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『殲滅計画YOKODUNA』(後編) ◆irB6rw04uk




こちらNice boat.水面は穏やか、現在時刻は20時になったばかりだ。
「うぅ~ん、終ったぁ」
長い間同じ姿勢で博麗アミュレットを作り続けていたので体がガチガチだった。
それをやんわりと背伸びをして引き伸ばす。
作った博麗アミュレット数は130枚。残り10枚は何かあったときのための予備だ。

『お疲れ様です。レイム』
レイジングハートはコンピュータにハッキングを仕掛けながらも私の独り言に答えてくれた。
(そっちはどう? 何かつかめたのかしら?)
『えぇ、表面層の比較的重要度の低そうなデータから順にダウンロードしました。再生しますか?』
(コンピュータにあまり詳しくないから分からないかもしれないけど、一応……)
『分かりました。まず、首輪のシステムが一時的にエコノミーモードに変更されているようです』

私は今まですっかりとはいかないものの半分くらいは忘れていた首輪に手を添える。
自分の体温で少し暖かくなっているはずなのに、氷に触れているように冷たい、寒い。
よく考えてみるとこの首輪は爆発したら最初のあの子のように首が吹き飛ばされてしまう。
こんなに小さくて、そしてパッと見ただけではただの趣味の悪い首輪だけにしか見えないのに……ぱん! と言うあまりにも地味でつまらない破裂音と共に一人の魂をあの世に無理やり送り届ける呪いの首輪。
この冷たさは死の冷たさなのだろうか?

(……つづけて)
『エコノミーモードとは首輪に搭載されている機能を一時的に制限し、最低限必要な機能を生かし続けるための緊急避難システムです』
(うーん、つまり今この首輪は完全じゃないってこと?)
『はい、停止している機能は盗聴機能、それとこちらの位置軸情報をメインコンピュータに転送する機能と推測されます』
(じゃあ、やっぱり禁止エリアに入ったり無理やり外そうとしたら爆発するのね)
『……そういうことになります』

『爆発の条件についての項目もありました。今後のために閲覧することを准将します』
(わかったわ。聞かせて頂戴?)
『はい、マスター。爆発の条件は大きく分けて3つに分けることが出来ます。』

まず1つ、もっとも使用頻繁度が高い『参加者が禁止エリアに侵入した場合の爆発』について。

禁止エリアと参加者の位置軸が重なった場合に(参加者が禁止エリアに侵入した場合)首輪が爆発指令電波を受信、爆発準備に入る。
爆発準備から爆発までの時間は1秒から225秒のランダム。
これはプレイヤーに禁止エリアに入ってからの爆破時間を知られないようにし、禁止エリアに爆破のタイムラグを利用して戻ると言う行為を抑制するためである。
このタイムラグを導入する理由は参加者が禁止エリアで死亡することを主催者は面白く思わないからである。

次の2つ目、参加者が主催者の指示に従わせるための『主催者が故意に爆発させる場合』について。
主催者が参加者を主催者側に危険と判断した場合に使用する。

『ここからは重要度のレベルが高く閲覧することが出来ませんでした』
(仕方ないわよ。3つ目は?)
『3つ目は……』

そして3つ目、参加者の反逆を抑制するための『首輪を無理やり外そうとした場合の爆発』について。
首輪に強い圧力がかかるとセンサーが反応し、爆発する仕組みである。
安全装置としてセンサーが反応してから少しの時間が設けて有る。
これは首輪を取り付ける際や取り外す際に誤ってセンサーを反応させてしまったときに対処する時間だ。
主催者は自由に首輪の爆破をコントロールできるので時間は短くてよい。

最後に首輪が爆発した場合『首輪をつけている者だけ』を確実に殺害するように作られている。

『以上です。何か質問はありますか?』
(ううう……頭痛くなりそう。つまり)

禁止エリアに入ったら時間はランダム。
主催者は自由に首輪を爆破できる。
首輪に圧力がかかったら少し経ってから爆発。

(――ってことでいいわよね?)
『そうです。爆発したら確実に死亡しますので気をつけてください』

(わかったわ)

その後、バグのことやその他細かいことをレイジングハートから聞かされる。半分くらいは理解できない単語が出てきたけど大まかなことは分かった。
レイジングハートさえ海馬のところに連れて行けば海馬なら理解してくれるだろう。

