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Encount "Modern or Ancient" ◆KJJLTUDBrA




ゴリ……ゴリ……
何かをすりつぶすような、そんな断続的に響く音で古泉は目を覚ました。
せっかくいい夢を見ていたのに、と思いながら目を開くと、すり鉢で何かを磨り潰している八意永琳が見えた。
なぜか彼女は、座布団の敷いてある正面の位置ではなく、机の横の位置で作業をしている。
「あら、目が覚めた? 古泉一樹。まったく、もう少し静かに眠ってほしいものだわ。おかげで睡眠薬を使うはめになったじゃない」
「えーと、おはようございます、八意さん。あの、そのすり鉢は?」
「すり鉢じゃなくて乳鉢ね。いえ、最近どうにも火力不足だと思ったから、薬を作っているのよ」
彼女の持つ鉢の中を覗くと、なにやら黒い粉末が入っている。
それを見て、古泉はピンと来た。
火力で薬と来たら、一つしかない。
「まさかそれは、爆薬ですか?」
「ええそうよ。でも、ただの爆薬だと火力が足りないから、少しいじってあるけどね」
永琳は喋りながら、陶器製の容器を2つ重ね合わせたものに、次々と様々な粉末を加えていく。
そして出来上がったのは、白い球状の小さな爆弾だった。大きさは卵より一回り小さいぐらい。
机の上を見ると、永琳の持っているのと同じものと、それとは別に黄色の四角いお菓子のようなものが、いくつか並んでいる。
「おや、こちらはなんです? キャラメルか何かですか?」
「それはDCS-8spというドーピング剤よ。ああ、緊急時でもない限り飲まない方がいいわ。
 副作用がない程度には効くけど、強い薬だもの。飲まないに越したことはない」
それを聞き、古泉は手に取ったDCS-8spを元に戻す。
「そうね一樹、あなたにも教えておくわ。とりあえずそこの箱を開けて」

再び調合を始めた永琳が、古泉に指示を出す。箱なんてあっただろうか、と彼が辺りを見回すと、確かに茶色の箱がある。
それをあけると、中には鞘に過度な装飾のなされた剣が入っていた。
柄の部分は獣の顔となっていてなんとなく不気味だ。
「ええと、剣が入ってましたけど……あれ? 抜けませんね?」
「何か大きな力を持つ剣のようなんだけど、条件を満たさないと抜けないみたいなのよね。
 まあ、今はそれはいいわ。机の足の近くに、小さな穴があるのが見える?」
「ああ、ありますね」
永琳が作業をしているのとは、反対側の足の近くに妙なスリットがあった。それは丁度剣の幅と同じのようだ。
「じゃあ、そこに剣を差し込んで」
「さ、差し込むんですか?」
「ええ、奥まで」
「お、奥まで……アッー!」
「……いいからさっさとしなさい!」
奥まで剣を差し込むと、カチリと音がした。すると、ゴゴゴと机の下の床が下に沈んでゆき、ぽっかりと穴が開く。
「なるほど、これは……」
「そう、抜け穴よ。どこにつながっているのかわからないけどね。ちなみに、その剣を抜くと、すぐに穴は元通りになるわ」
よく見ると、穴の中には少し傾斜があるようで、滑り台のように滑っていけるらしい。
「しかし、どうして僕にこれを?」
そのとき、三回目の放送が流れた。
結局彼は、答えを聞きそびれた。

