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最初の過ちをどうか(前編) ◆CMd1jz6iP2




ピカチュウを埋葬しようと場所を探していた俺たちは
ショックに追い討ちをかける光景を目にしてしまう。
折り重なるようにして倒れている。男女の死体。
ピッピの怯え方が尋常じゃない。
皆集まったときに話していた、危険なトレーナーに殺された女の子……まさか?
どうやら、その後更に犠牲者を出したらしい。

二人とも、絶望の表情を浮かべ、息絶えている。
涙の後、恐怖に歪んだ表情……怒りしか沸いてこない。
「どこのどいつが……こんな酷い殺し方を……!」

これが、俺の仲間だったら、そいつを絶対殺してやる。
ああ、そうさ。1500秒もあれば、人間なんか……

ッ、駄目だ駄目だ……KOOL……違う、COOLになれよ、前原圭一。
こんな感情で動いて、何にもなりはしない。
ともかく、この二人も埋めてやらないとな。

三人分を埋めるための穴掘りに、かなりの時間がかかっちまった。
ほとんどが、コロネとピッピ。
俺たちは、怪我のせいもあり、あまり約には立てなかった。
ピッピより、コロネがかなり疲れたようで、フラフラしていた。

全員を埋葬した俺たちの頭上に、またピエロたちの放送が響いた。
「くそ、今度は違う奴か」
ともかく、禁止エリアとかを聞かないといけない。
人をなめた口調のピエロ……ピエモンの言葉をもらさず聞く。
禁止エリアは遠かった。
――それじゃ次は脱落者の発表だね。みんな心待ちにしてたかな?
ふざけるなよ、コンチクショウ!
高町なのは……鈴仙・優曇華院・イナバ……琴姫……
どんどん読み上げられる名前……くそ、こんなに!?
ピカチュウ……オメガモン……
ピカチュウ……それに、強い味方だって話のオメガモンまで?
しかし多いぞ、いったい……

柊かがみ

「え……?」

ひ い ら ぎ か が み ?
な、何かの間違いだよな?
だ、だって……ッヤバイ!
「う おおおおおお!!!」
俺は飛び跳ねるように掴みかかった。
顔面蒼白で、駆け出そうとしていた、こなたに。
「離して!離せえええええ!!」
馬鹿野郎、誰が離すかよ。
こなたは、完全に冷静さを失ってる。

落ち着け、COOLになれ、泉こなた!

「嘘だ、かがみんが死んだなんて嘘だああああ!」
「ッ……ピカチュウの名前が呼ばれた。残念だけど……ガッ!?」

は、腹に……肘打ち?
こなたが、俺の拘束を解こうと殴りかかってきた。
ぐおっ……ヒビが入ってるところに、これは……!
こなた、そういや格闘技の経験あるとか、TASに襲われる前に言ってたな。
「や、やめろ、こなた!俺は、どんなに殴られても離さないぞ!」
「うるさい、うるさい!離せぇ!かがみのところに行くんだぁあ!」
「どこでやられたのかも分からない!ゴマモンと真が無事なんだ、二人が戻ってきたときに、仲間の俺たちがいなくてどうするんだよ!」

二人とも、こっちに逃げてきてるかもしれない。
だったら、下手に動くより待ってた方が合流できるはずだ。

「ナ カ マ……?」
打撃の重みが、増した。
胃液を戻しそうになるが、こらえる。
「私の仲間は、かがみとつかさだけ……お前達なんて、仲間なんかじゃない!」
う、嘘だろ、こなた。
みんなが信用しあえるようにって……初めに言ったのは、こなたじゃないかよ。

「コロネッ!」
何する気だ、こなた……まさか、冗談だろ!?
「圭一に体当たり!」
こなた、本気で……くそ、耐えられるか!?

「……コロネ?」
何だ、コロネが動かない……それどころか、苦しんでいる?
「使えないな!なにして、あうっ!?」
え……攻撃を食らったのは、こなた?
しかも、体当たりなんかじゃない。

どうも、ピッピです。
コナタが大暴れしているのを、僕はまた見ているしかなかった。
向こうに行ったカガミが呼ばれたんだから、当然なんですけど。
ああ、他の二人は無事なのか、と思っていると、コナタがケーイチを殴る殴る。
とうとう、仲間じゃないなんて言ってます。

ああ、あのTASと戦ったときは、あんなに団結していたのに。
でも、コナタの悲しみを考えると、何にも言えません。
止めないと……でもどうしよう。
ゆびをふるで、ちょうどいい技なんか出ないだろうし。
ゆびをふる以外に脳の無い僕にできること、できること……
ん?