(ありがとう、レイジングハート。もうデータはいいの?)
『はい、これ以上のデータは逆探知されこのコンピュータからのアクセスを拒否される危険性があります。セキュリティホールを内部から人為的に作っておきましたので、セキュリティが回復してもそのセキュリティを破るのは容易です』
(よく分からないけどすごいわね、レイジングハートって)
『光栄です。……レイム、ヨッシーの姿が見えませんが彼はどうしたのですか?』



「……あれ?」

そういえば居ない。ブリッジには隠れるところなどほとんどないから見渡せばすぐに居るか居ないかが分かる。
ぐるりと360度を見渡すも辺りにはさまざまなセンサーの情報を淡々と表示するだけのディスプレイと備え付けの椅子、それによく分からない機械がごちゃごちゃと置いてあるだけだ。
――あ! 少し前に「ちょっと探索に行ってきます」といって出て行った。私は「あ、うん」といって送り出してしまった。だってアミュレットを作るので忙しかったから……

「まったく! どこに行ったのかしら? 海馬が言うとおりならこの船に殺人者がいるって言うのに!!」

その時だった……

ジリン、ジリリリリリリ

私はびくっとして音がなった方向を見る。ごちゃごちゃ機械が置いてある中の一つ、黒い受話器がベルを鳴らしていた。
3コールほど警戒をして受話器を取らなかったが、取らないと何も始まらないことに気がつき恐る恐るその受話器を取り、耳に当てた。

「あ? もしもし? 私です」

一瞬、電話の向こうにいる奴に御札を投げつける方法を考えてしまった。

何をやっているのだろうか? この恐竜はぁあああッ?

「ヨッシー? どこにいるのかしら?」
熱くなってはダメよ。どんな時でも冷静に状況を把握するっ。冷静(COOL)にねっ!!

「1階の機関室前の機関制御室からかけています」

1階? なんでまたそんなところに行ったのだろうか?
ヨッシーはそのまま話を続ける。

「それでですね。いいものが見つかったんです。後方甲板に来てください」

ブッ! ヨッシーはそういい終わるとこちらの答えも聞かずに電話を切った。心なしか嬉しそうな声だった。
私はレイジングハートを持つとブリッジを後にする。
来たときに鍵がかかっていたなら閉めて出るのがルールと言うものだ。
重たい鉄扉を閉めて鍵をかけてる。

「よし! ……ヨッシーが見つけたものってなんだろう? 少し気になるなぁ」
行ってみれば分かること! 確か後方甲板ね?
2本の梁に鉄板を渡しただけと言う安上がりな階段を駆け下りて3階に降り、それから右舷甲板を通って後方甲板に出た。
後方甲板は前方甲板よりもいささか大きく、ゴミなども散乱していなくて綺麗だ。

ただ……そこに並べてあるものが反対に異様な雰囲気を放っていた。

車だ。ミリタリーチックな感じの車が数台止まっていた。それも綺麗に整列して。
他にもいろいろな大型物があるようだが夜のため視界が悪く見えない。

深いオリーブ色の車の所に影が見えた。
警戒しながら近づくとすぐにその影の正体が分かった。


「ヨッシー! なにしてるのよ」
「霊夢さん、見てください。車です」

ああそうね! 言われなくても車だわ。恐らく外の世界の車だろうけど……

「おなかがすいて何か食べ物を探してたら見つけたんですよ」

なんともヨッシーらしい理由だ。納得がいく。
「それでこの車をどうするの? 私が運転できるわけないし……」

「大丈夫です! 任せてください」

ヨッシーは自信たっぷりに言い放った。反対に私は……

激しい不安……こんな恐竜に車の運転などできるのだろうか? いや、一般常識的に考えたら不可能だろう。
指はあるにはあるし、足もしっかりある。
人間的な動きをするには申し分ない体つきなのは事実だが……不安だ。

そもそも車を使わなくてはいけないのだろうか?
私は使わなくてもいい。
だけどヨッシーは使いたいみたいだ。

ヨッシーは私のわがままと言ってもいいYOKODUNA退治に付き合ってくれている。

…………うん


「わかったわ。ヨッシー、車の運転よろしくね」
「はい。しっかりつかまって下さい」

ヨッシーは目をキラキラと輝かせながらハンドルを握る。
私はその隣の席に腰を下ろす。

「行きますよ!!」

エンジンに焔が灯されドルンとうなりを上げ、排気ガスをマフラーから放出する。
ヨッシーはアクセルを『目一杯』踏み込んだ。

この選択が私をひどく後悔する破目になった。

           〆

ギャヮヮァァァアアアアア!!!

