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MG「ククク・・・お前等だけ幸せにしてたまるか。」
*新たな世界 ◆OZbjG1JuJM (非登録タグ) [[パロロワ]] [[ニコニコ動画バトルロワイアル]] [[エピローグ]] [[プロローグ]] ---- 姉からの頼まれごとで遠くの本屋に出向いたその帰り。 車の通りも少ない道路の端っこから、その向こう側に立ち並ぶ住宅。 その風景を見て私は何とも言い表しにくい感覚を覚えた。こういうのって、確かデジャブって言うんだっけ。 でもほんの数秒立ち止まっている間にそれがデジャブではないことに気づいた。 確かデジャブって「見たことないはずの風景が見たことあるように感じる」って現象だったよね。 目の前のこの風景は何度も見たことあるから見覚えがあって当然だ。 泉家とその周辺。ううん、性格には「前は泉家だった家とその周辺」なのだから。 表札には全く知らない名前が刻まれていた。門にひしめいている電球のついたモールは夜には色とりどりの光で家を彩るのだろう。 私は暫くその風景をじっと見つめ続け、見たこともない男の子が白い犬と一緒に家から出てきたのを見て逃げるようにその場を去った。 ……そうだよね、あそこはもう「こなちゃんたちの家」じゃないんだから。 私が帰ってきてから半年は経過して、季節は冬。 紫ちゃんに意志を示して、それから数ヶ月後に泉家最後のひとり――そうじろうおじさんは亡くなった。 死因は交通事故だって聞いてる。けれど単に車に撥ねられてそのまま帰らぬ人となってしまったわけじゃなかった。 だった一人の愛娘を亡くしたショックに加え、おじさんは随分前からマスコミの格好のおもちゃにされていたらしい。 同じマスコミの標的としても私はまだ恵まれている方だった。庇ってくれる家族がいたし、信じてくれる友達がいたから。 それに本当に死にたくなるほどつらいこともあったけれど、それでも死ぬわけにもいかないと思えるだけの、思わなきゃならないだけの経験があったこともある。 だけどおじさんの方は事情が違っていた。 最初は懸命におじさんをかばっていたゆたかちゃんも精神的疲労から体調を崩してしまってからはそのことを気に病んでからかマスコミを追い返す気力さえ失っていたと聞く。 それでも周囲の人達が庇おうとしていたけど、追い詰められ続けたおじさん自信も身体を悪くしてしまった。 そして外に出て道路を横断しようとした時にバイクが暴走して来た。 バイクがかなりの爆音を撒き散らしていたにも関わらず、おじさんはその音にも気付かなかったという様子でふらふらと道路を横断した所を撥ねられたのだそうだ。 そして、皮肉なことにおじさんの死がきっかけになり、今までにもあったマスコミの行き過ぎへの抗議がさらに激しさを増し、とうとう彼らが謝罪したことであの事件からようやく熱が引き始めたのだった。 ゆたかちゃんが元の家に引き取られる時、おじさんは私が伝えた事実を疑いたくないと言っていたこと。 私がこなちゃんの最期についておじさんに嘘をつきたくなかったという意図を、僅かでも理解してくれていたことを教えてくれた。 もしおじさんがまだ生きていたなら、改めて自分の口から本当のことを話して、それで理解を示してくれていたのかもしれなかった。 だけどそれはもう仮定の話だから。 家主がいなくなって、あの家はもう泉家でなくなってしまったから。 だから、そんな機会はもう二度と来ないのだ。 「そういえば、来週でクリスマスだっけ……」 もちろん彼氏なんていない私には夜に恋人と過ごす予定なんてないけれど、別にクリスマスは恋人達の行事ってわけじゃないから気にしないことにする。 雪は降ってない。きっとイブにも降ることは無いと思う。 埼玉だからとはいえ雪が積もることはあれど、それはもっと寒くなる一月以降の話だ。私の覚えてる範囲内では十二月に降る雪は殆ど見た事が無い。 たぶん記憶に残らないくらい稀なことなんだと思う。 ドラマみたいにタイミングよくホワイトクリスマスになるのって、関東じゃきっとそうそうありえないことなんだろうな。 ゆきちゃんに聞いてみたらホワイトクリスマスになる確立を教えてくれるかもしれない。 家の中の暖かさはやっぱり落ち着ける。日ごとに増す寒さは何だかわずらわしくて、これなら夏がまだ続いていれば良かったとも思ってしまう。 でも夏の猛暑にあたってはやっぱり早く冬になってほしいなどと思ってしまうかもしれない。 だというなら春と秋だけが続くのが一番良いのかといえば、それはそれで物足りない気もした。 珍しいことに家に居る家族はいない。