クリストファー・マーロゥ
(Christopher Marlowe)
(1564~1593)
略歴
大学才人の中で唯一本当の才能に恵まれていた人物。劇作家、詩人、翻訳家として活躍し、29年という駆け抜けるように生きたその短い生涯の中で、後世の作家に多大な影響を与えた優れた作品を世に送り出した。秘密結社に入った、あるいはスパイとして活動していた、はたまた二重スパイであったなど、怪しい噂に事欠かない人物で、その最期も酒の席での喧嘩で、眉間にナイフを突き刺される、という壮絶なものだった。その動機も、諜報機関による暗殺説、無神論者グループ内での内紛など、様々な説がある。
作品
処女作は『
タンバレイン大王』
(Tamburlaine the Great,1587)。ティムールの生涯を基にした、一介の羊飼いから大王へと上り詰めた男の壮大な物語で、当時スペインに追いつき追い越そうとしていた時代風潮に合致し、大当たりとなった。狭い劇場で大軍が激突する様を表現することは至難の業だが、そこは当時の観客の旺盛な想像力と、マーロゥの言葉の巧みさ、そして効果的にブランク・ヴァースがリズム感と躍動感を与えたのだろう。後に「マーロゥの力強き詩行
(Marlowe's mighty lines)」と称えられた所以である。
続いて『
フォースタス博士』
(Doctor Faustus,1588)は、マーロゥの最高傑作の呼び声も高い作品で、ファウスト伝説を劇化したもの。『タンバレイン大王』が権力欲であったのに対し、『フォースタス博士』は飽くことなき知識欲がテーマである。
シェイクスピアの『ヴェニスの商人』の種本の一つとされる、『
マルタ島のユダヤ人』
(The Jew of Malta,1590)は、金銭欲の権化であるユダヤ人バルバスの暴虐と破滅を描いた作品。
他に聖パルテルミーの虐殺を基にした『
パリの虐殺』
{(Massacre at Paris)、史劇『
エドワード2世』
(Edward II)もあるが、正確な創作年代は不明。またケンブリッジ在学中に書かれた未完の『
カルタゴの女王ダイドー』
(Dido,Queen of Cartago)がある。
最終更新:2009年11月07日 11:01