信仰は儚き人間の為に ◆qwglOGQwIk




不気味な地下壕を淡々と歩くYOKODUNA、彼が歩き続けてかなりの時間が経過していた。
その金属に覆われた空間にはYOKODUNAの求めるMONONOFUどころか、何者の気配すら感じられなかった。
あまりにも長い通路であったため、一度は引き返そうかとすら考えた。
だが、そのあまりにも不自然に長い通路の奥先には一体何があるのかという興味に突き動かされ、歩く。
それから更に長い通路を進んだYOKODUNAの視界からようやく単調な通路が消え、大きな部屋へと到達することになった。

その部屋は見渡す限り人の脳を培養する何かで覆われた不気味な空間。
何が目的なのかも分からず、ただ人の嫌悪を煽るだけの光景にYOKODUNAは憎悪に打ち震える。
また、これだけ怪しい通路にもかかわらずYOKODUNAが求めるようなものは何一つ無かったのだから、気分さえも良くない。
ほぼ腹立ち紛れといった具合で、その脳髄のガラスを破壊するためSHIKO-FUMIをする。
一度のSHIKOでは衝撃が足りないのか一つも壊れなかったのだが、もう一発SHIKOをかますとガラスにひびが入り、三度目になるとすべてが崩れ落ちた。
床にたくさんの脳髄と液が滴り、グチョリ、ネチョリと落下音を立てて破裂していく。
腹立ち紛れの行為に八つ当たり以上の意味は無く、ただYOKODUNAの体に脳髄が飛び掛る結果にしかならなかった。
もうここにいるのもしょうがないと思い、YOKODUNAは天井を壊して脱出しようと思うが、一つのものが目に付く。

そこには黒い穴があった。それは形容するならドアについている鍵の穴といった文句が適当なものであった。
中央に見える壁の下方に見えるそれが何なのかに興味を持ち、その鍵穴を覗く。手を突っ込んで中をまさぐる。
だが何も掴めず、何も見えなかった。
かすかに音が聞こえると思ったYOKODUNAは聞き耳を立てる。
そこからはかすかに音が聞こえていたため、耳を澄ます。
そこからはみっくみく……と言った女の歌声が聞こえたり、キワミアッー!等の男の叫びが聞こえていた。
その歌声や男の叫び声が何なのかは分からなかったが、その中に立ち入るのは無理だとYOKODUNAは悟る。

この不思議な空間にまた来ることになったら、そのときまた考えるとすることにしたYOKODUNAは、天井を見つめる。
もはやこの空間に求めるものは何も無く、進むべき道も閉鎖されているとなれば長居は無用。
KIを溜め、それを全身に纏うと天井めがけてBUTIKAMASHIを仕掛ける。





「これ、ぜんぜん美味しくないね……」
「うっうー……そんなに不味いとは思えないけど」
「ん、変わった味だがパンってのも悪くないと思うぜ?」
「空腹は最高の調味料と言わざるを得ない」
「ふぅん、こんな安物パンは腹が減ってない限りは食べようとも思えないというのは同感だ」

放送まで時間がまだあると判断したカイバーマン、お覇王、魔理沙、やよい、亜美ら五人は、E-2から来るであろう霊夢達を待つため、川のほとりで情報交換兼食事を取っていた。
食事をしながら魔理沙達に第一放送のメモの写しを見せたり、危険人物や知り合いの情報を一通り交換していた。
また、川に不思議な船が浮かんでいたことや、そこに危険な人物がいることも亜美に教えた。
だが、船の中にあった生首と真?の死については伏せておいた。
せっかくの安らぎの時間を奪うことに比べれば、無理をして今伝える必要は無いと考えたからだ。
当然その関係で生首を持つことのはの存在も伏せていて、支給品に関する情報交換はまだ済んではいなかった。

「それにしても不味いなぁ、はむっ……」
「と言いながら結局全部食べてるんだぜ」
「お腹がすいてるんだからしょうがないし~」

と、その瞬間に川から巨大な水飛沫が飛び上がった。
川のほとりに位置していた五人は巻き上げられた水を盛大に被ってしまうこととなった。

「うわっ、何これ!」
「濡れ濡れのスケスケと言わざるを得ない」
「おい、上を見ろ!」

五人が顔を上げた先には、青い翼を纏った相撲取りが浮かび上がっていた。
五人がYOKODUNAの存在をようやく認識した頃、地面へと降り立ったYOKODUNAが叫ぶ。


