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SECRET AMBITION(後編) ◆0RbUzIT0To





「つまり、別次元から俺の世界に来た奴が犯人――宇宙人って事か」
「……改めて聞くと無茶苦茶な話ねぇ」

水銀燈の言う通り到底信じられない話だ。
この場にいる者達の殆どがキバの世界ではアニメとなっているものの登場人物であり、全てが別世界にいる存在。
そして、その者達を次元を超える事の出来る者――レナの言い方ならば宇宙人がキバの世界にあるニコニコ動画というものを参考に集め、殺し合いをさせた。
動機も何もかもが見えない今では、ただの与太話よりもタチが悪い。

「でも……信じられない事はないわ。 実際に、似たような事件なら私も知っているもの」

ティアナが思い出したのは、己の上官たちが関与していたという闇の書事件。
それは本来魔法が存在しないはずの世界で起こった、到底信じられないような事件だったはずだ。
だが、それでもそれは実際に起こった。
本来起こり得るはずが無いはずの事が起きてしまうというのは、情報のみではあるものの知っている。
その事件を省みるならば、魔法も次元転送も無い世界でこのような事が起こる事も可能性としては存在するのではないだろうか。
少なくとも、可能性はある。

「それで? その正体がわかってどうにかなるの?
 私は全然解決には繋がってないと思うんだけど……」
「直接にはどうにかならないかもしれない……でも、情報はあるだけでもそれに越した事はないよ。
 主催者の正体がわかれば、これから手に入る情報で目的や脱出方法なんかも見つかるかもしれない」
「そっかー。 じゃあ、これからどうする? 情報を手にいれるってどうやればいいの?」
「待って妹ちゃん、もう一つだけ話をしたいんだ」

主催者達に関する考察の話が理解し難かったのか、元気が有り余りうずうずしている様子の妹を押しとめてレナが続ける。
名簿に関する隠された参加者の話はした。
地図に関する主催者達の意図するものの話はした。
そして、主催者達に直接関わるかもしれない根本の話もした。
だがもう一つ、何よりも肝心な話が残っている。
この殺戮の場から如何にして逃れるかという何よりも大事な話が。

「まず……私達がどうしてここから逃げられないのか、という事を整理してみようか。
 妹ちゃん、わかる?」
「え? えっと……」

急に話を振られ、あたふたとする妹。
まるで小学校の授業中、突然当てられて慌てているようなその姿はこの場ではなんとも微笑ましい。

「さっきレナちゃんが言ってたみたいに、山があるからでしょ?
 昇れるようなものじゃないって言ってたし、だから逃げられない……んだよね?」
「うん、正解だね。 まず一つは妹ちゃんの言うように、山が邪魔をして逃げられないから……。
 つまり、このフィールド上から逃げられないという制限。
 でも、まだ他に逃げられない理由がある……ピッピちゃん、わかる?」
「ピィッ!?」

そして、再び当てられて驚くピッピ。
ほんやくコンニャクやテレパしいの無駄遣いは控えるべきだと思い、皆のやっていた議論では傍観に徹していたのだがまさかここで話を振られるとは。
振られた以上は答えなければならない……が、なるべくならほんやくコンニャクらは使いたくない。
……? いや、何も道具を使って喋れるようにならなければ答えられないという訳ではないのではないか。
答えとなるものを指差せば、それは相手に伝わるだろう。
そうだ、それならば何も道具を使わなくてもいい。 逃げえられない理由を指し示す道具……それは……。

「ピィッ!」
「うん、ピッピちゃんも正解。 二つ目は首輪だね。
 これがある限り、私達の行動は制限されてしまう……無理に外そうとしても爆発してしまい、禁止エリアに入り込んでしまったら爆発しちゃう。
 そして、主催者の意思で爆発させる事の出来る事を考えると仮に山を越えれたとしても危険だと判断されたら爆発させられちゃうんだ。
 だから、これがネックである事に間違いない」

ピッピの出した答えに説明を加え、レナは指折り数える。
これで二つ……だが、まだこれで全てではない。
この二つの問題を解決したとして、更にもう一つ巨大な壁が脱出への道を阻める。

「そして、三つ目はこの場の異常な状況……殺し合わなければ生き残れないというルール。
 このルールによって、私達は疑心暗鬼に陥ったり本来ならば回避出来る惨劇も回避が出来ない。
 ……何よりも辛い、逃げられない理由がこの三つ目だよ」
「……レナちゃん」

