ウィリアム・ベックフォード
(William Thomas Beckford)
(1760~1844)

略歴

 多才であり、また非常に裕福であったために様々な分野に足跡を残している。幼少期から専門の家庭教師により各分野の教育を受ける。音楽の家庭教師はモーツァルトであった。またチェインバーズに建築を学び、後年巨大な塔を備えた僧院を建てた。名門子弟の慣例として大陸巡遊の旅に出た際には、その紀行文を書いている。他にも美術品や稀覯本の蒐集家として知られ、先に述べた僧院にはギボンの全蔵書が収められていた。また彼は同性愛者でもあり、しばしばスキャンダルにさらされた。そのためか、同性愛に関する記事の切り抜きなども集めていた。英国ディレッタントの典型のような人物である。

作品

 『ヴァセック(Vatheck,1786)は、彼が21歳の時に書かれたゴシック小説である。一度も席を立つことなく、三日と二晩で書き上げたと自称した。フランス語に堪能であった彼は、これをフランス語で執筆した。『アラビアン・ナイト』の影響が顕著な、この東洋風の物語は今日では評価されているものの、当時はその冒涜的な内容から非難にさらされた。物語はヴァセックという狂気に満ちたカリフを主人公とし、東洋的な魔法が出てきたり異様な世界を旅したりする。そしてヴァセックを待ち受けているのは、恐るべき運命なのである。この異様な物語は後世の作家にも影響を与えている。




最終更新:2008年03月04日 18:28