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人はそれを―― ◆0RbUzIT0To





◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

橋の下でずっと潜伏をしていた少女は、その大きな音を立てて起こった水飛沫を見て酷く驚愕した。
まさかあいつがやられたのだろうか?喧騒の音は潜伏している間も常に聞こえていたが、それでも負ける事は無いだろうと思っていた。
幾ら相手が七人もの大人数とはいえ、自分が原因でばらばらになっていたのだ。
一人一人を確実に仕留めれば、例え七人もの戦士がいようとも彼が負けるとは思えない。
彼には付き従う二匹の化け物がいたし、彼自身も相当な強さを持っていると豪語していたのだから。
それほどまでに言うのだから、彼を送り出したのだ。

「……冗談じゃないわよ」

もしも、七人を殺せてないのだとしたら計画はおじゃんだ。
仲間に合わせる顔が無い。爪を噛みながら少女は立ち上がり、川辺を見渡す。
――見つけた、彼が息も絶え絶えになりながら岸に上がり呼吸を整えている。

「ちょっと! 何やってんのよ、早く殺してきなさい!!」

思わずその彼の元まで駆けてゆき、ヒステリックに叫ぶ。
しかし、彼は少女には一瞥しただけで何も言わず、立ち上がってその水を吸った服を脱ぎ始めた。
慌てて少女は後ろを向くも、怒りはまだ収まらない。
何を悠長に服を乾かそうとしているのか、こうしている間にあの七人が逃げたらどうする?
そう問いかけようとした瞬間、彼の冷たい声が聞こえた。

「――無駄だ、もう遅い」
「……え?」
「一人は消した……だが、他の奴には逃げられた」
「逃げられた……? ッ、何やってんのよ!! 私は全員殺せって言ったはずよ!!!」

彼の生まれたままの姿が目に入ったが、そんなの気にしている場合ではない。
肩に掴みかかり、激昂する。
しかし、彼は何も言わずただ冷ややかな目を少女に向け。
その平手で、頬を叩いた。

「なっ!?」
「うるさい、黙れ……俺がお前の指示を聞く義務は無い。
 お前に文句を言われる道理も無い。
 お前はただ俺に情報を提供しただけだ、そして俺はそれに乗ったまでだ……違うか?」

頬を押さえながら後ずさりする少女に、彼は冷淡に告げる。
それはその通りだ、彼が少女の命令を聞く必要性は無い。

「でも……っ、話したと思うけれど、あいつらを逃がしたら大変な事になるのよ!?
 あんたが確実に殺せるっていうから私は……」
「問題無い……奴らはばらばらに逃げた、はずだ。
 再び合流する事は絶望的だろう」
「でも……」
「でももさっても無い、事実だ。 わかったならば喚くな、叫ぼうと事態はよくならん」

冷静な彼の言葉に、更に憤りを感じながらも少女はその口を噤んだ。
あまり彼には逆らえない……彼もまた、ゲームに乗った人物。
自分の言葉が度が過ぎたなら、彼は容赦なく切り捨てるだろう。

彼は脱いだ服を手ごろな大きさの岩にかけ、その横に座り込む。
すると、その時橋の上からサナギの化け物が帰ってきた。

「……喜べ、どうやらもう一人消せたそうだ。
 虫の息のままここを逃げたらしいが、時間の問題らしい」
「……そう」

素直には喜べない。
二人を殺したところで、まだ五人も残っている。
その何れかがもしも萃香と合流してしまっては計画が破綻してしまう。

少女――涼宮ハルヒは、再び爪を噛みながら思案をしていた。

ハルヒはレナ達の下を逃げ出してから、橋の方向へと走っていた。
勿論、橋を渡ろうとした訳ではない――わざわざ城方向へと出向く訳がない。
ハルヒが目をつけたのは橋の下……この何も無い平原では唯一隠れる事の出来る場所だ。
もしも見つかりそうになっても、川の中に忍び込めば夜の帳は下りている――見つかる可能性は低い。
そう思い、しばらくの間橋の下で様子を見ようとした時――橋の下には先客がいた。

ハルヒはそれを隠れながら聞き、彼らが殺し合いに乗り気だという事を知った。
そして、中々の知能犯であり自分達と同じく乗ってない連中の団結を危険視しているという事も。

