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あばよ、ダチ公(後編) ◆0RbUzIT0To





妹は、その言葉を聞いた瞬間流していた涙の量を更に増した。
それは絶望によるものではなく、歓喜の涙。
妹のそんな様子を見ながらキバは微笑を浮かべ――すぐに視線を戻す。
ロールバスターを受けた部分に手を当て、怒りと困惑の表情を浮かべたTAS。
相対するようにキバとTASは立ち……TASが叫び声を上げる。

「貴様ッ……死んだはずじゃないのか!?」
「ああ、死んださ……でも、生き返った」

狼狽の色が込められたTASの言葉を、キバは冗談交じりの言葉で返した。
生き返る? そんな事があっていいはずがない、これはゲームだが現実だ。
傷を負えば痛いし、怪我が大きければ死に至る。
或いは人を生き返らせるようなアイテムがあるのかもしれないが、それだって有り得ない。
水銀燈や妹達は明らかにキバの死を感じていたはずだ。
復活する事が出来るアイテムがあるのならあんなにうろたえ、激昂するはずがない。

「馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿なッ!!
 人が生き返るはずが無い!! しかも、それがただの一般人ならば尚更だ!!」
「ごもっとも、だな……でもさっき気付いた。
 俺、一般人だけど一般人じゃなかったんだわ……」

どこか自嘲するような口調でキバは言う。
TASはその姿を見ながら、必死に考えていた。
最初に違和感を覚えたのはこの男を殴り飛ばした時だった。
拳は確実にこの男の腹に入り、気絶させたはずだった――だというのに、この男はすぐさま意識を取り戻した。
次に違和感を覚えたのはこの男の脳天をスピンジャンプで攻撃した時だった。
骨が折れるような男がした、尋常ではない量の血が吹き出ていた――だというのに、この男はTASの腕を掴んで離さなかった。
そして、この男は三度起き上がった。
誰が見ても死んでいると――そう思える程の血を出し、動かなくなっていたはずだ。
有り得ない――有り得ない!!

目の前の事象を否定しようと頭を振るTASを見ながら、キバは言葉を続ける。

「お前は悲鳴だらけのコメントを見た事があるか?」
「何……?」

悲鳴だらけのコメント? 馬鹿な……そんなものがあるはずがない。TASの動画に押し寄せるコメントは、いつも賛美の声ばかりだった。
時折、訳のわからない人物がTASを否定するような事を言っても、それはすぐTASを賞賛する言葉でかき消される。
TASにとって最速動画を投稿するのは、その視聴者を喜ばせる為の義務である。
そして、それを見た視聴者は賛美と感嘆の言葉を挙げる。それは当然であり必然であった。何故ならばTASの動画はそれほどまでに美しく、完璧なのだから。
だからこそ、TASにはわからない。悲鳴だらけのコメントなど、彼は見た事が無かったのだ。

「そうさ、お前はいつだってそうやって賛美の声しか聞かなかった!
 だからお前にはわからない! 俺が生き返った意味を!」
「生き返った……意味?」
「ああそうさッ!!」

叫び、キバはTASへ飛び掛った。
その身体で何故それだけの動きが出来るのか――TASにはそれがわからない。
故に、反応が遅れる――キバに身体を捕まれる。
咄嗟に振りほどこうとしても振りほどけない――半死人のような身体の一般人に、掴まれ動けない。
ならばと拳を叩き込んでも、キバは一歩も退かずそれどころか更に力を込める。

キバは血反吐を吐き、眼を血走らせ、全身を震えさせ……。
しかし、叫ぶ。 吐いた血がTASの顔面を赤く染めるが、関係ない。
全身全霊をその言葉一つ一つに込めて、叫び続ける。

「俺はお前を倒す為に生き返ったんだ! 目の前に敵がいるのに倒れてる訳にはいかない!
 俺はキバくんだ――!」

ロールバスターをTASの腹部に押し当て――。

「友人マリオのキバくんだあああああああああああああああああああああ!!!!!」

――撃ち放つ!

