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FloweringNight BR~月まで届け、最速の俺~ ◆jU59Fli6bM





「よっ、ほっ、はっ!」
「下★剋★上★等!」

夜中になって辺りが静まりかえる時間でも、いまだに異様な雰囲気を保ち続ける場所がある。
そんな城のとある部屋に、2人と1匹(?)はいた。

「ピヨくん、ボブ術って結構面白いね!次は何教えてくれるの?」
「…なんて体力バカだよ…。ちっ、そろそろお前が監視する時間だぞ」
先刻からずっと動きっぱなしのはずなのに、亜美はまだ息一つ切れていない。
体力では亜美に負けない自信があった日吉は、少しへこみながら目線を窓の方に送る。

「そっか、残念。ピヨくんも怪我してるし休憩だね!」
「ちっ、怪我は言い訳にならないんだよ。テニスはスタミナがモノをいうんだ。
全国大会じゃあ、怪我や疲労で立てないからといって審判が試合を止めるわけじゃないしな」
「うへぇ…初耳だよー。テニスってそんなハードなスポーツなんだ…」
「まあ、だから俺はまだこのくらいじゃ……ん?」

窓の外を見ていたことのはが、こっちを向いている。
「…ことのはさん、どうしました?」
「どうしたの?誰か見つけた?」


「タス」


「え?」

「タス…ココ クル」

2人はその言葉を理解するのに数秒、動きが止まり―――
一斉に窓に駆け寄った。

「…TASだって?!…霊夢が化け物って言ってたあいつか?」
「じゃあ早く兄(c)に知らせないと!!あっ、ピヨくん、あれ!!」

亜美の指さした方を見ると、月明かりに照らされて川のあたりに点ほどの大きさの"集団"が見えた。
「先頭の人間、あれがTASなのか?…ってちょっと待て、あいつらえらい速くねえか!?」
「こ、これってヤバイ!?ここに入られたらヤバイよね?」
そう言ってるうちにその集団の進路は、まっすぐ城へ向かうだけとなる。

「くそっ!こうしちゃいられねえ!!行ってくる!」
日吉が机からデイパックを取り、部屋を出ようとする。
「待って!亜美も戦うよ!」
亜美も走りだすが、日吉は幼い亜美を連れていくことに躊躇った。
「…お前が来たら足手まといだ、お子様はここにいろ」
「…嫌だ。行く」
亜美が日吉に強い瞳を向ける。

「私は…もう逃げないって決めたもん。オメガモンにもフシギダネにも力をもらったのに、お覇王さんや魔理沙さんも逃げずに立ち向かっていったのに、私だって戦えるようになったのに…
ここに残ってオロオロしながらピヨくんを待つしかできないって言うの?」
「逃げないのと立ち向かう力があるのは別だ。そんなに死にたいのか」
「ピヨくんだってそんなようなものじゃん!とにかく…私は誰が何と言おうと行く!」

そんな目を見た日吉は、少し考えた後に諦めたようにため息をついた。
「…そうか。なら、せいぜい死なないよう上手くやれよ」
「もっちろん!ピヨくんもね!」
そう言うなり亜美も自分のデイパックを取ろうと机に駆け寄る。

「…ことのはさん、カイバーマンさん達にこの事を伝えてくれませんか。あと追って来ないように、と」
ことのははコクンと頷いて、海馬たちの部屋に向かっていった。
「ピヨくん、忘れてた!そういえば誰かのデイパック拾ってきてたんだ!」
「何?中身は?」
「まだ見てないけど…」
「分かった。中は行く途中で確認するか…」
日吉がデイパックを受け取り、部屋の扉を勢いよく開ける。

「絶対私たちで止めてみせるよっ!」   「よし、行くぞ!」
2人は、仲間を守るため、自身のプライドのため、戦いに身を投じた。


その頃書斎では海馬が首輪の解析を続けており、脱出へのロードを爆進中…の筈だった。

「おかしい…」

首輪を睨み付け、腕を組んで考えに没頭する海馬。
やよいは疲れたのか部屋の隅で寝ている。体にはかつて弟にしたように海馬のコートが掛けてあった。
「この首輪…根本的な所から考え直さねばならないようだな」
首輪を分解しようとして分かった事。
それは、外側は硬く丈夫に作られてるのに対して、内側はそれほどでもない事と、
分解しようとしても着ける時に必要な結び目が無い事。
前者は『無理やり外そうとすると爆発する』、『外から破壊できない』という事を暗に伝えているのだろう。
海馬が悩んでいるのは主に後者についてだった。