しかし、声をかけようとした瞬間にハルヒは見張りをしていたクリサリモンに見つかった。
すぐさま殺しに掛かろうとした二体のクリサリモンを――ハルヒは言葉巧みに説得して、自分もTASの仲間だと言い張った。
その後、エアーマンを見送ったTASにお目通りし、自分達の持っている情報を提供した。
塔にいる人間、橋に向かっている人間、その特徴と戦闘力の大まかな情報。
自分の知るものは全て語り――そして、TASの信用を得た。
TASにとって、ハルヒはいつでも殺せる事が出来るが手数にはなる希少な仲間。
向こうから接触をしてきたのを断る理由も特に無い。

ハルヒにとっては、レナ達を萃香達と合流させないようにするのが第一目的である。
だが、もし仮に彼女達を殺せるというのならばそれに越した事はない。
TASにはレナ達を殺せるという絶対的な自信があったようだし、それに加えてクリサリモンの力もあった。
だからこそ、ハルヒはTASに全てを任せてレナ達を襲うのを影ながら見守っていたのである。

しかし、最悪の事態になってしまった。
TASは五人もの人間を逃がしてしまい、その彼女達の行方は知れない。

「最悪よ……」

ハルヒは頭を抱えて蹲る。
彼女達が萃香のいる場所から離れた場所にいるのかもしれないが、その逆もまた在り得るのだ。
もしも合流されてしまえば、全ては終わってしまう。

蹲るハルヒの横で、TASは静かに呼吸を整えていた。
その手にあるのはキバが持っていた支給品。
ロールバスターをその腕に装着して試し撃ちをしてみる……中々の威力だ。
ふと、これを使われ攻撃された己の腹を見てみる……酷い火傷になっていた。

水面へとぶつかろうとしたあの時、TASは咄嗟にキバの束縛から逃れた。
ゴールを確信したキバが、直前になってようやくその戒めの力を緩めたのだ。
それを察知したTASは即座にキバを踏み台にして高く飛び、水面との正面衝突を避ける事に成功した。
しかし――とTASは考える。

もしもキバが、あのまま力を緩めていなかったなら?
もしもキバが、あのように傷だらけではなく万全の体勢であったなら?
恐らくは自身も水に叩きつけられ息絶えていたに違いない。

「認識を……改める必要性がある」

TASはあの瞬間、一瞬だけだがキバに恐怖心を覚えた。
ただの凡人であるキバに、超人であるTASがである。

「このゲームは凡人、超人は関係ない……油断した奴から死んでいくゲームだ」

もう二度と油断をする訳にはいかない。
死が間際に迫った事で、ようやくTASはその慢心に似た過信を捨てた。

「どれだけ弱い人物だろうと、徹底的に叩きのめす」

獅子搏兎――獅子は兎を狩るのにも、その全力を尽くす。
その冷たい瞳に静かな闘志を燃やし、TASは静かに支給品を見てゆく。

【D-2 橋の下/二日目・深夜】
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:富竹への憎しみ、精神錯乱、左肩に銃創、左脇腹と顔面と首に殴られた傷、腕から出血、脇腹に弾丸がかすった傷、古泉達を信頼、鎮痛剤服用、理性を失いかけています
[装備]:陵桜学園の制服@らき☆すた、包丁、 DCS-8sp
[道具]:支給品一式*2、びしょ濡れの北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、テニスボール、
アニマルマスク・サラブレット@現実、ゾンビマスク@現実(ゾンビーズ)
毒入りパン、小型爆弾*2
[思考・状況]
1.塔組(レナ達)に入り込み、萃香のネタや毒入りパンを使って掻き回す……つもりだったけど、どうしたものかしら。
2. 塔組の足をとにかく引っ張り、行動し難くする。
3.どんな手段を使ってでも絶対に富竹を殺す
4.皆を蘇らせるために協力者を探す
5.優勝して全てを元通りにする
※第三回定時放送をほとんど聞いていません。死亡者の人数のみ把握しました。
※自分の服装が、かがみを勘違いさせたことを知りました
※自分が狂い掛けている事に薄々気づいています
※喋れる様になりました。
※自分の能力を信じました。