タイヤと合成樹脂製の床が擦れて悲鳴のような声を上げる。

焼けたゴムの臭い…そしてこの風。
ヨッシーは風になった。

長い間やってなかったが、スタートダッシュは成功した。私の腕もまださび付いていないようです。

ヨッシーが昔のことを思い出している間に、ジープの目の前には壁が迫ってきていた。
忘れてはいけないが、ここは船の上である。
アクセル全開なんかで走ればすぐに端から端に行くのは当たり前だ。

「ドリフトォォォォオォオオオオオオオオオオオ!!」

一瞬ジープが空中に浮く。そして180度ターンをかました。
ギアをガコガコと切り替え再び急発進。
もちろんフルスロットル。車体の速度は120km/hを軽く超えている。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

霊夢は悲鳴とも叫びとも言えない声を発していたがヨッシーはそんなことお構いなしにジープを爆進させる。


グングンと今度は柵が迫ってきた。何度も言うがここは船の上である。

(え? まさか……)
霊夢の背中に嫌な汗が滲み出す。

くどい様だがここは船の上である。柵の向こうには海か川しかない。

「つかまっててくださいよ!!」
「や、やっぱり……飛ぶの!?」

「「「全力☆前進☆DA」」」

ジープはNiceboat.の後方甲板の鉄柵を突き破り……空を飛んだ。
闇には霊夢の叫び声が吸い込まれていった。

           〆

「痛いです……」
「自業自得よ!」

二人は川に沿ってジープを走らせていた。
柵を突き破ったジープは数秒空中を舞った後、川を渡り、川原に無事転倒することなく着地した。

すぐにヨッシーはギアを入れ替えようとしたが……霊夢がとっさに発動さしたレイジングハートで思いっきり殴りつけて阻止した。
必死だったから手加減などできるはずもなく、ヨッシーの頭には大きなタンコブができていた。

現在の速度は50km/h程度でちょっとしたドライブしている時のようだ。
生ぬるい風でも少し気持ちよく感じる。

「ねぇ、YOKODUNAはどこにいるのかしら?」
「本当にYOKODUNAに勝つ方法を思いついたんですか?」
「……五分五分って所だけどね。これが通用すれば……勝てる」

ヨッシーはこれをチラッと見る。

「……私に手伝えることがあったら言ってください」

霊夢はこれをぐっと袴の後ろにさした。これですぐに使うことができる。
ヨッシーはこれを何に使えるのか分からなかったが霊夢の確信とも近い自信に満ちていたので指示に従っていた。

「ありがと、この近くに居ると思うんだけど……」
『エリアサーチしましょうか?』
「そうね、もう少し行ったら……」

そのとき今までの風とは明らかに違う突風が吹いた。
熱い風だ。そして音も聞こえる。何かが爆発した音が……


ヨッシーは反射的にブレーキを踏み込んだ。
キュッと音を立ててジープは急停車する。

「今の音は……爆発ですか?」
『おそらく爆発です。半径100m以内だと予測されます』
「ヨッシー、行ってみましょう! ……全力で!!」
「……行きますよ!!!!」

爆音とも言っていいような音がエンジンから聞こえる。
ジープは90度曲がり森の中に入っていく。
町が近いためか木の茂りは薄かった。

           〆

『レイム、気をつけてください。爆発地点はこの辺りです』
「ええ、そうみたいね」
私達は今徒歩でその場所に向かっている。
ジープが木に囲まれて動けなくなったのと、後は隠密行動するためだ。

力を温存するためにできるだけ他の参加者とは戦いたくない。
たとえYOKODUNAがいたとしても待ち伏せなんて事になったら勝てる死合も勝てなくなってしまう。

少し歩くと何か建物が見えてきた。普通の民家のようだ。
その向こうから人の気配を感じる。

民家の影からそっと顔を出してみる。










「み つ け た」









日吉から受け取った情報に一致する。
もう、この人はYOKODUNAではないと否定できる人は何処の世界にも居ない。ありえない。
YOKODUNAの体は血に塗れていた。そして火傷の痕のようなものがいたるところに見られる。

