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イチローのレーザービームでバトロワ会場滅亡」(2010/03/18 (木) 11:16:44) の最新版変更点

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                           / )                     ∧_∧  / /                       (  ´Д`) / /       らいとにんぐさーん                   /    _二ノ                    //   /              ∧ (_二二づ_∧             (  ´Д`)/ (     ) チュパチュパ            -=≡\ ⌒( ヽ/⌒ヽ/\     -=≡ ./⌒ヽ,  |   \ \ \\ ヽ/⌒ヽ,    -=≡  /   |_/__i.ノ ,へ _  / )/ \\/  .| /ii    -=≡ ノ⌒二__ノ__ノ  ̄ | / i / .\ヽ  |./ |i   -=≡ ()二二)― ||二)    ./ / / / ()二 し二)- ||二)   -=≡ し|  | \.||     ( ヽ_(_つ  |   |\ ||    -=≡  i  .|  ii      ヽ、つ       i   |  ii     -=≡ ゙、_ ノ               ゙、 _ノ --------------------------------------------------------------------------------
**イチローのレーザービームでバトロワ会場滅亡 ◆LXe12sNRSs (非登録タグ) [[パロロワ]] [[ニコニコ動画バトルロワイアル]] [[第七十三話⇔第七十四話]] [[第七十四話⇔第七十五話]] ----  すべてのシリーズに言えたわけではないが、ロックマンはただ走らせるよりも、スライディングを連続させたほうが速い。というトリビアがある。  その時間差は0.1秒にも満たない些細なものだが、クリアタイム短縮を狙う上では、必須テクであるとも言えた。  小さいことからコツコツと。細かな動作の一つ一つが、最終的なクリアタイムの短縮に繋がる。  数々の最速プレイ動画を築き上げてきたTASは、その心得を胸に、今もなお現実で起こっているバトルロワイアルで、自らのスペックをフルに発揮させようとしていた。 「――クッ!」  舌打ちはするも、足は休めず突き進む――追っ手から逃げ延びるため、連続スライディングで。  ロックマンは走るよりもスライディングを使ったほうが速い。  そんなゲーム内での豆知識を実生活で使える技へと昇華し、殺し合いの最短クリアに応用する。TASならではの走法。  草原を越え、街路を越え、草むらを越え、TASの連続スライディングは如何なる悪路とて減速を許さない。  TASをこれほど焦らせ、TASにこれほどの速さを引き出させる追っ手……それは、強制スクロール面などという生易しいものではない。 『球技』という分野において最速の称号を手にし、最速のみならず破壊神やらペンギンゲッターやらおかしな異名をも取得した男……。  本名、鈴木一郎。人は彼を、イチローと呼ぶ。 「もう観念するんだTASくん!」  既に時刻は朝を迎えている。放送前から続くイチローとTASの逃走劇は、イチロー優勢のままもうすぐ決着を迎えようとしていた。  TASの連続スライディング走法は確かに最速の名を冠さすに相応しい速度だったが、そのトップスピードはゲームに忠実すぎるせいか、常に一定。  対してイチローの芸術的なランニング走法は、己のスタミナを考慮し、徐々にペースを上げてきている。この体力配分こそ、プロのスポーツマンが成せる業であると言えよう。  イチローとTASの距離は、もう1メートルもない。イチローが飛びかかりでもすれば、TASは確保されて終わりだろう。  だが、イチローはそれをしない。TASに追いついてなお、TASを捕らえようとはせず、喋りながら併走していた。 「TASくん! 君がなんの目的でこのゲームに乗っているのかはわからない! だけどね、これだけは言える!  君のそのスピード! 少しでも効率的に動こうとする計算高さ! それは人殺しなんかに応用しちゃいけない!」  