【TASさん@TAS動画シリーズ】
[状態]:右手親指以外欠損、左拳骨にヒビ、腹部大火傷、全身打撲、全裸、弱者にも相手にも油断しない覚悟
[装備]:五寸釘1本@現実(ポケットの中に入っています)、ロールバスター@ロックマンシリーズ
[道具]:支給品一式*5(食料五食分・水四食分消費)、桃太郎印のきびだんご(24/25)、
ウルトラスーパー電池(残り30%)@ドラえもん、メタルブレードのチップ、ゼットソーハードインパルス@現実
[思考・状況]
1:橋を渡る参加者を排除する
2:エアーマンと一時協力。ハルヒは邪魔にならない程度に利用。
3:生きて、ケラモンとの連携で最速を目指す。ケラモンは生き残るための駒
4:ゲームに乗っていない単独の人間は殺し、武器を貰う。
5:ゲームに乗っている人間とはなるべく戦いたくない。
6:武器の調達。出来れば食料も
7:殺戮ゲームの最速クリア。
8:ケラモンが死体と支給品を持ち帰るのを待つ。
※KASのことを、自分の二番煎じ、偽者だと思っています。
※ケラモンの名前、増殖限界、進化することを知りました。 クリサリモンの名前を知りません。
※増殖限界については、最大数が二倍になるのか一体増えるだけのなのかで迷っています。
※ハルヒの持っている情報を一方的に知りました。

【クラモン(クリサリモン)C】
[状態]:現在1体
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:TAS、おなか大丈夫かな。
2:とにかく数で勝負……進化しちゃった。
3:TASを利用してうまく遊びたい
4:イタズラしたい
※クラモンBの全滅により、クラモンCとDに増殖限界が集中します。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

その光景を見て、こなたとレナは何が起こったのかまるで理解が出来ていない様子だった。
自分達は、橋の上にいた――橋の上で、TASと戦っていたはずだ。
だというのに、何故……どうして自分達は。

花畑の中心で、倒れこんでいるのか?

辺りを見回してみても、TASどころかキバや妹の姿も見えない。
そこにあるのはありとあらゆる花だけ。
南国に咲いているようなのから、誰でも名前を知ってるような身近なものまで――無国籍な花の数々があるだけだ。
……花だけ?
いや、違う――その花に埋もれるようにして、一匹の妖精が頭を抱えて震えている。

「ピッピ……?」

こなたがその妖精の名を呼ぶ。
しかし、妖精は答えない――ただその瞳から涙を流して、呟く。
ごめんなさい、ごめんなさい、と……許しを乞うようにひたすらに呟き続ける。

あの時……TAS目掛けて攻撃系のものが出ればいいと思い、ピッピはその指を振った。
そして、その瞬間ピッピは光に包まれて消え失せた。
いや、ピッピだけではない……近くにいたこなたやレナ達すらも巻き込んで、ピッピ達は消えた。
碌に戦えないキバ達だけを残して、"テレポート"をしてしまった。

本来ならば最後に立ち寄ったポケモンセンターへと移動させるその技は、この世界では自分が最初に立っていた場所に飛ばされるらしい。
辺りの風景にだって見覚えがある、ここはピッピがあの凶暴なミニスカートに襲われた場所だ。
だからこそ、わかる。
ここに移動したのは自分の責任だと、戦えないキバ達を置いて逃げ出してしまったのだと。

戦うと、勇気を持つと誓ったのに、結局逃げ出してしまったのだと。

震えるピッピを見て……こなたとレナは、すぐさま事の次第を理解した。
あの光に包まれた原因が、ピッピの技によるものだと。
あの橋からは大きく離れたこの場所に飛ばされたのはその技の効果だと。
だが、しかし、こうして震えるピッピをどうして叱る事が出来よう?
そもそも、三人は仲間だ……種族も、生きてきた年代もまるで違うが、それでも仲間だ。
二人は示し合わせたように無言で頷くと、立ち上がる。