「我が名はYOKODUNA、私とTORIKUMIをして貰おうか!」


「取り組みだぁ? あいにくだが服を脱ぐようなスポーツで暇を潰す気も無いんだぜ」
「何もSUMOUで勝負しろとは言わん、自分のスタイルで望むが良い」
「なら、勝負なんて別にしなくて……」

やよいが言を言い切る前に、YOKODUNAはSHIKO-FUMIでそれを掻き消す。
つまり、逃亡は決して許されないと言うメッセージだと言うことであった。

「お兄ちゃん……」
「ふぅん……、これは不味いことになったな。やよい、亜美、魔理沙、ついてこい!」
「わ、わわわっ。何するんだよ兄(c)~」
「奴は危険だ、避難する! お覇王、済まないが任せる!」

目の前の相撲取り、YOKODUNAは引く気など毛頭無い。
たしかに人数では圧倒しているが、戦力が足りない。
特にやよいや亜美と言った非戦闘者が戦闘に巻き込まれればどのような惨事が起こるのかすらわからない。
故にカイバーマンは非戦闘者の離脱を促し、戦闘要員であるお覇王の足手まといにならないようにしたということだ。

「残念だが私は自体させていただくぜ、売られた喧嘩は買うのが礼儀ってもんだ」
「そうか、なら俺達は例の城の方へと向かう、後は頼んだぞ!」
「任せろと言わざるを得ない」


【D-2 道/一日目・夕方(放送直前)】

【海馬瀬人@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:断固たる対主催の決意、ゴッドカイバーマン、服がびしょ濡れ
[装備]:正義の味方カイバーマンのコスプレ@遊戯王DM ゴッドクラッシュ@ゴッドマン
盗賊の棺桶@勇者の代わりにバラモス倒しに行くことになった
DMカード(青眼の白龍、魔法の筒)@遊戯王DM(現在使用不可)
[道具]:支給品一式×2(食料1消費)、十得ナイフ@現実、ナイフとフォーク×2、包丁
[思考・状況]
1:ひとまずやよいと亜美を連れて避難し、霊夢と合流するべく城方面へと向かう
2:自分と同じ境遇、そうなりそうな人を救いたい(ただし仲間の安全が優先)
3:三回目の放送で向こうの生死確認後、E-2橋で霊夢から首輪を貰う
4:船に積んであったコンピュータを利用したい。船内の探索もできればしたかった
5:馬の骨デュエリストの首輪を採集した後、近くの草原に埋葬する
6:エアーマンなど高度なロボットを解体して、自分の技術力が通用するか知りたい
7:殺しあいには絶対に乗らない
※ブルーアイズが使えないのは、自分が主として認められていないためだと思っています
※ロックマンを岩を飛ばすロボットと予想。エアーマンの仲間と思っています
※危険な参加者、フシギダネの外見を亜美から聞いて妙に納得しました
※キーボードは船の艦橋にあるコンピュータに刺さったままです

【高槻やよい@THE IDOLM@STER】
[状態]:体力全快、右手骨折、服がびしょ濡れ
[装備]:氷嚢つき包帯、 ことのは@ヤンデレブラック
[道具]:支給品一式×2(水と食料1消費)、MASTER ARTIST01~10@THE IDOLM@STER
    DMカード(六芒星の呪縛、攻撃誘導アーマー)@遊戯王DM(現在使用不可)
[思考・状況]
1.とりあえずお兄ちゃんについてその場から離れる
2.痛みは治まったけど、怪我のちゃんとした治療はしないと
3.日吉さんは無事に助けられたかな? 来てくれるといいなあ
4.「ことのは」さんは、うまく使えば平気なんだろうけど……怖いかも
5.緑色の服の少年を後で埋葬してあげたい
6.人は絶対に殺しません
※ことのはの所持品は「カワサキのフライパン・誠の生首・鋸」です
※亜美に真?の死を伏せています。また生首を見せないようにことのはの存在も伏せています。

【双海亜美@THE IDOLM@STER】
[状態]:健康、ルイージ(HI☆GE)、服がびしょ濡れ
[装備]:ホーリーリング@デジモンアドベンチャー、ルイージの帽子@スーパーマリオワールド、弾幕の作り方@東方project
[道具]:支給品一式(食料1消費)、妖精の剣@ドラゴンクエストシリーズ
[思考・状況]
1:とりあえず兄(c)についていって避難する
2:殺し合いには乗らない。みんなで脱出する方法を探したい
3:ヒゲドルとして生きていきまーす、んっふっふー
※やよいからこれまでに出会った参加者の話は聞き終えました
 ただし真?の死どころか、ことのはの存在もまだ知りません