どうやら説得のつもりらしいが、TASに返事を返す余裕はない。  イチローはすぐ隣で、息も切らさず併走している。しかし当のTASは、たび重なるスライディングの酷使で、体力を使い果たそうとしていた。  これはゲームではない。紛れもない、現実。スライディングをするにもスタミナという概念がまとわりつき、些細な逆境が最短クリアの道を阻む。  TASはイチローとの追いかけっこで、その現実をようやく受け止めた。  ◇ ◇ ◇ 「……ようやく止まってくれたね」 「……俺、が……負けた……のか?」  数分後――会場の南東端にて、地面に転がり息を切らすTASと、それを優しげな瞳で見下ろすイチローの姿があった。  世紀のスピードマッチは、現役メジャーリーガー・イチローの圧勝。  イチローといえば影のように忍ぶ俊足と破壊力バツグンの返球にばかり目がいきそうだが、33歳にして未だ衰えないそのスタミナこそ、彼の真骨頂であると言えよう。  対してTASは、元を正せばただのゲーマーだ。スピード型ではあるが、スタミナは凡。  この人間としての抗えないスペック差が、勝敗の分かれ目となった。 (なぜだ……最速のはずの俺が、なぜこんなところで休んでいる?)  荒い呼気に整然さを取り戻そうとする傍ら、TASはこの敗北について考えていた。  今までにも、自分の後をしつこく追跡してくるタイプの敵とは相対したことはある。だが、TASはそれを幾度となく振り切ってきた。  ステージ上の雑魚キャラなど、所詮は足場の程度の価値しかない。TASの進行を阻害するなど、おこがましいにもほどがある。  ならば、このイチローという男はいったい何者なのか――TASのスピードを凌駕し、TASを圧倒する存在。そんなものが、実在するというのか――?  否! 断じて否! ゲーム史上において、TASを超える最速クリア者など存在しない。TASこそ最速、これは絶対的事実。  TASに膝を着かせる存在、雑魚キャラなどではない――考えられるとすれば、それこそTASをも超越した『バグ』か―― 「おまえはいったい……何者なんだ?」  ふと、TASの口から小さな疑問が零れた。  問いかけるつもりはなかった。ただどうしても納得がいかなくて、不意に零れてしまった言葉。  イチローはそれをしっかりと拾い、穏やかな声調でTASに返す。 「……僕はイチローです。人より野球がちょっと上手いだけの、ただのスポーツマンですよ」  スポーツマン――イチロー――バグなどではない、ただの人間。  それが、TASを上回った。やはりこれは、認めざるを得ない事実なのだろうか――? 「……おまえは、どうしてそんなに速い?」 「日々のトレーニングの積み重ねですね。毎朝のランニングは欠かしません」  まるでインタビューに答えるかのように、イチローは失意のTASに言葉を返していく。  その真面目ぶった表情が、癪に障る。こんな『ただ速く走ろうと考えていただけの人間』に負けたのかと、TASは頭を抱えたくなった。  最速クリアに必要なもの。それはトレーニングなどではない。緻密な計算だ。  操作するキャラクターのジャンプ飛距離、ステージの最短ルート、行く手を阻む敵キャラの数、孔明ブロックの位置……これらの情報から算出したデータを踏まえ、巧みなキー操作を持ってステージを攻略。これがTASの基本スタンス。  それを、イチローはただの肉体鍛錬で凌駕したという。認めたくない。認められるはずがない。 「クソッ……!」  突きつけられた現実に、TASは思わず声を荒げた。  皮膚を伝う汗が鬱陶しい。呼応する心臓が思考を妨げる。こんな逆境は、マリオにもロックマンにもなかった。  これが、現実。現実という名のゲームなのか――TASは、乱暴な手つきで汗を拭う。 「そう、それだよ!」  すると、イチローは嬉々として声を上げた。 「額を伝う汗――君に足りなかったものは、それさ」 「な、なに?」  言葉の意味が理解できないTASは、警戒気味にイチローから距離を取る。  少年球児のように爛々とした目。その健やかな輝きは、三十代の男が放つには眩しすぎるほど。  TASはイチローの存在に得体の知れぬ恐怖を感じ、心身ともに後ずさった。 「詳しくは知らないが、君が『速さ』に執着していることはよくわかった。  このゲームに乗ることが、その執着心を満たすための手段だということもね。  だが、僕に言わせればそんなのは間違ってる。