『還らぬ花嫁<ぎんのはなびら>』
そして 空へと 落ちて
(長身痩躯(やせぎす)の<男>。血走った瞳(め)。Uriel Underwood……)
やがて 紅 抱いて
(……忌まわしき記憶。暁の教会。鳴り響く『祝福の福音(ウェディングベル)』)
灯す 瞳は 深く
(霞む足取り。はためく外套(コート)。虚空で踊る手……)
霞む 黄昏 照らす
(……微笑む君。幸せな時間(とき)。色づく世界)
刃 潜めて 踊る
(瞳には狂喜。手には凶器。背には狂気……)
揺れる 陽炎 溶けて
(……開け放たれた扉。差し込む陽光。飛び込んだ影)
礫 逆巻き 永久へ
(街を歩く殺意。夜に溶ける翼。闇に潜る……)
消えぬ 罪悪 背負い
(……迸る銀光。くず折れる君。過ぎ去って行く笑い声)
罪を 巡って 夜へ
(昏い森を抜ける。険しい山を越える。冷たい雑踏を渡る……)
目指す 夜明けは 蒼く
(……愛しい名を呼ぶ。紅く塗れた君。遠ざかる『うたかたの音色(ウェディングベル)』)
辿り 導を そして……
嗚呼
世界は やがて 形を変えて
<男>は やがて 望みを叶え
嗚呼
消えない 痛み 胸に抱いて
消せない 罪を この手に宿し
嗚呼
優しい 記憶(とき)を 歌って欲しい
オネガイ ドウカ カナシマナイデ と……
(町外れの古びた教会。扉が開け放たれる。
中にいたのは二人の男女。
狂った<聖人>。壊れた<人形>。
<男>、狂った笑みを浮かべながら駆け出し、冷めた目の<聖人>の懐へ――)
(紅く湿った音……荒々しい足音……零れる命を、<聖人>は呆然と見つめていた……)
最終更新:2007年08月27日 22:49