ゆびをふるしか脳が無い?
本当に?

「コロネ!圭一に体当たり」
わあ!?もう、こうなったらやるしかない!!
僕は、こなたに攻撃した。

僕の技「はたく」で。

完ッッッッッッッッッッッッ全に忘れていた。
僕の技は、ゆびをふる、だけじゃない。
はたく、うたう、おうふくビンタ。
覚えてから、一回も使ったことの無い技の数々。
あまりにも使わないから、覚えてることすら忘れてた。
というか、本当に忘れてないか心配になったが、この通り使えた。
「こ、こなたあ!」

初めてで、威力の加減すら出来なかった。

やっちまったあああああああああ!!

吹っ飛んだ、TASに蹴られたときみたいに、コナタが吹っ飛んだ!
しかも油断してるところにモロ!やばい、死んでないよね!
「ぴ、ピッピ……」
ケケケケケケーイチ、は、判定は?
「せ、セーフ……」
気を失って、動かなくなったコナタと、苦しんでいるコロネを僕たちは町まで運んだ。



博之を待って、どれだけ経ったのか。
再び放送が始まった。
そして、声を聞いて私は狂いそうになる。
「真紅をジャンクにした奴……!」
nのフィールドまで入り込み、真紅を壊したピエロ。
「そう、ピエモンと言うのねぇ?」
たかが道化師が、お父様の作った最高の人形、ローゼンメイデンを破壊するなど、許されない。
それが、どれほど嫌いな姉妹だったとはいえ
(……なんて、いつまでも嫌ってたのは、私だけかもしれないけどねぇ)

それじゃ、哀れな脱落者の名前を読み上げようか――
いけない、動けないなら、せめてこういうことは聞いておかないと。

高町なのは

いきなり、ティアナが探していた人の名前が呼ばれた。
とんでもない実力者だということだったが、つまりそれ以上に強い人間がいるのか。
(それとも、ティアナみたいな甘い人で、騙し討ちで死んだのかしらぁ?)
その後も読み上げられていく。

永井
(えっ!?)
けいこ
(違った……けど、あの二人の母親……)
私から見ればお父様を失うのと同じこと。
(耐えられない……!)
長い時を姿を変えて生きるお父様が、死ぬなどありえない。
だが、万が一そんなことになったら、私たちは耐え切れない。
(あの二人、今頃――)

――永井浩二――サトシ

以上十四名が今回の脱落者だ
(――――ながい、こう、じ?)
永井浩二?博之の兄?
どうしようもなく不完全で……それでもたくさんの人に愛されていた?
「ほ、ほら、やっぱり。ふ、不完全で、た、戦いの場で生き残れるはずが……」
当然だ、あまりにも当然過ぎる。
なのに、なぜ

「馬鹿みたい、なんで私が泣いてるのかしらぁ?」
ああ、きっと博之が悲しんでるから、逆に感情でも流れてきたのだろう。
母と兄、両方一気に死んでしまったのだから――
「――――あ」
塔に行ったのに、死んだのは浩二だけ?
ティアナも、博之も呼ばれていない。
「まさか、まだ……戦っている?」
戦闘が、放送で区切り良く終わるなんて限らない。
たまたま、放送中は生きていて、その1秒後に死んでいても、読み上げられない。
「ひ、博之……!」
立ち上がるが、数歩歩いて、また倒れてしまう。
「まさか……一生治らない?これじゃあ、あの頃と同じ……」

初めて、真紅とあった頃を思い出す。
あの頃の私は、ローゼンメイデンですらなかった。
ローザミスティカも与えられなかったジャンク。
歩くことも、まともに出来なかったのを、優しく教えてくれたのは……真紅。
それは、ローゼンメイデンを名乗るジャンク人形への、哀れみに過ぎなかったのだけど
「……同じことを、雛苺にもしているのかと思ってたのだけど」