だってほら、全力疾走をしたあとの汗は、こんなにも気持ちのいいものなんだから」  CM撮影時に用いるようなニヒルな笑いを見せ、TASに手を伸ばす。  スポーツ最高、一緒に汗を流してお互いを称えあえば、そこに友情が生まれるとでも言いたいのだろうか。  ――愛工大名電高校、オリックス・ブルーウェーブ、シアトル・マリナーズ、数多のチームを渡り歩いてきたイチローだが、彼は常にチームの主軸を担ってきた。  それは、ひとえに彼のコミュニケーション能力が高かったおかげだろう。だからこそ、言語の壁が立ち塞がる海外の環境にも馴染めた。  だが、それだけではない。イチローが新しい環境にすぐ順応できる最大の理由――それは、『スポーツ』『野球』という共通項を持って相手と接することができたからだ。  誰だって、スポーツの後の汗は気持ちよく思うもの。例え殺し合いの環境に身を置かれようとも、人間の素直な感性には逆らえない。  だから、共に速さを競い、そして今こうして勝負の結果を検討しあっているTASとも、分かり合えると信じた。  TASにとっては理解不能、イチローにとっては極々自然な、脅威のスポーツマンシップ。 「さぁ、TASくん。君はもう殺人鬼なんかじゃない。お覇王くんや僕と一緒にこのくだらないゲームをぶっ壊す、大切な仲間だ」  自分を殺そうとした相手にさえ、イチローは商売道具である右手を、屈託のない笑顔を、なんの躊躇もなく差し伸べる。  TASは動揺した。動揺しながらも一考し、やがてその考える時間が長引いていることに気づき、悩んでいるんだと自覚した。  TASは今、悩んでいる。このイチローという男の、妙に説得力のある誘い、そしてカリスマ性に。  この手を掴めば、最速クリアへの道は閉ざされるだろう。だが、それがなんだというのか。  イチローの前では、最速クリアに執着していた自分のポリシーこそが、なんと矮小なものだったんだろうと恥ずかしく思えてくる。 「おれは、おれは……」  気がつくと、TASは無意識の内に手を伸ばしていた。  その矛先は、イチローの――  ◇ ◇ ◇  ――イチローの、胸板。 「…………な、ぜ」 「……俺は、TASだ。このTASの成すべき結果に、『最速』以外の道などない。ましてや、『躊躇』などもってのほか」  TASが差し出した右手。  それはイチローの手を掴み取ることはなく、そのままスルーし、イチローの胸に親指を突き入れていた。  数々の最速プレイ動画を築き上げてきたTAS――残骸に変えたコントローラの数は数知れず、クラッシュしたボタンの数は星の煌きよりも多い。  幾度となくボタンを押し続けたことにより、TASの右手親指は今や、プロ野球選手の頑強な胸板を貫くほどの凶器として機能していた。  しかし、ゲーマーにとっては右手の親指は生命線とも言える大事な部分だ。できれば、殺しの道具になど使いたくなかった。  そんな甘えを捨てさせ、最終兵器を使わざるをえなくした。逆に捉えれば、イチローがそれほどの男だったという意味でもある。 「イチローと言ったな。このTASに指突を使わせたこと、あの世で誇るといい……」  餞別代りの世辞を置いて、TASはイチローの胸から親指を引き抜く。  飛び散った血は少量だったが、彼の指突は心臓の中心を捉えた。急所を突き破られ、イチローに反撃する力は、もう残されていなかった。  ただ、自分のデイパックを持ち去っていくTASの背中を見送るくらいしかできない。  イチローの命は、この一撃で燃え尽きようとしていた。  ――最速クリアを目指すにあたって、一番の障害となる要素はなにか?  それは、強制スクロールでも、雑魚キャラの群集でも、耐久力の強いボスでもない――プレイヤーの、『迷い』だ。  目の前にキラーが飛び込んできたとしよう。どうするか――踏みつけて、先に進む。  先に進むためのリフトがなかなかこない。どうするか――使わない。その辺の敵を踏み台にして飛距離を稼ぐ。  一つ一つの動作がクリアタイムの妨げになる。『考える時間』とて、有限ではない。  Bボタンは常に押しっぱなし。止まったりなどしない。途中で方針を変えるなど論外。  躊躇する暇があるならば、少しでも前へ――最速クリアを目指すなら、当たり前の心根だ。  TASは、現実においてもその心根を実行するのみ。イチローの存在など、たかだか一面のボス、その程度の価値だ。  奪われた時間も、すぐに取り戻してみせる。まだまだ挽回は可能。目的はただ一つ、最速クリア。 『TASさんスゲー! 人間じゃねーよ!』 