「霧雨魔理沙に前原圭一、か……」
永琳が少し手を止めて呟くが、すぐに作業に戻る。
「お知り合いですか?」
「ええ。二人ともあの中国での仲間よ。魔理沙は幻想郷での知り合いだけど。しかしあの魔法使いがねぇ……」
作業を続けながら、彼女は言う。
「それほどまでに強い人だったんですか?」
「ええ。彼女は多彩な魔法が使えるわけじゃないけど、おそらく、純粋な破壊力で言えば彼女の右に出る人間はいないわ。
 でも、これでまた二人も私の部下が減ってしまったわけね。厄介だわ本当に……」
ふぅ、と永琳はため息をつく。
「さて、完成っと。ああそうだ、あなたも自衛用に一つぐらい持っていきなさい」
「え、その爆弾を、ですか?」
「そうよ? いつでも私があなたを守れるというわけではないんだもの。さっきの獣の例があるように」
そう言って、彼女は半ば押し付けるように古泉に、爆弾と紙に包んだDCS-8spを一つずつ渡した。
「爆弾の方は、そのピンを抜いてから五秒後に爆発するように調整してあるわ。それとDCSは、緊急時以外は飲まないこと」
「ええと、この爆弾はどれほどの威力です?」
「まあ、ダイナマイトなんかより爆発力は小さいけど、ちゃんと使えば薄い壁なら簡単にぶちぬけるわ」
「……つまり、懐やポケットで爆発したら……」
「死ぬわね」
それを聞いてなんともいえないような顔をする古泉を尻目に、永琳は作ったものを懐にしまっていく。
なお、爆弾は少し大きいので、しまう先は帽子の中である。
「じゃあ、一度外に出るわよ。放送を聞いた奴らが、何か動きを見せるかもしれない」
「あの、これはどうするんです? 置きっぱなしでいいんですか?」
古泉が机の上のDCS-8spを指差して言った。
「それは、DCSを乾かしているの。そのままでも使えるけど、乾かしてから仕上げをしないと、ちゃんとした効果がでないのよ。
 でも、むき出しのまま置いておくのはまずいわね。このあたりの棚に、入れておきましょう」
それを棚にしまうと、彼女は地上へ通じる階段へ足を向けた。

□ □ □ □ □ □
「はぁっ……はぁッ……っ、何とか撒いたわね」
涼宮ハルヒは周囲を見回し、近くに人の気配がないことを確認すると、壁を背にずるずると崩れ落ちた。
「くそっ……ッ!」
悔しげに地面をたたくのは、逃げることしかできない自分への憤りか。それとも狂ってしまった富竹への怒りか。
かれこれ数時間。彼女は富竹から逃げ続けていた。
休もうとすると富竹の気配がし、それから遠ざかる、ということの繰り返しである。
いくら、一般人としては並以上の身体能力を持つハルヒでも、さすがにそろそろ限界だった。
「それと、さっきの放送は……九人だったかしら? ッ、私がふがいないばっかりに……!」
放送のとき、彼女は丁度、死に物狂いで走っていたところだ。そのため、禁止エリアなど重要な部分を聞き逃してしまっていた。
だが、わずかに漏れ聞こえた『九人』という単語が、彼女の心を蝕む。
(私の所為で……九人も)
彼女自身わかっている。その考えはどうしようもないほど間違っていると。
だが、わかっていても彼女は考えてしまう。全ては、自分が富竹を殺せなかった所為ではないかと。
もし、自分が彼を殺せていれば、他の人は助かったのではないだろうか、と。
「は、ははは。私、大分疲れてるみたいね。殺す殺すって……どこのヤクザかってのよ」
彼女は無理やり笑い飛ばそうとするが、その声にも元気はない。
そして、彼女のつかの間の休息は破られる。
──どこだ涼宮ハルヒ! 出てこい!
まだ遠いが、声がする。
「……もう追いつかれたか。少しぐらい、休ませろ、っての」
声から遠ざかるように、ハルヒは壁を伝って歩く。
「……? あれは、薬局?」
当てもなく歩く途中、彼女は薬局の看板を見つけた。
「そうね。今なら、家に入れば、……見つからないわよね。それに、傷の手当も、したいし」
彼女はよろよろと、薬局に入っていった。

しかし。
「……なんでなんにもないのよ! これじゃ、傷の手当どころか、栄養補給すらできないじゃない!」
薬局の一階にあるのは、せいぜいが永琳が飲み捨てたハッシーの空き容器ぐらいなものである。
「そうだ。せめて何か武器を……」
ハルヒが移動したのは台所。片っ端から引き出しやら何やらを開けて武器になりそうなものを探す。
(鍋やフライパンじゃ駄目、決定打にはならない。もっとダイレクトな……あった!)
見つけたのは、一般の家庭にありそうなごく普通の包丁。しかし、今の彼女には、心強い武器である。
(あとはどうやってあいつに近づくか、だけど……)
彼女にとって最大の問題は、富竹が拳銃を持っているということである。
予備の弾丸がなかったことは確認しているが、彼が何回発砲したかまでは覚えていない。
(弾切れを待つのは、リスクが大きすぎるわね。となるとどこかに隠れて不意打ちとか……)
彼女が考えているときである、再び富竹の声が聞こえた。しかも、その声は徐々に近づいてくる。
(なんでわかるのよ! いいえ、そんなことはどうでもいいわ。まずは隠れないと!)
丁度いいことにシンクの下は物入れになっており、食器や鍋の類はほとんど入っていなかった。
そのため、彼女はそこに隠れることにしたのである。
だが、そこにもまた誤算があった。
(しまった! ここじゃ向こうで何を言ってるかよく聞こえない!)
物入れの戸は、意外と丈夫で、音をあまり通さない。また、台所から、薬局の入り口へは大分距離があった。
そのため彼女の位置では、話している内容がほとんど聞こえなかったのである。
(少し扉を開ける? いえ、それじゃあもしかすると警戒させちゃうかもしれない。
 だったら、富竹の気配がなくなるまで持ちこたえれば……)