「これでどうやって参加者に首輪を着けたのか、そもそも70人以上の参加者1人1人に合う首輪を
すぐに作れるものなのか?」
海馬ややよいの大きさの違いはともかく、ヨッシーとかいう恐竜にもぴったりとはまっている首輪。
それらを実行するには海馬コーポレーションの技術でも不可能だろう。

だが、それは"常識的に考えて"という前提の元だ。
あのピエロ達なら、もっと別の方法で作っている可能性のほうが高い。
思ってみれば、この会場の地形も、棺桶まで楽に収納できるデイパックも、どこかおかしい。
「それらを1から作るのに、可能な技術とは…」

――魔法。
不意にそんな言葉を思い出す。
普段の彼ならそこで『くだらん!非ィ科学的だ!』と一蹴してただろう。
しかし、以前に見た霊夢の魔法とレイジングハートから聞いた世界の話もあり、魔法の産物という可能性も
十分ありえるように思えた。
魔理沙も魔法の専門職のようだったから、生きていればもっと色々なことを教えてくれたかもしれない。

「だが、そこまで来ると俺の専門外だな…もう一度あの杖から話を聞ければいいが」

魔法の事を知っていそうな霊夢とレイジングハートは今ごろYOKODUNAと対峙している筈だ。
運が悪ければ戻って来ないかもしれない。そうだった場合は…

タタタタタ…  バン!

突然部屋の扉が開き、そこで海馬の思考が止まる。
振り向くと、ことのはが入り口に立っていた。

「何事だ!」
「…タス。タス クル」
「た、す…何!?あいつが…TASがまた来たのか?あの2人はどうした!?」
ことのはは小さく頷いて、顔で窓の外を指した。

「なっ…!あいつら、勝手に死にに行く気か!」
海馬が驚いて椅子から立ち上がる。

TASは前に出会った時は瀕死状態だったからいいものの、それから随分時間が経っている。
瀕死でもあの動きだったのだ…回復したのなら比較にならないくらい強くなっている筈だ。
あの2人が向かっても、ただでは済まない。いや、成す術も無いかもしれない。

「アノヒトタチノ タノミ…」
一瞬、ことのはの目が強く光ったように見えた。

「アナタハ コナイデクダサイ」
「……っ!!」

主催者を倒すためには海馬の技術力が必要だから。ここで希望を失いたくないから。
2人が頼んだ事だが、ことのは自身もその意見に同意していた。
…やよいが最も慕っている人物であったから、という気持ちもあったかもしれない。

カイバーマンもそれらのことは分かっていた。
だからYOKODUNAに魔理沙とお覇王が殺されたと知った時も、自分にそう言い聞かせて冷静を努めた。
しかし、亜美と日吉の場合は違う。まだ殺されてはいない。
伝言も2人の意思がどうあれ、カイバーマンには『自分達のことは見捨てろ』としか聞こえなかった。
「…TASは前の化け物と協力して攻めてくるはずだ。あいつらでは太刀打ちできないだろう。
そうなれば俺もやよいも逃げ切ることはできない。何より…あいつらにはまだ死んでもらっては困る。
ことのは、その頼み…断らせてもらうぞ!」

「なら、私にも行かせて下さい!」

突然聞こえたやよいの声に、カイバーマンは振り向く。
やよいがカイバーマンの大声で目を覚ましてしまったらしい。
「…やよい、お前は」
「駄目なんて言わないで下さい!お兄ちゃんが行くなら、誰が何て言おうと私も行きます!」


類友といえども、ここまで似たもの同士で集まるのは頼もしくもあり、厄介でもあった。


「うっうー!私のことは心配しないで下さいー!ことのはさん、オクタンさん、来てくれますか?」
ことのはとオクタンは、2人に呆れながらも頷く。
こうなったら何を言っても無駄な気がしていたのは彼らも同じだった。
「まだ俺のロードは始まったばかり、止めてみるものなら止めてみろ!」

