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東方萃夢竜(前編) ◆CMd1jz6iP2





チューモンの進化が終わる。
進化した先……それは。

「うわあああああ!!」
ヌメモンだった。
残ってる体を喰らう、喰らう。しかし、かなり食ったというのに進化の兆しが無い。

「終わった……欝だし死のうか」
「同意」
「ぐぎゃー! 絶望した! あまりのお約束さに絶望した!」
ネガティブ思考に支配されたヌメモンは、その人生をまさに終えようと……

「ちょっと待ってください」
「アレ……封印したはずの思考がなんで?」
うどんげの思考だった。
進化の際に封印が解除されてしまったらしい。
「先ほどはご迷惑をおかけしました。ちょっと欲求を抑え切れなかったもので」
「あれが師匠なの?」
「はい……それに関する知識が残っていました」

彼女達は、自分の元になった人物の「知識」を効率よく使うために用意された擬似人格。
食べた魔力や肉体に残された「情報」から魔法や情報改変の「能力」と「知識」を得たように。
なのは達はどのように喋ったか、どんな性格だったかを知っている。
「記憶」がなくとも「知識」があるからこそ「真似」が出来る。
蜜柑を食べたことがなくても、蜜柑が甘いと知っているから食べようと思うように。
師匠のことも、どういった外見か、声だったかの知識が残っていたのだろう。

「殺したいなぁ……早く殺したい、殺したい」
「だから……こんな姿でどうするの? 排泄物を飛ばすキモイ生き物として生きてくつもりなの?」
「まだ、食べ残しがあるじゃないですか」
YOKODUNAの死体を見る。四肢も食らい、腹の一部しか残っていない。

「こんな量じゃ、進化には程遠い。どうするつもり?」
「もう、みんなせっかちですね。まだあるじゃないですか」
体が動く。YOKODUNAの体の中の、まだ傷ついていない臓器……胃袋を破る。
「これは……!」
「こんなにパンパンなのに、ちゃんと気づかないと」
破れた胃袋の中から、人の残骸が姿を見せた。
「こいつも人食い仲間だったんですねぇ……もしかしたら、仲良くなれたかもしれないですね」
「そうだね……親愛の証に、その全てを食さないと失礼だね。ちょっと頭冷やそうか」
緑のナメクジのような体が、その大口を開く。

「いただきまぁす」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「しかし、なんという惨状。どう見ても激戦の後だな」
寝てるニートを放置して、搭の散策をしていたKAS。
破壊された部屋。通路の夥しい血液。
「こんな血が出たってことは死んだのかもな……」
少ししんみりするが、すぐに元に戻るKAS。
「ビー玉とかはどうでもいいが、ノコノコの甲羅ゲットだぜ!」
博之が投げた二つの甲羅を拾っていたKAS。ビー玉も一応貰っておいた。
青と黄色の甲羅。KASにとって重要なアイテムだった。
「投げてもでっでいうに食わせても使える甲羅だが、このKASにかかれば更なる進化を遂げる!」
そういうと、青甲羅の中に突っ込むKAS。

ボウン
と煙が上がり……そこには新たなKASが存在していた。
「ほこりが目に入った……フハハハハ、甲羅KAS誕生! Newスーパーマリオ的パワーアップ完了!」
ノコノコのような姿になったKASは、ニートの部屋に戻った。

「うはwwwww亀wwwwきめえwwwww」
「無職に俺のTAS以上の発想がわかってたまるか!」
甲羅KASになったKASが「やっはっほう!」と準備体操をしている声で起きたニート。

目覚めたニートとくだらない言い争いをしていると、足音が近づいてきた。
「ちょwww敵だったらやっつけてwwww」
構えるKASだったが、入ってきたのはロールであったため安堵する。

「おかえりwwww萃香はwwwww?というか腹減ったからグルメテーブルかけ頂戴wwww」
「勝手に取ってください!!」
ニートにディパックを投げつけるロール。その手には、アサルトライフルが握られている。
その様子に、さすがのニートも驚く。
「どうしたロールちゃんwwww敵に襲われたのかwwww」
「萃香さんが……人を、殺して……私達も、殺しに……」
「何言ってんだロルーちゃん。西瓜ってお前らの仲間なんだろ?」
ほとんど取り合わず、窓から誰か来ないかを確認するロール。

