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カート・ヴォネガット
(Kurt Vonnegut)
(1922年~2007年)

略歴

 インディアナ州インディアナポリスのドイツ系移民の家に生まれた。1940年にコーネル大学で生化学を学びつつ、学内誌の編集長を務めた。在学中に陸軍に徴募され、カーネギー工科大学とテネシー大学に転校させられ、機械工学を学んだ。1944年、ドイツ戦線に配属されバルジの戦いで捕虜となった。ドレスデンに抑留中に連合軍の空襲に遭い、屠畜場の地下に監禁されていたために九死に一生を得た。このドイツ人(移民4世)でありながらドイツ軍に捕らえられ、一方で連合軍の一員でありながら連合軍に殺されかけるという、何重にも絡まった不条理な経験が後の彼の作品に大きな影響を与えたといわれている。戦後、除隊すると幼馴染と結婚しシカゴ大学の大学院で人類学を学んだ。1950年に当初はペーパーバックのSF作家としてとしてデビューしたが、他の仕事との兼業だった。作家としてはなかなか評価されず、1965年にはアイオワ大学の創作科の講師となった(当時の教え子にはアーヴィングもいた)。その傍ら乾坤一擲の作品を完成させると、若者たちの間で熱狂的な支持を得、現在までカルトな人気を維持している。1997年に小説家としての引退を表明し、2005年のエッセイを最後に文筆業そのものからの引退を表明した。なお、筆名は本名であるカート・ヴォネガット・ジュニアだったが、『スラップスティック』(1976年)以後ジュニアをとってカート・ヴォネガットとするようになった。

作品

 『 プレイヤー・ピアノ(Player Piano,1952)は処女長編。機械技術の極度に発達した未来社会において、人間の労働者が機械に置き換えられていく様子を描いた。
 『 タイタンの妖女(The Sirens of Titan,1959)は宇宙をさまよい続ける定めを背負った男の生涯を、SF的発想で描いた作品で、ネビュラ賞を受賞した。
 『 母なる夜(Mother Night,1961)はナチのスパイになりすましたアメリカ人の二重スパイが、戦後に戦犯として法廷で裁かれるという物語。
 『 猫のゆりかご(Cat's Cradle,1963)は軍拡などを風刺しながら、科学技術や宗教などの問題を探求したSF風の小説。この作品によって後に人類学の修士号を得た。
 『 ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを(God Bless You, Mr. Rosewater, or Pearls Before Swine,1965)では現代における絶対的な善人を描いた。
 『 スローターハウス5(Slaughterhouse-Five, or the Children's Crusade,1969)は彼の名を一躍高めることになった代表作。これまでの作品の登場人物が集結し、この時点での集大成的な意味合いもある。戦時中にドレスデンの屠殺場の地下に監禁されていた経験が原点となった。時間旅行といったSF的要素を含みながら、現在過去未来を、時間を超越する力をもつ宇宙人トラルファマドール人の視点によって喜劇的に描くブラック・ユーモアに満ちた作品。
 『 チャンピオンたちの朝食(Breakfast of Champions, or Goodbye, Blue Monday,1973)は現代アメリカを痛烈に風刺した作品で、著者自らの手による独特のイラストが散りばめられているのも特徴。主人公の作家キルゴア・トラウトは著者自身分身と考えられる。
 『 スラップスティック(Slapstick, or Lonesome No More,1976)はアメリカ最後の大統領の回想録の体裁をとった小説。
 『 ジェイルバード(Jailbird,1979)はウォーターゲイト事件に巻き込まれた官僚の物語。
 『 デッドアイ・ディック(Deadeye DIck,1982)は中性子爆弾の事故により滅びる運命にあるある街の様々な人々の人間模様を描いた。
 『 ガラパゴスの箱舟(Galápagos,1985)は人類滅亡百万年後の世界の世界で、生き残った人類が遂げた進化を描いた。
 『 青ひげ(Bluiebeard,1987)はかつて抽象派の画壇で活躍したが、才能に限界を感じコレクターに転じた老人の物語。
 『 ホーカス・ポーカス(Houcus Pocus,1990)はアメリカのほとんどの企業が外国に買収された世界で、日本人によって運営される刑務所に教師として雇われた主人公が、大脱獄事件に遭遇する物語。
 『 タイムクエイク(Timequake,1997)は最後の長編。時空続体に発生した以上によってあらゆる事物が1991年2月17日に逆戻りしてしまい、人々は異常の発生した瞬間まで再び過去の行為を繰り返させられる。全作品の集大成ともいえる作品。
 他に短編集に『 モンキーハウスへようこそ(Welcome to the Monkey House,1968)、『 バゴンボの嗅ぎタバコ入れ(Bagombo Snuff Box,1999)、エッセイに『 ヴォネガット、大いに語る(Wampeters, Foma and Granfalloons,1974)、『 パームサンデー(Palm Sunday, An Autobiographical Collage,1981)、『 死よりも悪い運命(Fates Worse than Death,1991)、『 国のない男(A Man Without a Country,2005)、『 追憶のハルマゲドン(Armageddon in Retrospect,2008)がある。