「「全速前進DA!!」」


4匹となったケラモンを連れ、TASは城までの道を疾走する。
先程まで点のような大きさだった城が、目と鼻の先にまで近づいてくる。
その時、城から向かってくる人影に気づき、ようやく足を止めた。

「…何だ、俺に挑みに来たのか?」

目の前のルイージの格好をした少女と、とフライパンを持った少年を見ながらTASが聞く。
「…止めに来た、が正しいな」
「あなたは誰?目的は何なの?」
2人も物怖じせずに返す。

「…TASだ。目的はこのゲームの最速クリアのみ。…行くぞ」
その言葉を合図に周りのケラモン達が2人に向かって飛びかかり、TASは地面を蹴って弾丸のように突っ込む。
「うわっ!?」
2人はケラモン達に周りを囲まれ、亜美に迫ったTASが通りすぎざまに横へ吹っ飛ばす。
その速さには日吉も亜美も反応できない。
「ちっ!いきなりかよ!」
日吉か亜美に駆け寄ろうとするも、すぐにケラモンが行く手を阻む。
「フン、自ら出向かってきた割には手ごたえのない…、終わりだ」
TASがうずくまっている亜美の体に親指を突き立てようとした刹那
――亜美の体が空中に跳んだ。

「なっ…」
それはTASの体であるマリオさえも到達できないジャンプ力、紛れもなくルイージのもの。
「だが、所詮はルイージ…そこまでの力だっ!」
TASが走り、亜美の落下点で追撃を食らわせようとする。が、それよりも早くTASの頭にケラモンが激突した。

「おい。そんなチビを相手にするのは、俺とやってからにしな…」
ケラモンをフライパンで打ち返した日吉は、亜美を呼び寄せ、また数十秒前の状態に戻る。
「"最速"か…面白い」
不適に日吉が笑う。

「…おい、チビ。分かってるな」
「よしきた!」

日吉の合図で、2人は同時に演舞テニスの構えを作る。
間合いを取って攻撃体制のTAS達には、その動きが奇妙にしか思えないだろう。
「何だ、それは…ふざけているのか?」
「これが、俺らの自然体だ…。ところで、お前…最速とか言ったな」
「……」
「…下剋上だ!お前に追い付いて、ぶっ潰してやる…!」
「おぉ、ピヨくん気合い入ってるぅ!」
「…くだらん、俺を嘗めるのも大概にしろッ!」
そして、再び2つの力がぶつかり合った。

「ケラケラケラケラ!」
ケラモンが2匹前へ出て、もう2匹はTASを守りながら技を放つ。
クレイジーギグルの光弾が飛び交い、亜美と日吉の動きが制限される。
そこに間髪入れずTASが攻撃を仕掛ける。
「くっ…こんな光弾、返せない弾じゃないんだよ!」
日吉がひらりマントで光弾をいくつか跳ね返すも、TASは何食わぬ顔で弾を避ける。
…後ろのケラモンは数発受けて怒っていたが。

「うう~、これじゃまともに戦えないよ~」
しびれを切らした亜美が光弾を避けながら愚痴をこぼす。
「あの連携が厄介だな…化け物を減らせればいいんだが…」
「ピヨくん、それだよそれ!」
「だが、あいつらもあいつらで…

「私達も連携すればいいんだよ!」

「…え?」

作戦も無いのに連携を持ち出した亜美は構わず続ける。
「ピヨくんもダブルスやった時あるでしょ!あんな感じ!」
「そりゃあるが…」
「おい、話してる暇があるのか?」
いつの間にか近づいていたTASが間合いを詰め、日吉に拳を叩き込む。
日吉はそれを受けた直後にマントでTASを弾き返し、またも睨み合いとなった。
「ぐぅっ…まだ本調子じゃねえってのに…!」
「ピヨくん大丈夫?」
胸あたりの刺すような痛みを感じながら、それでもなんとか立ち上がる。