「騙されてたんです! 私達から離れてる間に、五人、六人……もっと殺してたんです!」
その言葉に、ニートすら違和感を覚えた。
「いや、もちつけwwwwロールちゃん、俺にも分かるぞwwwwどんだけ高速で人を」
その言葉の途中で……放送が始まった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
富竹はヨッシーに乗って街中へと逃げていた。
「まあちなさあいいっぃぃぃ!!!」
ボロボロになったジープから、車の走行音より大きな声が聞こえてくる。
「くそぉ……速く走れ、このトカゲ!」
放送が始まっているが、聞いている余裕なんか無い!
スタンガンで脅そうと、視線を恐竜に向ける。
「なっ、これは……RPG-7!?」
ヨッシーのディパックから見える支給品は、強力な武器だった。
なんてついてるんだ。こんな武器をこのトカゲが持っていたなんて。

「ああ、それは駄目ですよ!」
長い舌で、ヨッシーがRPG-7を使わせまいと邪魔をする。
「ええい、邪魔だ!」

スタンガンを、ヨッシーの脳天に浴びせてやる。
軽く呻くとバタンと倒れた。
「もう逃げる必要もない。これで終わりさ!」
ジープが近づいてくる。
右や左に蛇行しながら近づく車に狙いをつける。
300m……200m……今だ!

「富竹ロケット!!」
噴射音と共に、弾頭が砲身から飛び出す。
激しい爆発が起きる。直後、ジープは転がりながら炎上し、民家に激突して沈黙した。
「ハハハハハハ!! やった、悪は滅んだ! 第三部完!」
思わずガッツポーズをしてしまう。
まだ生きているかもしれない。二発目を装填してトドメを……!

「それは止めてもらいましょうか、オ・ジ・サ・マ?」
「誰だ!」
僕は後ろを振り向き―――


富竹は、巨大な鉈で峰打ちされて倒れた。
『てめぇぇぇ!! 何をするだァ―――ッ 許さん!』
富竹を倒したヴァンデモンは、怒声を張り上げる、カードらしき物を掴む。

『カマ野朗! よくも富竹を……ちょっと変な奴だが、同じ趣向で結ばれた仲間を!』
「あれ、その声……ううん、どこかで聞いたことがあるよ?」
『なっ――どういうことだ! このカマ野朗から……なぜ、なのはさんの声が!?』
「ナ、ノハ……ああ、そうか。この人格の名前はなのは……ハハハ! そう、なのは、なのはだったねぇ」
一人で、やりましたねーと喜び合うように口を開くその姿に、クロミラは恐怖を覚える。

『カマ野朗、てめえは一体……!』
「そんな呼び名は止めてもらおうか。私の名前はヴァンデモン。夜の支配者に向かって無礼だよ?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

放送が終わった塔の中で、悲鳴が上がる。
「嘘、嘘嘘嘘嘘!! ロックが、ロックが死んだなんて嘘よぉぉぉおぉ!!」
絶叫し、焦点が合わないまま震えるロールに、ニートが近づく。
「お、落ち着けロールwwwなんというか、そのだなwwww」
「ロックが、ロックがエアーマンなんかに負けるわけない。他の誰かが、卑怯な手で……」
そこまで言って、はっと顔を上げるロール。

「萃香……あいつだ。あいつが殺したんだ。きっと私達に会う前にロックを騙して殺したんだ!
だって、あんなに殺したんだもん。ロックも殺してる。きっと殺してる!」
「落ち着けってwww そもそもさっき、6人以上殺したとか言ってたが5人しか死んでないぞwwww」
だが、その声はロールに届かない。手に持ったアサルトライフルの引き金に指をかける。

「殺される前に、殺してやる。ロックの仇をとってやる!!」
「ちょwwwwまるで雛見沢症候群wwwww」
「ど、どうなんだよ無職。ロルーちゃんの言ってることはマジなのか?」
「そんなわけあるかwwwwロールちゃんはちょっと疲れてるみたいだなwwww」
ニートは、グルメテーブルかけを広げる。
「でっかいパフェ出て来いwwwww」
ガラスの容器に入った大きなパフェをが現れる。