真紅は、変わった。
私同様の完全主義者だった真紅は変わり、雛苺を擁護していたのも、私の時とは違った。
「こっちは100万時間以上も恨んできたのに、眼鏡と出会って1万時間もしないで、反省するなんて……こっちが馬鹿みたぁい」
変われなかったのは、私。
お父様にローザミスティカを与えられてローゼンメイデン第1ドールになったのに。
長年恨みを持ち続けるような人形が、アリスになれるはずもないのに。

「……?」
自分で言ってて、何かおかしいと思った。
私はローゼンメイデン第1ドール……
でも、ローザミスティカが無かったのでローゼンメイデンじゃなかった。
真紅たちは、私より前からアリス・ゲームをやっていた。
初めから7体と決まってるのに、それじゃあ最初は6体しかない。
私は、お父様が認めてくれたからローザミスティカを貰ったのだと思う。
でも、それまでは6体で戦わせていたのだから、アリスなど決まらない。
まさか、まさかとは思う。あのお父様がそんなことをするはずが無い。

大ポカとか、私を完全に作った気でいたとか、そんな馬鹿な真似をするはずがない。
そんなことは絶対に無いと思うが、もしそうなら。
「お父様の、馬鹿乙……」
乳酸菌が足りないから、こんな変なことを考えるのだと、忘れることにした。

やはり、体がたまに自由に動かない。片手が無いため、その瞬間に倒れてしまう。
待とう。下手に動けば、博之の体力を吸ってしまうかもしれない。
そう思った矢先に

「よし、この家に運ぼう」
外から、知らない声が聞こえた。
(マズイわぁ……どこかに隠れないと)
どこにだって隠れられるが、体が痺れクローゼットの中に這い上がることも出来ない。
何か、良い隠れ場所はと家の中を見回すと、部屋の隅にぬいぐるみがたくさん置いてある。
この中に紛れれば、となんとかもつれながら人形に混ざる。
(え……そ、そんな!?)
そこで私は、ありえないほどの衝撃を受けた。

だって、隣に、私の隣にいたのは、私が誰よりも愛している……


「ん……?」
ここは、どこだろう。
「痛ッ、なんでこんなところが痛いんだろ?」
記憶が曖昧で、頭がボーっとする。
「こなた、気がついたのか」
「あれ、圭ちゃん?私、なんでベッドに……」

それじゃ、哀れな脱落者の名前を読み上げようか――

「あ……アアアアアアアア!」
かがみん、かがみんが……かがみんが!!
「お、落ち着けこなた!」
「落ち着いて?落ち着いてなんかいたら、かがみんが!」
「……もう、遅いんだ」
モウ オソインダ
もう、死んでしまったのだから。

「私のせいだ……私が、チームをシャッフルしようなんて言ったから!」
「そうは思わない。あれは俺も正しいと思った。俺達の認識が、少し甘かったんだ」
どんなフォローをされたって、もうかがみは死んでしまった。
「つかさに……なんて言って謝ったら」
「こなただけの責任じゃねぇ!俺にも、誰にも責任はある!」
「でも!」
「どんなに責任を感じたって、生き返らないんだ!俺を庇った、ピカチュウも!」
ピカチュウ……でも、やっぱり私は……

「あ……れ、コロネ?」
クッションの上で、コロネが弱弱しく丸まっている。
そうだ、さっき命令しても……
私、使えないな、なんて酷いこと……
こんなに弱っていたコロネに、なんて言葉を吐き捨てたのか。
ちょっと格闘技をかじってるから、大男にだって素手なら負けないって思ってた。
でも、あのTASは恐ろしく強くて、殺されるかと本気で怖かった。
ただのオタクの私が、ここで生き残れるわけが無いんだ……

こなたは、終わっちまったのか?

いいや、違うね。
終わらせることは簡単さだ。
だが、せっかくだから俺は困難な道を選ぶぜ!
生きてる以上、終わってしまうことなんて無い。
ちょっと火が消えかけてるだけさ。
そして、その火を燃え上がらせるのは、誰の仕事だ?

俺だろ、口先の魔術師、前原圭一!