途端に、辺りにTASの絶叫が響き渡る。
一発一発はただの豆鉄砲とはいえ、それが蓄積すれば巨大なボスさえも倒す威力を秘めた弾丸だ。
幾ら常人離れした速度を持つTASといえど、その肉体は決して強固なものとは言えない。
肩を掴まれ動けない状態でまともにその弾丸を食らえば、当然ながらその激痛に悲鳴を挙げる。
しかし、それでもキバは止まらない――血反吐を吐きながら、ロールバスターを撃ち続ける。

彼は何故立っていられるのだろうか?
どう考えても動く事が出来ないその身体で、どうして意識を保てているのだろうか?

――もう一度、彼が起き上がった三度の時を思い出して欲しい。

一度目の気絶をした時――彼が気絶してしまった事で、妹が悲鳴を挙げていた。
二度目の気絶をした時――血を噴出しながら倒れた彼を見て、妹が悲鳴を挙げていた。
三度目の気絶をした時――その絶望的な傷を見て、妹のみならず水銀燈達までが悲鳴を挙げていた。

――彼は、悲鳴がある時のみ立ち上がったのだ。

「ああそうだ、俺は友人マリオのキバだ!
 友人マリオのキバは最後まで諦めない、どんなに絶望的な状況だろうと必ず突破する!!」

更にロールバスターを撃ちながら、キバは叫び続ける。
TASがその衝撃により奇妙なダンスを踊りはじめても、構わず、ただ撃ち続ける。
彼の目には絶望も悲観も映っていない。

「倒れようと、死のうと、必ず立ち上がる!
 ――大切な皆がくれる悲鳴が、俺を再び立たせる勇気をくれて感動のゴールに導いてくれる!」

そう、彼の目に映るものはたった一つ――全てを乗り越えた先にあるゴール。
それがあるからこそ、彼は何度だって立ち上がる。
彼を応援する声が、彼を見守る目が、彼を祝福する者がいる限り。
絶望の淵にいようと、何度でも勇気を与える。

「『ああああああああ』って一緒に悲しんでくれる奴のコメントがッ!」

撃つ。

「『孔明w』って動画を楽しんでくれてる奴のコメントがァッ!!」

更に、撃つ。

「『いけたあああああああ』って難所突破を喜んでくれるコメントがァァッ!!!」

何度だって、撃つ。

「『おめでとおおおおおおおお』ってゴールを祝ってくれるコメントがァァァァァアアアアッッッ!!!!!!!!
 いつだって俺を蘇らせるんだあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

キバが絶叫すると同時、TASは連射されたロールバスターの衝撃によってその手に持っていたカードを手放し大きく吹き飛び倒れ伏す。
そして、よろよろと起きだすと僅かにその足を後ろへと下げ――逃げ出した。
だが、それでもキバは決して止まらない。
目の前の敵は倒す――目の前の障害は、必ず乗り越える。
それこそが、友人マリオのキバがやるべき事なのだから。

それがわかっていたからこそ、TASを追おうとするキバを誰も止められなかった。
彼の持っていたその意地が、気迫が、使命が。
水銀燈を、博之を黙らせていた――しかし。

「キバくんッ!」

妹の叫びだけは誰にも止められなかった、止められるはずもない。
キバはどう見ても重傷を追っている――立っているだけでも、歩いているだけでも、死にどんどん近づいていく。
それが、TASに戦いを挑むなど――どう考えても、無事でいられるはずがない。
だからこそ、妹は願った。
行くなと、一緒にこの場から逃れようと。
目だけでそう訴え……そして、それはキバに伝わった。

キバはその身体に鞭打ち、走りながらも振り返りつつ妹の目を見る。
自分が守りたいもの、守ると誓ったもの――そして、守りたかったもの。
その瞳は彼のプレイを見続けた何万人もの視聴者のそれと重なり―― 一致する。
キバの先行きを心配する瞳、大丈夫なのか、本当にクリア出来るのかと語りかける瞳。
無事でいられるのか、友人涙目、孔明の罠、数々の言葉が脳裏を過ぎる。

ああそうだ、これは改造ROMの友人マリオじゃない――現実だ。
だからこそ妹の心配もわかるし、そうしたい気持ちだって僅かながら自分の心にある。

でも、だからって、退いてどうする!?