「行くよ、ピッピ!!」

その声に振り向いたピッピが見たものは、西の方角へと真っ直ぐに瞳を向ける二人の少女。
瞳には絶望の色はない、ピッピを疎ましく思う色も無い。

「まだ間に合うよ、急いで走れば……私とこなちゃんの足ならきっと間に合う!」
「それに、キバくんがそんなに簡単に負ける訳が無い!
 ほら、立ってピッピ……まだ諦めるには早いよ」

尚も震えるピッピを強引に腕の中に持ち、こなたとレナは走り出す。
確かに二人の足は速い。 しかし、それはあくまでも人間レベルでの速さだ。
その程度の速さでは――TASには届かないという事を、二人はまだ知らない。

こなたの腕の中、ピッピはまだ泣き腫らしていた。
自分が情けなかった、キバ達の心配をするよりも謝罪して許しを乞う事を優先した自分が。
すぐに立ち上がらず、ただ震えるだけだった自分が。

自分は本当に何かの役に立てているのか、本当に彼女達の仲間の資格があるのか。
何も出来ずに足を引っ張るだけの自分に、存在価値はあるのか?

空を見上げて満月に問いかけても、答えは何も返ってこなかった。

【D-4 花畑/二日目・深夜】
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:顔面強打、右腕打撲(これらの痛みはひきました)、強い決意、腹部強打
[装備]:くうき砲@ドラえもん、団長腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、フタエノ極意書@ニコニコRPG
[道具]:支給品一式*2(食料一食分・水一食分消費)、暗視ゴーグル@現実、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、コロネ(バタフリー)@キャタピーだけでクリアに挑戦(残り100%)、
テニスボール、初音ミク@現実、モモンの実*3@ポケットモンスター、オボンの実*3@ポケットモンスター、ポケモンフーズ一日分(二食分消費)@ポケットモンスター
[思考・状況]
1. D-2の橋に戻り、キバ達に加勢する。
2.つかさを助けたい。
3.圭一、ティアナの思いを継いで、対主催思考の仲間を探す。
4.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
5.バトルロワイアルから脱出する
※フタエノキワミを習得しました。攻撃力が二倍になり、急所に当たりやすくなります。
※他アニメについての知識が徐々に戻りつつあります。
 「ひぐらしのなく頃に」「魔法少女リリカルなのは」の他にも、何か思い出すかもしれません。

【ピッピ@ポケットモンスター(ピッピのゆびをふるのみで殿堂入りを目指す)】
[状態]:強い決意…だけど、自信喪失、腹部強打
[装備]:リーフシールド@ロックマン2(技マシン的な使い方でポケモンは使える)
[道具]:支給品一式(水一食分消費)、ほんやくコンニャク(1/4)(半分で八時間)@ドラえもん、
テレパしい@ドラえもん(残り3粒、五寸釘@現実、モモンの実@ポケットモンスター、
オボンの実@ポケットモンスター、ポケモンフーズ一日分(二食分消費)@ポケットモンスター
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.D-2の橋に戻り、キバ達に加勢する。
3.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
4.ティアナのような犠牲は二度と出さない。
5.あの怪しいポケモンとトレーナーを倒し脱出
※首輪は頭の巻き髪についてます
※ピッピは、はたく、うたう、おうふくビンタを使えることを思い出しました。ただし、まったく使ってこなかったため、かなり信用に欠けます。

【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:悲しみ、右手に切り傷、右腕銃傷、腹部強打
[装備]:リアルメガバスター(240/300)@デッドライジング、サイレンサー付き拳銃(1/6)@サイレンサーを付けた時とry、鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式*2(食料一食分・水一食分消費)、雛見沢症候群治療セット1日分(C-120、注射器、注射針)@ひぐらしのなく頃に、日本酒(残り半分)
テニスボール、オミトロン@現実? モモンの実@ポケットモンスター、鉄パイプ、本『弾幕講座』、アイテム2号のチップ@ロックマン2
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.D-2の橋に戻り、キバ達に加勢する。
3.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
4.圭一、ティアナの思いを継いで、対主催思考の仲間を探す。
5.富竹を発見できたら、薬を打ってあげたい。
6.ハルヒはしばらく泳がしておき、計略を為ったと見せかけておく。
6.罪滅しをする
※八意永琳が何か知っているのだと思っています。
※時期は大体罪滅し編後半、学校占領直前です。
※雛見沢症候群は完治しました。
※身体能力が向上しています。それによってレナパンが使えるようになりました。
※158話で感じた違和感の正体が、ハルヒに自分達の情報を教えたと推理しました。
また、ハルヒ達の計画を大まかながら把握しています。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