『TASさんはやっぱり上手いな』 『TASさんと聞いて(ry』 『TASを人だと思ってるヤツなんなのwww』  もう一度、観衆を最速プレイ動画で沸かせるため。  TASは、己のポリシーを貫き通す。  ◇ ◇ ◇ 「ちくしょう……」  イチローは悔しかった。TASの裏切りが、海の向こうのメジャーリーガーにも通じたコミュニケーションの手段が、まったく通用しなかったことに。  同じ球場で試合をする者は、皆ライバルでありながらも、同じ野球に情熱を注ぐ同志のはず。  ここが球場でなく、やっていることが野球ではないとしても、共に汗を流したTASとなら、分かり合えると信じていた。 「俺は……ただもう一度、野球がしたかっただけ……なのに」  胸の小さな穴から零れる鮮血。掬ったところで、命のともし火が再び燃え盛ることはないだろう。  イチローは、もう一度野球がしたいという欲求を抱いたまま――死に絶えようとしていた。  それでも、かつては地球を滅ぼしたことすらあるイチローのスタミナは、心臓を貫かれてもまだ彼を生き永らえようとしていた。  だがそれも、地べたを這い蹲る程度の活力しか生み出さない。  だったら、最後に。  せめてこの無念を晴らすため。 「そこら中……ハデにやったる」  こんなふざけたゲーム――会場ごと滅亡させてやろう。  そう、思い立った。  イチローは残された篝火程度の命でなんとか立ち上がり、地面からボール大の石を拾い上げる。  硬式ボールではないため軌道は若干狂うだろうが、試合ではないため特に支障はない。  ただ力の限り放る――それだけで、イチローの返球はレーザービームと化し、この惑星は滅亡する。  TASとその他諸々、野球の素晴らしさもわからず殺し合いに興じている馬鹿共はすべて。 「そうだ、滅べばいい。滅ぼしてやる。この俺から野球を奪うヤツらは、みんなみんなみんな――」  死に際ということもあるのだろう。イチローは自暴自棄気味に返球の体勢に入り、バトルロワイアル会場を無に帰そうと石を握り締める。  これが、イチローにとっての最後の野球だ。それがバトロワ会場内の人類を滅亡させるための送球というのが悲しいが、野球の素晴らしさを理解しないTASたちが悪い。  ……が、ここにいる全員TASのような人間かといえば、そうではないと言わざるをえない。 「……お覇王くん。君は……まだ僕の帰りを……待っているのかな?」  イチローの手の中にあった石は、やがてポロッと地に零れた。  もはや、それを拾う気力もない。体力的にもそうだが、イチローは会場を滅ぼそうとした寸前で、お覇王という名の友人の姿を思い出してしまった。  彼は、今もまだイチローの帰りを待っているのだろう。イチローがTASを下し、このゲームを破壊するため、帰還すると信じているに違いない。  そんなお覇王の思いを無視して、あてつけでバトロワ会場を滅ぼすことなど――イチローにはできなかった。 「内野安打……また、打ちたかった……盗塁……また、したかった……レーザービームも……地球を壊さない範囲で……  お覇王くん…………きみとも…………きゃっちぼおる、くらい、は…………」  ――そしてまた一人、偉大すぎるスターがこの世を去った。  ――人知れず滅亡を回避したこの世界は、それでも愚かな殺し合いをやめることはない。 【E-5 草原/一日目・朝】 【TASさん@TAS動画シリーズ】 [状態]:疲労困憊、服がびしょ濡れ [装備]:なし [道具]:支給品一式×2、五寸釘@現実、オミトロン@現実?、初音ミク@現実 [思考・状況] 1:休息を取っている暇などない。目指すは最速クリアのみ。 2:武器の調達。 3:街の周りを参加者を減らしながら移動し、ある程度参加者が減ったら街に戻ってくる 4:殺戮ゲームの最速クリア。 &color(red){【イチロー@現実 死亡】} &color(red){【残り53人】} |sm73:[[対象n]]|[[時系列順>第二回放送までの本編SS]]|sm75:[[それぞれの誓い~天海突破~]]| |sm73:[[対象n]]|[[投下順>51~100]]|sm75:[[それぞれの誓い~天海突破~]]| |sm46:[[最速vs最速]]|TASさん|sm89:[[friend]]| |sm46:[[最速vs最速]]|&color(red){イチロー}|&color(red){死亡}| ----

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