「萃香は俺の部下になってピエロやっつけるって約束したwwwww嘘つくの嫌いって言ってたしwwwww
だから、多分ロールちゃんの勘違いだろwwwwwこういうときはスイーツ(笑)食べれば落ち着くってwwww」
「すげーなお前」
「疲れてるのかもしれないなwwwwちょっとは休まないと身が持たないぞwwww」
「お前が言うのかYO!」
ニートは、パフェを持って窓際で銃を握っているロールに近づく。

「あwwwwやべぇwwwww」

そのパフェを……ニートは手を滑らせて落とした。
ガシャンと、パフェの入ったガラス容器が砕ける。
「ひっ!?」

ロールは振り向き、その反動で

パララララッ
引き金を、引いた。引いてしまった。
血しぶきをあげ、崩れ落ちる……ニート。

その光景を……降りかかる赤い雨を。ロールの弱った精神は、受け止められなかった。
「え――エ? ナニコレ、ウソ、チガウ。コレ――ダメ、ダメダメダメ」
「ちょ……おま……ロルーちゃん!!」
「イ、イヤアアアアアアアアア!!」
KASに向かって引き金を弾くロール。
その結果を見ることもなく、ロールは塔から逃げ出した。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ロック、マン?」
萃香が塔に向かいながら聞いた放送で、呼ばれた死亡者。
ゴマモンなど、他にも気になる名前はあったが、それ以上に衝撃的な名前……ロールの言っていた、兄の名前。
嫌な予感が萃香の胸をよぎる。
「なんなの、このタイミングは!」
萃香は走り、塔に向かう。

塔の入り口に立つ萃香。
(今、私が顔を見せて平気なのか?)
兄の死でショックに陥っているだろうロールに、自分の言葉が届くのか。
「……いや、行くしかないか」
嘘が嫌いな萃香でも、ちょっとした詭弁で誤魔化す時はある。
だが、今はそんな時じゃない。嘘偽りない言葉を、ロールに伝えよう。
塔を駆ける萃香。

「ニート、ロール、KAS!」
その声に、反応するものはいない。
もう塔にはいないのか? そう思い始めたとき、萃香の鼻に……絶対嗅ぎたくない臭いが漂ってきた。

「血? 血の臭いって、何で、どうして!?」
その臭いが、間違いであって欲しいと。ニートがエロイ事を考えて出した鼻血でも何でもと、願い走る萃香の眼に。
「ニー……ト」
事切れたニートの死体が、その願いを完膚なきまでに打ち砕いた。
「ニート……嘘だろ、なんで……うはwwwとか、冗談だよwwwwとか何とか言ってよ!」
銃弾に体を貫かれ、おそらくは即死だったろうニートは、眠ったように死んでいた。
ゲームに乗った奴が襲ってきて……せめて、そう思いたかったが、この弾が出る銃を持っていたのは……ロールだ。
「私のせいなのか……私が、ロールを勘違いさせたから、こんなことに……」

「そんなこと言うな、西瓜。ニートが報われないだろうが」
部屋の中から、声がする。
この部屋にいるのは、萃香とニートの死体だけ。あとは、妙な甲羅が……
ニュッと、その甲羅から手足が生えてきた。
「うわっ!?」
更に頭が出てくる。それで、そいつがKASだと分かった。

「KAS……無事だったのか?」
「一つだけ聞くぞ、西瓜。―――お前、ロルーちゃんが言ったように人を殺したのか」
「……殺したよ、ロールたちと会う前に。でも、ニートとロールと出会ってからは、誰も殺してなんかない!」
萃香は出会ったレナたちのことを話した。死んだティアナのことも……その死体を、仲間が眠る場所に埋めて欲しいと頼まれたことを。

途中、友人という言葉にKASは思うところがあったようだ。
「友人……おお、思い出した! 成長する男、友人! MINTIA以上の悪魔が作ったステージを越えた姿には、俺すらスライディングオベーションしたくらいだ!」
スタンディングオベーションじゃないのか? ……駄目だ、このままだと脱線するから戻そう。
……でも、そこは誰かに荒らされていて……死体を埋めなおしたところを、ロールに見られたことを話す。

「そうか。それでロルーちゃんが勘違いしたんだな」
「……疑わないのか、お前」
「ぶっちゃけると、ちょっと怪しい。だが、このKASに間違いはない! 俺はニートが正しいと信じたからそれが真実!」
KAS理論に唖然とする萃香だが、少しだけ嬉しかった。
「ニートが、私を信じたって……いや、それよりここで何があったんだ?」