自分の起こした過ちの原因ともなったと言える三つ目のルールの説明をし、表情を暗くするレナ。
しかし、心配したかのように声をかける妹に向けて一瞬だけ笑みを浮かべると、更に言葉を続ける。

「これら私達の脱出を阻む三つの要素を、一先ずルールX、Y、Zと定義して話を進めるね?」

レナの言葉に全員が頷く。
山によって遮られたこの区域、自由を拘束する忌まわしき首輪、強制的に殺し合いをさせるという異常なこの状況。
この三つが脱出する為に破壊しなければならない事柄。
この忌々しい殺戮ゲームをクリアする為に必須となる条件だ。

「これらの三つの要素は各々が独立しているように見えながらも、実際にはそれぞれが複雑に絡まりあった錠前。
 一つを破壊しようとすれば他のものが妨害をし、そして一つだけを破壊したとしても脱出には届かない。
 X――隔離されたフィールドを脱出しようとしても、Y――拘束する首輪によって主催者達に殺されてしまうかもしれない。
 Y――拘束する首輪を外せたとしても、X――隔離されたこのフィールドを脱出出来なければ意味がない。
 Z――殺し合わなければならないというルールが人々を疑心暗鬼にさせ、懐疑的にさせ、味方となろう者や仲間を遠ざけ結果的に脱出への道を阻める。
 そして、この錠前を全て解いた時に立ち塞がるルールがもう一つ……Ω――主催者達の存在だよ」

こうして聞いてみると、自分たちの脱出をしたいという願いの前に聳え立つ壁は如何に大きいかがわかる。
たった一つの条件でさえ壊すのは困難だというのに、それが三つも立ちふさがっているのだ。
しかも、それを乗り越えたところに、更に巨大な壁が立ち塞がる。
本当に出来るのか……自分達にそれだけの力があるのか。
思わずそう思ってしまう。 だが……それでもやり遂げなければならない。
死んでいった者達に報いる為にも。

「このゲームをスクラップ&スクラップする為にも」
「この惨劇の運命を回避する為にも」
「愛媛の打開って奴を見せてやる為にも、ね」

キバが、こなたが、ティアナがそれぞれの言葉を口にし、全員が同意する。
そうだ、託された以上はやり遂げなければならない。
それが彼らに出来る革命であり、罪滅しであり、愛媛の打開だ。

「まずX――これを破壊する為には、単純にフィールドから脱出する手段を見つけなければならない。
 ……でも、それについてはある程度見当がついてるよ」
「もしかして、ここの事?」
「うん。 ただ、問題はそれについて確証が無い事。
 この線路がどこに繋がっているのかもわからないし、私達に使えるのかはわからない。
 そもそも、電車がさっきから一本も通ってない所を見るとどこにも繋がってないのかもしれないね」

偶然にもティアナが見つけ出した塔の中の隠し通路。
キバや博之の天敵であるブラックパックンを退けた先にあったのはどこにでもあるような地下駅だった。
勿論、地図には存在しないものでありこの場所を知っているのは参加者の中では自分達だけだろう。
しかし、だとすれば疑問が発生する。
それは何故、地図上に存在しないこの駅を主催者達が作ったのかという事だ。
主催者達が望んでいるのは参加者同士の殺し合いのはずである。
ならば、このような隠し部屋を作って参加者が隠れる事の出来るようにするのはおかしい。
実際に現在、レナ達がこうして安全に議論を交わせているのもここが隠し部屋であるからに他ならないのだ。
これは、主催者にとっては望まれざる展開のはずではないのだろうか。

「んー……でもさ、これがゲームなんだとしたらここは所謂ボーナスステージなんじゃないの?」
「ボーナスステージ?」

レナの疑問にこなたが答える。
ことゲームにおいて頻繁に登場するボーナスステージ。
優秀な成績を収めたり、決められた手順でステージを攻略したり、或いは単純に隠されたその部屋を見つける事が出来た場合に出現するそのステージ。
大抵のゲームにおいてはそこで様々なアイテムを入手出来たり様々が特典が得られるものである。

「ほら、さっき見つけたカードとかさ。 あれもボーナスなんじゃないかな、きっと」
「でもそれなら、ブラックパックンやこの駅の説明がつかないぜ? ボーナスステージならブラックパックンなんて強敵出てくるはずがない。
 それに、ボーナスってんならあんな車のトランクに入ってるのおかしいだろ。 ありゃどっちかっていうと目先の欲に捕らわれた奴をどん底に落とす孔明の罠だ。
 何度も孔明の罠に騙され続けた俺が言うんだから間違いない」
「ありゃりゃ、そりゃ確かにごもっともだね」
「というよりも、ブラックパックンが存在する事自体がおかしいんだよな。
 あいつらの目的は俺達に殺し合いをさせたいってもんのはずだろ? なら、ブラックパックンなんか出しちゃ意味がない」