□ □ □ □ □ □
永琳が地下から出たのは、丁度そのときである。彼女は出口の板を少し持ち上げて誰もいないことを確認し、外に出た。
「あー、やっぱり地下よりも外ね。生き返るわ」
うーん、と伸びをしつつ呟くが、外で声がしたのを聞き、少し怪訝そうな顔をした。
「八意さん、そこをどいていただけませんか? 外に出れな……おや、なにやら声がしますね」
「一樹、あなたは下に戻りなさい」
「はい?」
思わず聞き返す古泉。永琳は後ろを振り返らずに言う。
「もしかすると、ちょっと厄介な男がここに来るかもしれない。もしものことを考えて、逃げる準備をしておいて頂戴」
古泉は、はい、と素直に返事をすると、すぐに地下に戻っていった。
永琳は、地下への入り口がほぼ完璧に隠蔽されていることを確認すると、
レナとの戦闘で壊れた椅子を、表からは見えないように奥に隠した。
そのほかにも、不自然な何かがないかあたりを見回す。
そして最後に、今の自分の獲物である剣を、扉の影に隠した。
(ここで会った竜宮レナは、私のことを知らなかった。古泉一樹もまた同じ。だったら……)
ガタン、と薬局の扉が開かれる。
「隠れてないで出て来い! 涼宮ハル……」
声に振り返るとそこには、拳銃を突きつけたままポカンと口を開けている富竹ジロウがいた。

□ □ □ □ □ □
「あ、ああ。これは失礼。人違いでした」
慌てて拳銃をおろす富竹。それもそうだろう。憎き相手かと思いきや、そこにいたのは妙齢の美女だったのだ。
多少動転しても仕方がないといえる。
だが、彼はすぐに思考を停止することとなる。
「あ、もしかして富竹さん……ですか?」
見知らぬ相手に自分の名前を呼ばれ、富竹は思考が一瞬フリーズする。
だが、すぐにある可能性にたどり着き、再び拳銃を永琳に向けた。
「お前、あの主催者の仲間だな! そうでなけりゃ僕の名前を知ってるはずがない! さてはお前、涼宮ハルヒをかくまって……」
「あ、違います。私は鷹野さんの友人で、それであなたのことは何度か聞いたことがあって……」
「……へぇあ?」

数十分後。
「……なるほど、鷹野さんの友人の涼宮ハルヒさんでしたか。はは、これは失礼」
「いいえ。こういう異常な場所だとみんなおかしくなります。富竹さんだけじゃありませんよ」
長い時間永琳の説明を聞いて、富竹はどうにか少し落ち着いた。
永琳に、鷹野三四が自分についてどんなことを話しているかを聞いたためだろう。
同時に永琳は、富竹の陥っている思考について、おおよそ把握することに成功した。
彼が涼宮ハルヒを探していること。その涼宮ハルヒは、街の人間を皆殺しにしてやると言っていたこと。
ヘロヘロとしてふざけた男とその仲間が、主催者とつながっていて、自分に注射を打とうとしたこと。
そして、紫という女が黒幕だということ。
「しかしあの女、ぬけぬけと偽名を名乗るなんて! 次にあったら絶対に……」
「……それにしても、鷹野さんが話していたとおりですね。本当に頼りになりそうな人です」
「い、いやぁ、そう言われると照れるなぁ、ははは」
そういいつつ、彼は首をかき続ける。ちなみに拳銃とスタンガンはベルトに指してある。
それを見ながら永琳は、富竹を落ち着かせるために費やした時間全てを無駄にしかねない、問題の単語を口にする。
「あの、富竹さん? 鷹野さんに何度か雛見沢症候群という奇病について聞いたことがあるんですが……」