ただいまの一言は欠かさなかったけど、それ以上の言葉は口に出さなかった。 こんな時、前だったらこなちゃんに電話したのかなあとなどとか思って自室に入った。 「……あれ?」 着替えを済ませ、パソコンのメールをチェックしようかと動かした足に、思いもよらぬ固い感触が走った。 正体は足元を乾いた音をたてて転がる、あの世界から唯一持ち帰ったアイテム――デジヴァイス。 机の上に置いてあったはずなのだが、いつの間に落としたのだろう。 それでも大して気にもとめず、きっと何かの拍子に落としてしまったのだと考えて拾おうと手を伸ばした、その瞬間。 「えっ?」 今まで何の反応も見せなかったデジヴァイスが突如、携帯のバイブモードのように振動し始める。ややあって、目覚ましのアラームのような電子音を部屋に響かせたのだ。 「わわ、なんじゃこりゃー! もしかして落としたときに壊しちゃったのかな……」 確かにこのデジヴァイスには時計機能がついていたが、アラームは既に切ってあるしこんな時間に設定もしていない。 やはり誤作動だろうか。だとしてもこれは異世界の産物だ、異常をきたしたら直せる術がない。 「……あれ?」 何とかボタンをでたらめに押して事態の収拾を試みようとして――ふと、横目に映った変化に気づいた。 パソコンがいつの間にか起動してデスクトップ画面になっている。 また何かの拍子で電源を? ……いや、有り得ない。確かにデジヴァイスの突然の起動で慌てはしたけれど、パソコンには近づいてないはずだ。 じゃあ何故――疑問に答えを出す暇もなく、パソコンが自分の接触で作動したわけではないことを裏付けるように、新しいウィンドウが一人でに開いた。 バーにはファイルの名前と思わしきものが記されているが、妙に画面が明るくて読み取れない。 そしてウィンドウの中には何かのゲームのようなものが映っていた。 少し前時代的なドット絵で描かれたジャングル。 その中央に小さなドットのキャラクターが蠢いているのに気付く。 「………」 そのキャラクターを見た瞬間に言い知れない、暖かいような哀しいような既視感が訪れた こなちゃんの家だったところを見た時とは違う。何なのか、すぐに分かることができない。 でも私はこれを、どこか大切なときに見た気がする―― 「うわっ!」 刹那。パソコンの画面が眩く光始め、そこから飛び出した魔法のような光に包まれた。 最早ただの誤作動とかじゃないって断定できた時にはもう光が視界を覆い尽くして―― 「あ……れ……?」 目が覚めたら、そこはジャングルだった。 それを認識した瞬間、ばっと跳ね起きる。あのときの悪夢の始まりが、鮮やかに蘇ってきた。 周りには誰もいない。あの時みたいな、恐ろしい人達も。でも、自分の知り合いはいな…… 「あ……つかさおねえちゃん!」 いや、いた。元の家に戻っていたはずのゆたかちゃん。 ここには……いや、正確にはあそこにはいないはずの彼女が安心したように駆け寄ってきた。 「ゆたかちゃん? なんで、ここに……」 「わ、私も分からないの……身体がすこしよくなったから、テレビを見ようと思って部屋に入ったら知らない時計があって……そしたらテレビが……」 「……そう、なの」 やっぱり、まさか。 あの決別をあっさりひっくり返すような事が、こんなに早く起きるなんて。 いつまでたってもルールを説明しようとする黒幕が来ないからもしかしてあれとは違うのかもしれないとは思い始めていたが、油断は出来なかった。 一応、紫ちゃんの顔が頭に浮かんだ。だけどそれならゆたかちゃんまで呼ぶ必要がないよ。 だったら、これは一体…… 「ひゃあああ!?」 すぐ隣で悲鳴が上がって、私の心臓がはね跳んだ気がした。咄嗟に何かを構えようとして手持ちにデジヴァイスしかないことに気づいた。 だけどすぐに装備などが必要な――少なくとも、悪意ある人物が襲ってきたようなことじゃない、ってことは理解できた。 代わりに襲ってきたのは、悪意とか人どころか…… 「VVVVVVVVVVVVVVAAAAAAAAA!!!!」 「く、く、く、くわがた……むし……!!」 巨大な赤いクワガタ。そう形容せざるを得ない。 そして断言してもいい、あんな生物は私達がいた日本にいるはずがない。 じゃあ、あの悪夢や霊夢ちゃん達の世界でないとしてもここは、異世界…… 「危ない!」 上空を飛び去ったクワガタが、急旋回して私達を狙い突進を仕掛けた。 あんな巨体にぶつかれば人間としては溜まったものではない。紙一重でゆたかちゃんごと地面に伏せて難を逃れる。 勢いづいたクワガタはそのままジャングルの木々を切り倒し森の向こうに消える。 