J・B・プリーストリー
(John Boynton Priestley)
(1894~1984)

略歴

 英国の劇作家。ブラッドフォード郊外出身で、父は教師だった。すでに16歳頃から新聞に寄稿していたという。学校を出てから働きに出たが、作家になりたい野心は捨てがたかったようだ。第一次大戦に参加するも負傷して除隊。その後ケンブリッジで学んだ。そして念願の作家となり、ユーモア作家として批評家として認められる。さらに劇作を手がけるようになり、第二次大戦中はBBCの人気司会者にもなったが、社会主義的傾向から降板した。その後社会主義系政党の創立者となったり、核兵器廃絶運動の設立にも関わり、メリット勲章を受けた。私生活では3度の結婚をした。また文壇でも大御所として活躍した。

作品

 小説、劇作、評論、随筆など様々な分野で活躍した。
 評論の分野では『ジョージ・メレディス論(George Meredith,1926)、『英国小説(The English Novel,1927)、『英国のユーモア(English Humour,1928)などがある。
 彼の名を一躍高めたのは長編小説『友達座(The Good Companions,1929)によってである。様々な理由から偶然であった男女が、座頭に逃げられて難儀していた旅芸人一座を再建するユーモアのある物語。後に脚色され上演された。
 『エンジェル舗道(Angel Pavement,1930)は第一次大戦を背景とした不況下のロンドンの小市民たちの哀愁を描いた。
 『危険な曲り角(Dangerous Corner,1932)は戯曲第1作。ある一家の居間を舞台に、この家の主人ロバートの弟マーティンが1年前に拳銃で自殺した原因に関して、周囲の人々の罪や虚偽を暴き立てる。時の流れを二つに裂くという実験的な手法を用いた作品。
 『時とコンウェイ一家(Time and the Conways,1937)は前作と同様の手法が用いられた作品。第一幕で幸福に満ちたケイの誕生パーティーの場面、第二幕でそれから20年後の没落した一家の破産の後始末の集まりを、第三幕では再び誕生パーティーの場面に戻る。
 『夜の来訪者(An Inspector Calls,1945)は最も有名な作品。とある実業家の娘の婚約の祝賀の夜に、警部を名乗る男が訪れ、ある貧しい女の自殺に関して、そこに集まった人々の過去の偽善を明らかにしていく。プリーストリーの作品(特に時間物とされるもの)には、J・W・ダンの「時間理論」の影響が見られ、また政治的なメッセ-ジも込められている。 
 彼には時間の問題を論じた『人間と時間(Man and Time,1964)という著作もある。また英国中を旅した際の記録『イングランド紀行(English Journey,1934)も知られている。





最終更新:2009年05月30日 11:47