傷ついた三人は、光に包まれた後草原に辿り着いていた。
しかし、その草原は先ほどまでいた場所とは違う……目の前に聳え立つ塔が、何よりの証拠。

「よ、かった……逃げれた、みたいねぇ」

安堵の溜息を吐きながら、水銀燈は見上げる。
そこには、何が起こったのか今ひとつ理解をしていないような表情の媒介。
その横を見れば、再び涙を瞳に溜めている少女。
水銀燈は苦笑をしながらも、少女の瞳に溜まった水滴をその指で拭い去る。

「やぁねぇ、なんで泣くのよぉ……お馬鹿さぁん」
「だ、って、キバ、くっ……それ、に、すいぎ、と、ちゃ、まで……。
 わ、たし、弱いから、いつも、守ら、れて、ティア、ちゃ、も……」

拭っても拭っても、少女の瞳には涙が溜まってゆく。
語る言葉は嗚咽交じりで聞き取りづらい、しかし、それでもその心は水銀燈へと伝わる。
水銀燈は、ゆっくりと頭を振って少女の言葉を否定する。
そして、赤子を諭すような優しい口調で諭した。

「弱い、からじゃ、無いわぁ……あな、た、は、強さ、を……持ってる」

少女の頬に触れながら、水銀燈は続ける。

「弱い、から、守られたんじゃ、無い……あな、た、は、愛されている、だけ……。
 ティアナも、キバも、私ですら、あなたを、守らざるを得なかった……それだけ……。
 それ、は、きっ、と、何よりも、大切な、事……だか、ら、恥じる事は、何も無い。
 むしろ、誇るべき、あなたの強さ……」

視線の先を変え、媒介へと言葉の先を向ける。

「そ、それ、は、あな、たも、お、同じ……あな、た、は、いつの時か、言ってくれた……。
 あ、愛されるのに、か、完全で、い、いる必要は、無い、と。
 だか、ら、私は、え、選んだ……私の、意志で、あ、あなた達を、ま、守った……。
 あ、あな、たは、愛される、べき、人だから……あ、愛されて、いる、人だから……」

「水銀燈…?」

ようやく、媒介は水銀燈の異常に気付いた。
言葉が途切れ途切れであるし、いつになく真剣な口調だという事に。
その様子を微笑を浮かべて見ながら、水銀燈は手に持っていたカードの一枚を見る。

「つ、つか、えるかしら、ねぇ……も、もう、二十四時間、経ってると、い、いんだけ、ど……」

そうやって、水銀燈が掲げたカードは聖なるエルフが描かれているもの。
震える口を無理やり動かして、その名を呼ぶ。

「魔法、カード……発動。 ホーリーエルフの、祝福。
 対象は――」

そこまで言って、水銀燈は少しだけ考えた。
もしもこの状況を、ずっと憎んでいた彼女や他の姉妹達が見たならどう思うだろうか。
恐らく、目を疑うだろう……或いは、それもまた水銀燈の罠か何かと思うかもしれない。
思えば、自分は変わった。 よくも悪くも、この媒介を中心とした人物に影響されて。
でも、悪くない気分だった。 こういうのも悪くは無いと思いながら、その名を――自分の最期を看取って欲しいからこそ、呟く。

「対象は――永井、博之」

呟くと同時に、媒介の身体を暖かな光が包み込んだ。
それは身体の各所の傷を次々と癒してゆき……その顔さえも治す。
そう、その顔にある――瞳さえも。

「目を、開けて、みなさぁい……み、見えるように、なってる、かも」
「お、おお……」

言われるがまま、媒介は見えないはずの目を開ける。
見える、光が――夜なので光は少ないが、それでも何がそこにあるか把握が出来る。
その瞳は再び役目を果たせるようになったのだ。
感謝の意を述べようと、媒介は下を向き助けてくれたその者を見る――。

――ジャンクがいた。

「……ぇ?」
「あら、その様子、だと……み、見えてる、みたい、ねぇ? よ、よかったわぁ……」

水銀燈がぎこちなく喋る、微笑みを浮かべながら喋っている。
横を向く、妹は泣いている、水銀燈を見て泣いている。
もう一度、水銀燈を見る。
水銀燈は心の底から、自分の目が見えるようになったのを喜んでいるようだった。
――何故?