KASは、放送で死亡者を聞いた後のロールの異変について語った。

「俺は、なんとか甲羅に身を縮めて助かったんだが……手足の出し方が、今までよくわからなかった」
なんという失態、と頭を抱えるKAS。
「ニートのこと、気に入らなかったけどな。ふざけていても、仲間のことを信じてた。俺は、ニートの信じたものを信じるぜ!」
「……ロールを、追いかける」
萃香は、ロールの荷物がそのまま置いてある事に気が付いた。
「ロール、銃だけ持って出て行ったのか」
急いで追いかけようと、ニートの荷物を纏め始める。
その中に、綺麗な字で書かれたメモ用紙が目に止まる。
それには、KASとニートの塔内部で集めた情報が書かれていた。
「ロール……お前は、一人でこの面子を纏めて、真面目に考えてたんだな」
そういえば、とレナから貰ったメモにも目を通し……た。

「なに……これ」
異世界程度なら理解してた。アニメと似た世界? 宇宙人? ニコニコ動画? あれ、これってノーパソに入ってるよな。
ルールXYZΩ、盗聴に、監視員!? 憶測が多いけど、これだけの情報を、どうやって集めたんだ?
頭を使うのは専門じゃないことは、わかっていた。だが、丸一日自分が何をしていたかを考えると……やめよう、阿部に失礼だ。
今もなお男狩りをしているだろう阿部が、正しくないわけじゃない。自分に正直なだけだ。
私が集めようとした誰もが、祭りに歯向かおうとしていたから……私が道を違えただけのこと。

「俺も行くぞ、西瓜」
「KAS、私はロールと戦うつもりは……」
「わかってる。だが俺もニートを助けられなかった責任を感じまくりだ。俺に何が出来るともわからないが、手伝うぜ!」
KASの頭に、助けられなかったあいつ(谷口)が浮かんでいた。ロールも同じ目にはあわせたくない。
その真剣さは、顔が顔のせいで伝わってこない。だが、萃香は頷いた。
「うん、わかった。……ニートを埋める時間がない。悪いけど、これで我慢してもらおう」
ニートの上にシーツをかぶせて、二人は部屋を出る。

―――ロールちゃんのこと、よろしくなwwwww―――
「「……ああ、任された」」
疲れているのだろう。聞こえるはずのない声に、二人して応えた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ううん……?」
目が覚めたヨッシーは、自分の体が宙に浮いている感覚に戸惑った。
家の中のようで……誰かに掴まれている。
「うわっ、あなた誰ですか?」
「あれぇ、起きちゃったんだ」
キモイ。正直にヨッシーはそう思った。
なんかオカマっぽい生き物から女の声。キャサリンの方が何倍かかわいいくらいだ。

「ちょっと待っててね。あなたのご主人様を壊す前に、向こうから誰か来たみたいだから」
ご主人様? 少し考えるが霊夢のことだとわかった。
それを、壊す。どう考えても危ない奴だ。富竹より危ないかもしれない。
「あの……富竹さんは?」
「そこで寝てるよ。後で食べるつもり」
「ええ!?」
食べる……人間を? 美味しいとは思えない。いくらお腹が空いてても……どうだろう。

「YOKODUNAも食べてたし……美味しいのかなぁ」
「うん、興味があるの?……っと、ちょっと静かにね」
誰かが走ってくる足音。
その人物が、隠れた民家の脇を走り抜けようとした際……捕らえた。
「ヒャ、ああああああ!?」
恐怖が伝わってくるような悲鳴。
小さな少女らしい、その子の首筋にオカマが噛み付く。

「むぅ……? 人間じゃあ、ない?」
「そうみたいですね。ロボットですよ、こいつ」
一人で会話してる。イカレテル、としか思えなかった。
「ア、アアアアア……殺さないで、殺さないでええッ……!」
ガタガタと震える少女。その体に付着したものにヨッシーは驚く。

「わわっ、血!?」

「……へぇ。なんだ、人を殺してきたばっかりなんだ」
殺してきた。その単語に少女は目の焦点も不確かになる。
「コロシタ……私が殺した。ニートさんを……ア、ア、アアアアア!!」
「うわぁ……危ない人みたいですね」
「これは……使えるかもね」