それに富竹はすぐに反応した。ベルトから拳銃を抜き放つ。
「鷹野さんの友人だと言うあなたがそんなことをいうのか! 鷹野さんの薬は完璧だ! 雛見沢症候群が発症するはずがない!」
「ええ。鷹野さんが大変優れた研究者だということは私も知っています。伊達に彼女の友人をしているわけではありません」
「だったら何が言いたい!」
拳銃を突きつけられても、あくまでにこやかに彼女は言う。
「あなたには鷹野さんによって予防剤か何かを投与されていたのでしょう?
 でしたらあなたが雛見沢症候群にかかるわけがありません」
「あ、ああそうさ! 鷹野さんの薬が効かないなんて事はありえない!」
「でしたら、鷹野さんの研究データが何者かに盗まれた、とは考えられませんか?」
富竹の思考が、今度こそ完全にフリーズする。
「盗、まれた……?」
「ええ、そう考えるのが妥当です。首が痒くなる奇病なんて、サンプルデータもなしに再現できるわけがありません」
「……そうか、そうかわかったぞ! だから奴らは僕にしつこくC-120を投与しようとしたんだ。
 自分達の作り出した病気に対して、あの薬が効くかどうかを試すために!」
目をぎらつかせながら、笑う富竹。それを見ながら、永琳は眉一つ動かさない。
「それと、これは関係あるかわからないのですが、さっき白い服を着た女の子に会ったのですが、
 その子も雛見沢症候群に似た症状が出ていまして……」
「白い服? ……まさかレナちゃんか!?」
「それは私は知りませんが、彼女はここから東の方角、塔に向かって走っていきました。
 もしかすると、あなたの探している女もそちらの方角に……」
「だからあいつらは、街を目指してたんだな? 人の集まりやすい場所で発症させて、どうなるかっていう実験だ」
もはや富竹には永琳のいうことなど聞こえていない。
「ありがとう、ハルヒさん。おかげであの女の居場所がわかりました」
「それはそれは。どういたしまして」
慇懃無礼に永琳は会釈した。富竹は彼女に背を向けて、薬局のドアを開ける。
「待っていろよ、ニートども! お前達は僕が必ず止めてやる!」
「……え?」
永琳が最後にこぼした声など意に介さず、彼は駆け出した。

□ □ □ □ □ □
「ふぅ……」
とりあえず、富竹がいなくなったことを確認した永琳は、隠した剣を取り出すと、椅子の背にぐったりと寄りかかった。
「まったく。いくら思考を読みやすいとはいえ、あの手の狂人の相手はもうしたくないわね。
 多分、普通に戦った方が楽よ、間違いなく」
彼女がやったことを言葉で表現するのは簡単だ。
基本的に人間は、己の信じるところのみで、世界を認識する。とはいえ、人間の認識能力には限界があり、
本当に心のそこから納得できる結果などほんの少しもない。だから、自己と世界とのすりあわせが必要となってくる。
半ば無理やりにでも、そこにあるものを受け入れる。そうでなければ、世界の中で生きにくくなってしまうからである。
だが、そのすりあわせが上手くいかなくなったとき、疑心暗鬼が生じる。
自分というちっぽけな器の中でしか世界を認識できなくなるため、世界の全てを信じることができなくなるのだ。
しかしそれは逆に、その器の中でなら全て信じることができる、ということでもある。
つまり、相手の信ずるもの、よりどころとする考えをを類推し、
それに沿った話をすれば、相手の思考の方向性を変えることが可能だということだ。
だが、言葉で説明するのは簡単でも、それを実際にできるかは別問題である。
相手の思考を常に先読みし、先手先手に布石を打っていく。それがどれだけ労力を要するものなのか。
(部下だからまあ、知ってはいたけど、それでも少し疲れたわね)