「ペッ……おい赤帽子、俺はまだ10ゲームはいける!」
「ヌーン 俺はまだ20ステージいけるぞ」
「亜美も30曲はいけるよ!」
「減らず口を…ってお前もか!」


「よし、今度はこっちの番だ!双海亜美、行きます!」
そう言うと、口に手を添えて大声で叫んだ。

「助けてぇぇ!カイバーマァァアン!!」

これが俗に言う(?)社長効果。一瞬、周りの空気が凍りつく。
もちろんカイバーマンが来るのを期待してはいないが、相手の動きを止めるには充分だった。
ケラモンは誰か来るのかと辺りを見回して…亜美の踏み台となる。
「ケラ゛ッ!」
「ケッッ!」
進路上にいたケラモンを次々と踏み、亜美は高く宙を舞う。
「連携って、あれをどう繋げっていうんだ…やれるだけやってみるか」
日吉もフライパンで、よろけているケラモンを飛ばしながら突進する。
クリボーよろしく踏み潰され、直後フライパンを叩きつけられたケラモンは、目を回し倒れた。
そのまま2人で攻め入り、TASを挟み打ちにしようとするが、
――その周りには新たに2匹、ケラモンがいた。

「嘘!?増えて…」
「…くだらん」

TASは殴りかかってくる日吉を吹き飛ばし、ケラモンが落ちてくる亜美に光弾を放つ。
「ケラケラケラケラケラ!」
「うあぁっ!」
空中では避けきれず光弾を肩に受けて落下する亜美。
着地時に倒れそうになるのを必死にこらえ、後方へ跳び退く。
それをTASが許すはずもなく、次々と光弾が後を追った。
「おいチビ!もう一度だ、俺のを使え!」
亜美の下に追いついた日吉が叫んだ。

「分かった!」
亜美は日吉の背中に着地し、次の瞬間にまた高く跳び上がる。
「懲りない奴だ…空中では避けられないのを忘れたか」
月に浮かび上がった亜美の影に、大量の光が襲いかかり――それらは全て来た方向に進路を変えた。
「なっ…」
亜美が握っていたのは日吉から受け取ったひらりマント。

「もらったぁ!」

ルイージの影は光弾と共に落ち、マリオの影に蹴りを叩きつけた。
だがTASはそれを、片手で受け止めた。
「…その程度か?」
そう言ったTASの言葉に、日吉は本能的に危険を感じる。
「チビ!危ない、離れ…」
「…え?」
亜美はTASと2匹のケラモンに囲まれていた。
「…俺を追い越すなど不可能だ。"最速"の上などない。これで俺を潰すなど、笑わせてくれる…」
わざと避けなかっただけだ。亜美がその事に気づいた時はもう遅く、咄嗟に離れようとジャンプして
――それよりも早く後ろにまわったTASに地面に叩きつけられた。
2匹のケラモンが倒れた亜美に間髪入れずに光弾を浴びせる。

「うあっ、い…いやぁああああ!!」

「くそっ!てめえら、やめろ!!」
日吉が投げた鋸が1匹のケラモンに突き刺さり、その首を吹き飛ばす。
もう片方のケラモンも後ろに跳んで亜美から離れた。
そして、身体能力が上がってなかったら即死であっただろう攻撃を受けて…亜美は動かなくなった。
立たせないことを優先させたのか、亜美の右足は使い物にならないほど焼け焦げている。
「だ…め、城に…は…いれさせ…な、いッ…」
虚ろになった意識で、それでも光を失わない目で、亜美が呟くのが聞こえた。

今、TASとケラモンは亜美を挟んで向こう側にいる。
亜美は危険な状態かもしれない。このままでは自分が近づく前にTASに殺されるのは明らかだろう。
そんな中で自分がしなければならない事……
日吉はごく僅かな時間で必死に考えた。
亜美を死なせるわけにも、負けるわけにもはいかない。
潰すのは無理でも、せめて追い払わなければならない。
ふと、さっき読んだ支給品の説明書が頭をよぎった。あれが本当なら、確実にTASに食らわせれば。
「…賭けるしかないか」