魔理沙はカイバーマンの呼びかけを断ったため、やよいと亜美だけがカイバーマンに手を引かれその場を急いで駆け出した。
一方のYOKODUNAはKIを充実させもう一発SHIKO-FUMIを行っていた。
お覇王と魔理沙もそれに怯むことなく、膝を全屈させるなど準備体操としけこんでいた。

「そういや、あいつら追いかけなくて良いのか?」

と、魔理沙ははるか後ろに遠ざかり、とても小さくなったカイバーマン達を指し示す。
このまま魔理沙達の勝負が始まったのならば、彼らを見失ってしまうのは間違いないであろう。

「何、いずれまた合間見える相手。お前達を倒した後にゆっくり追えばいい」

「なら、その予定は今からキャンセルだな」
「かかってこいと言わざるを得ない」

その安い挑発が自然と引き金になり、勝負が始まった。

YOKODUNAが超高速のSURIASHIでお覇王に接近し、HARITEを繰り出そうとする。
だが魔理沙が星型弾幕の展開によってYOKODUNAの高速摺り足の動きをわずかに止め、間一髪お覇王はHARITEを回避する。
HARITEを繰り出した時に生まれた隙を見逃さず、お覇王は打撃でYOKODUNAを押し返そうとする。
だがYOKODUNAの鋼の肉体に阻まれたせいか、お覇王のカウンターパンチも殆ど効いてはいない。
魔理沙もレーザーで援護するも、YOKODUNAはほんの僅か怯んだに過ぎなかった。
魔理沙とお覇王はYOKODUNAを蹴り飛ばしていったん距離を取り、もう一度向きなおす。

「私のレーザーを直撃してピンピンしてるとは、妖怪以上の化け物だな……」
「鋼の肉体と言わざるを得ない」
「RIKISHIに取ってその程度の攻撃は顔を凪ぐ風に過ぎん、お前達の力はその程度か?」

YOKODUNAが困惑する二人に向かってお返しの挑発を掛け、自身は体勢を低くしてBUTIKAMASHIの姿勢を取る。

「その程度ねえ……、そこまで言うなら正面突破してやるぜ」
「全力で望まざるを得ない」

YOKODUNAがBUTIKAMASHIを仕掛けてくると同時、魔理沙とお覇王が合図を取る。

「行くぜお覇王!」
「覇王翔吼拳を使わざるを得ない!」


「「覇王翔吼拳!!!」」

YOKODUNAと両者が肉薄する一瞬、魔理沙とお覇王はYOKODUNAの巨体目掛けてダブル覇王翔吼拳を放つ。
両者の放ったダブル覇王翔吼拳を受け、YOKODUNAの巨体が空目掛けて吹き飛ばされる。
吹き飛ばされたYOKODUNAはダブル覇王翔吼拳の衝撃からなんとか逃れ、KIを纏いながら地上へと着地する。

「ちっくしょー、やったと思ったけどまだ立つか……」
「超人と言わざるを得ない」

地面に着地したYOKODUNAは着地後にややよろめいたものの、それでも確かな足取りで魔理沙とお覇王の元へと向かう。
一方の魔理沙とお覇王は必殺の覇王翔吼拳を使ったために、手に膝を付きながら肩で息をしている有様であった。
少し寝て体力を回復したとはいえ、失った体力を回復するには不十分すぎる時間でしかなかったのだ。

「さすがだな、お前達のような強者に会えて嬉しいぞ」
「ヤレヤレ、こっちはもうヘトヘトなんだけどな」
「同意せざるを得ない」
「先ほどの無礼は謝らせてもらう。お前達の名前を…………」

「待った!」

YOKODUNAの話に、魔理沙が突然割り込む。

「どうした、KOMUSUMEよ」
「勝負の途中で悪いが、私たちはお前が巻き上げた水飛沫のせいで全身濡れ鼠なんだ。
 せめて服に付いた水気を取るまで待て、それと何か拭く物があったらよこせ」
「今は真剣勝負の真っ最…………」
「服が濡れて動きづらいんだ、全力で勝負したかったら少しぐらい時間をよこせ」
「むう、それなら仕方が無い……」
「一時休戦と言わざるを得ない」