やはり予想通り傷だらけだった。魔理沙が何もせずにやられるはずがないという私の予想が当たったみたいだ。

魔理沙の死体が見えなかったことから……死体をどこかに運ばれてしまったのだろう。
だからYOKODUNAが死体のありかを知っているはずだ。
殺す前にそれを問うておこう。

「ディバインバスター!!!」

軽く痛めつけてからね……

「!?」
YOKODUNAは突然の後ろからの攻撃になす術がなかった。ディバインバスターの直撃を受けてダルマのようにゴロゴロと吹き飛ばされる。

           〆



何が起こったのだ!?
最初から思い出すことにしよう。


永琳とTORIKUMIをし、勝った。……勝ったと思った。
TODOMEをさすために魔理沙と同じように胸を突き、殺すはずだった。
しかし、突然男が乱入してきてTORIKUMIを邪魔された。
今思い出してもハラワタが煮えくり返りそうだ。RIKISHIにとってTORIKUMIは全人生のHOKORIを賭けての神聖なる戦いだ。
それを乱入してきた男に邪魔されるだと!?
全人生のHOKORIを否定されたようなものだ。堕ちたRIKISHIでも怒りを覚える。

さらに顔は見えなかったがKOMUSUMEは卑劣にも不意打ちをしてきた。
SUMOUのKIMARIではなくてもお互いの顔合わせてから戦うのが、全ての戦いの定義ではないだろうか?

なんにせよ男とKOMUSUMEによって多大なる損害を蒙った。
KIで炎を振り払わなければこのまま焼け死んでいた。

KIで振り払ったと言っても体のあらゆるところを火傷して激痛が襲う。
特に顔面の火傷がひどかった。

悔しさを晴らそうとSIKO-FUMIをしようと思ったが、のどがカラカラであることに気がつく。
火傷をしたためだろうか? 一度気がつくと欲求がドンドンと激しくなっていった。
デイバックにはもう水はない。この自分が、飲み干してしまったのだから……

客観的に見たらYOKODUNAの姿は水を求めているゾンビのようだった。

「ディバインバスター!!!」

朦朧としていた頭脳に聴覚情報が伝えられた。その耳の機能もあいまいになっていたのだろう。情報を伝えるスピードは……遅すぎる!

振り返って見たのは、淡紅色の光線だった。
腕で防御する時間すらなかった。そのまま圧倒的な力に吹き飛ばされてしまった。


そして、現在に至る。


痛む体を起こしたとき、まず考えたことは『誰が攻撃した』と言うことではなく『自分が吹き飛ばされた』と言うことだった。

SUMOU
それは相手を相手をDOHYOUに倒すか、DOHYOUから突き落とすことである。
RIKISHIにとって吹き飛ばされることは敗北を意味する。

「……アッハッハッハハハハ!!!」

腹の底から笑い声を上げた。嬉しくてたまらない!

たとえ不意打ちと言ってもこの自分をここまで吹き飛ばすTUWAMONO!
よかろう。丁度腹が減ってきたところだ。

YOKODUNAは立ち上がり、光線を放った人物を見つけた。

「ふん、またKOMUSUMEか……さぁ、TORIKUMIをはじめよう」

           〆

「日吉の言ったとおりね。ちょっとやそっとの攻撃はほとんど効かないわ……」
『とても一人の人間だとは思えません』
「わ……わたしは後ろで見守ってますから」

ヨッシーは森の奥に慌ただしく逃げていく。まぁ、そういう約束だったしね。
私はレイジングハートをキッと構える。YOKODUNAも腰を低くして構える。

「さぁ、TORIKUMIをはじめよう」
「……その前に聞きたいことがあるわ」
「なんだ?」




「……魔理沙の体――どうしたの?」
「魔理沙……あのKOMUSUMEのことか? なかなかのTUWAMONOだったぞ」
「…………」

やはり魔理沙を殺したのはこいつか……
今すぐディバインバスターを撃ちたい衝動に駆られるが、ぐっとこらえる。まだ聞きたいことはある。

「……亡骸が見つからないのよ。どこにあるか知ってるでしょ?」




「喰った」




「え?」





「魔理沙の体なら喰らった。おかげでこのKIを身につけ、さらにTAKAMIに近づかせてもらった。今では感謝している」





「え?」

え? え? え? 喰った? 喰らった? 食べた?

