アラン・シリトー
(Alan Sillitoe)
(1928~ )

略歴

 ノッティンガム出身。なめし皮職人の子として生まれる。14歳の時には学校を出て、自転車工場で働き始める。その後19歳で空軍に入隊。無電技師としてマラヤに派遣されたが、病を得て本国へ送還、1年半に渡ってサナトリウムで療養生活を送る。この間、本人曰く「気が狂わないように、気が狂うほどのたくさんの本を読んだ」という。特に同郷で同じく労働者の子として生まれたロレンスに強い影響を受ける。同時期に活躍したことから、オズボーンなどのいわゆる怒れる若者たち(the Angry Young Men)の中に含まれることもあるが、結局のところ彼らの怒りは次第に衰えていった。それに対してシリトーだけはなおも怒り続けている。むしろそれよりも後の労働者階級出身の作家たちと多くの共通点を持つが、本人は「労働者作家」と呼ばれることを嫌い、自ら「脱階級ルンペン」を自称しているという。

作品

 処女作は『土曜の夜と日曜の朝(Saturday Night and Sunday Morning,1958)。ピカレスク風の物語で、工場で働くアーサーは犯罪者ではないが、悪者ぶっているところがあり、とにかく権力と名が付くものが嫌いで、いつも反抗の機会を窺っている。単価が下げられない程度に上手く働き、仕事の終わる土曜の夜には浴びるように酒を飲んで騒ぐ。女と遊び、喧嘩を売り、顔が青くなるまで嘘を吐き続ける。そんな下町の労働者の若者の生活を巧みに描いた。ちなみにこの作品は5回も出版社から断られたという、「労働者がこのような考え方をするはずがない」からと。それだけにこの作品が発表されると大きな反響があった。
 『長距離走者の孤独(The Loneliness of the Long Distance Runner,1959)は日本でも比較的よく知られている作品である。感化院に入れられた貧しい家の非行少年が、長距離走者として始めて大人たちの期待を担うが、最後の最後で故意にと負けることによって、日頃の鬱憤を晴らす。そこには偽善に満ちた社会や大人たちへの烈しい怒りが込められている。他に『ウィリアム・ポスターズの死(The Death of William Posters,1965)、『燃える樹(A Tree on Fire,1967)、『華麗なる門出(The Open Door,1989)がある。





最終更新:2009年06月30日 15:32