キバの言う事は尤もだ。
殺し合わせる事が目的なのにブラックパックンを出しては殺し合う前に死んでしまう者が続出してしまう。
それでは本末転倒だ。

「隠されていたって事は、つまり何かの意味があるはずよね……。
 駅って事は何かを運搬していたのかしら?」
「運搬?」

不意に呟いたティアナの言葉にレナが反応する。
……何を運搬しているのか? そうだ、ここに線路があり駅があるのならば電車だって当然あるはずだ。
そして、電車が送るものは何も人だけじゃない。

「もしかして……あの宇宙人を運搬している?」

外山やキバと出会い、話し合ったあの下水道にいた参加者を監視している赤い植物のような宇宙人。
レナは当初、それを最初からそこにいるものなのだと判断していた。
だが、もしかしたらそれは間違っているのかもしれない。
レナのようにあの宇宙人を殺している者もいるかもしれないのだ。
そうなると当然あの宇宙人の数は減るし、そうなると当然監視者の数が足らなくなってしまう。
これは主催者達にとって問題であるはずだ。
ならば主催者達は減ってしまった宇宙人の数を元に戻す為に監視員をこの場へ送ってくるはずである。
しかし、あの宇宙人は空を飛べないようであったから山は越せないだろう。
転移魔法というものも、ティアナの話によれば一度に大人数を転移させては魔力というものを多大に消費してしまうらしい。
では、どうやって監視員を補充するのか。
もしかしたら、この駅を……電車を使い、主催者達のいる場所から送っているのではないか?
そうすれば辻褄は合う。隠し部屋としていたのは、当然誰にも見つからないようにした為だ。
そして、ブラックパックンを配置したのは仮に見つかったとしてもその先にあるこの駅に行かせない為だろう。
普通の人間ならば、そんな危険なものがあれば問答無用で引き返す……それこそが、主催者達の狙いだ。
だが、それならば監視者はどうやってあの通路を通過しているのか……決まっている、隠し通路があるのだ。
しかし、隠し通路だからといってそんな大きなものではない。 恐らくは人にギリギリ見つからないような、一人くらいしか通れないようなものだろう。
では、行きはそれでいいかもしれないが、この殺し合いが全て終わった後の帰りはどうするのか? 行きの時は少人数で狭い通路があるだけでいいかもしれない。
だが、帰りはこのフィールドにいる監視者全員が一斉にあの駅に押しかけるはずなのだ、それをどうするのか?
……それこそ、自分達が今まで通ってきたルート。ブラックパックン地帯を通るのだろう、あのスイッチを使って。

「待てや、それやったら何で今は電車が一本も通ってへんのや」
「いえ……電車は通ってるんです。 でも、それは私達にはわからないようになっている。
 主催者達には、そんな技術があるんです。 だよね、キバさん」
「ああ、そういやそうだったかな」

下水道であの監視員と出会った時、確かに宇宙人はその存在と姿を消していた。
ならば、電車の姿や音さえも消せる技術を持っていても不思議ではない。
「……って事は、この線路はあいつらのいる場所に繋がってるって事?」
「その可能性はあると思うよ……でも、今はそこに行くことは無理だね」

電車が通っていてもわからないというのなら、
この線路を徒歩で辿っていっている最中に見えない電車に激突されて皆仲良くお陀仏という事になるだろう。
それに、今行ったところで主催者の指先一つで首輪を爆破されておしまいだ。

「……ちょっと待って、今監視員って言ったわね?」
「え? ええ……」
「……こんなとこで脱出の算段なんて立てていて、大丈夫なの?
 監視員がいるというのなら、私達の計画なんて筒抜けじゃない!」

そう、監視員が存在するというのならティアナの言う通り自分達の計画は筒抜けだ。
今まで自分達が発言した全ての言葉は、既に主催者達に届いていると考えてもいいだろう。
これは、忌々しき問題である。
主催者達に反抗の意思ありと認識されてしまえば当然警戒も強くなるだろうし、
或いは行き過ぎてしまえば全員が揃って首輪を爆破されてしまうかもしれない。