友人マリオのキバは決して退かない、最後までやり遂げる。
自分に与えられたステージは必ずクリアする。
何度倒れても、tktkしても、絶望してもやり遂げなければ自分はキバではいられなくなる。
故に、キバは妹に最期の言葉を投げかけた。

「じゃあね」

まるで、長電話を終わらせるかのような台詞――たった一言だけ残し。
キバはもう二度と振り返らずに、TASの元へと急ぎ走った。

それを聞いて、すぐさま妹はキバを追いかけようとしたが博之に抑えられ、再び涙を流し始めた。
しかし――と水銀燈はその様子を見ながら冷静に考える。
もう、キバはどちらにしろ助からない。
ならば、酷な言い方のようだが彼を囮にして自分達はこの場から脱出をした方がいいだろう。
恐らくは、キバもそれを望んでいるに違いない。
詭弁でも何でもなく、水銀燈はそれを信じていた。

やけにふらつく体を起こし、自分自身を叱る。
何を弱音を吐いているのだろうか……この程度のふらつきがどうした。
キバはあれだけの傷を受けて、尚果敢にTASに挑んでいるのだ。
それに比べればこの程度の傷、傷の内に入らない。

「博之……そのまま、妹を掴んでおきなさい。
 今から、カードを使うから……」

頷く博之を見やりながら、水銀燈はカードを拾ってゆく。
妹はまだ泣いている――が、泣きこそしているものの叫びはしていない。
キバの心境が、想いが伝わったのか……それとも、もはや叫ぶ力すらなくしてしまったのか。
博之も、珍しく黙りこくって俯いている。

「さ……行くわよ。 こんな所からは、早く逃げないと……」

呟き、そのままふらふらと安定しないまま浮遊し、博之達の元まで行こうとした時だった。

――水銀燈の足に、触手が巻きついた。

しまった、と水銀燈は己の軽率さと認識の甘さを一瞬にして悔いた。
TASが退いた事で、完全に安心していた。
だが、敵はTASだけではなかった――キバに致命傷を負わせた張本人。
六本の触手と硬い皮膚を持った、クリサリモンがまだその場には残っていたのだ。

「ぐっ!」

クリサリモンの触手は水銀燈の両足に絡みつき、束縛する。
力を込め、引き剥がそうとしてもその触手は更に力を増すのみでむしろ強く食い込む。
本来ならば――怪我さえしていなければ、この程度の相手など水銀燈の敵ではない。
すぐさまその皮膚に風穴を開け、触手から逃れる事が出来ただろう。
しかし、今の水銀燈はキバほどではないものの重傷を負っていた。
クリサリモンを倒すほどの余力は、もはや残ってなどいない。

拙い――と、水銀燈はクリサリモンを見る。
その生物は無表情ながらも、どこか笑みを浮かべているように見えた。
触手はどんどん締め付けられ、足が悲鳴を挙げ始める。
更にその触手はどんどん短くなり、水銀燈の身体はクリサリモンの方へと近づき始めている――博之達のいる場所からどんどん離れる。
このままではまずい、と咄嗟に水銀燈はその手に持っていたカードの束を口に銜え、余力で剣を作り出しその手に取る。
これが正真正銘最後の力だ、これが通じなければ自分はここでこの化け物に捕食されて終わってしまう。

「―――ッ!!」

声にならない声を挙げながら、水銀燈はその身体に残された力全てを使って触手へ斬りかかる。
――しかし、触手は斬れない。
同じ箇所を二度、三度と斬りつける。
その度にクリサリモンは痛そうな顔をするものの、触手は斬れない。
まるでゴムのように伸縮性に富んでいるその触手は、仮に全力だったとしても斬るのには苦労するものだろう。
思わず舌打ちしそうになるが、口にカードを銜えているのを思い出して慌てて止める。
――拙い、このままでは自分どころか妹達にまで危険は及ぶ。

その時――不意に水銀燈の脳裏に一つの打開案が思い浮かんだ。
確実にとは言わないまでも、決して断ち切れそうにないこの触手を切り刻むというよりはよっぽど現実的な案。
恐らくはその案を使うならば、この窮地を脱する事が出来るだろう。
だが――と、水銀燈はその案を思い浮かんだ瞬間、即座に否定する。
その案を使うには、それと同時に犠牲にしなければならないものがある。