「さて、お前ら後ろを向いてろ」
「しかし戦闘中に敵に背中を見せることは……」
「この変体相撲取りめ、嫁入り前の女の裸をタダで拝む気か?」
「む、むぅ……」

魔理沙はお覇王とYOKODUNAを半ば強制的に後ろを向かせた後、すぽぽぽーんと自身の衣服をすべて脱ぎ去った。
お覇王のほうも胴着をいったん脱ぐと、それを雑巾のように固く絞って水気を取る。
一方のYOKODUNAはマワシ一丁で濡れるような服は無いため、特に何もせずKIを集中させていた。

「絶対に振り向くなよー、振り向いたら殺すからなー」
「私もOTOKOだ、KOMUSUMEとは言えONAGOの裸は覗かん」
「それぐらいは当然のことと言わざるを得ない……」

胴着を脱水し、パタパタと仰いで自然乾燥させるお覇王。
一方のYOKODUNAは手持ち無沙汰なのか、魔理沙のために拭く物を探すためにディパックの中をまさぐっていた。
着ぐるみ、手錠、ドリルアーム、…………フゥ、そして鉢巻。

「鉢巻ならあるが、それでよいか?」
「上出来だ、こっちへよこせ」

と、YOKODUNAがディパックの中から鉢巻を取り出して後ろを振り向くと……

そこには水に濡れた金髪を纏い、色気の欠片も無い平らな胸に子供特有の凹凸の無い体型。
そして股下は……都合よく金髪で隠れていました。
後ろを振り向いてしまったYOKODUNAは魔理沙の生まれたままの姿をばっちり拝むことになり…………

「振り向いたら殺すって言っただろうがー!」
「す、済まないッ!」

YOKODUNAは平謝りをするも、乙女の怒り炸裂と言わんばかりにフルボッコにされてしまいました。

「……さて、気を取り直して行くか」
「さっきは済まな…………」
「言うなッ!」

なんとか着替えも終わり、仕切りなおしを始めようとした矢先にYOKODUNAは口を滑らす。
おかげで勝負前に一発余計な乙女の怒りを食らってしまいました。

「そろそろ始めようと言わざるを得ない」
「そうだな、では改めて名乗らせてもらおう。私の名前はYOKODUNA、SHURAに落ちたただのRIKISHIだ」
「普通の魔法使いの霧雨魔理沙だ」
「お覇王と名乗らざるを得ない」
「ほう、お覇王……」

YOKODUNAはお覇王の名前に驚喜する。名簿の上でしか意識に止めていなかった強者であるお覇王。
目の前の男はその名前に負けず、戦うに値する十分な強者であった。
加えてKOMUSUMEとはいえお覇王に勝るとも劣らない力量を持つ相手とも勝負できるとなれば、強者を求めるYOKODUNAにとっては感嘆の意を漏らすに値するほどの状況であった。

「お覇王、そして魔理沙よ。いざTORIKUMIをしてもらうぞ!」
「始めからそのつもりだ、お前をもう一度関脇あたりに落としてやるぜ」
「修羅に落ちた貴方を止めざるを得ない」

YOKODUNAがSHIKO-FUMIを行い地面を揺るがす。
魔理沙はディパックに手を入れ、羽を取り出す。
お覇王はYOKODUNAの正面に立ち、迎撃の態勢を取る。

一瞬の硬直状態の後、三者が動き出した。
YOKODUNAはSURIASHIでお覇王と魔理沙に接近をし、両者まとめてBUTIKAMASHIで吹き飛ばそうとする。
だがYOKODUNAのBUTIKAMASHIはお覇王にも魔理沙にも当たる事はなく、逆に魔理沙のマントによって反対に方向転換をさせられる。
その隙を見逃すことなく、お覇王は技を繰り出す。

「虎煌拳!」

反対方向へと強制的に方向転換させられたYOKODUNAはその場で踏みとどまって体を素早く捻るも、結果として虎煌拳の直撃を受ける形となった。
だがYOKODUNAはよろけても倒れず、その場に踏みとどまる。
だがYOKODUNAが踏みとどまったと同時、反撃の暇を与えることなく魔理沙がYOKODUNAの足元に切りこみ足を払う。
だがYOKODUNAの鋼の肉体と巨体によって支えられた足は動かず、逆に魔理沙が微動だにしないその足を蹴ってその場を離脱した。