日吉は新しく手に入れた支給品に全てを託すことして…TASが動く直前に、亜美の元に走り始めた。


最速には、単に"足の速さ"だけでは到達できない。
いかに効率よく最短の距離と時間で進むか、いかにミスの無い正確なプレイができるかという要素が速さとなり、それを極めて晴れて"最速"となれるのだ。
それ故に最短ルートという物が存在する。裏を返せば、最速は最短ルートしか通らない。それ以外の道には行
く価値は無い。
日吉は、TASの動きがなんとなく予想できた。というのも攻撃の先が分かっていたのが大きかったからだろう。
テニスで培った動体視力が、TASとケラモン、両方の軌道を読む事を可能にした。

持っていたマカビンビンをケラモンに向けて打ち、そのままフライパンをTASの進路に重なるように投げつける。
少しでも足止めになればそれで良かった。
TASがそれに気付くのは、亜美に向かって疾走した直後、
――ポケットにあったものを取り、亜美の心臓目掛けて突き刺そうとしたその時。
フライパンを弾いて前を向いたTASの目には違う標的が写し出される。
そして、3つの影が一点に重なった。


『捉 え た』


日吉の口元がつり上がる。

「くっ!」
片方は道下のものだった支給品を、片方は亜美に向かうはずだったものを握り締め、


「これが俺の…下剋上だッ!!」

――お互いに腕を突き出した。


ずぶっという鈍い音と、鼻にまとわりつくようなつんとした臭いが辺りに広がる。

「…勝負…着いたな…」

2人の体が離れる。

「ウッ…ゴフッ…」

日吉は地面に横に崩れるように倒れ、TASは後ずさりしながら激しく咳き込み始める。
亜美はただ、状況も分からず呆然と日吉の背中を見つめていた。
「く…グッ…おのれッ…ケラモン!!」
残っていた1匹のケラモンはTASの電池で2匹となり、光弾を目の前に放つ。
「だ、駄目っ…!」
亜美は力を振り絞り、とっさに持っていたひらりマントを振り投げる。
マントは覆いかぶさるように光弾に向かい、光弾は地面を抉って消滅した。
煙が晴れると…そこには何の姿も無かった。

「う、痛たたた…」

しばらくして、放心状態だった亜美がようやく我に返る。
まだ痛む上半身をなんとか起こして安堵のため息をつく。
「行った…の?私達、なんとか、追い払えたのかな…?

――ピヨくん?」

返事が無い代わりに、亜美は触れていた指先に生暖かいものを感じた。
「…ピヨくん?…嘘、だよね?ねえ?」
それは紛れもなく、日吉の血。
「…い、嫌だ!嫌だよ!もうお別れなんて嫌だ!何で、何で、何で!?」
心が再び奈落の底へ落とされるようだった。
また自分の知り合った人が、死んだ?
また自分だけ、生き残ったの?
認めたくなくなかった。この場から逃げ出したかった。

…足は、動かなかった。


「ハァッ…ハァ……クッ、畜生!」
その頃TASは橋の下で、焼けるような喉の痛みと、胃から迫ってくるモノと戦っていた。
ケラモンが心配そうに彼を見つめる。

(※映像は都合により橋の先に見える客船です。しばらくお待ち下さい)

あの時、日吉の持っていた"ハイポーション"はTASの口の中に注がれ、直後、耐えきれない嘔吐感が彼を襲った。
いくら彼でも腹が反逆している状態では最速はおろか、ゲームを続行することもできない。
…ちなみに川へ走る速度は最速だった。

「ゲホッ…毒…だったのか?…止めろ、そんな目で見るな…」
TASが身悶えているのはそれだけでなく、あの2人に返り討ちにされた、日吉が見せた下剋上による屈辱も大きかった。
「まだ…まだ甘いというのか…。実力も数も、こちらが勝ってた筈だ!!」

ケラモンと組んでも肝心な時に使えない。だがあいつらはいつでも片方を頼りにしていた。
また、信頼関係だとかいう奴か?
俺が満身創痍で体を休めていた時間は、脱出だと言っている輩の結束を強めるには十分だったのか?