今更、死が恐ろしいなどというつもりもない。
このままならばどちらにしろ自分を待つのは死だし、キバのあの雄姿を見てそんな事を思う程冷血ではない。
ならば何故否定するのか、と問われれば……それは即ち、死よりも恐ろしいものが待っているからだ。
勿論、自分でもそれが我侭だという事がわかっている。
もし仮に今この状況で、自分の仲間が自分の立場にいるとしたならその案を迷わず使っただろう。
だからこそ、水銀燈は悩む……悩み続ける。

いや、もう悩む暇などない。
クリサリモンはその口を大きく開け、水銀燈を待ち構えている。
水銀燈は決断を迫られていた――この大一番、自分の大切なものを捨てるか、それとも自分を受け入れてくれた仲間を捨てるか。
故に――必然的に、水銀燈は見た。
その受け入れてくれた仲間――己に大切な事を教えてくれた媒介を。
思い起こされたのは、同じく大事なものを失ったあの時の言葉。
あの時、彼は何と言った――何が大切かを自分に説いてくれた!?

「ッ!!」

それがわかった瞬間、水銀燈は既に迷いを振り払っていた。
だからこそ、今まで犠牲にしたくなかった『ソレ』はただの『枷』となり。

――水銀燈は、それを己の手で断ち切った。

枷が外れた瞬間水銀燈は飛び発つ、傷ついたその身体に出せる全力の速度で。
妹が息をのんだのがわかる――当然だろう、自分を知るものならば有り得ないと思うはずだ。

「――ッ!」

触手が伸び、水銀燈の身体を刺し貫き全身に激痛が走る。
しかし、決して叫び声は挙げない――挙げてしまえば、口に銜えたカードは零れ落ちる。
キバが繋いだ、絶体絶命の危機を脱する事が出来る切り札を手放す事になる。
だから、激痛が水銀燈を襲おうと決して怯まず――ただ前へ進んだ。

「――ッッ!!」

効果が無いと踏んだか、クリサリモンはその触手を鞭のように撓らせて水銀燈の背部を叩きつける。
自慢の美しい漆黒の翼が飛び散り、翼は見るも無残な姿となる。
だが、決して叫び声は挙げない――この程度の痛みで叫び声を挙げていたならばキバに対して合わせる顔が無い。
力の無いキバがあれだけの奮闘をしていて、自分が弱音を吐く訳にはいかない。

その手に持っていた剣をクリサリモンへと投げ、隙を見計らい水銀燈はようやく大切な媒介の元へと辿り着いた。
それはまるで最初に出会った時の如く、弱々しい調子で媒介の腕の中へと。
媒介はその瞬間、少しだけ疑問を持った。
――あの時に比べて、幾らか軽くなっていないか? と。

媒介がその疑問を言葉にしようとする前に、水銀燈は行動を起こしていた。
口に銜えていたカードを手に取り、その名を呼ぶ。
奇しくもそのカードは丁度二十四時間前、大切な媒介の兄がそのパートナーと共にTASから逃げるのに使ったもの。
それを今、自分達が再びTASに襲われ、それから逃げる為に使うとは――これが運命というものだろうか?

「罠カード、発動――強制、脱出装置!!」

名が草原に響いた瞬間、水銀燈達は光に包まれ――。

そして、消えた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

キバの猛攻から逃げ去ったTASは橋の上でへたり込んでいた。
有り得ない事だ、と呟きながらTASは痛む腹部を押さえながら橋の手すりにもたれ掛かる。
そう、有り得ない――あのような凡人にここまで被害を受けるのが有り得ない。
あのような凡人が生き返るのも有り得ない、有り得ない事だ!