「足払いも駄目か……、こりゃ上から押さえつけるしかないな」
「KOMUSUMEよ、まさかお前はSUMOUのルールに従って私を倒そうとしたのか?」
「……魔理沙だ、そしてその答えはイエスだ」
「面白い、やれるものならやってみろ!」
「言われなくてもやるんだぜ」

YOKODUNAは魔理沙のマントによる方向転換を警戒してか、じりじりとSURIASHIでにじり寄る。
魔理沙とお覇王はYOKODUNAの急接近が止まったため、距離を取りながらレーザーや虎煌拳でYOKODUNAに遠距離攻撃を仕掛ける。
だが、レーザーも虎煌拳もYOKODUNAは最小限の動きで回避され、無駄と分かったのか両者は遠距離攻撃を繰り出さなくなった。

「レーザーもチョン避けかぁ……」
「硬直状態と言わざるを得ない」
「なら、そういう時は強行突破だ」

魔理沙は少しずつ接近を続けていたYOKODUNAの正面に切り込む。
YOKODUNAもそれを見てSURIASHIの速度を急激に上げ、HARITEを繰り出す。
だがHARITEは魔理沙の帽子を叩き落したに過ぎず、空振りに終わった。

「悪いがスピードには自身があるんでね、殆どすべての奴に速さで負けたことはないんだ」

YOKODUNAの股座を潜り抜けた魔理沙はそのまま走り続け、高速で走りってYOKODUNAから遠ざかる。
股座をくぐられたYOKODUNAはHARITEを今度はお覇王目掛けて放つ。
お覇王は避けきれないのかHARITEをガードするも、そのHARITEの余波で大きく後ろに転がりながら吹き飛ばされる。
その隙を見逃すことなく、YOKODUNAはお覇王に止めを刺すべく接近をする。

瞬間、YOKOUNAの体が止まる。
その真上には、マントで滑空をしていた魔理沙が空中から急降下を仕掛けていた。

「私を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

YOKODUNAの股座をくぐり離脱した魔理沙は、十分な距離を走ってターンした後マントで滑空、そのままYOKODUNAに空中から急襲を加えるという行動に出ていた。
お覇王がYOKODUNAを引き付ていた時間に、魔理沙は空中からYOKODUNAの背中を標的に定めたと言うのだ。


「彗星「ブレイジングスター」!!!」


大量の星型弾とともに魔理沙が地面にYOKODUNAを叩き付ける。
地面にSHIKO-FUMIに勝るとも劣らない衝撃が走った後、魔理沙はブレイジングスターの着地点から飛び跳ねながら離脱した。

「愛用のホウキじゃないが、まぁ悪くない威力だ」
「上出来と言わざるを得ない」
「これでピンピンしてたらお手上げだ、私たちに打つ手は無い」

魔理沙がそう言い切る。そう断言するのも過言で無いほどの土煙が巻き起こり、地面も大量の星型弾で抉れていた。
ブレイジングスターを繰り出した魔理沙も既にボロボロで、服のあちこちに穴が開いていた。

一分ほどして土煙が晴れ、何もかも吹き飛ばされる隕石の着弾点にYOKODUNAはいた。

「私が膝を突いた……だと…………」

YOKOUNAの体は、ブレイジングスターによってうつ伏せに叩きつけられた。
ブレイジングスターから這い上がったものの、地面に手と膝を突いたままYOKODUNAは、SUMOUにおける敗北に打ち震えていた。

「これで分かっただろう、私の勝ちだ」

「フフフ……アッハッハッハハハハ!!!!!」

ブレイジングスターによって作られたクレーターの中心に立つYOKODUNAは、笑った。
心の底から笑った。
SUMOUのルールなど守る必要は無い野良試合。TORIKUMIというにはお粗末過ぎるその戦い。
世界最強の国技SUMOUの最高峰であるYOKODUNAは、SUMOUのSですらろくに知らぬようなKOMUSUMEに膝を突かされた。
それもSUMOUのルールに乗っ取って倒すとわざわざ予告されて。


敗北だった。
YOKODUNAになって久しく味わったことの無い、敗北だった。

「まっ、勝負はついたんだから大人しく……」
「ならん」
「……しつこいなぁ」
「往生際が悪いと言わざるを得ない」

YOKODUNAは魔理沙とお覇王に向かって歩く。
体はボロボロで、体中には所々流血が見える。足取りも確かなようで先ほどと比べて格段に遅い。
覇王翔吼拳にブレイジングスターを直撃したYOKODUNAの体は相当な消耗であり、傷ついたその体をKIの力で誤魔化す必要さえ出てきてしまった。

