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隠し城の三悪人 ◆jVERyrq1dU





もはや限界である。体は鉛の如く硬直し、クリックすらままならない。
このまま泥のように眠ってしまいたい。私の身体は休息をこの上なく欲している。
しかし、眠るわけにはいかないのだ。そうするわけにはいかないのだ。
私が付いていなければ、親愛なるピエロ達は何一つ成し遂げる事は出来ないだろう。
このイベントの開催も何もかも、私とマルクとピエモン。三人の力を合わせてこなしてきたのだ。

マルクは数分前、気絶してしまった。あと少し、あと少しというところで陥落した。
ここで私が倒れるわけにはいかない。
私の身体のために貴重な貴重な、『きれいなハイポーション』を使ってもらったのだ。
汚いハイポーションなら吐いて捨てるほどあるが、きれいなハイポーションはなぜか残り少ない。
そんな貴重品を使ってまで、マルク氏は私の些細な力を欲したのだ。答えないわけにはいかない。

猛烈な睡魔、疲労と格闘する事、十数分。ついに私は駅を禁止エリアにする事に成功した。

「………きれいなハイポーションを……1つお願いします。マルクさんに…飲ませてあげて下さい……」

最後の力を振り絞り、部屋の入り口辺りに立っていた見張りデジモンに声をかける。
デジモンは首を振って、了解を示し、部屋を出て行った。

私は、必死にソファまで歩き、痛む体を折り畳み、横になる。
ほっと一安心する。しばらくは……休めそうだ。

もう……だめぽ……

バトルロワイアルが始まって何度目だろうか。私は、またも気絶した。

 ▼ ▼ ▼

どこか遠くから声が聞こえてくる。
目の前に男が立っていた。見覚えがある。
何十年も昔、私はこの男と協力してある動画サイトを立ち上げたのだ。

「期限は設けない。ありえないほど早く作れ」

また無茶苦茶な事を言う。この時、私は正直あきれていた。
しかし、この言葉は私の心の、別の部分を燃え上がらせ、大いに刺激した。

そして私は達成する。たった三日で、システムの原型を完成させる。
このシステムを使えば、私の好きな2chの実況版のような形で、動画を見ることが出来る。

そして後日、ついに完成する──

──ニコニコ動画(仮)、サービススタート

動画にコメントを載せるという画期的なスタイルを武器に、ニコニコ動画は鼠算式にユーザー数を伸ばしていった。
その勢いは止まる事を知らない。ずっと先を進んでいたようつべを猛追し、何年か前、ついに追い越した。

ニコニコ動画は何度もバージョンアップを繰り返してきた。
仮→β→γ→RC→RC2→SP1→………と、いった具合だ。
今は何だったっけかな。私は退職し、ニコ動からは随分と長い間離れているので現状を知らない。
SP100ぐらいいっているのではないだろうか。いや、それはないか……。

突如私の視界にある光景が広がった。目の前の映像は、次々と点滅し、別のものを映し出していく。
次から次へと、スクリーン上に様々な人物が現れる。

何やら歌を歌いながら踊っている、如何にも胡散臭げな陰陽師。
中毒性抜群の音楽を背景に、スカートをフリフリさせている少女。
魂を揺さぶる熱い音楽と共に次々と敵キャラを倒す青いロボット。
狂ったように蟲野郎をいたぶる頭が☆の男……etc

ああ、そうだった。私はこいつらのためにこのイベントを開いたのだった。
これらのキャラ達の栄光にピリオドを打つために、バトルロワイアルを開催したのだ。

私は何を気絶しているんだ。起きなければ……!
ニコニコ動画の未来のために──

 ▼ ▼ ▼

「ぶはっ!」
「ああ起きた起きた。また水ぶっかけてすまないのサ」

マルクが水をかけたらしい。私の体や床は水浸しになっている。

「今度は何なんでしょうか」
「コイヅカ君。ハイポーションをくれて本当にありがとうなのサ」

私は溜息を吐く。

「ありがたいと思っているのなら水なんかかけないで下さいよ」
「いやいや、ただ寝るよりもコレを飲んだ方が体にいいのサ」

マルクはそう言い、私にハイポーションを手渡した。勿論きれいな方だ。
私は目を白黒させる。

「マルクさん。折角の御好意、無駄にはしたくないのですが。やはり勿体無いです。
 ハイポーションはこいつを含めて残り少ししかありません」
「構わないよ。コイヅカ君は立派な戦力なのサ。それにコイヅカ君がいなければ、このイベントも開催出来なかった訳だしね。
 貴方にはボク以上にハイポーションを飲む権利があると思うのサ」

マルクが感情を込めて言った。その目は真剣そのものだ。
私は少しの間迷った末、ハイポーションを一息に飲み干した。

一気に体力が回復する。爽快だ。

「申し訳ありません。私はただの人間ですから……体力があまり無い」
「卑屈にならないで欲しいのサ。何度も言うようだけど、コイヅカ君がいなければ何にも始まらなかったのサ。
 ボクもピエモンも感謝してるよ」

