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.! ノヘ.! /,ゝ='、,/ | / | _ハ_ | ! i ', '、/ | | し レ /
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i'二'/ i| ノ. |/,,, ひ'ー' i r'; Yレ'i 〈 Y', ハ i | じ .立 |
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**それぞれの誓い~英雄の条件~ ◆KJJLTUDBrA
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英雄とは何なのか。その言葉だけが俺の頭の中を飛び回る。
英雄とは何なのか。
少なくとも俺は英雄ではない。それを名乗る資格すらない。
俺はただ、復讐に燃える男。決して正義の味方でも弱者の守護者でもない。
目の前で今にも死にゆこうとする男を救うこともできず、あまつさえ、それに安堵しかけている俺など……!
「スパイダーマ、くん」
「……ん? あ、ああ」
男の声で我に返った。どうやら考え込んでしまっていたようだ。
俺が男に目を向けると、男はゆっくりと口を開いた。
「……実はね、俺はあそこで歌い始めてからずっと、いつかはこうなるだろうと思っていたんだ」
「死が、恐ろしくなかったとでも言うつもりか」
俺の問いに、男は力なく笑う。
「そんなことはないさ。今でも俺は、死ぬのが怖くて、仕方がない」
「ならば、なぜ……」
「簡単な、話さ」
男は語る。最初は夢か何かかと思ったことを。
しかし、何度思い返しても、最初に死んだ彼らは現実にしか思えなかったことを。
そして、殺し合いなんてくだらない、と。
「だから、俺は、この殺し合いを、止めようと思った」
だが彼には、首輪を外す知恵もなければ、主催者たちを倒せるだけの力もなかった。だから──
「──だから、人を集めようと?」
「ああ。歌を歌えば、誰かには届くだろうと思って」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺はそこで、あることに気づき戦慄した。
「まさか……」
思わず声が漏れる。
男はそれを聞きつけたのか、ニヤリと笑った。
「正直、分の悪い賭け、だったが、……どうやら俺は、賭けに、勝ったらしい」
君たちが来てくれたからな、と男は言う。しかし俺は愕然とし、何も言えないでいた。
大音量の音を立てれば、それは当然近くの誰かに届くだろう。確かに、この状況を打破できる可能性は高まる。
だがそれは、殺し合いに乗った者にも同じこと。運が悪ければ、己の目的を達成できずに死んでいたかもしれないのだ。
しかし彼は、それすらも予期していた。その上で歌っていたのだ。己が命も顧みずに。
そして、今にも自分の命が消えゆこうとしているときになってさえ、この男は笑みを浮かべている。
「俺も、みんなも、無事なのが、ベストだったが、……さすがにそれは、高望みが、過ぎたか」
男はため息をつく。徐々にその顔から、血の気が失せていく。
しかし、何故だ? 何故そんなに満足そうな顔ができる?
「君も、わかっている、んだろう? これは、もう、……助からない、って」
「……ああ」
あのときの俺たちの中に、これほどの出血に対する応急措置を知っているものはいなかった。
また、傷をどうにかできるようなアイテムも持ち合わせていなかった。
だがそれは、言い訳に過ぎない。
あと少し早く到着していれば。
姿の見えぬ狙撃手をあらかじめ俺が倒していれば……。
「やめて、くれよ。自分、を、責めちゃ、いけない」
「だが……」
「人は、いつか死ぬ。俺の、場合が、今というだけ、さ」
彼の言葉は、もう途切れ途切れだ。だがそれでも、この男は口を閉じない。
まるで、語り足りない何かを語りつくそうとでも言うかのように。
「いいか、殺し合い、をしちゃ、駄目だ。人が、死ぬのは、いつも悲しい、ことだからだ」
「…………」
「俺は、誰も、死んでほしく、ない。できれば、俺を、撃った、誰かも……」
「…………」
「いい、な、倒すべき、敵を、間違える、な……」
もはや男の顔は蒼白だった。しかし、男の目は、まだ死んでいない。
その目が、俺を捕らえて離さない。
「……頼め、る、か?」
「……ああ」
その答えに安心したのか、男は、ふ、と息を吐く。
それと同時に、男の体から力が抜けていく。
「じゃあ、な。スパイダー、マ、……みん、な、……を、ひとり、でも、……多く、の、人、……を…………」
…………。
「…………」
そのときの彼の様子は、まるで眠っているかのように見えた……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺は、英雄ではない。これまでも、そしてこれからもそうだろう。
英雄というのは、決して強い力を持つものではない。
尋常ならざる頭脳を持つものでも、死を恐れぬものでもない。
英雄というのは、すばらしい魂を持つものの事だ。
己がなすべきことを見極め、絶望的な状況すら、思い信じて突き進む。
死を恐れ、その上でそれをも乗り越える。
ああ。
ああ、そうだとも!