「魔理沙よ、今の試合、お前の勝ちだ」
「そりゃどうも」
「だが、まだこの殺し合いという勝負はついていない」
「はぁ……分かっていたが頭が固すぎるぜ…………」
「どちらかが動かなくなるまではまだ負けではないッ!」

YOKODUNAはKIDANを魔理沙とお覇王に放つ。
お覇王はKIDANを弾き落とし、魔理沙はギリギリの所で回避する。

「ったく、屁理屈にも程があるぜ!」
「同意せざるを得ない!」
「何とでも言うがいい、この先を通りたいのならば私を倒すしかないのだ!」

YOKODUNAの動きはかなり鈍く、先ほどまでの肉弾戦とは打って変わってKIDAN連打に切り替わっていた。
魔理沙とお覇王は繰り出される大量のKIDANを避けたり防御したりするも、被弾数は着実に増えていた。
ブレイジングスターを撃った結果として魔力の殆どと使い果たしてヘトヘトの魔理沙、魔理沙ほどではないが消耗しているお覇王もまた少しずつであるが体力を削られていた。

「このままじゃ埒が明かない、お覇王!」
「覇王翔吼拳を使わざるを得ない!」

「いくぜ必殺!」
「「覇王翔吼拳!!!」」

YOKODUNAは魔理沙とお覇王のダブル覇王翔吼拳の体勢を見ると、KIDANを止め、残りの気を集中する。

「魔理沙にお覇王、これが私の全てを込めたGENKI-DAMAだ!」

迫りくる覇王翔吼拳目掛けて、GENKI-DAMAをぶつける。
ぶつかり合った二つのエネルギーがはじけ飛んで、強烈な爆風を当たりに撒き散らす。
戦場に立つ三者は爆風から踏みとどまるのに全エネルギーを集中していた。

ダブル覇王翔吼拳にGENKI-DAMA、少しでも弱いほうが負けることを両者は理解していた。

均衡状態はなおも続き、硬直状態へと突入した巨大エネルギーが手近な発散口である地面を削り取ってゆく。
ぶつかり合い続けたエネルギーは縮小を続けながらも、やがては一方向に動き出した。



YOKODUNAの眼前に、ダブル覇王翔吼拳とGENKI-DAMAが迫る。

YOKODUNAは目の前に迫りくるそのエネルギーをただ見つめていた。
最初の半分ほどにはじけ飛んで消滅したとはいえ、ダブル覇王翔吼拳とGENKI-DAMAの二つを飲み込んだエネルギーはその片方どちらかよりもはるかに大きい。
もうYOKODUNAではそれを止めることはできない。
ゆっくりだが、確実にYOKODUNAの息を止めるべく、そのエネルギーは向かってゆく。

YOKODUNAの眼前に走馬灯が移る。
初めてSUMOUに触れた時のこと、RIKISHIとして土俵に初めてあがった時のこと、敗北に打ち震え涙を呑んだあの時のHONBASHO。
優勝の掛かったSENSYURAKUで勝ち、見事初優勝を掴んだあの日のこと。
どれも、YOKODUNAにとってかけがえの無い大切な勝負であった。
目の前に迫りくるエネルギー体も、ピヨシとの勝負も、その眼前に広がる敗北の前では無意味だった。

それでも、

それでも、全てが無意味ではなかった。
YOKODUNAが打ち震えるKAKUKAIの堕落、SHURAとJIHIの狭間で彷徨い、燻る自分。
世界最強の国技、いや人類最強の格闘技を修めた者が敗北を認めるのか。
否。SUMOUこそは世界最強。
ならばそれを継承するYOKODUNAが敗北を認めること。
すなわち、それはNIPPON-JINが愛するSUMOUを汚すことでしかない。
NIPPON-JINが作り上げた2000年に渡る最強の伝統を、この若輩者である私が汚しては歴代のYOKODUNA達にあの世で顔向けができるはずなど無い。


だから私は、戦わなければいけないのだ!