くだらん…、俺にはそんな関係は無縁だ。
俺にとってケラモン達は勝つための駒。
なら、俺はもっと最適な使い方を見つけてやる。
今までの攻略だってそうしてきた。でっていうを乗り捨ててこそ、最速は近づくのだ。

今、側にいるケラモンは"1匹"。
今までに無く屈辱的な状態でも、TASはその判断力の速さで置き土産を残していた。
日吉がハイポーションを飲ませたのなら、TASの持っていた五寸釘もまた、日吉の体を貫いていた。
そして、最後に増やしたケラモンは、日吉の持っていたデイパックの中に滑り込ませた。
その中で増えてくれれば、不意打ちで誰かを殺すことも可能だろう。
「お陰で電池の残量はあとわずかだがな…、糞ッ、二度とこんな事があってたまるか…!!」
段々と胃がひっくり返るような感覚が引いていく。どうやら毒では無さそうだった。
しばらくは体が落ち着くまで橋の下で待機し、前回同様、誰かが来たら殺してやろう。
そう考え、残った電池の残量全てを使ってケラモンを増やす。
3匹となったケラモンに見張りを任せ、TASは橋の下で静かに身を休めた。


【D-2 橋の下/一日目・夜中】
【TASさん@TAS動画シリーズ】
[状態]:右手親指以外欠損、左拳骨にヒビ、少し吐き気
[装備]:五寸釘1本@現実(ポケットの中に入っています)
[道具]:ウルトラスーパー電池(残り0%)@ドラえもん
[思考・状況]
1:しばらく体を休めながら、橋を渡る参加者を排除する
2:クリサリモンがやられたのか……?
3:生きて、ケラモンとの連携で最速を目指す。ケラモンは生き残るための駒
4:町の状況の把握
5:ゲームに乗っていない単独の人間は殺し、武器を貰う。
6:ゲームに乗っている人間とはなるべく戦いたくない。
7:武器の調達。出来れば食料も
8:殺戮ゲームの最速クリア。
※KASのことを、自分の二番煎じ、偽者だと思っています。
※ケラモンの名前、増殖限界、進化することを知りました。
※増殖限界については、最大数が二倍になるのか一体増えるだけのなのかで迷っています。


【クラモン(ケラモン)B】
[状態]:健康 現在3体
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:TASカッケ…アレ…?
2:とにかく数で勝負
3:TASを利用してうまく遊びたい
4:イタズラしたい
5:向こうのクラモン、何があったんだ?
※クラモンAがチューモンにされ、更に参加者の一人にされたことで増殖限界がクラモンBの方に集中しました。
※ただし、6匹を超えて生まれるケラモンは自我が弱いようです。

※一匹、マカビンビンを浴びました。あっちが元気かは不明です。



亜美は…私は、守られてばかりだった。
オメガモン、お覇王さん、魔理沙さん、みんな私を守って死んでいった。
今度こそ、みんなを守れると思ったのに…また守られてばかりだった。
気がついたら戦いが終わってて、ピヨくんの左腕と肩には大きな釘が刺さってた。血も流れてた。
…呼んでも返事をしてくれなかった。

「私のせい…?」

泣かないと決めたはずなのに、涙で前が霞む。

「あみ…の、せい…なの?」
霞んで霞んで、もう何も見えなくなった。
「ひっく…どう、して…みんな、おいて、いっちゃうの……!」
「…おい」

「うう…また、声がきこえるよぅ……」
「…おい、亜美」

「ぐすっ、嫌だよ…。ピヨくんに天使セットなんて、ぜんぜんにあわないよ…」
「…人を勝手に殺すんじゃねーよ…」
「だって、あみが…、わた、わたしが…あれ、ピヨくん?」

涙を拭いて前を見る。そしてまた前が見えなくなった。
同じ涙でも、今度は全然違っていた。

「見たかよ…俺の、下克上。あいつ、お前の心臓狙って…外しやがったぜ」
「うっ…ピヨく…生きてる……ヒック、生きて……ヒック、…うああああん!」
「な、泣くなよ!大声出されたら傷に響くだろうがっ…」



「フハハハハハ!!!!正義の味方、ゴッドカイバーマンSE・参☆上!!」



「「……………」」

こうして空気の読めない男の登場により、その場の雰囲気は全て粉砕されたのであった。
(もちろん本人は気にしていない)

「…あんた、来るなって言ったはずじゃ…」
「ふぅん」
「…というか、遅いよ…」
亜美も呆れて涙も出なくなった。
「亜美!日吉さん!大丈夫ですかー!?」
ことのはとオクタンを連れてやってきたやよいも後からやってくる。