「もし、対策を打たれたら脱出は絶望的よ……どうして、その情報を先に言わないのよ?」
「……言ったとして、どうする事が出来るの?」

ティアナの言葉に、レナが返す。

「監視員は、文字通り隠れているんだよ?
 だから、どこにいるかもわからない……どこだって、話を聞かれる可能性はある。
 違うかな? かな?」
「それは……そうだけれど……。 でも、もう少し可能性を下げるやりようがあるでしょう?
 もっと安全そうな場所を探すなり……筆談をして、皆でそれを覆うようにして見るなりすればまだ……」
「前者に関しては……確かに、完璧に私の落ち度だよ。
 ここが宇宙人を送る駅だとは思ってなかったから、ここが一番安全だと思った。それについては……ごめんなさい。
 でも、後者については不可能だよ……筆談じゃ、話せない」
「……どうして」
「筆談なら、"目が見えない"と話が出来ないでしょ?」

ハッとしたようにティアナが振り返る。
そうだ……確かに、筆談では目が見えなければ議論に参加が出来ない。
それはつまり……。

「俺ん為に……筆談をやめたって事なんか?」
「……これは、ルールZに繋がる事だけど。
 私達は……何は無くとも、疑心暗鬼に繋がるような行動をしちゃいけないと思うの」

無論、仲間だからといって隠し事をしてはいけないという訳ではない。
誰にだって隠したい事はあるし、それは話すも話さないも個人の自由だ。
だが、それ以外の……仲間同士が共有する情報は違う。
それぞれが、それぞれの信念を持って行動をする以上その情報を隠し立てする事は許されない。

「実際、博之さんのお陰で議論が救われた面があった。 違うかな?」
「……そうね、あんたの言う通りだわ」

博之が議論に参加した結果、自分達が次元の違う世界から集められた事を認識出来た。
もし筆談となり博之が参加していなかったとしたら、その結果は違っていただろう。

「それに、監視役がいなくても筆談をしていても行動が筒抜けになってる可能性だってあると思うぜ。
 この首輪に盗聴器やカメラが仕込まれてる可能性だって否定できないんだろ?」
「うん……だから、あいつらに私達の計画が漏れるのは必然」

ここまで話しても首輪を爆破しないところを見ると、まだ主催者はレナ達をそこまで危険な存在とは考えていないという事だ。
ならば、そう思わせておけばいい。
盗聴を回避する事がほぼ不可能ならば、むしろ開き直って全てを曝け出せばいいのだ。
……もちろん、あまりバラすというのも問題ではあるのだが。

話を戻し、再び三つの条件について説明をする。

「ルールY――私達を拘束する首輪の破壊。
 これもまた、単純に首輪を解体するだけでいい……んだけど」

こればかりは、自分達の努力や何かでどうなるという問題でもなさそうだ。
無理矢理外そうとすれば爆発するといわれている首輪を、どのようにして外せるというのか。
適当に解体してみる? いや、それはどう考えても無謀だ。
そう簡単に解体が出来るのならば、誰も苦労しない。

「まず、私達だけで解体をするというのは不可能だと思う。
 だから、ルールYについては他の人の力を信じるしかない」
「他の人?」
「そう……機械技術に精通しているような科学者……。
 そんな人ならば、もしかしたらこの首輪を解体する手段を知っているかもしれない」

他力本願と言われるかもしれないが、自分達に力が無い以上は仕方が無い。
そして、自分達に力が無い以上その人物は早急に保護をしなければならないのだ。
今後当面の行動方針は、その首輪を解体出来るかもしれないという人物を探す事。
その一点に絞られる。

「でも、もう半分近く減っているのにそんな人が残ってるかな?」

解体出来る人物がもし死亡してしまえば、自分達の脱出は絶望的なものとなってしまう。
それだけは、なんとしても避けなければならないのだ。
今はただ、その人物が生存している事を祈る事しか出来ない。

「それじゃあ、早速その人を見つけに行かなきゃ!」
「だから待ちなさいって、妹ちゃん。 まだ目的地も決めてないんだから。
 それで、レナ? どこに行くの?」
「……ひとまず、町からは出たいかな。
 あの月の頭脳って名乗ってた宇宙人もまだいるかもしれないし、町は危険だよ。
 だから他に人が集まりそうな拠点……お城が妥当かなって思う」

町以外に人が集まると思われる場所は城だろう。
森林にある大樹も、中央部に位置する山も人が集まらないとも限らないが目印となりそうなものがない。
それに、首輪を解体しようとする人ならば設備がある場所に行くはずだ。