しかし安心したのも束の間、再び森がら戻ってきたクワガタは今度は逃すまいと上空から地面に向けて突進をする姿勢を見せた。 「ゆたかちゃん!」 「ひ……あ……足が、すくんで……!」 急いで抱き起こすけど、女子高生の力ではいくら小さい子とはいえ人を担いで逃げるのは難しい。 このままでは二人もろとも突進を喰らうだろう。かといってゆたかちゃんを見捨てるなんてもってのほかだ。 (……こんなの、理不尽だよ!) それでも何もしないで立ち止まるわけにもいかないから必死に足を動かす。だけどクワガタの羽音は一気に近くなって、私達を…… 「ぷぅっ!」 「ぷぁっ!」 「VGGGGYYY!?」 子供のような声がデュエットで聞こえたと思ったら、頭上を泡のようなものが飛び去っていく。 直後にクワガタが呻くような鳴き声を出した。振り返ると先程の泡を目にでもくらったのか、体勢を崩して地に転げている。 「上手くいったぜ! ほれ、ついてきな嬢ちゃんズ!」 「こっちだよ!」 「わ、わ!」 「花が喋ってる……」 泡を出した張本人らしい二人……というか二匹が私達の背中を押す。 されるがままに茂みに飛び込んだのと、クワガタが体勢を立て直すも私達を見失った事に気づいたのはほぼ同時のことだった。 吐き捨てるような短い鳴き声とともにクワガタは上空に飛びさってゆく。 「行ったみてーだな。ったくあのチンピラ野郎め」 助けてくれた二匹のうちの片割れである球根みたいな生き物が、可愛い外見に似合わないセリフを吐いた。 「……あの、助けてくれてありがとうございます…………お花、さん?」 「ああ、ソウルブラザーを助けるのは俺の正義〈ジャスティス〉だからな!  あと俺のことはピョコモンって呼んでくれよ、ツインテの嬢ちゃん」 ピョコモンと名乗った球根は腕(触手?)の一本をぐっと立てた。 その名前の響きに、何か懐かしいものを感じたような気がした私は焦ったように記憶を漁ろうとする。 「そうるぶらざー……?」 「なーんかアンタとはビビってくるもんがあるんだ。とくればこれは友情っきゃないっしょ! 会ったばかりだが仲良くやろうぜ、えーっと」 「あ、私……小早川ゆたか、です」 「そうかゆたかか! まま、カロリーメイトでも食えよ。拾ったんだけど」 かなり強引な性格らしいピョコモンはお菓子の箱をゆたかちゃんに押し付けていた。 それをゆたかちゃんは困ったような顔でおずおずと受け取る。 ……あの凶暴なクワガタから助けてくれたんだから、悪い生物ではないとは思うけど…… 「おいっ、オイラのことも忘れてくれちゃ困るよ!」 「あっ……ご、ごめんね」 助けてくれたもう一匹、タツノオトシゴのような生物に抱きつかれ咄嗟に謝ってしまう。 「……あれ」 あれ? どうしてだろう。 私、この子とどこかで見てる……それどころか長く一緒に行動して、傷つけてしまった気がする―― 何なのか、記憶が施錠されたようにつっかえてる感覚。なんでだろう―― 「何だよ、頭でもいたいのかー?」 「あ、何でもないよ。……その、ところでキミ達は? それと、ここって……」 「俺はプカモンっていうんだ、ぱっ! それと俺達はだな、よく聞けよ。 ……『         』」 「……えっ?」 ☆ それから彼女達がどうなったのか。 すごく……wikipediaなあの娘も、ひょっとしたらあの場所にいるのか。 やけにつかさの記憶が曖昧なのは、いつかのように記憶を制限されれいるからなのか。 そしてつかさ出会ったあの生物が、あの生物の…………なのか。それとも全く別の存在なのか。 色々な疑問がありましたが、今はまだ答えを出せる時期ではありませんの。 いつかどこかで語られ始める、その時まで自分で想像してみるのも一興かもしれませんわよ。 あら、それでも続きが気になるのかしら。 本当はネタバレはタブーなのだけれど……仕方ありませんわね、それならほんの少しだけ。 これから始まる物語はあの冒険の物語とは似て異なる、新しい冒険の旅ですわ。 ……え、余りにも短すぎる? あら、まだ始まったりの物語なのよ。 これから先に何がどう関わって、どうなってしまうのか。それはまだまだ内緒、というよりまだ誰にも分からないお話。 それじゃあ、この子のお話はこの辺にしておきましょう。 そうそう、この件に関しては私の手は一切関わっておりませんから安心して下さいな。 |ep-6:[[木菟咆哮]]|[[投下順>201~250]]|ep-7:[[永劫回帰]]| |ep-6:[[木菟咆哮]]|柊つかさ|ep-8:[[春です。]]| | |小早川ゆたか| | ----

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