この男は、確かに英雄だった。それも、歴史の闇へと消えて行ったような、真の意味での英雄だ!
彼は、自分の無力さを知り、知識のないことを嘆き、しかし己のなすべきことをなした。
その魂の輝きは……俺にはまぶしすぎる。
俺にはとても……英雄にはなれない。
「だが」
俺は呟く。自分自身に言い聞かせるように。
俺は、この男に思いを託された。真の英雄から思いを、だ。
ならば俺は、その思いに応えなければならない。
純粋な力では、俺はあのYOKODUNAという男に勝てないだろう。なおかつ、今俺の手元に武器といえるようなものはない。
この男を撃った狙撃手も、どれほどの力を持つものか、わからない。
だから、俺がこれから行うのは、英雄とはとても呼べないような美しくない戦いだ。
正々堂々ではなく、横から、後ろから。
不意を撃ち、罠にはめ、時には逃げ。
そして、誰も死なせない。
難しいことであることは、重々承知だ。だがそれでも、この英雄の意思を絶えさせてはならない。
俺は、彼の手にテニスボールを握らせると、腰を上げた。
そして、男の持ち物から、ギターを手に取る。
「これは、借りさせてもらう」
心の中で詫びる。俺はこれから、この楽器を本来の使い方以外で使おうとしているからだ。
だが、英雄ならざる俺には……こんなものでもないと、戦えない。
先ほどYOKODUNAが飛んでいった方向に目を向ける。
俺の場所からはよく見えないが、向こうで頻繁に土煙が立ち上ったり、槍のようなものが降り注いでいたりするのが見えた。
おそらく、あの男と何者かが戦っているのだろう。
あの男の持つ気配は尋常ではなかった。下手をすれば、あの男は簡単に人を殺せるに違いない。
だが見たところ戦いは互角。しばらくは、戦況に大きな変化はないだろう。
だから俺は、もう一方に足を向ける。
まずは力を持たないものの安全を確保。その後あの戦闘に介入する。
「あなたの思いを……私は無駄にはしない」
彼に別れを告げ、俺は走り出した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
走りつつ、彼の名前を聞いていなかったことに気づいた。
少しの後悔を覚えつつ、俺は考える。
俺は英雄にはなれない。彼を見ていて、もはやそれはあきらめた。
だが今ひと時。今ひと時だけは──俺は、英雄の代理人でいよう。
全ての人を救うことはできずとも、せめて一人でも多く……。
【C-3 北部・山の麓/一日目・朝】
【スパイダーマン@東映版スパイダーマン】
[状態]:健康。鉄十字団を倒し終えていない状態。英雄の代理人。
[装備]:DIGIZO HYPER PSR(残り三十分程度)@現実
[道具]:支給品一式、上海人形、花粉防止用マスク、テニスボール4
[思考・状況]
1.英雄の遺志を継ぎ、可能な限り誰も死なせない。
2.非戦闘員(いさじとつかさ)の安全を確保する。
3.その後、YOKODUNA達の戦闘に介入。誰も死なない形で、尚且つあらゆる方法で、戦闘を終了させる。
4.一段落したら英雄の弔いに戻る。
5.氷雪地帯全域を探索に向かう。夕方に塔で待ち合わせ。
&color(red){【福山芳樹@現実(真赤な誓い) 死亡】}
&color(red){【残り 56人】}
※福山芳樹@現実(真赤な誓い)の死体(腹部に銃創)は道の脇に寝かされています。
また、彼はテニスボールを握っており、すぐそばのデイパックの中には
『予備電池(残り2セット)@現実』と支給品一式が入っています。
|sm70:[[Cry for me, cry for you]]|[[時系列順>第二回放送までの本編SS]]|sm72:[[蒼い鳥]]|
|sm70:[[Cry for me, cry for you]]|[[投下順>51~100]]|sm72:[[蒼い鳥]]|
|sm66:[[十一色の誓い]]|スパイダーマン|sm75:[[それぞれの誓い~天海突破~]]|
|sm66:[[十一色の誓い]]|&color(red){福山芳樹}|&color(red){死亡}|
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