ちなみに、彼女が偽名を名乗ったのは、富竹が『八意永琳』という名前を誰かから聞き及び、
その名を危険視している可能性を考慮したからである。
その偽名に『涼宮ハルヒ』を選んだのは、それが一番危険度の低い名前だったからだ。
富竹にとって涼宮ハルヒは主催者側の悪である。つまり、『偽名かもしれない』という考えを伝えれば、
簡単にとは言えないが、こちらが本物であるという方向に思考を誘導できるのだ。
「少し危ない賭けだったけど、上手くいったわね」
もし少しでも怪しまれれば、すぐに彼の拳銃が火を噴いたことだろう。
(そういえば、、あの富竹も私を知らないようだったわね。もしかすると、あの大陸から来たのはほんの一握りということ?)
竜宮レナ、古泉一樹、富竹ジロウ。
この三人は、あの大陸から来たのならば、多かれ少なかれ彼女のことを知っているはずなのだ。
それなのに、彼らは永琳とは初対面だった。
ならば、彼女の知り合い全てが、彼女とは違う時間から呼ばれたとも考えられる。
(しかし、まさかニートが富竹と接触していたとは……。でも、あいつが殺し合いに乗るとは考えられないわね。
 おまけに角の生えた少女……伊吹の萃香かしら。合流は……いえ、可能性が低すぎる。ニートの保護は二の次にするしかない、か)
再び永琳はため息をつくと、地下室への入り口の蓋を上げた。

「一樹、もう終わったわ。移動するわよ」
「ふう、一体なんだったんですか? それほど強い相手だったとか?」
古泉は伸びをしながら永琳に聞くが、彼女はそれを否定する。
「確かに富竹は人間の中では相当強い方だけど、私の敵じゃないわね。こちらが丸腰でも、まず負けないわ」
「だったら……」
「問題なのは、彼の病気なのよ。あれの末期発症者は極度の疑心暗鬼に陥り、本当の仲間すら信じられなくなる。
 だったら、こちら側より、相手側にいてもらった方がいいでしょう? そのための思考の誘導が厄介なのよ」
彼女が富竹を塔の方へ誘導したのは、別段誰かがいるという確証があったからではない。
ただ、確認した中で人が集まりそうな場所では、塔が一番手ごろな位置にあったからだ。
下手にかかわってやけどをしてはたまらない。そう考えての永琳の行動だった。
「さて、それじゃあここを移動するわよ。もし向こうに人がいなくて富竹が帰ってきたら、また面倒なことになるわ。
 せっかくの火種を、潰してしまうのは惜し……」
「……八意さん?」
古泉に向けて話している最中、彼女は突然言葉を止めた。そして目を見開いたままガバっと振り返る。
彼女が向いているのは壁。しかし古泉には、彼女がその向こうを見ているような感じがした。
「あの……」
「古泉。あなたは先にあの抜け穴から逃げなさい」
「…………」
逃げる準備、ではなく『逃げろ』という言葉に古泉は押し黙る。
さっきよりもより直接的な言葉。彼には何があったのかわからないが、永琳の言葉からよほどの危機が近づいていることを理解した。
だから彼は、何も言わずに再び地下に戻った。

□ □ □ □ □ □
「これはまた……ずいぶんと古い力が来たものね。アレなら……この殺し合いに乗っていそうか」
永琳は薬局を出る。そこから眺めるのは西方。まだ遠いけれども、そこに立つのは血まみれの相撲取りの姿をした男。
とっぷりと日は暮れ、いよいよ本格的に夜となろうかという薄暗がりの中で、その男はぼんやりと光っているように見えた。
(禍々しくは見えるが、大分消耗している様子。今ならどうにか殺せるだろうけど……殺し合いに乗った人間は生かしておきたいしね)
「逃げるなら逃げるで、タイミングが重要だけど。さて、どうしたものか……」
永琳は呟くと、その場に立って彼の出方を待った。


【E-3 町・薬局前/一日目・夜】
【八意永琳@東方シリーズ&新世紀 東方三国志~ひぐらしの憂鬱~】
[状態]:肩に怪我(縫合済み)、精神的疲労・小、体力消耗・小、背中に火傷(手当て済み)、古泉一樹を信頼
[装備]:王者の剣@DQ3、小型爆弾*5、DCS-8sp*5
[道具]:なし
[思考・状況]
1.あの相撲取りと手を組めないか思考中。無差別に襲ってくるようだったら、撤退を優先。
2.古泉一樹と協力して優勝を目指す。 かなり信頼。
3.ニートや皆を探す、必要なら共闘も考える
4.参加者を何らかの方法で誘導し、互いに潰しあってくれる状況を作る。
5.薬を作りたいが、無理はしない。
6.ゆめにっきはいずれ何とかしたい。古泉一樹にゆめにっきの耐性があれば読ませ、その内容を全て知っておきたい。
7.ゲームに優勝し、悪魔と取引をして皆が元通りになれることを願う。