「私は大丈夫、それよりピヨくんが…」「俺はいいが、そのチビの足が…」

2人は同時に沈黙した。

「ふぅん、TASは行ったか…。要するにまた怪我人が増えた訳だな。
まあ、無謀だと思っていたから生きてるだけで充分だが」
「お兄ちゃん、どうする?2人も運べるかな」
やよいが海馬に駆け寄って聞く。
今TASに戻ってこられては、今度こそ勝ち目は無いだろう。
それに2人の怪我の状態も良くない。選択を誤ればすぐに誰かが欠けてしまう危険がある。
カイバーマンは慎重に考えてから言った。
「奴もそう今すぐには戻ってこないだろう…。一旦城へ戻り、怪我の手当てをしたら霊夢達の帰りを待とう。
城が危険になった今…町か、あの船に行くしかない」
「霊夢さん達が来なかったら…?」
「ふぅん、その時はその時だ。とりあえず、2時間くらい…放送までは待つことにする」
そして、目線をやよいから亜美と日吉に向ける。

「さて…歩けないのは厄介だな。立てるか?」
「いたた…私は…肩を貸してもらえるなら」
亜美が足を押さえて言う。ホーリーリングで軽い傷は段々治ってきていた。
「うっうー!なら私が肩貸しがんばりますー!日吉さんは…ううー、凄く痛そうです…」
やよいが日吉の様子を見て顔をしかめる。日吉の左腕には直径15センチほどの釘が深々と刺さっていた。
「…へ、平気だ。こんなの…ぐぅっ!!」
動こうとするが当然の様に痛みが全身に走る。常人ならとても耐えられないだろう。
「ピヨくん!もう動いちゃ駄目だって!戻ったら私が応急処置してあげるからさー」
「ふぅん、凡骨の足掻きはそこまでにしておけ。何、心配いらない。俺の支給品を貸してやる」

大きな棺桶が出てきました。

「…まだ死んでないっての…」
カイバーマンは構わず続ける。
「これは何もせずとも後ろをついてくるという優れものらしい。さて、入れるぞ」
「ちょっ…マジですか…!!!くぁwせdrftgyふじこlp;!!!11」

「うう~、お兄ちゃん、もっと優しくやってあげて下さい~」
「…あれ?」
ふと、亜美が地面に転がっていた道下のデイパックを見る。一瞬、何かが動いたような気がした。
「亜美、どうしたの?」
「…気のせいか。いや、何でもないよ~」
それがケラモンの増えた瞬間だとは誰も分からない。


奇妙な集団はさらに怪しさを増し、草原を渡り歩くのであった。


【D-1 草原/一日目・夜中】
【海馬瀬人@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:断固たる対主催の決意、呼ばれて出てきてカイバーマンKY、
[装備]:正義の味方カイバーマンのコスプレ@遊戯王DM ゴッドクラッシュ@ゴッドマン
盗賊の棺桶@勇者の代わりにバラモス倒しに行くことになった DMカード(青眼の白龍、魔法の筒)@遊戯王DM(現在使用不可) 、首輪
[道具]:支給品一式×2(食料1消費)、十得ナイフ@現実
毒針@ドラゴンクエストシリーズ、ナイフとフォーク×2、包丁
[思考・状況]
1:城まで行って2人の治療をしながら霊夢の帰りを待つ
2:首輪の解析を進める
3:自分と同じ境遇、そうなりそうな人を救いたい(ただし仲間の安全が優先)
4:船に積んであったコンピュータを利用したい。船内の探索もできればしたかった
5:エアーマンなど高度なロボットを解体して、自分の技術力が通用するか知りたい
6:殺しあいには絶対に乗らない
※ブルーアイズが使えないのは、自分が主として認められていないためだと思っています
※ロックマンを岩を飛ばすロボットと予想。エアーマンの仲間と思っています
※キーボードは船の艦橋にあるコンピュータに刺さったままです