「聞いてくれ、俺たちがあいつらに勝てない理由を」
「勝てない……理由?」
ちょっとだけ反応してくれた。
「俺たちが勝てないのは、あいつらに絶対の意志があるからだ」
「絶対の、意志?」
「あいつらの絶対の意志が、絶対の未来を俺たちに叩きつけてくる。
俺たちは、ただのガキだ。ただの人間だ。あんな奴らの意志に一人で勝てるわけが無い」

強い意志は運命を強固にする。
それに対して、俺達一人の意志では、あまりにも弱く、崩れやすい。
「絶対の未来を叩きつけてくるなら、俺たちはその未来を吹っ飛ばして運命を切り開く!
生き残った俺たち全員は、分かり合えないのかもしれない。
でも、きっと分かり合える人たちはいる。
後は、信じて疑わないだけだ。俺たちは、あいつらの未来を打ち破れるってな」
こなたの目は、まだ虚ろで……震えていた。
それでも、圭一は言葉を紡ぐ。

「だが、それでも勝てない。なにせ相手は人間とは思えないからな。
俺達の意志の力が、やっとあいつらに及んだところで、全てを打ち破るだけの力を、あいつらは、きっと持っている」
あのTASより、確実に強い。
自分で制御できない相手を、この場に呼ぶはずも無い。
「勝てるわけ……無いよ」

「諦めるなよ、泉こなた。俺たちは、生きてる。
こなた、なんであの時……ピカチュウは死んだんだと思う?」
「それは……あのTASっていうのが、凄く強くて……」
「違うな」
それはありえないと、否定する。
「なら、何だって言うのさ!」

「俺達の中に、勝利を信じられない奴がいたからだ」

ピッピの体が、ビクッと震える。
「初めの不意打ちを入れたって、俺達の力はTAS一人と互角だった。
ピカチュウは、最後の最期まで、TASに屈しなかった。
それでも、ピカチュウが死んだのは……きっと、俺達の意志があいつの意志に負けてたんだ」
ピッピは、もうこの場から逃げ出したかった。
ごめんなさいと謝って、この場から離れなかった。

「それでも、あいつに勝てたのは……土壇場で、みんなが信じてくれたからに違いない」
ピッピの体の震えが止まり、圭一を見つめる。
「こなたは、コロネに命令して、TASの動きを封じてくれた。ピッピは、あいつにトドメを刺してくれた。
奇跡は起きる、俺達の力で、意志で起こせるはずなんだ。
あの瞬間に、どっちかが何もしなかったら、少なくとも俺は死んでたよ」
突然、圭一が頭を深く下げる。
「ありがとう、こなた、ピッピ。俺を助けてくれて……本当にありがとう」

「なに言ってるのさ、圭ちゃん……「仲間」なんだもん、当然じゃん」
頭を上げた圭一に、こなたが胸に飛び込んできた。
「ごめん、ごめんなさい。仲間じゃないなんて言って、ごめんなさい、ごめんなさい……!」

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、

ああ、そうだった。あの時も、こんな風に泣いてたはずなのに。
「こなた、そりゃあこっちの台詞だ。仲間にごめんなさいなんて、二度も言わせるつもりはなかったのにな」
「二度、も?」
「……ああ」

正直、これは話すべきかと思ったが……伝えられるときに、伝えないと。
きっと、いつか後悔する。

「仲間じゃないって、言われて……思い出したことがあるんだ」
「思い出した、こと?」
「俺は、大きな間違いを犯したんだ。仲間を信じなかった、仲間を……敵だと思い込んだ」

それは、この世界に来る前の話だ。
俺は、都会から田舎の雛見沢村に引っ越してきた。
そこで、魅音、レナ、沙都子、梨花ちゃん……大事な仲間が出来た。
でも、雛見沢村には、よそ者を嫌うその土地の神様であるオヤシロ様のタタリ
そう呼ばれる、不可解な殺人事件が何年も続いていた。
それを、レナは、魅音は……俺に隠していた。
「えっ、それって……気遣ってたんじゃないの?」
「ああ、そうだ。転校したての奴に、この村では殺人事件が横行してるなんて、どうして伝えないといけない?」

でも、俺は気付けなかった。
魅音は、その事件を裏で起こしているのではないかと言われる、園崎家の次期党首。
レナは、村を離れ、オヤシロ様のタタリにあったという、村に帰ってきた少女。
沙都子と梨花ちゃんの両親は、オヤシロ様のタタリの被害者……
そんな情報だけを聞いて、俺は……仲間の声を聞かなくなった。
そればかりか、俺自身がおかしくなった。
人の言葉を、自分の勝手な解釈をするようになり、ちょっと考えれば当然のことを
信じられない事だと恐れるようになった。
「狭い村で、俺がどこで何してたなんて、すぐわかるってのに……俺は村中が監視してるなんて思い込んだ」

