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春「桜」


さくら さくら
女が 一人
根元に 居りて
振るうは 鍬よ
一振り 二振り
さくら さくら
その 意味は――



(慶応4年、弥生。一人の女、桜の木の根元に居たり。朝な夕な、その根元を掘りたり――)



口には歌を 手には鍬を
女は今日も 穴を掘る
土を刻む 鍬の音
どうして女は 土を掘る



心をなくした その男
片手に凶器を携えて
両目に狂気を携えて
凛と光る その刃
男は女に歩み寄り――



「あの子に罪はなかったんだ!!」/「貴方……また、大切な人を、見捨てたのね」



「――え?」



さくら さくら
女が 一人
根元に 居りて
振るうは 鍬よ
一振り 二振り
さくら さくら
その 意味は――



(慶応4年、弥生。桜の木の根元より、数多なる髑髏(しゃれこうべ)現れん。鍬持った一人の女、曰く――)



あれは あの人の墓穴
私の愛したあの人は 彼岸へ渡ってしまったから
私はこうして 墓穴を掘る――



(その年の桜、いつにも増して、赤く咲き誇らん。)