【E-3 町・薬局内部・薬売りの部屋@怪~ayakashi~化猫 の部屋/一日目・夜】
【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部強打、八意永琳を信頼、肩脱臼(肩は永琳にはめてもらいました)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式*2(食料一食、水二本消費)、ゆめにっき@ゆめにっき(手の形に血が付着、糸で厳重に封をしてある)
    逆刃刀@フタエノキワミ アッー!(るろうに剣心 英語版)、赤甲羅@スーパーマリオシリーズ、鎮痛剤二包み、
    睡眠薬一包み、糸(あと二メートルほど)、裁縫針、ワンカップ一本(あと半分)、武器になりそうな薬物、小型爆弾*1、DCS-8sp*1
[思考・状況]
1.夜逃げ準備中
2.キョン君(´Д`;)ハァハァ…ウッ……
3.優勝して、愛しの彼を生き返らせる。
4.殺し合いにのっていない参加者を優先的に始末。相手が強い場合は撤退や交渉も考える。
5.八意永琳と協力。かなり信頼。
6.優勝して「合法的に愛しの彼とニャンニャンできる世界」を願う(ただし、生き返らせることを優先)

※地下に薬売りの部屋@怪~ayakashi~化猫には現在蓋がされています。よく見れば床に変な所があるとわかるかも知れません。
 薬売りの部屋の床には退魔の剣@モノノ怪が刺さっていて、抜け穴の鍵となっています。抜け穴の行き先は不明です。
 抜け穴の大きさは、大人が這って通れる程度です。薬棚のどこかに、乾燥中のDCS-8spがいくつかあります。

※DCS-8sp
ドーピングコンソメスープ八意スペシャルの略、なのかもしれない。
反応速度の増加、筋力の増大など、服用者の身体能力の限界を引き出すことができる。効果は約30分。
ただし、服用者の外見に変化はない。また、使用後は空腹に見舞われる。

【E-3 町・薬局内部・台所/一日目・夜】
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:富竹への憎しみ、精神錯乱、左肩に銃創、左脇腹と顔面と首に殴られた傷、腕から出血、脇腹に弾丸がかすった傷
[装備]:陵桜学園の制服@らき☆すた、包丁
[道具]:支給品一式*2、びしょ濡れの北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、テニスボール、アニマルマスク・サラブレット@現実、ゾンビマスク@現実(ゾンビーズ)
[思考・状況]
1.くそ、外の様子がわからない!
2.どんな手段を使ってでも絶対に富竹を殺す
3.脱出の協力者を探す
4.SOS団のメンバーを探す
5.ゲームから脱出
※第三回定時放送をほとんど聞いていません。死亡者の人数のみ把握しました。
※自分の服装が、かがみを勘違いさせたことを知りました
※自分が狂い掛けている事に薄々気づいています
※首を殴られたせいでうまくしゃべる事が出来ません。

【E-3 町/一日目・夜】
【富竹ジロウ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:雛見沢症候群発症、鳩尾に痣、左肩、左腕に中程度の怪我、首から出血、首に痒み、顔面に打撲傷
[装備]:富竹のカメラ@ひぐらしのなく頃に、ベレッタM92F(3/15)@現実、スタンガン@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式*2、ピッキング用針金、マネキン(腕が一本取れています)@デッドライジング フィルム
[思考・状況]
1.塔に向かったハルヒと名乗った女を追いかけて殺す
2.仲間になってくれる人を探す。
3.主催者の手先(ハルヒ、遊戯、ニート、ロックマン、ロール、エアーマン、ムスカ、スパイダーマン、永琳、ゴマモン、海馬、萃香、阿部)を殺す。
4.水銀燈、博麗霊夢、アリス・マーガトロイド、霧雨魔理沙が敵かどうか調べる。
5.圭一、レナ、魅音の保護。
6.自分に打たれた薬の解毒剤を探したい。
7.ゲームから脱出し、主催者「紫」を倒す。
[備考]
※第三回定時放送をまったく聞いていません。
※本物の涼宮ハルヒの方がは偽名だと勘違いしています。
※雛見沢症候群が発症しました。首が痒いです。
※富竹は、首が痒かったりするのは、ロールやニートに何か薬を打たれたためだと思い込んでいます。
※主催者を、紫という人物だと思っています。