「水銀、燈?」
「なぁにぃ、情け、ない顔ぉ……も、っと、シャンと、しなさいよね……」

顔は悪漢の拳により皹が入っており、全身は傷だらけだった。
背中の翼は多量の羽根が抜け落ちており、非情に不恰好である。
そして――その下半身にあるべき足が一本足りない。
綺麗に、斬ってしまったかのように失われている。

「な、なんでど……なぁ! なんでど、水銀燈!!」
「怒鳴ら、ない、でよぉ……つ、唾、飛ぶじゃなぁい……」

その足――お父様から頂いた大切な身体の一部である足は、先ほどの戦いでサナギに掴まれていた部分。
あの時、水銀燈の脳裏に過ぎった打開案とは、その足を断つというものだった。
触手は斬れなかったが、所詮は人形である水銀燈のボディには骨というものがない。
故に、一太刀で断ち切る勇気さえあるのならば、あの状況は打開出来たのである。
だが、水銀燈はそれを迷った――お父様から貰った大切な身体を、自分から断つなど出来ない――。

そんな時だった、目の前の媒介の言葉が浮かんだのは。

――完全じゃなくても、愛される奴は沢山いる。
 ――完全な奴しか愛さないなんて、そんなものは父ではない。

「か、完全、じゃ、なく、ても……お、お父、様、には……あ、愛して、頂ける、もの……。
 そ、そうよね、博之?」
「ッッッ!! あッ、たり前やがァ!!」

泣き叫ぶ博之を見ながら、水銀燈は少しずつだが何かがわかったような気がした。
いつの日か、例の憎い妹が言っていた甘い言葉。
人の思いが活力を与え、人の思いが人を動かすその本質を。

「い、いい、事、博之? さ、さっきも言ったけど、あ、あなた、は、弱くなんて、無い……。
 だか、ら、悔いては、駄目……むしろ、誇りな、さい、その、誰にで、も、愛され、る、強さ……」
「っ! でもっ……それでも、俺はッ! 誰かを守れる強さが欲しいわぁ!!」
「……そ、う」

水銀燈がどれほど言葉を並べても、博之はやはり悔しがっていた。
目が見えないから、力が無いから、キバもティアナも、誰一人守れない。
大の大人が、守られるしか出来ない歯痒さを感じていた。

「な、なら、望みな、さい……ち、力を、え、得る事を……」

既に思うように動かなくなってきた頭を持ち上げて、水銀燈は呟き続ける。
もう残っている時間は少ない。
ならば、最後に何かをこの媒介に残さなくてはならない。
無力を嘆いている強い媒介に、戦う事の出来る力と自分の想いを与えなければならない。

水銀燈が博之の肩に手をかけると同時に、水銀燈の胸から二種の宝石が飛び出してきた。
それに思わず驚愕している博之に、水銀燈は呟く。

「ロ、ローザ、ミス、ティカ……わ、私の、もの、あ、あなた、に、受け取って、欲しい……。
 にん、げんが、ち、力の、無い、人間、が、つ、使えるか……。
 ど、どんな、副、作用、が、あるか、わか、らない……で、でも……ち、力を望む、なら……」

水銀燈の言葉に、博之は歯を食いしばり無言で頷いた。
それと同時に、ローザミスティカが博之の身体に触れ――情報が一気に押し寄せた。

水銀燈が生きてきた世界、生きてきた道のり、争い、記憶の全て。
そして、それと同じくして溢れてくる感情。
愛おしさ、友情、憎しみ、怒り、安らぎ、ありとあらゆる水銀燈の魂全て。
それらが媒介の脳裏を過ぎ、去ってゆく。