「俺はTASだ! TASは凡人などに負けはしない!! 凡人は生き返りはしない!!!」

そうだ、と冷静になって考える――奴は生き返ったんじゃない、生きていたんだ。
致命傷ではあるものの、その息の根は完全に止まっていた訳ではなく微かに生き長らえていただけの事。
つまり――奴はただの半死人、軽く小突いただけですぐに昇天するような状態なのだ。
ならば何を恐れる事があろう。

「TASウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!」
「ッ!?」

声がした方へと顔を向ける――鬼のような形相をした凡人、キバだ。
一瞬たじろくものの、すぐに問題はないと思い直す。
相手が凡人ならば負ける訳がない、逆に返り討ちにしてくれると意気込み飛び上がる。
傷は負っていてもそこはTAS、驚異的なスピードで橋の手すりを足がかりに高速でキバの上空を行こうとし――。
しかし、その身体にロールバスターの直撃を受けた。

馬鹿な――と受けた衝撃で吹き飛びながら歯噛みする。
TASの速度は誰にも知覚が出来ない、相手が凡人ならば尚更だ。
その攻撃に反応する事などもっての他だし、ましてやその無防備な姿を狙い撃つなど不可能。
キバの行動に理解が出来ぬまま、TASはそれでも空中で体勢を取り直そうとする。
だが、その寸前にキバがTASに掴みかかり二人は揉み合ったまま手すりの外側へと投げ出される。

キバにはTASの動きが読めていた訳ではない。
ただ単純に、考えただけだ。
TASは最速で動く――それはつまり、最速でしか動けない、最短の道しか歩かないという事。
つまり、キバはTASの動きを読んだのではなく自分を殺すのに最短の道を読んだのである。
そして、その最短の道目掛けてロールバスターを射出した――それだけの事。
勿論そのタイミングを計る事は難しいが、友人マリオにて数々の鬼畜地帯を通り抜ける事の出来るタイミングを知り抜いてキバにはそれが当然のように出来たのだ。

キバとTASは、互いに掴み合いながら橋から落下してゆく。
下は川――この高さから落ちたとなれば、キバはもとよりTASとて生命の危機に晒されるだろう。
打ち所が悪ければ死に至るやもしれない。

「ぐっ……HA☆NA☆SE!!!」
「離すわきゃねえだろうが!! さぁ行こうぜ、お前の大好きな最速って奴で……地獄へな!!!」

水面が近づく、キバはその腕に力を更に込めて目を瞑る。
この馬鹿のような殺し合いに呼ばれて、最初は絶望した。
月の頭脳とかいう電波なお姉さんに襲われて、外山さん達と出会って、圭一達と出会って、見殺しにしてしまって。
皆で脱出をすると堅く誓い合って、ティアナが犠牲になって――そして。

「ああそうさ、悔いがある訳ねぇ! 俺は守ったんだ!!
 妹ちゃんを守った、約束どおり、守ったんだ!!」

脳裏に過ぎったのは、常に自分を励まし、心配し、懐いてくれていた大切な人。
出会ってからまだそれほど時間は経っていないというのに、その人はキバにとって何よりもかけがえの無いものになっていた。
自分は一般人だ、ただの人間だ、魔法が使える訳でも頭の回転が速い訳でも腕っ節が強い訳でもない。
しかし、それでもキバは守れた――絶対に敵わないと思った超人の魔の手から、大切な人を守れた。
――悔いがあるはずがない。

ゴールが近づく……それは望んで切りたいと思うようなゴールテープではなかったが、キバにはそれが何よりも輝かしいものに見えた。

もう、いいよな……ここまで辿り着いたなら、ゴールしていいよな?
俺のゴールは常に幸せと一緒だ、俺を見守ってくれる沢山の人の声が支えてくれていた、一人きりじゃなかったからここまで戦えた。
死に至るほどの怪我を負っても、皆の叫びがもう一度だけ立ち上がる力をくれた。
……どうせ死に逝くこの身体、生を望む誰かの糧になれば――それだけでいい。
胸を張れキバ、自分は自分に出来る事を、精一杯やりきった……やり遂げたんだ。
もうゴールしたって……誰にも文句は言わせない、むしろ祝ってくれよ。
いつものように……祝いの言葉を。
ゴールを迎える俺に、幸せの言葉を。

……。












「ゴールっ……」












【友人@自作の改造マリオを友人にプレイさせるシリーズ 死亡】
【残り32人】



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sm170:あばよ、ダチ公(前編) クラモンC sm170:人はそれを――
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