「それなら、町の民家に篭ってる可能性もあるんじゃないか?」
「ううん、それは無いと思う。 だって民家には何も設備が無かったもん。
 仮に町に来ていたとしても、すぐに他の場所に移動してるはずだよ」

キバの疑問をあっさりと否定し、レナは立ち上がった。
それに合わせて皆が一斉に立ち上がり、遅れて水銀燈に手を貸してもらい博之も立ち上がる。

「二手に別れて探した方が効率がいいんじゃなぁい? 早く見つけたいんなら、そっちの方が手っ取り早いわよ」
「っ! それはダメだよ水銀燈! 二手に別れたりするのは……もう、嫌だよ」
「ピッ! ピィッ!」

水銀燈の言葉にこなたは強く反対し、ピッピも拒絶の意思を見せる。
それを見て、レナも深く頷いた。
二手に別れた方が効率がいいのは確かだ。
だが、それは同時に戦力の減少を意味する。
魔法が使えるとはいえ魔力が殆ど残っていないティアナ、片腕を失っている水銀燈、ゆびをふる以外の技に信用性が無いピッピ。
他にも、怪我している者も数多くいるし、そもそも戦闘すら出来ないだろう妹や博之もいる。
こんな状況で二手に別れるのは自殺行為でしかない。

「急いでお城まで行って、そこで見つからなければ更に他の場所に移動しよう。
 勿論、皆でね」
「誰かに襲われて、ばらばらになったらどうする?」
「ここを集合場所にしたら? ここは私達しか知らないんだから、安全に合流が出来るでしょう?」
「そうだね。 それが一番いいと思う」
「……俺、バラバラになったらどうやってここまで帰ってきたらいいんぞ」

とんとん拍子に進んでいく話に、軽く絶望したようにぽつりと洩らす博之。
目が見えない彼にとって、バラバラになるという事はほぼ死を意味していると言って過言ではない。
うっすらと悲壮感を顔に浮かべる博之に、ため息を吐きながら水銀燈が語りかける。

「安心なさい博之、誰が襲ってこようとあなたを一人にはしないわぁ。
 だからそんな顔は今すぐやめて、前を向き堂々と胸を張りなさい?
 あなたは誇り高きローゼンメイデンの第一ドール、この水銀燈のミーディアム。
 私の指輪に口付けを交わした時から弱音を吐く事は、決して許されてないのよ」
「……ん、そやのぉ。 頼むぞ、水銀燈」
「任せなさぁい」

水銀燈の言葉を受け、前を向き胸を張る博之。
その様子を、水銀燈は満足げな顔で見つめる。
果たして水銀燈は気づいているのだろうか、今の自分と過去の自分との精神に変化が起こっている事に。
かつてはただ猛烈なまでの憎しみを真紅に、過剰なまでの愛を父ローゼンに向けていただけの自分がミーディアムとはいえ他人である存在の博之の身を案じているという事に。
水銀燈は、この殺し合いの場に降り立ってから少しずつではあるが変わり始めている。
その原因は博之とミーディアムとなった為……精神的な繋がりを、共有している為だ。
博之は、基本的に温厚である。 そして、誰よりも慈愛の心を持つ母から生まれた男だ。
勿論、兄が兄だけに抜けているところは抜けているだろう。 だが、その心は人の心を引き付ける事の出来る慈愛に満ち溢れている。
だからだろうか。
博之を見つめる水銀燈のその顔は今までの彼女の見せたものの中で、一番の輝きを放っているものだった。

「さぁ、行くわ……よ?」

そう言って博之を促して振り向き、足を進めようとしたところで……自分達に奇異の目を向けられている事に気付いた。
何故か皆が揃って奇妙な笑みを浮かべている。

「むふふ~、水銀燈ってばかっこいいねぇ~。
 あなたを一人にしない? 指輪に口付け? 何だかただならぬ関係っぽいけど詳しく教えてくれないかなぁ~?
 特に後者に関して!」
「なっ!?」
「はうぅ~、水銀燈ちゃん可愛いよぅ~。 おっ持ち帰りぃー!」
「え、ちょ、まちなさっ!?」

こなたからの突然の突っ込みに頬を染め、狼狽する水銀燈。
そしてその様子を見たが為にレナはかぁいいモードに瞬間変形し、
光速をも超えているかもしれない速度で水銀燈の元まで駆け寄って抱きかかえると己の頬と水銀燈の頬をこれまた光速をも超えているかもしれない速度ですり合わせる。