同時に、博之の身体に変化が起こる。
それは人間が服用した副作用なのだろうか……全身に激痛が走ったかと思うと、黒い帯状のマークが腕や胸を走る。
次第にその黒い帯は淵に光り輝く紫色を漂わせる。
一体どれほど経ったろうか、博之にとっては無限とも思える時を過ごしたが水銀燈達にとっては一瞬の出来事だったらしい。
だから、水銀燈も妹も――博之本人ですらその姿に驚きを隠せなかった。
まるでその姿はいつの日か自分がプレイした、主人公である魔人にそっくりのものだったのだから。

「……なんどこれえ!?」
「ふ、ふく、さよう、かしら、ねぇ……つ、伝わっ、た?」

涙はもう、流さなかった。 水銀燈の言葉に頷き、博之は胸に手を当てる。
水銀燈の全てはここに受け継いだ、力も心も記憶も……魂すらも。

「水銀燈の言うとる事が、頭ではのう心で理解出来たッ!!」
「そ、そう、なら、よか、った……」

もうすぐ、水銀燈は止まってしまう。
ローザミスティカを失ってしまった今、残されている時間は毛ほどもないだろう。
だからこそ、最後の言葉を博之に残そうと口を開く。

「お、覚えて、おき、なさい……わ、私は、水銀燈。
 誇り高い、ローゼンメイデンの第一ドール――そして」

そう呟くなり、水銀燈は博之の頬へとその唇を近づけ――。

「幸せな……本当に幸せな、あなたのお人形」

その頬へ口付けを交わし――動かなくなった。

「~~ッ!!」

妹は、その様を見て更に声なくその涙を流し始めた。
媒介――いや、既に指輪を消失し媒介でなくなった彼……魔人博之は、涙を流さない。
博之の胸の中には、彼女の魂が眠っている。
その想いを受け止めた今、涙を流す理由は見当たらない。

「……水銀燈。 絶対に、お前を直したるから、それまで寝とれ」

彼女は人ではない、人の形をしたものだ。
神の指先を持つ父が作り出した彼女は、人でないからして生の受け方も人とは違う。
――彼女は、父を思うが余りに突如独りでに動き出したというのだ。
そうして、ローザミスティカを得、アリスゲームに参加した。
その後、何度か戦いがあり――一度はその生を絶たれた時もあった。
だが、その時も彼女は生き返った。
その身体を父親に完全に修復してもらい、再び生を受けたのだ。

「俺、絶対生きて帰ってお前のおとうとかに頼み込んで、直してもらうから。
 やから……また、会える」

博之は着ていた肌着を脱ぎ、いつか拾った右腕と水銀燈の胴体とを結びつける。
これで完全に上半身は裸になってしまったが、文句は言わない。
右腕部分はなんとか直せた水銀燈を己のデイパックに入れ、水銀燈のデイパックの整理を始める。

「……妹、いつまでも泣くな」
「っ、でもぉ……」
「でもやない……キバも死んだ、水銀燈も死んだ、もうおらん。
 やけど……やからって、泣いとるだけやったらどうにもならん、やから立て」

尚も泣きながら、ゆっくりと立ち上がった少女に博之はカードの束と一つの刃物を渡す。

「……え?」
「持っとれ、水銀燈がお前につこうて欲しいゆうとぅ」

そう言う博之の顔には、どこか不思議と水銀燈の面影があり。
少女は、静かにその刃物とカードを受け取った。

――その刃物は、自分が人を殺めてしまった時に使ったもの。

「それを使って、今度は人を殺すんやのうて……守れゆうとぅ。
 自分を、仲間を、皆を……」
「水銀燈ちゃん……ッ!」

少女はその刃物――庭師の鋏を両手で抱きしめ、再び泣き出した。
しかし、今度の涙はただ親しい者の死を嘆くもののそれではない。
キバと水銀燈とティアナに救われた命をどう使うのか、それを悟った故に出てきた涙。
そして、それを必ず成し遂げると誓う涙。

博之は少女をそのまま泣かせておき――再び整理作業へと移った。
第三者が見れば、二人を冷たいと思うかもしれない。
しかし、彼らには――少なくとも、彼にはそれが理解出来たのだ。
彼らを守っていった者達の想いが、心で理解出来ているのだ。
だからこそ、博之は決して涙を見せず、ただ前を向き続けるのである。
その胸に熱い想いを――愛媛の打開を見せてやるという、意地を抱いて。
ローゼンメイデンの第一ドール――水銀燈の媒介であるという、誇りを抱いて。