怪しい笑みを浮かべるオカマ。
笑みを浮かべたまま、そっと少女の頭に手を置く。
「安心していい。優勝すれば生き返らせることが出来る」
「ひっ……ゆう、しょうって……!」
つまり、他の参加者を皆殺しにするということ。
そんなことを平然と言うこいつは、何者なのだろう。
「私はヴァンデモン。その様子だと、ちょっとした間違いで人殺しをしてしまったようだけど」
「わた、わたしは……殺す気なんか!」
「わかっている。だから、優勝して全員生き返らせる。それが最良の選択」
とんでもないことを言うヴァンデモンとかいうオカマ。

ヨッシーは、それは違うよと言いたかったが、ヴァンデモンに睨まれてやめた。
「殺す……殺す……そうよ、きっと今生きてる人なんて、みんな人殺しだけ。こ、殺したって……」
殺す、と何度もつぶやくロール。だが、やはり迷いが見て取れる。
そこに
「うおおおおおおお!!!!」
「きゃあああ!?」
目覚めた富竹が、スタンガン片手に襲い掛かってきた。

「ふん」
無造作に、馬鹿みたいに大きな鉈をヴァンデモンが振るう。
「ア……グアアアアアア!!!」
富竹の、咽が真一文字に切り裂かれる。
「ギ……ぐぞぉ……だがの、ざん……は、るひちゃ……」
血の噴水の中、富竹は二度と動かなくなった。

「あわ、あわわわわ……!」
怯えるヨッシーの脇で、ぐるんと白目を剥いて少女が倒れた。
「アハハハハ! 刺激が強すぎたかなぁ!?」
ぐぎゃぎゃ、と笑うヴァンデモンはヨッシーと少女を掴み、移動する。
「うわっ、ど、どこに行くんです?」
「あなたのご主人様を迎えに。……ご主人様は、あなたを助けてくれるかな?」
当然のように、ヨッシーを交渉に使うと、ヴァンデモンは言った。

民家につっこんだジープから、何かが這い出る。
『大丈夫ですか、レイム』
「なんとかね……いたた」
全力の防御魔法を展開したことで、霊夢は無事だった。
全身を強く打ったが、特に後に残るような外傷はない。
「早くヨッシーを助けないと……エリアサーチ」
近くに動くものがあるかを確認する。

『……近くに三名ほど固まっているようです』
「三人……? 一人多いわね」
家から慎重に出る。
『近づいてきます、レイ、ム……!?』
レイジングハートの念話が、乱れる。
『そんな……そんなはずが……』
「れ、レイジングハート? どうしたのよ」

『誰か、近づいてきます。……先ほどの、3名かと思いますが……この、魔力は?』
明らかにおかしい様子のレイジングハート。
霊夢は詳しく聞こうと思ったが……近づいてくる異質な何かに気がつき、そちらに集中した。
「へぇ、無傷とは驚いたなあ。ちょっと驚いちゃった」
「吸血鬼? 随分と古典的な姿ね。レミリア辺りが鼻で笑いそうよ?」
暗闇に立つ闇。典型的な吸血鬼を思わせる風貌に似合わない、明るい女性のような声。
その手に、握られた二つの影。
「ヨッシー!」

「うう……霊夢さん……」
その片方が、ぐったりしているヨッシーだった。
もう一人は、小さな女の子の様だが暗くて顔までは見えない。

『なぜです……なぜ、あなたは……高町なのはの声で話すのですか。高町なのはの魔力を持っているのですか!』
「なんですって!?」
高町なのは。レイジングハートの本来の持ち主で、放送で呼ばれた死亡者。
その魔力と、声を持つ……霊夢にはどういう意味かわからない。
「お初にお目にかかります。私の名前はヴァンデモン……放送じゃチューモンなんて呼ばれたけどね。
それって、たかまちなのはの武器……れーじんぐはあと、だっけ? 「知ってる」よ、あなたのこと。
それにしても、体を食べたわけじゃないのに、こんなに覚えてるなんて……凄く絆が深かったんだね、あなたたち」

