Yggdrasill

『Yggdrasill<かんさつにっき>』






優しい楽曲(melody)……眩しい幻想(vision)……熱い泥(mud)……苦しい時代(time)
廻り廻る四つの季節(世界) 二つの色(光)
世界を司りし偉大なる母よ 私は貴女を愛している……



(世界樹(Yggdrasill)……それは非現実的な大きさの樹木の呼び名)



嗚呼 木漏れ日は優しく 春の日差しよ
澄み渡る青空は何処までも青く青く
木陰で眠る<騎士>と恋人の<女>を見詰めて



(原初の母(Yggdrasill)……それは恋人達の寄る辺、子供達の秘密基地、旅人達の道標)



嗚呼 陽光は眩しく 夏の日差しよ
晴れ渡る蒼空はひたすらに蒼く蒼く
雨を凌ぎ<童>の身を休ませて



(純然たる乙女(Innocent)……それは旅の詩人より彼女に与えられたもう一つの名)



嗚呼 夕焼けは熱く 秋の日差しよ
染め渡る茜空は一心に紅く紅く
気紛れに宇宙(奇跡)の片鱗(雫)を<予言者>に与えて



(罪を拒む者(Innocent)……それは負の感情を洗い流し、強大な悪を寄せ付けない天然の結界)



嗚呼 月光は苦しく 冬の月明かりよ
暮れ渡る夜空はありのままに昏く昏く
渡り歩く<聖人>と<人形> その結界の内へ迎えて



「嗚呼……憎い。穢れを知らないこの<樹>が、憎い……」
「だったら、穢してしまえば良いじゃない」
「Alice……」
「我慢する事は無いわ、Michael。アナタは折角この馬鹿げたセカイから開放されたのよ」
「そうだな……穢れを知らないのなら、穢してしまえば良い……僕の、この手で……」



(<聖人>の冷たい手が、その幹(身体)に触れた。
 聖なる狂人の手が、それを根(心)から侵した。
 雫(涙)……枝(骨)……葉(髪)……朽ち果てる朽チ果テル、不動なる聖母。
 緩やかに胎動する蒼の夜空に、幼い少女の悲鳴が紛れるのを<人形>は聞いた。
 狂った様に笑う<聖人>が過ぎ去った後、その場に残ったのは一本の死せる<樹>。
 嗚呼、悠久の時と共に刻まれた時計の針が今、止まる……)



優しい楽曲(melody)……眩しい幻想(vision)……熱い泥(mud)……苦しい時代(time)
廻り廻る四つの季節(世界) 二つの色(光)
世界を司りし偉大なる母よ 私は貴女を愛していた……



愛していたのに……