「いやああああ! 私のほっぺが摩擦でまさちゅーせっちゅうううううううう!?」

どこぞのカナブンが言っていたような台詞まで吐き出してしまい、完璧におもちゃにされる水銀燈。
普段のドSさや残酷さなど粉微塵になってしまったかのようだ。
その様子を笑いながら見ているこなた。一方、博之も一体何が起こっているのかまるで理解が出来ていない。
誰もレナの行為を止めない……というか、止められる者がいない。

「キバくん……私たち、また空気だね」
「駄目だあいつら……早くなんとかしないと」

再び空気化してしまった事に危機感を抱く二人。

「……こんなんで大丈夫なのかしら」
「ピィ……」

そして、こんな調子で本当に脱出が出来るのかと危機感を抱く一人と一匹。


「まぁそれはともかくとして……あんたは大丈夫なの?」
「へ?」
「へ? じゃないわよ……言ってたでしょ、あんたのお兄さんの友達――。
 古泉一樹、だったかしら?」

古泉一樹――先の民家で行われた情報交換で挙がった名前だ。妹の兄であるキョンの友人(多分)で、キョンの所属するSOS団という部活動の副団長。
本来ならば誰にも優しく人当たりがよく、虫一つ殺さないような笑顔を浮かべている男だったのだが……。
この塔を襲い、水銀燈の右腕を奪った張本人の名前がその古泉一樹なのだという。
博之が、自動ぶん殴りガスを使って名前を確認しているし、妹の言う外見的特長も一致している。

「……多分、古泉君も私と同じ目的で殺し合いをしちゃってるんだと思う」
「つまりそれは、優勝してあなたの兄を生き返らせようとしてるって事?」
「……うん」
「そりゃまた……随分と友情に厚い奴だな」

思わず、キバは自分と自分の友人の事を考えてみる。
もしも、自分の友人が参加しており自分が死んだとしたら……。

「……むしろ喜ぶだけだな」

あいつは俺をtktkさせる事を楽しんでるから、と軽く欝に入る。

「でも、それが間違っているってのをあんたは気付いたんでしょう?」
「うん……だから、古泉君も多分気付いてくれるよ」
「ピィ!」

自分に言い聞かせるように言う妹に、ピッピが同意する。
そう、人は変われる……自分の意思で、他者の言葉で変わる事が出来る。
だからこそ、妹は古泉の道も間違えているのだと説得する事を心に決めた。
同じ目的を持ち、同じ人を愛した男の道を正す事を。

……しかし、人は確かに変わる事が出来るが。 そう簡単に変われないのもまた、人である。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

色々とごたついたものの、八人はようやく塔の外へと出た。
日は既に落ちており、辺りは暗く静けさを保っている。

外へと出た八人は、そのまま歩き出すかと思いきや一斉に振り返る。
そして、皆が――目の見えない博之さえもが、その塔を見上げた。

「色々、あったわね……」

一番長く塔にいたティアナが口を開くと、全員が頷く。
兄弟と合流が出来た、殺人鬼に襲われた、過ちを犯してしまった、大切な人を失くしてしまった。
この殺し合いの場に連れてこられ既に半日以上が経過したが、たったそれだけの時間の間に様々な事が起きたのだ。
それぞれの心の中に、それぞれの想いが宿る。

「……もう一度、ここに帰ってこよう。
 勿論、俺達の仲間を探して……首輪を外せる奴を探して……あいつらを倒して、皆で帰るために」

キバの言葉にもまた、全員が頷く。
あの駅の線路が主催者がいる場所へと続いているというのなら、自分達はもう一度ここに戻ってこなければならない。
首輪を外し、仲間を集め、主催者達を倒す為に……このゲームを潰す為に。

そうして、八人は再び一斉に踵を返すと歩き出す。
目指すは西にある古城。
そこに、首輪を解体出来る者がいると信じて、八人は歩く。

必ずこの場に戻ってくると、そう胸に誓って。

【E-4 町/一日目・夜】
【永井博之@永井先生】
[状態]:精神疲労(ほぼ回復)、全身打撲、失明、顔面怪我、鼻骨折、肩部・太腿・脇腹銃傷、腹部強打(全負傷部位を薬草で治療中)
[装備]:薬草(8/99)@勇者の代わりにry 、包丁@フタエノキワミ アッー!(るろうに剣心 英語版)
[道具]:支給品一式*3(食料三食分・水一食分消費)、座薬@東方project、ヲタチ(残りHP80%)@ポケットモンスター
ゴム@思い出はおくせんまん、自動ぶんなぐりガス(残り1/5)@ドラえもん、ヴェルタースオリジナル*2@ヴェル☆オリ
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.目が見えないから状況がいまいちつかめない
4.愛媛のカリスマで目が見えなくてもなんとか頑張る
※レナとティアナの声を時々間違えます。