霊夢に『おかげで』から後の言葉は聞こえていなかった。
『魔理沙の体なら喰らった』その言葉で脳を直接殴られたような痛みが走る。
本当に食べたのなら死体がない話が通る。でも、そんなこと認めたくない。
人間である魔理沙を同じ人間が食べた? そんなことがあっていいのか?







――あぁ、なるほど……


人間じゃないのね。 この鬼畜生野郎ッ!!
死者を玩び、さらに喰らった化け物めっ!!
私が全存在をかけて、否定してあげるっ!!
もはや手加減も何もない! 必要ないっ!!
痛めつけて、痛めつけて、痛めつけてっ!!
完膚なきまでに屈辱の死を差し上げて見せますよ!!


『レイム、熱くなってはいけません』


「大丈夫、レイジングハート。こんなに冷静になった自分は始めてだわ。あいつを殺すための動きが次々と浮かんでくるもの……フフフ」
『…………』
「わたし……今なら何でも出来る気がする」

『!? この感覚は……』
以前マスターであったナノハの全盛期とほぼ同等の魔力が流れ込んでくる。
決壊したダムの濁流のように魔力が流れるレイムに軽い恐怖を覚える。

だが、それと同時に違和感を感じる。魔力の流れの中にノイズが混じっている。

これは……悲しみ……

深い悲しみが混じっている。


……私はデバイスに過ぎない。マスターに従うまでだ。

だから! マスターの力を最大限手伝わしてもらおう。


『Divine...』
「……バスタァァァァァアアアアアアアア!!!」

霊夢は今まで撃ったのとは二周り大きい魔砲を発射した。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

紫色のKIを纏わせたHARITEをディバインバスターに向かって放つ。
HARITEに当たった光線は六方向に弾かれる。

「ぐぐぐぐぁああぁあぁああ!!」

手のひらの皮がビニールのようにいとも簡単に裂ける。指の爪はばねで弾かれたかのように小指から順に剥がされる。
それでも、HARITEをとめる訳にはいかない。
負けるわけにはいかぬ!!

ズズズズズと音を立ててYOKODUNAの体は後ろに後退させられる。
弾いている時間が何時間にも感じる。

不意に光線は途切れた。
耐えたのか……ならば今度はこちらが攻めさせて……

「スタァァアア ライトォォォォオオオオオ……」

なに!!
KOMUSUMEの周りにはなにやら魔方陣のようなものが浮かび上がっている。
まさか……撃つのか!? あの弾くだけで精一杯の砲撃を……

「ブレイカァァァアアアアアアアアアアア―――――!!!」

桁違いと言っても過言ではない。
埋め尽くすような光線が迫ってきたのだ。

HARITEでは抑えきることは不可能だ。

私はありとあらゆるKI使うRIKISHIとTORIKUMI交わし続けてYOKODUNAの位についた。
SUMOUの頂点に立つ男だ。



「「「「私が……YOKODUNAだっ!!」」」」



YOKODUNAはあろうことかスターライトブレイカーのほうに走り出した。

「おおおぉぉぉぉおぉぉおぉおおおぉぉぉぉおおぉぉおおおおおおお!!!」

禍禍しいオーラが左手を繭のように包み込む。
スターライトブレイカーは目の前まで迫っている。

右足を地面にパイルのように突き刺す。直径100cmのクレーターが形成された。

「これがァァァアアア」


体中の力を腕の筋肉に……体中の体重を左手に……

乗せる!