食べた。また、それ?
霊夢の表情が怒りに染まる。
『どういうことです……吐きなさい、この化物!』
「怒らないでよ。死体はちゃんと殺した人が埋めてたから、食べてないよ? 私は魔力の塊を食べただけ。
ああ、でも惜しいなぁ……それだけで、こんな力を得たんだもの。体も全部食べちゃえばよかった」
「レイジングハート!! 行くわよ!」
『Yes My master!!』
これ以上聞くだけ無駄だと、魔力を高める霊夢。

「馬鹿ですか、あなた? 今の状況、理解してないんですかぁ?」
今度は違う声で、吸血鬼は足でヨッシーを踏みつける。
「あうっ!」
「ヨッシー!」
つぶれたような悲鳴をあげるヨッシー
「あんまり私を怒らせないほうがいいですよ。こんな恐竜、いつ殺してもいいんですから」
「その声……うどんげまで食べたのね、あなた……!」
「やったー、私も名前がわかりましたー!」
「私だけ名前が分からない……愛しいあの人を殺すまでに思い出さないと」
異様な独り言。
それに嫌気がさしたように、霊夢がレイジングハートを構える。

「ヨ、ヨッシーが、人質になると、思ってるら、ら大間違いよ!」
あれ、と霊夢は自分の声に驚く。

「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ! そんな震えた声で、何言ってんですかぁ?」
そんなこと言われても、霊夢自身どうなってるのかわからない。
『レイム……あなた、友人が人質に取られた経験はありますか?』
「……ない、けど。これって、そういうことなのかしら?」
自分の手で仲間……ヨッシーの命を奪うかもしれないこの状況。
どんなピンチも、なんとなく乗り越えてきた霊夢。
どんな敵にも、なんとなく勝ってきた霊夢。
何の努力をせずとも、全て才能だけで乗り越えてきた霊夢。
才能も能力も制限された今、初めて本当の窮地にたたされていた。
やよいのときとは違う。ちょっと腹が立つことがあっても、丸一日を共にした仲間であるヨッシー。
こんな状況でも冷徹に対処できると思っていた霊夢は、戸惑いを隠せない。

「無理しないで。ちょっとお願いを聞いてもらいたいだけだよ」
「お願い?」
「そう。その武器の譲渡、及びこのゲームに乗らない参加者の殺害」
「そんな要求、聞くと思ってるの?」
ヴァンデモンは答えない。
ぐちっ
「ぎゃああああああああ!!!」
「ヨッシー!!」
何かがつぶれる音と、ヨッシーの悲鳴。

その声に、霊夢の中の、非情さも冷静さも砕け散った。
「待って! わかった……わかったから!」
『レイム!』
霊夢の悲痛な声に、満足げに笑うヴァンデモン。
「さぁ、早くこちらに」
霊夢は、近づくために一歩踏み出す。
「れいむ、さん……」

今にも絶えそうなヨッシーの声。
「ヨッシー、待ってて。今助けるから……」
「れいむさん……こいつは、僕をたすけるきなんか、ないです」
ヨッシーは知っていた。こいつは、一人残らず殺す気だと。
「こいつは、みんな殺す気です。僕の事だって……!」
「五月蝿いトカゲだなぁ。永遠に黙らせてあげようか?」
「ど、どうせ……今踏まれたので、もう……ううう」
ヨッシーは、霊夢を見る。

「霊夢さん。僕には、ヨースター島やヨッシーアイランドに、同じ種族の仲間がたくさんいるんです。
みんな、僕と同じで食いしん坊な奴らですけど……悪い奴らじゃないですから、遊びに行ったら仲良くしてやってください」
「ヨッシー?」
「このトカゲ、なにを!?」
ヨッシーの舌が、ヴァンデモンの足を絡めとる。
「ッ……こいつ!」
その舌と足の間に――粘土のようなものがあった。それをヴァンデモンがとってしまわないように、舌で固定しているのだ。

霊夢の鋭すぎる勘は、ヨッシーが何をする気かを漠然と理解してしまう。
「ヨッシー……やめなさい!」
「あれ、これって結構甘くて美味しいかも――」
ヨッシーの言葉を掻き消す大爆発と土煙が巻き起こった。
ヨッシーの持っていたC4プラスチック爆弾による爆発が、ヨッシーの姿を飲み込む。
「ヨッシィィィーーー!」
霊夢の悲鳴も、何もかもを、爆音が消し去った。



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