悲しくないと言えば嘘になる。

しかし、だからこそ、前へ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

――少女は、誰からも愛される兄を持っていた。
だからという訳ではないが、少女は愛される素質を持っていた。

――魔人は、誰からも愛される兄を持っていた。
だからという訳ではないが、魔人は愛される資格を持っていた。

ならば――少女と魔人を守った三人は、その素質と資格に引かれたのみで守り抜いたのかと言えば、それは違う。
三人と、少女と魔人の間には常人には無いナニカがあった。

男女間の愛か、と聞かれれば違うだろう。
では、兄弟愛かとなると、それも違う。
家族愛でもないし、しかし、ただの仲間意識でも無い。

その間にあったものは言葉にするのは難しいが――しかし、あえて言葉にするなら。










――人はそれを、絆と呼ぶだろう。

【水銀燈@ローゼンメイデン 死亡】
【残り31人】

【E-5 草原/二日目・深夜】
【永井博之@永井先生】
[状態]:深い悲しみとそれを超える脱出への誓い、魔人ピロ(紫)、上半身裸、萃香を少しだけ疑っています
[装備]:薬草(3/99)@勇者の代わりにry 、包丁@フタエノキワミ アッー!(るろうに剣心 英語版)
[道具]:支給品一式*3(食料三食分・水一食分消費)、座薬@東方project、ヲタチ(残りHP80%)@ポケットモンスター
ゴム@思い出はおくせんまん、自動ぶんなぐりガス(残り1/5)@ドラえもん、ヴェルタースオリジナル*3@ヴェル☆オリ
真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、ぬいぐるみ沢山、くんくん人形@ローゼンメイデン、ヤクルト(残り4本)@乳酸菌推進委員会
銀コイン@スーパーマリオワールド、薬草の軟膏(3/4)、右足が欠けたジャンク
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.水銀燈の分、詩音の姉へ償いをする。
4.水銀燈の右足を見つけたい
5.必ず生還し、水銀燈を直して再開する。
※ローザミスティカの力を得て魔人覚醒をしましたが、魔人の能力を行使出来るか・水銀燈の力を行使出来るかは不明です。
※ただの人間がローザミスティカの力を得た為に、副作用を受ける可能性があります。
※水銀燈の見てきた全ての記憶・感情を得ました。
※博之はハルヒの正体をレナから聞きましたが、あまりよく理解していません。

【キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱&愛しの兄が振り向かない】
[状態]:深い悲しみとそれを超える脱出への誓い、阿部への怒り、頬に軽い切り傷、頭部に打撲&出欠 、軽い頭痛(痛みは和らぎました)
[装備]:おたま@TOD、 カワサキのフライパン@星のカービィ
[道具]:支給品一式(食料一食分・水一食分消費)、DMカード(オレイカルコスの結界 (次の早朝まで使用不可) 三幻神(ラーのみ使用可だが遊戯、海馬などのみ、他は次の早朝まで使用不可)、
ブラック・マジシャン・ガール(次の深夜まで使用不可)、ホーリーエルフの祝福(次の深夜まで使用不可)、青眼の白龍*2(次の午前まで使用不可)、強制脱出装置(次の深夜まで使用不可)、
死者蘇生(次の昼まで使用不可)、黒騎士の魔剣少女、セイバー(次の昼まで使用不可)
コカローチ・ナイト(深夜に二度使用)、進化の繭、ゴキボール(次の深夜まで使用不可)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ、ダンボール@メタルギアシリーズ
ヴェルタースオリジナル@ヴェル☆オリ、携帯電話@現実、庭師の鋏@ローゼンメイデン
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
3.ティアナ・キバ・水銀燈の行動を無駄にしないためにも、生きる。
4.もう誰も殺さない、罪滅しをする。(阿部に関しては、どうするか分かりません)
5.古泉くんの間違いを正す。
※萃香への憎しみは、萃香をこちら側に協力させるための嘘です。



sm170:あばよ、ダチ公(後編) 時系列順 sm171:せがれいじり
sm170:あばよ、ダチ公(後編) 投下順 sm171:せがれいじり
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