence)
(1885~1930)

略歴

 イギリスのノッテンガムシャー出身の小説家、詩人。父は炭鉱夫、母は教師であった。幼い頃から病弱で高校卒業後は事務員になるも肺炎のために長続きしなかった。その後、代用教員を経て、ノッティンガム大学を奨学金を得て卒業して資格を取り小学校の教員となる。作品が認められ始めた頃に母が没する。その死の直前に婚約したが、恩師の妻フリーダと恋に落ちてドイツへと駆け落ちをする。二人は後に結婚し、各地を転々としながら執筆を続ける。アメリカにも2年間住み、その後メキシコにも赴くがそこでマラリアと結核を併発し、帰国。その後はフィレンツェに住み執筆を行うが、最期はフランスのサナトリウムで死去。

作品

 労働者階級出身のロレンスは、英文学史上それまでではきわめて稀れな存在であり、またオックスフォードやケンブリッジ卒ではないことでも少数派である。ロレンスはその過激で大胆な恋愛観と性描写で、度々発禁処分を受けた。その作品には独自のキリスト教の思想が見られる。
 『 白孔雀(The White Peacock,1911)が処女長編。レティーとジョージは恋人だったが、貧しい農夫と結婚することを拒んだレティーは裕福な男と結婚する。しかし夫は政治に熱中し、家庭を顧みない。しかしそれでもレティーはを産み育てることに安らぎを見出していく。一方もう一人の女性メグは無気力な夫に代わって家庭を切り盛りしていく。4人の男女を中心とした物語。
 『 息子と恋人(Sons and Lovers,1913)は、正確に言えば「母の恋人としての息子」を意味する。自伝的な作品で粗野な父親と知的な妻の原型は、ロレンスの両親にあると思われる。
 『 (The Rainbow,1915)は赤裸々な性表現によって発禁処分を受けた。ロレンスは性を罪悪視する西欧の伝統を、生命に対する罪悪であると主張した。頭脳(理性)が肉体(本能)を支配する西欧近代文明は、科学の機械の文明であり、人間生命は窒息寸前で喘いでいるという。そしてその生命を復活させるために神秘的な儀式こそが性なのだという。虹とは生命復活の希望の象徴である。 『 恋する女たち(Women in Love,1920)は『虹』の続編として書かれた作品である。2人の姉妹にそれぞれ恋人を配して、2組の男女の恋愛の推移を描いている。1組は紆余曲折を経て性と生命の哲学の実践に至るが、もう1組は失敗に終わり破滅する。この段階ではすでにロレンスの思想は、ただ一個人の救済に留まらず、文明の救済の問題として提示されている。
 『 アーロンの杖(Aaeon's Rod,1922)は12年間ごく普通に妻や子と暮らしてきた男が、ある時突然自我に目覚め家を出て行くという物語。
 『 鳥・獣・花(Birds, Beasts, and Flowers,1923)は自由詩形による48編の詩。旅をしながらその土地の風土や、植物、動物に接することで、神秘主義的な目覚めをする、生命感に満ちた作品。
 『 翼ある蛇(The Plumed Serpent,1926)はメキシコを舞台とした物語。文明社会に育った女性ケイトは最初結婚し2児を得たが離婚する。その後再婚した夫とも死に別れると、従兄と共にメキシコの信仰に見せられ、メキシコの将軍と結ばれる。
 『 チャタレイ夫人の恋人(Lady Chatterley's Lover,1928)は代表作であり最も物議をかもした作品である。貴族であり大資本家でもあるチャタレイ卿は、第一次大戦で脊椎に損傷を受け、性的不能となった。彼の妻であるコンスタンスは若い森番と恋に落ち、性を通じて生命が救済される。夫のチャタレイ卿は、近代の機械化文明にある根本的な欠陥を象徴し、コンスタンスの性を通じての新しい生命の回復を高らかに歌い上げている。この作品もまた発禁処分になり、英国で完全版の出版が許可されたのは1960年になってからであった(日本でもその翻訳が裁判にかけられたことで有名)。
 最晩年の短篇作品『 死んだ男(The Man Who Died,1931)は短いながらも優れた作品である。そこでは特異なイエス・キリスト像が提示されており、キリスト教に地母神信仰(イシス)を加え、性を通じて生命の再生が果たされるという彼独自の思想が顕著に表れている。