【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:右手に切り傷、右腕銃傷
[装備]:サイレンサー付き拳銃(1/6)@サイレンサーを付けた時とry、鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式*2(食料一食分・水一食分消費)、雛見沢症候群治療セット1日分(C-120、注射器、注射針)@ひぐらしのなく頃に、
テニスボール、オミトロン@現実? モモンの実@ポケットモンスター
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.圭一の思いを継いで、対主催思考の仲間を探す。
4.また今度こなたさんとはゆっくり話をしたい。
5.罪滅しをする
※八意永琳が何か知っているのかだと思っています。
※時期は大体罪滅し編後半、学校占領直前です。
※雛見沢症候群は完治しました。

【友人@自作の改造マリオを友人にプレイさせるシリーズ】
[状態]:全身に軽い切り傷、左肩切り傷、あごに切り傷、背中打撲
[装備]:ロールバスター@ロックマンシリーズ、メタルブレードのチップ(装着済み)
[道具]:支給品一式(食料一食分・水一食分消費)、桃太郎印のきびだんご(24/25)
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.キョンの妹を守って見せる!
4.この世界から脱出したい。
5. 宇宙人とかありえない。え、マジで宇宙人?
6.作者に会ったら説明を求めた後ぶん殴る(いないし、関係ないかもと思ってきてます)
※奇妙なデジャヴがニコニコ動画によるものだと気付きました。
※「ひぐらしのなく頃に」についての知識が徐々に戻りつつあります。また、他の事柄についても思い出すかもしれません。

【キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱&愛しの兄が振り向かない】
[状態]:多少の疲労(ほぼ回復)、頬に軽い切り傷、複雑な気分、頭部に打撲&出欠
[装備]:おたま@TOD、 カワサキのフライパン@星のカービィ
[道具]:支給品一式(食料一食分・水一食分消費)、DMカード(オレイカルコスの結界 (次の早朝まで使用不可) 三幻神(ラーのみ使用可だが遊戯、海馬などのみ、他は次の早朝まで使用不可)、
ブラック・マジシャン・ガール(次の深夜まで使用不可)、ホーリーエルフの祝福(次の深夜まで使用不可)、青眼の白龍*2(次の午前まで使用不可)、強制脱出装置(次の0時まで使用不可)、
死者蘇生(次の昼まで使用不可)、コカローチ・ナイト、進化の繭、ゴキボール)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ、携帯電話@現実
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.もう誰も殺さない、罪滅しをする。
4.キバくんには死んで欲しくない。
5.古泉くんの間違いを正す。
6.さっきの虫のカードはできれば使いたくない。

【ティアナ=ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikers】
[状態]:魔力徐々に回復、やや疲労(ほぼ回復)
[装備]:ゼットソーハードインパルス@現実、リアルメガバスター(269/300)@デッドライジング、
[道具]:支給品一式*4(食料四食分・水三食分消費)、ダンボール@メタルギアシリーズ、本『弾幕講座』、
DMカード(黒騎士の魔剣少女、セイバー)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ(次の昼まで使用不可)、
ヴェルタースオリジナル@ヴェル☆オリ、アイテム2号のチップ@ロックマン2、鉄パイプ
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.殺し合いに乗っていない人達を集める
4.その後、どうにか殺しあわずに済む方法は無いかを考える
5.カードが少し気になる
6.人殺しはしたくない
7.主催者を捕まえて願いを叶えさせる
※ダンボール@メタルギアシリーズの隠密効果を知り、多少信用しました。
※外山のデイパックに入っていたアイテム二号のチップは、気付かずに自分のデイバッグに移してしまっています。

【ピッピ@ポケットモンスター(ピッピのゆびをふるのみで殿堂入りを目指す)】
[状態]:強い決意
[装備]:リーフシールド@ロックマン2(技マシン的な使い方でポケモンは使える)
[道具]:支給品一式(水一食分消費)、ほんやくコンニャク(1/4)(半分で八時間)@ドラえもん、
テレパしい@ドラえもん(残り3粒、五寸釘@現実、モモンの実@ポケットモンスター、
オボンの実@ポケットモンスター、ポケモンフーズ一日分(二食分消費)@ポケットモンスター
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.もう逃げない。仲間のことは絶対に守る。
4.あの怪しいポケモンとトレーナーを倒し脱出
※首輪は頭の巻き髪についてます
※ピッピは、はたく、うたう、おうふくビンタを使えることを思い出しました。ただし、まったく使ってこなかったため、かなり信用に欠けます。