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

YOKODUNAは迫りくるエネルギー体に向かってHARITEを繰り出した。
手の皮がめくれ、焼け続けるのもかまわず、HARITEを撃つ。


次の一撃こそが、最強であると信じて。

「うお、止まった!?」
「なんという執念と言わざるを得ない」

ダブル覇王翔吼拳とGENKI-DAMAを飲み込んだそのエネルギー体の動きがYOKODUNAに被弾する直前に止まった。
それどころか、逆に魔理沙とお覇王向かい始めたではないか。
決したかに思われた勝負は逆にYOKODUNAの執念によって振り出しに戻された。

「生半可な攻撃じゃ無理だが……」
「やるしかないと言わざるを得ない」

魔力も気力も限界、今にも倒れそうなお覇王と魔理沙。
それでも、迫りくるエネルギー体をとめるには生半可な技は通用しない。
犠牲を構わず、己の持つ最強の技を繰り出す。

「「覇王翔吼拳!!!」」

ギリギリまで迫ってきたエネルギー体にダブル覇王翔吼拳が当たる。
だがYOKODUNAの執念のHARITEによって破られたエネルギー体の均衡は崩れ、ダブル覇王翔吼拳でも勢いは変わらなかった。
そのダブル覇王翔吼拳さえも、気力と魔力不足によって本来の威力を出し切れてすらいなかった。

「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」」

魔理沙とお覇王は限界を超えて繰り出した覇王翔吼拳を更に超えて出力を上げる。
この一撃を止めるために全力全開の更に先を行かなければ、死が待っているだけだ。
パチパチと音を立て、エネルギー弾と覇王翔吼拳が入り混じりあい、エネルギーを弾けさせる。
爆風はなおも強くなり、対面に位置するYOKODUNAは立つことすらかなわず、姿勢を低くして吹き飛ばされないように耐えるしかなかった。
そのエネルギーとダブル覇王翔吼拳の押し合いが始まって幾らかの時間が経過したか、その場に爆音が響いた。
そしてYOKODUNAの視界は、魔理沙の視界は、お覇王の視界は、真っ白に染まった。

「あー……、いき……てる…………?」

閃光が去り、白く染まった視界が晴れてゆく。
そこにある光景は最初の頃とは想像も付かないほど無残な光景で、近くの川原の水も大波を立てて荒れていた。
地面にまばらに生えていたはずの草は、もう跡形も無い。
ただ、右腕に巻いた鉢巻だけがヒラヒラと風に靡いていた。

「おい、おはおー……しっかり……しろ……」

フラフラの魔理沙がお覇王の肩を叩く。
しかし、いつものようなと言わざるを得ないとは聞こえず……
ゆっくりと、それでいて確実にお覇王はその場に崩れ落ち、倒れた。

「おい……どう……した…………?」
「……よくやった魔理沙にお覇王よ、今楽にしてやる」

眼前に同じく全力を使い切り、消耗したYOKODUNAが現れる。

「おまえも……しつこいな…………」
「お覇王は全力を使い果たした、お前も今お覇王と同じANOYOへと送ろう」
「おことわり……するぜ…………まだ……さいご…………」

「さいごの……まほー…………ふぁいなる……すぱー……………………」

ズブリと音がして、魔理沙の言葉はそこで中断された。
YOKODUNAのHARITEが魔理沙の体を突きぬけ、その豪腕に貫かれて全ては終わった。

「ふう……」

YOKODUNAは力が抜けてぐったりとした魔理沙を地面に降ろすと、自身もまたその場に寝転がった。
すると、グゥ~と腹の音があたりに鳴り響く。
ふと空を見上げればもう夕焼けも暗みかかり、夜が迫っていることを示していた。
遠くない時間、DOUKEがまたこの空に現れるのだろう。
そんなことを考えていても、やはり腹は鳴り続ける。
体力も気力も少しもなく、目を瞑ればもう二度と起き上がれないだろうと思った。
だからYOKODUNAは体が悲鳴を上げるのも構わず、飛び起きた。
何もしなければ死ぬ、ならば生きるために戦わなければいけない。
食って、食らって、血と肉を作り直し、体力も気力も戻す。
しかし、YOKODUNAの持ち物に食料はなく、魔理沙とお覇王のディパックにも殆ど食料も水も残されてはいなかった。

足りない、血肉が足りなかった。
血肉を補充したくても、もう近くのBAKEMONOを捕らえるほどのなど残っていない。
だから、目の前の血と肉を平らげることにした。
人と畜生の中間にある存在のSHURAとして、動物として、弱肉強食を実践する。
神が人に与え申した許しの言葉を天に捧げ、この食に、勝負に最後まで付き合ってくれた強者達に感謝の意を捧げる。