風邪を引いたんだろうって、お見舞いに持ってきてくれたおはぎに、タバスコが入ってた。
それを、俺は舌の感じだけで、裁縫針が入ってたなんて、思い込んだ。
ちょっとした冗談だったのに。針なんて入ってるはずが無かったのに。

様子がおかしい俺を心配して、家まで来てくれたレナを、怪我させて追い返した。
「大雨の中、外で俺を怒らせたと、ごめんなさいごめんなさいと
泣いて謝るレナを………俺は、不気味だと、恐ろしいと、そう思いやがった」 

沙都子の兄貴の、北条悟史って奴が、オヤシロ様のタタリで行方不明になっていた。
魅音たちの仲間で……去年まで、俺がいた場所にいた人間。
それを知って、みんなが俺を消そうとしてると思い込んで、金属バットを振り回して。
「隠し事をしたお前達は、仲間じゃない。そう言った」
それでも、皆は俺を心配して心配して……なのに

「俺を、本気で心配してくれたレナと魅音を……バットで殴り殺した」

唖然として聞いてるこなたとピッピの顔が、涙で見えなくなった。
「はは、何で泣いてんだ。自分から勝手に話しておいて、悪い」
信じられないはずだ。だって、レナも魅音も生きて参加してるんだから。
そもそも、ここに呼ばれる直前の俺の記憶でも、レナも魅音も生きている。
少なくとも、まだ誰もおかしくなっていない世界だったはずだ。

これは、二度と許されない所業。
この殺し合いに呼ばれたレナと魅音は、俺が殺した時間とは、きっと違う時間のレナと魅音だから。
誰も知るはずの無い、絶対に許されない罪……




「圭ちゃんを、許すよ」




「こな、た?」

「慰めなんかじゃない。私は、それを「知ってる」よ、圭ちゃん」
そんなはずはない。だって、これは俺しか知りえない「ありえない別の世界」の話なのに?
「ごめん、でも……なんで知ってるのか、わからないんだ。
記憶がごちゃごちゃで、適当に言ってるようにしか聞こえないだろうけど……
私は知ってるよ。圭ちゃんが、それを、その世界で悔いることなく死んでいったことを、
どれほど悔いているのかを」
それは、俺しか知らない、別の世界の愚かな俺の心理
俺は、その世界で死んだことなんて言ってないのに、俺が身勝手な考えを抱いたまま
死んだことを、何故知っているのか。
いや、そんなことを、どうでもよかった。
ただ、こなたの言葉は真実なのだと思えた。

曖昧だと自分で言って、それでも、こなたは自信をもって

「私は、その事件の当事者でもない、ただ知っているだけ。
それでも、それが何よりも凄い奇跡だって、私にはわかる。
この言葉も、何もかも、ゲームか何かの借り物だけど
こんなオタクの私にも、圭ちゃんを許せる」

「……私を、信じて」
満面の笑顔で、俺の罪を、許してくれた。


ディパックから、ある物を取り出す。
かがみから託された、薬……雛見沢症候群治療薬。
「あ、まさか……」
きっと、そうなんだ。
これが、俺の狂った原因を治す薬。
手遅れだった俺を、救えたかもしれない薬。
あの時、俺は死んだけど、きっとこの日の為にチャンスを与えられたんだ。

「詩音は助けられなかったけど、まだ魅音とレナと富竹さんがいる。
俺の記憶じゃ、富竹さんは、俺と同じ症状で死んでるはずなんだ」
三人の誰かが、俺のようにおかしくなっているかもしれない。
「こなた、許してくれてありがとう。おかげで、俺は……罪を滅ぼす決意が出来たよ」
俺の罪は、俺と同じことになってしまった人を救って、本当に滅ぼせると思う。

「俺に、どれだけのことができるかわからない。でも、俺は命を賭けて戦う」
狂った俺に、バットで殴られても、俺を救おうと死ぬまで俺を止めようとしたレナ。
俺を元気付けようとしてくれたのに、それを勘違いして殺してしまった魅音。
そして、俺を庇って死んだ……ピカチュウ。
三人は、命を賭けてくれた。なら……俺も賭けないでどうする。