【YOKODUNA@世界最強の国技SUMOU】
[状態]:疲労・大、重症、全身血塗れ、暗黒面に落ちました、ぼんやりと光っている
[装備]:なし
[道具]:支給品一式*4(水食料全消費)、ドリルアーム、クロスミラージュ(8/8)@リリカルなのはStrikerS、
    気合の鉢巻き@ポケットモンスター、クマ吉の手錠@ギャグマンガ日和、ドアラの着ぐるみ@ドアラ動画シリーズ、
    全自動卵割機@サザエさん、億千万の思い出@現実、マント羽根*2@スーパーマリオワールド、
    キーボードクラッシャーの音声(の入ったiPod)@キーボードクラッシャー
[思考・状況]
1.向こうにいる強そうな女に戦いを挑む。
2.SHURAとして、ONI-CHIKUSHOとして出会った者全てに戦いを挑む。
3.最後まで残ったら主催者とも勝負を望みたい。


□ □ □ □ □ □

一方その頃。
「……いない、わね」
橋を渡った、船の南。霊夢たちはあたりを見回したが、そこにあるのはぺんぺん草も生えないほど荒れた土地だけだった。
つまるところ、彼女達は遅すぎたのだ。
一度YOKODUNAは、逃げていった海馬たちを追おうかと考えた。しかし、おそらく人がいるであろう町と、
彼らがどこまで逃げたのか見当がつかないこと、そして負傷の具合。
それら全てを考慮し、YOKODUNAは町へ向かうことを決めた。
しかし、そんなことを知らない霊夢たちは、あたりを探し回る。
「うーん、これだけ見晴らしがよければ見つかると思うんだけど」
『いくつか茂みがありますが、せいぜい隠れられるのは子供ぐらいでしょう』
「ぼ、ボクとしてはそろそろ休みたい、というのが正直なところ」
城から走りっぱなしのヨッシーは、若干疲れたような表情を浮かべている。
「しかたない。レイジングハート、エリアサー……」
『……レイム?』
「霊夢さん?」
突然霊夢はヨッシーから降りると、スタスタと歩み去る。向かう先はほんの20メートルほど先の小さな茂みである。
慌てて彼女を追いかけるヨッシー。
「ちょっと、霊夢さん。一体何が……ひっ!?」
茂みの陰で見えなかったそこにあったのは、血の海だった。
すでに大部分が乾いているものの、一面に血が飛び散り、川辺を赤黒く汚している。
そしてその中に沈む白と黒の服。
霊夢はその光景を無表情に眺めている。

「霊夢さん!」
『レイム!』
「……あ。ああ、ごめんなさい。ちょっとぼうっとしてたわ」
何度目かの二人の呼びかけを受け、彼女はやっと我に返った。
そしてまた、何もいわずにきびすを返す。その向かう先は、町である。
「ち、ちょっとちょっと霊夢さん! 一体どこに行くつもりですか!」
「どこって……そのYOKODUNAとかいう奴を殺しに行くだけだけど?」
腕を掴んで霊夢を引き止めたヨッシーは、その声を聞いただけで、背筋に寒気が走るのを感じた。
思わず彼は、ゴクリとつばを飲み込む。
「ヨッシー、腕を掴まれていては奴を殺しにいけないわ。離さないとあなたから……」
カチャリ、と霊夢はレイジングハートを構える。しかし今度は、その杖から声がした。
『レイム』
「何よレイジングハートまで。あなたまで私を止めようというの?」
『私はただのデバイスです。ですからあなたが行くと言うのなら、私にあなたをとめることはできません。
 ですが、今のあなたでは、たとえ相手が手負いでも、勝利することはできないと、断言できます』
霊夢は眉をひそめる。
「なに? 私が遅れを取るとでも?」
『あなたは私だけで相手を倒せると考えているのですか?』
「だから、こうやってお札を……」
『わずか数枚の、即席のマジックアイテムでどうにかなる相手なのですか』
「…………」
霊夢はうつむいて黙り込んでしまった。レイジングハートはさらに続ける。
『第二に、あなたは以前、攻撃に反応できなかったことがありましたね。バリアジャケットとはいえ、服を切り裂かれています』
「…………」
『第三に、私達の最終目標はなんですか?』
ヨッシーに腕をつかまれたまま、彼女は顔を上げ、一つ深呼吸。そして一息に吐き出す。
「……なるほど。確かに冷静じゃなけりゃ、勝てる相手にも勝てないわね。はは、私らしくもない」
苦笑する彼女を見て、ヨッシーはほっと胸をなでおろした。
「ああ、ヨッシー、もう大丈夫よ。手を離して」
「あ、ごめんなさい」
慌てて、ヨッシーは手を離す。