「いただきます」

お覇王の胴着を引き裂き、その引き締められた腕にかぶりつき、食らう。
胴と腕を引き裂いて、骨を残してかぶり付いた腕の血肉を食らった。
お覇王の股座を手に取り、足を引き裂く。
そして足もまた、食らう。
お覇王の足の皮がめくれ、現れた赤く引き締められた筋繊維を引き裂き、噛み砕く。
肉の間から流れ出る血のしたたりを舐める。
足と手を失い、達磨になった胴を引き裂き、臓物を取り出す。
腸を、腎を、心を、肺を食らった。
胴に残る肉も余すところなく口へと運んだ。
そして、お覇王の頭蓋を引き裂き、脳髄を啜った。


お覇王の体を食らったYOKODUNAは、魔理沙もまた食らうべく服を引き裂く。
美しい少女の肉体がそこに現れ、心臓に開いた穴だけがぽっかりと戦いの余波を残していた。
そしてYOKODUNAは、手を引き裂き、女の柔らかな肉に包まれた腕を噛み、食らう。
お覇王と同じように股座に手を掛け、胴と足を引き剥がす。
お覇王の引き締められた足とは違う、女性特有の柔らかさを持ちながら鋭敏な動きを可能とするそれを、食らった。
胴と頭を切り離し、柔肌を切り裂いて臓を切り出し食らう。
女性らしさにこそ欠けるものの、均整の取れた柔らかな肉を食らう。
最後に頭を引き裂き、脳髄の全てを食らった。



その食事は決して旨くもなく、栄養学的に考えてもそれは栄養バランスの取れたCHANKOに劣る。
肉の旨味で言うならば牛肉の最高峰である霜降り肉に比べれば味も劣る。
人の肉は所詮その程度のもので、JIHIあるYOKODUNAであった頃は、人であったころは決して侵してはならない禁忌であった。
その強者の血肉の一欠片、一滴までむしゃぶりつくしたその味は、一生忘れられない味だった。
もはやYOKODUNAはSHURAですらなく、人の身を食らうONI-CHIKUSHOの身へと堕ちた。

全てを終えたYOKODUNAは寝転がり、空を仰ぐ。
夜が今にも移り変わる中、せめてDOUKEの姿を見てから眠りたいとYOKODUNAは思った。

やれることはすべてやった、後は運を天に任せるのみ。
NIPPON-JINが崇める最高のKAMIであるAMATERASUに、感謝と救いの祈りを捧げた。
KAMIへと捧げる葬儀としてのSUMOU、豊穣を祈るSUMOU。
ONI-CHIKUSHOの身へ堕ちたとしても、KAMIに己の戦いを捧げるのだけは決して忘れない。それだけは決して。
YOKODUNAとして最強であるなら、他にはもう何も必要など無い。

「ごちそうさまでした」



【E-2 河原/一日目・夕方(放送直前)】
【YOKODUNA@世界最強の国技SUMOU】
[状態]:瀕死、全身血塗れ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式*4(水食料全消費)、ドリルアーム、クロスミラージュ(8/8)@リリカルなのはStrikerS、気合の鉢巻き@ポケットモンスター
    クマ吉の手錠@ギャグマンガ日和、ドアラの着ぐるみ@ドアラ動画シリーズ、全自動卵割機@サザエさん、億千万の思い出@現実
    マント羽根*2@スーパーマリオワールド、キーボードクラッシャーの音声(の入ったiPod)@キーボードクラッシャー
[思考・状況]
1.放送まで寝転がって待てるだけ待つ
2.放送後、体力を回復するべく眠って休憩
3.SHURAとして、ONI-CHIKUSHOとして出会った者全てに戦いを挑む。
4.最後まで残ったら主催者とも勝負を望みたい


【霧雨魔理沙@東方project 死亡】
【お覇王(リョウ・サカザキ)@覇王翔吼拳を使わざるをえない 死亡】

【残り38人】


※カイバーマン達三人はお覇王魔理沙の知り合い、危険人物(霊夢、アリス、永琳、萃香、TAS、フシギダネ)の情報を交換しました。
※アンダーグラウンドサーチライトはニュートンアップル女学院の地下にあったものとほぼ同じです。YOKODUNAのSHIKO-FUMIによってアレクサンドリアの脳髄は全て破壊され、部屋にブチ撒けられています。
※アンダーグラウンドサーチライト最深部には、不思議な鍵穴が設置されています。中から音が聞こえるようですが詳細は不明。



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sm125:ぼくらの 投下順 sm127:廃墟の城の素敵な巫女
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最終更新:2010年03月18日 11:37