「私も、賭けるよ」
こなた?
「今更間に合わないかもしれない。どこかで、血を流して死に掛けてるのかも
かがみを生き返らせるために、人を殺しちゃってるのかもわからない」
だけど、それでも助けたいと思うことが、全ての始まり。
「許されるなら、かがみんを、生き返らせたい。でも、それよりも……つかさを、助けないと」

「僕も、そう思います」
ピッピ……ピカチュウのほんやくコンニャクを食べたのか。
「このゲームに乗って、ピカチュウを生き返らせて、喜ぶはずが無い」

貴方は、他のみんなの死を引き換えに生き返ったなんて……嬉しいはずがない。
「それは……生き返らせた人しか喜ばないよ」

貴方を生き返らせるために、他の皆を殺しました。
大事な仲間も、貴方の妹も殺したけど大丈夫。
これから、生き返らせてあげるから。

それで、いったい誰が喜ぶ?

「ああ。そんなことは……たとえ、本当に生き返らせることができるとしても」
「許されない、ね。どんな願いも叶える万能の力を求めた英雄達がいた。
でも、その求めた物は、悪意でしか願いを叶えられない不完全な力だった……
ま、ゲームの話だけどね。悪い奴の力なんて、そんな物なんじゃないかな」
その言葉は嘘だ。こなたが、仲間を生き返らせたいように、俺もその思いはある。

「決め付けるには、まだ早いぜ。本当にそんなことができるなら、奴らをぶっ潰してから奪ってやるって手もあるんだ。」
まだ、何も諦める必要はない。
奴らが神に等しい存在なら、その神通力だけ頂いてやればいい。

そこに、ピッピが、何かを持ってきた。
デジヴァイス……そういえば、これの追跡機能は?
「今見ても、映らないんです。遠すぎると、映らないのかな?」
「それを、私にくれるの?」
「ぜひ貰ってください。カガミも、同じもの持ってたじゃないですか」
「ありがとう、ピッピ……」
こなたが、ピッピからデジヴァイスを受け取る。

その瞬間、デジヴァイス震え始める。
「な、何?」
「何だ?」
「ええ、な、何?」
「ちょっとぉ、なんなのぉ?」
デジヴァイスから、発生した進化の光。
その光の向かった先は、弱っているコロネ。
「コ、コロネ!?」
コロネの体が、サナギのような生き物へと姿を変える。

そればかりではない、そのサナギにひびが入る。
そして、中から美しい蝶が生まれた。

「に……二段階連続進化!?」
たしかに、そういう前例があるって聞いたことはある。
進化をキャンセルし続けたポケモンが、一気に進化するって話は。
苦しそうだったのは、進化を止めようとしていたから?
でも、それを後押しするどころか、一気にもう一段階進化するなんて……

「うわっ、凄いじゃんコロネ!断然強そうになったよ!」
だが、当のコロネは浮かない顔だ。
理由を聞いてみる……げ、マジで?

「なんか、コロネの本当のトレーナー。進化させない主義者らしいんです。
だから、進化したら帰っても捨てられるって、今まで進化を我慢してたらしいです」
ポケモンの進化キャンセルは、正規のポケモントレーナーにしか出来ない。
それを無理やり我慢するなんて、体に悪い影響しか与えない。

「ね、コロネ。私もコロネのトレーナーに事情を説明するよ。
それでも駄目だったらさ。コロネの面倒は、私が一生見てあげるよ」
どうやら、それで不安が無くなったらしい。コロネも元気に部屋を飛ぶ。
「かたくなるって防御アップ技と、ぎんいろのかぜって攻撃技が使えるようになったそうです」

へー、強くなったじゃんって言うコナタには悪いけど、実際はイマイチだ。
たいあたり、いとをはく、かたくなる、ぎんいろのかぜ
ぎんいろのかぜは、休まずに使える回数は多くないし、そこまで強くないようだ
まあ、ゆびをふる以外に攻撃手段の少ない僕の言えたことじゃないけど……
レベルが高くて、もう技を覚えられないバタフリーは、イマイチな能力だと思う。
わざマシンがあれば、問題ないのになぁ。

「ところで、そろそろ私も喋っていいかしらぁ?」
銀様はそろそろお怒りのご様子だった。



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