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:顔面強打、右腕打撲、腹部強打、(これらの痛みはひきました)、強い決意
[装備]:くうき砲@ドラえもん、団長腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、フタエノ極意書@ニコニコRPG
[道具]:支給品一式*2(食料一食分・水一食分消費)、暗視ゴーグル@現実、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、コロネ(バタフリー)@キャタピーだけでクリアに挑戦(残り100%)、
テニスボール、初音ミク@現実、モモンの実*3@ポケットモンスター、オボンの実*3@ポケットモンスター、ポケモンフーズ一日分(二食分消費)@ポケットモンスター
[思考・状況]
1.つかさを助けたい。
2.圭一の思いを継いで、対主催思考の仲間を探す。
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
4.バトルロワイアルから脱出する
※フタエノキワミを習得しました。攻撃力が二倍になり、急所に当たりやすくなります。
 しかし習得した事を自覚できていません。パンチを使えば気付くでしょう。
※他アニメについての知識が徐々に戻りつつあります。
 「ひぐらしのなく頃に」「魔法少女リリカルなのは」の他にも、何か思い出すかもしれません。

【水銀燈@ローゼンメイデン】
[状態]:右腕欠損、腹部強打、強い決意、包帯人形、男物の上着、ジャンク、幸せ
[装備]:真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン(真紅の技が使えます)
[道具]:ぬいぐるみ沢山 、ヴェルタースオリジナル@ヴェル☆オリ、くんくん人形@ローゼンメイデン、
ヤクルト(残り4本)@乳酸菌推進委員会 、庭師の鋏@ローゼンメイデン、銀コイン@スーパーマリオワールド
[思考・状況]
永井博之と契約
1.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
2.『アリス』の捜索。
3.ゲームに乗っていそうな人間達に警戒。
4.ピエモンを殺す。その仲間も殺す。
5. 殺した詩音の姉への償いをする。
6.ピエロの思惑に乗りたくないから、できるだけ人は殺さない。
7.襲ってきた奴とは戦う。殺すのも仕方ない。
8.くんくんと乳酸菌がいっしょにいて幸せ。
※ピエモンが自分の世界で何かしていたということがわかりました。
※マヒは完全に回復しました。
※人形の操作能力をテストしました。重いものはあまり持ち上げられず、20メートル以上飛ばせません。
※銀コインを数枚、人形に持たせています。
※自分の右腕は荷物と一緒にしまってあります。

※塔内の隠し部屋の奥の駅は主催者の本拠地に繋がっている、とレナ達は推理しました。
 その目的は監視者達の運搬であり、足りなくなった監視者を補充するものだと思っています。
 ただ、あくまで推理であり確証ではないので真実はわかりません。
※それぞれの情報は全て共有しました。
※農二のハワイのお土産@科学の教材ビデオと銀コインがE-4の塔内の隠し部屋の床に落ちています。
※銀コインも集めても1UPしません


※レナ達が推理・議論した事柄について。
1.名簿と放送により、隠された参加者が存在すると推理しました。あくまで推理であり、真実と異なる場合があります。
2.地図と放送により、山の向こう側に主催者の本拠地があると推理しました。あくまで推理であり、真実と異なる場合があります。
3.自分達がそれぞれ別の次元から呼び集められた者であり、呼び集められた原因はニコニコ動画であるものと考えています。
  そして、主催者の正体はキバの世界に住む住人であると推理しました。
  その住人は元々別の次元から来て、キバの世界に住んでいるものとも推理しています。あくまで推理であり、真実と異なる場合があります。
4.自分達の脱出への道を阻む三つの事柄をX、Y、Z。それらを超えた所にあるものをΩと定義づけています。
  ルールX(完全に遮断され、隔離されたフィールド)、ルールY(能力を制限し、反抗者には死を与える首輪)、ルールZ(殺人を推奨し、人を疑心暗鬼にさせるこの殺人ゲーム自体)
  ルールΩ(全てを乗り越えた先に待っている、主催者)
  これら全てをスクラップ&スクラップし、仲間を死なせず殺戮の運命を乗り越えて愛媛の打開を見せるのが八人の基本方針。
5.首輪に搭載されているだろう盗聴器・カメラ・発信機と監視者の存在により、隠し事は無駄だろうと推理しました。あくまで推理であり、真実と異なる場合があります。



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