「BUCHIKAMASHIだッ!!」

張り手を突き出す。そのとき、繭のようだったKIがはじけとび、巨大な掌となる。
巨大なKIの掌は正面から飛んできたスターライトブレイカーと衝突した。


あたり一面は閃光と爆音に包まれる。

           〆


「ハァ……ハァ……勝ったのか?」

似たような光景を思い出す。
魔理沙とお覇王の時だった。
ダブル覇王翔吼拳を跳ね返し、二人を倒したことはまだ記憶に新しい。
今回も同じように上手くいくとは思ってはいない。それでも可能性はあった。

のどの渇きも限界に近い……早く喰らって、体力を回復せねば……


警戒しつつもKOMUSUMEが居た辺りを探す。
しかし、なかなか見つからない。小さな藪が多い。

辺りはもう真っ暗だ。丁度建物の影になって月の光も入らない。
のどの渇きはだんだんと激しくなっていく。早く……早く……

激しい焦燥感でどんどんと警戒心が希薄になっていくのを彼は知らない。

暗闇に目が慣れてきてだんだんと探すスピードが速くなる。
すでに5分程度探しているわけだからKOMUSUMEは死んでいるか気絶しているのだろう。
強敵だったが最強の国技であるSUMOUには遠く及ばなかったみたいだ。





「私が、YOKODUNAだッ!! かぁ……」

突然後ろに気配を感じた。ばっと振り向くと先ほどのKOMUSUMEが”い”た。
その距離は余りにも近い。相手の吐息がかかるほど近い。

「なっ!!」

目と目が交差する。なぜだ……目をそらすことができない。


「そう……よかったわね……」

底冷えするような女の声。目は据わっていて、虚を眺めている。

「ッ!!!!」

YOKODUNAは体制を立て直すためにKIを纏い、空に舞い上がった。
体制を立て直すために……
そう、体制を立て直したかったから……


しかし、霊夢には『恐れをなして逃げる弱者』に見えた。

YOKODUNAの理論で行けば弱者は強者の血肉となる……

スッと後ろの袴に挿してあるものを抜き、指を掛ける。

「給料いくら?」

握ったものの人差し指を絞った。
パシュっと音がして、あるものが飛び出す。
それを見たYOKODUNAは叫んでいた。

「目が、目がぁぁあああ!」

霊夢が撃ったもの、それはワルサー カンプピストルで撃った26.6mm信号弾だ。
ヨッシーのところに向かう途中、船橋に置いてあるのを発見したものだ。
信号弾なので強力な閃光と発煙を撒き散らす。そのうちの閃光に目をやられたようだ。


そのための布石がここにおびき寄せることだった。
前記のとおり、ここは建物の影で真っ暗である。
暗闇になれた目でいきなり閃光に照らされたりしたら目はいとも簡単に機能を失う。
YOKODUNAの視界は一時的だが完全にその機能を失った。

……霊夢にとって、その一時的で十分である。

レイジングハートで空を飛び、YOKODUNAを追跡しながらカンプピストルに新しい信号弾を詰める。そしてYOKODUNAの右目に押付けた。
容赦なんていらない……

パシュ……

比喩する言葉が思い浮かばない苦痛に満ちた叫び声が響いた。
YOKODUNAの目から信号弾が生えていた。
閃光と煙を放ちながら……本来なら目がある場所の変わりに……
右目は26.6mm信号弾によって頭の奥に追いやられ、潰されていた。
眼球を失って黒い空洞となった右目、そこからはドス黒い血液とは別に何か半流動体のドロドロした透明の液体が流れ出てくる。――所謂『硝子体』だ。
YOKODUNAの目は『一時的』から『永遠』に視力を失った。

霊夢の追撃はこれ如きでは終るはずが無い。
YOKODUNAは叫んでいる。叫んでいるということは口を開いている。
霊夢はその口に無理やり手を突っ込み暴れる舌を掴んで引き摺り出す。

「この舌で魔理沙の味を楽しんだのね? もう二度と人を食べないように……」

カンプピストルにはすでに新しい信号弾が入っている。
舌に押し付けて……引き金を絞る……


パシュ……

YOKODUNAの舌には26.6mmの穴が開いた。
堰を切ったように血液があふれ出す。舌を噛み切って自殺するとはよく言ったものだ。簡単に死にそうなくらいよく血がでる。
霊夢は穴が開いたことを確認してからさらに舌を引っ張る。
ぶちぶちと肉が切れる音がするがさらに舌を引っ張る。――容赦なく。