【高槻やよい@THE IDOLM@STER】
[状態]:体力全快、右手骨折
[装備]:包帯、ことのは@ヤンデレブラック、オクタン@ポケットモンスター
[道具]:支給品一式×2(水と食料1消費)、MASTER ARTIST01~10@THE IDOLM@STER
    DMカード(六芒星の呪縛、攻撃誘導アーマー)@遊戯王DM(現在使用不可)
世界樹の葉@ドラゴンクエストシリーズ、壊れたオセロ@現実
[思考・状況]
1.城まで行って2人の治療をしながら霊夢の帰りを待つ
2.「ことのは」さんとも、もっと仲良くなりたいなぁ
3.魔理沙さん達のことは悲しいけど、お兄ちゃん達とがんばります!
4.緑色の服の少年を後で埋葬してあげたい
5.人は絶対に殺しません

※ことのはの所持品は「妖精の剣」です。


【双海亜美@THE IDOLM@STER】
[状態]:右足に大きな火傷、肩と左足に火傷、ルイージ(HI☆GE)
[装備]:ホーリーリング@デジモンアドベンチャー、ルイージの帽子@スーパーマリオワールド、弾幕の作り方@東方project 、
[道具]:支給品一式(食料1消費)、道下のディパック【支給品(1~2)、ハイポーション×2@ハイポーション作ってみた、ケラモン一匹】
[思考・状況]
1:城まで行って治療をしながら霊夢の帰りを待つ
2:殺し合いには乗らない。みんなで脱出する方法を探したい
3:ヒゲドルとして生きていきまーす、んっふっふー
4:無事に帰れたら、オメガモン感謝祭を開く。
※道下のデイパックにケラモンDが入っています。


【日吉若@ミュージカル・テニスの王子様】
[状態]:疲労大、肋骨損傷、左の腕と肩にごっすんくぎ、棺おけの中で気絶中
[装備]:カワサキのフライパン@星のカービィ
[道具]:支給品一式 食料2人分、水2人分
ヒラリマント@ドラえもん 、マカビンビン@うたわれるものらじお、ことのはの鋸
[思考・状況]
1.手段を問わず、主催に下克上する。
2.亜美にボブ術の基本を教える。
3.ことのは、亜美と交代しながら人が近づいてこないか監視する。
4.下克上の障害は駆除する

霊夢、ヨッシー、海馬、日吉、やよい、亜美の共通認識
※なのはの世界についての知識を得ました。霊夢と海馬以外、不思議な力としか認識していません。
※全員、知っている情報を交換しました。少し大雑把で、認識の違いはあります。
※名簿が、世界の住人ごとに載っていることに気がつきました。
※各地に監視装置があり、首輪にも盗聴機能があることを認識しました。
※YOKODUNAに関する情報を入手しました。
※生首が真だという考えは、霊夢とヨッシー以外は揺らいでいます。
※やよいが海馬を兄と呼ぶのは、海馬の趣味か何かだと思っています。


※【ハイポーション@ハイポーション作ってみた。】
愛すべき馬(犬)の特性ポーション。栄養ドリンクを1万3523円を煮て作ったもの。
回復どころか口の中に入っただけで悶絶し、腹を壊して寝込んだりする程度の威力。
ゲロの一段階上、ゲロラ的な臭いがするらしい。


【クラモン(ケラモン)D】
[状態]:健康 現在2体 道下のデイパックの中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:隙をうかがってイタズラしたい
2:TAS、どこ行った?
3:少なくて寂しい
4:向こうのクラモン、何があったんだ?



sm157:エアーマンが倒せない? 時系列順 sm158:さらなる結束へ(前編)
sm158:さらなる結束へ(後編) 投下順 sm160:硫黄島からの手紙
sm149:最速の道を生き、ケラモンを司る男 TASさん sm166:黒より暗い人物(前編)
sm149:最速の道を生き、ケラモンを司る男 クラモンB sm166:黒より暗い人物(前編)
sm139:難題「何故、類は友を呼ぶのか」 海馬瀬人 sm165:笑顔のゲンキ
sm139:難題「何故、類は友を呼ぶのか」 高槻やよい sm165:笑顔のゲンキ
sm139:難題「何故、類は友を呼ぶのか」 双海亜美 sm165:笑顔のゲンキ
sm139:難題「何故、類は友を呼ぶのか」 日吉若 sm165:笑顔のゲンキ
  クラモンD sm165:笑顔のゲンキ



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