霊夢は惨状の現場へと近づくと、それを再びじっと見つめる。
今度は無表情ではない。少なくともヨッシーには、涙こそ見えなかったが、彼女が泣いているように見えた。
「魔理沙。あなたは後で弔ってあげるわ。すぐに仇を討つから、待ってなさい」
そこで彼女は『おや?』と言って、首をかしげた。
茂みに黒い帽子が引っかかっていたのだ。戦闘の余波で吹き飛ばされたのだろう。
彼女はそれを、ひょいとかぶった。
「弾幕はパワー……って、似合わないわね」
『そうですね』
「うん」
ふたりに否定され、苦笑いを浮かべる霊夢。帽子を脱ぐと、それを大事そうにデイパックにしまった。
「じゃあ、まずはあの船の探索ね」
そういうと、霊夢は船を見上げた。

□ □ □ □ □ □
『ここです』
船に乗り込む際、ヨッシーの跳躍力がわずかに足りず、霊夢たちが引き上げると言うハプニングこそあったが、
他には大きな事件もなく、霊夢たちは海馬に言われたブリッジにたどり着いた。
鍵を開け、中に入ると、早速レイジングハートがコンピュータにアクセスする。
(ベースとなっているのは地球の技術ですか。それにしてはこのコンピュータはやけに性能がいいのですが……。
 ……おかしいですね。あちら側のセキュリティは穴だらけです。まるで何かに襲われた後のような。
 とりあえず、深いところへのアクセスは危険なのでやめておいて、表層から情報を取得しましょう。
 代わりに、各所にアクセス時に有用なプログラムを浸透させておきます。余裕があれば他にも色々と……)
(あー、まあ、こういうものはよくわからないから、頼んだわよ。レイジングハート)
彼女はコンピュータをレイジングハートに任せ、ヨッシーとともに、出入り口の脇に座る。
「それにしても変ねえ。どこかから見られてる感じはするのに、エリアサーチにすら反応がないのがなんとも」
霊夢が呟く。そして、この部屋は違うけど、と付け加える。
「霊夢さんの、勘違いじゃないですか?」
「うーん。私は自分の勘に自信を持ってるんだけどなぁ」
言いつつ、彼女はここにくる途中で作っておいた数枚のお札を、扉を少し開けて放った。
それらはありえないほどの距離を飛び、廊下の壁に張りつく。
「これぐらいでいいでしょ。後は待つだけ」
「あれ、霊夢さん何かしたんですか?」
「いいえ、なんでもないわよ。さて、お札を作らないと」
霊夢は適当にはぐらかすと、戦力増強のためにお札を作り始めた。


【E-2 Nice boat.5階-船橋/一日目・夜】
【博麗霊夢@東方project】
[状態]:健康、バリアジャケットの腋部分破損
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、巫女風バリアジャケット@巫女みこナース
[道具]:支給品一式(食料1消費)、フリップフラップ@ニコニコキッチン、
    首輪、ドリル@ミスタードリラー、メモ用紙(140/200)、魔理沙の帽子
[思考・状況]
1.御札増量中。博麗アミュレットを作っています。
2.船を捜し終わったら、YOKODUNAを殺しに行く。
3.怪しい人には無理のない程度に接触、無害なら適当に交渉
4.今回の事件の解決(主催者の打倒)
5.クロスミラージュの確保(YOKODUNAを消し飛ばす際に無事なら)
6.お兄ちゃんねぇ……やよいから、離すべきだったかしら。
※日吉戦でのYOKODUNAの能力について、日吉から聞きました。

※船橋前の通路には霊夢の張った結界があります。
 物理的な効果はありませんが、船内でのみ、霊夢はそこを何かが通ったことを知ることができます。

【ヨッシー@スーパーマリオワールド】
[状態]:健康、軽く焦げてる
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料全消費)、RPG-7(残弾5)@GTASA、C4プラスチック爆弾@MGS [思考・状況]
1.とりあえず霊夢さんに協力
2.戦いになったら避難する。
3.ボスを倒す
※ヨッシーはKASをどこかの世界のマリオと思ってます。TASと関わっていません

※カイバーマンたちとの情報交換をしました。霊夢は大方把握しています。



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