一段と大きな音を立てて舌は千切れた。YOKODUNAの悲鳴がだんだんと気持ちよく感じる。

そろそろ……最後の仕上げだ。

霊夢はYOKODUNAの首輪に手を掛ける。

「あなた……ルールとか仕来りに厳しいらしいわね。そんなあなたには一番酷い死に方かもね? 誰にも殺されることなく、ルール違反で死亡なんですから……」


霊夢は首輪を無理やり引っ張った。
首輪は一瞬抵抗した後、ピピピピピと電子音を鳴らし始めた。
すぐに首輪から手を離してYOKODUNAから距離をとる。
最初の電子音が鳴り響いてから3秒も経たずして首輪は爆発した。

YOKODUNAの頭は彼にとって後方上に飛んでいった。
直後噴水のようにピュッと血液が空に舞った。一瞬だけ夜空が朱に塗られる。
血はすぐに重力にしたがって落ちる。むせ返りそうなたんぱく質と鉄分の臭い……血の雨と表現が適切な光景だった。


マルクたちのコンピュータ画面にはこう表示されるだろう。

YOKODUNA/死因:爆死/殺害者:_____/備考:首輪を無理やり外そうとしたため


誰が殺したわけでもない。無理やり首輪を外そうとしたYOKODUNAが悪いのだ。

頭を失ったYOKODUNAの体は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
彼をGIGOKUに送り届けた音はパンという癇癪玉が破裂したようなとても地味な音だった。
RIKISHIにとっては余りにもあっけない最後……
YOKODUNAは悔しさにきっと身を震わせているだろう……

霊夢はYOKODUNAの血を袖でぬぐいながらYOKODUNAの無残な姿を眺めた後、言った。

「眠くなってきちゃった。ヨッシー、帰るわよ」


【YOKODUNA@世界最強の国技SUMOU 死亡確認】
【残り36人】

【E-3 町・薬局前/一日目・夜中】
【博麗霊夢@東方project】
[状態]:健康、バリアジャケットの腋部分破損、魔力消費中、すこし眠い、血霧の巫女
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、巫女風バリアジャケット@巫女みこナース、ワルサー カンプピストル@現実(1/1)(26.6mm信号弾残り6発)
[道具]:支給品一式(食料1消費)、YOKODUNAの支給品一式*4(水食料全消費)、
フリップフラップ@ニコニコキッチン、首輪、ドリル@ミスタードリラー、
博麗アミュレット(130/200)、メモ用紙(10/10)、魔理沙の帽子、ドリルアーム、
クロスミラージュ(8/8)@リリカルなのはStrikerS、
気合の鉢巻き@ポケットモンスター、クマ吉の手錠@ギャグマンガ日和、
ドアラの着ぐるみ@ドアラ動画シリーズ、全自動卵割機@サザエさん、
億千万の思い出@現実、マント羽根*2@スーパーマリオワールド、
キーボードクラッシャーの音声(の入ったiPod)@キーボードクラッシャー
[思考・状況]
1.城に帰って寝る。お風呂にも入りたいな
2.Niceboat.の探索
3.怪しい人には無理のない程度に接触、無害なら適当に交渉
4.今回の事件の解決(主催者の打倒)
5.クロスミラージュの分析
6.お兄ちゃんねぇ……やよいから、離すべきだったかしら。
※日吉戦でのYOKODUNAの能力について、日吉から聞きました。

※船橋前の通路には霊夢の張った結界があります。
 物理的な効果はありませんが、船内でのみ、霊夢はそこを何かが通ったことを知ることができます。

【ヨッシー@スーパーマリオワールド】
[状態]:健康、軽く焦げてる
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料全消費)、RPG-7(残弾5)@GTASA、C4プラスチック爆弾@MGS
[思考・状況]
1.とりあえず霊夢さんに協力
2.戦いになったら避難する。
3.ボスを倒す
※ヨッシーはKASをどこかの世界のマリオと思ってます。TASと関わっていません

※カイバーマンたちとの情報交換をしました。霊夢は大方把握しています。
※E-3にジープ@ヤンマーニが放置してあります。後部座席に軽機関銃が在るかは不明です。
※Niceboat.後方甲板にはまだ何かがあるみたいです。



sm155:『殲滅計画YOKODUNA』(前編) 時系列順 sm156:Stars Strike(前編)
sm155:『殲滅計画YOKODUNA』(前編) 投下順 sm156:Stars Strike(前編)
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