真顔でマルクは言う。そんな事を言われては、照れる。
私は顔を背けた。……やれやれ、じじいが何を照れてるんだか……。

「ところでピエモンさんは帰って来ましたか?」
「今こっちに向かってるんだって。もうすぐ着くみたいなのサ」
「そうですか」

という事は横転した電車は片付いたのだろう。
駅も禁止エリアに出来たし、漸く休めるのかもしれない。


「あのさぁ~コイヅカ君……」

マルクがどこか申し訳なさそうに口を開く。
私は彼の態度を訝しく思いながら何なのか聞いてみた。

「実は、まだピエモンに言ってないのサ……僕らの目的」

世界が引っ繰り返ったような気分になった。

「目的を言ってないって、それはマルクさんの役目でしょう?
 僕からピエモンに伝えとくって言ってたじゃないですか!」

私が強い声を発したため、マルクは慌てた。しどろもどろになりながらも話を続ける。

「そ、そうは言っても、ピエモンの奴、糞真面目なのサ……僕らの目的はある意味……下らないから。
 あいつ、呆れて帰っちゃうかもしれないのサ!」
「でも、目的を伝えてないって……食い違いがあったらどうするんですか。それにピエモンさんに失礼でしょう?」
「い、一応話をでっち上げておいたのサ。
 つまり、ピエモンが喜びそうな話をでっちあげて、そいつを僕の目的に、いや、目的は言ってないか」

私はさすがに呆れた。

「デマを言ったわけですか……どんな内容です?」
「ええっと」

恐らく適当に言った話なのだろう。マルクは必死に思い出している。

「とりあえず、僕の目的は話してないのサ。ピエモンにバトロワ開催を持ち掛けた時、
 あいつ、『全てが終わったらノヴァを譲ってくれ』って言ったのサ。まあ、協力してくれるなら何でもいいし、OKって言ったのサ」

マルクは口を閉じる。

「それだけですか?」

私は即座に質問する。マルクはおそらくうろ覚えなのだろう、首を傾げ、思い出しながらのろのろと話す。

「あと、細かいところで色々誤魔化してしまったのサ。まず、コイヅカ君の事」
「私ですか?」
「そう。あいつなんか警戒心強いからさぁ。たかが人間と手を組んでいるなんて話したら……怪しまれるのサ。
 だから、コイヅカ君は僕が雇った技術屋ってピエモンに紹介してるのサ。
 あいつ、まさかコイヅカ君が今回の黒幕なんて夢にも思ってないと思うよ」

なるほど。要するに、マルクはピエモンに協力を求める際に、面倒な説明をするのを怠り、省いてしまったという事だ。

「黒幕なんて言い方は止して下さい。
 確かに話を持ち掛けたのは私ですが、貴方達の協力がなければ、実現しなかった企画なんです」

これは本心からの言葉だ。私はマルクとピエモンに感謝の念を抱いている。
マルクは私の言葉を曖昧な表情で聞き、話を続けた。

「あと、ニコニコ動画について……。これもよく似た理由でさぁ」
「確かに頭の固い彼に説明するのは骨が折れそうですね」
「そうなのサ。だからちょっと回り道する事にしたのサ。急がば回れってね」

マルクはことわざを得意げに言った。

「まず、ピエモンの部下にニコ動の事を教えてやったのサ。それで、僕の狙い通りにその部下は動いた。
 すぐにピエモンはニコ厨になったのサ。次の日、ピエモンは僕に向かってニコ動の事を嬉しそうに自慢してきたのサ」

ピエモン……彼っていったい……。

「全く扱いやすい奴なのサ。それで話を適当に合わせて、ニコニコオールスターを殺し合わせる事にしたのサ」

マルクは一息吐いた。とりあえず話は終了したようだ。
私は少々呆れつつ、口を開く。

「マルクさん……よくそんな面倒臭い事が出来ますね。正直に我々の目的を話せば簡単でしたのに……」
「そ、そんな事言ったって! 
 バトロワ動画をニコ動にうpして総合ランキング一位を狙うなんて言ったら、ピエモンの奴きっと呆れて帰っちゃうのサ!
 下らんとか言うに決まってるのサ。あいつニコ厨のくせに頭固いし……」
「まあ、その意見は尤もですが、もう少し頭のいい言い方があったでしょう?
 ニコニコオールスターを全滅させたら、自分達のニコニコでの人気が跳ね上がるとか……」
「無駄だと思うのサ。ピエモンは未だに世界征服を狙ってるのサ。そんな面白みのない奴にこんな話をしたら……」

マルクの顔が青くなっていく。確かにこの土壇場でピエモンに抜けられては溜まったものではない。
しかし──

「マルクさん、よく聞いて下さい。一部の参加者達は力を合わせて、バトロワを破壊しようとしています。
 そんな奴らからバトロワを守るためにはこちらも結束する必要があるんです」
「首輪は完璧だし大丈夫だと思うけどなぁ~~」

小声で反論するマルクを睨みつける。

「油断してはいけません。マルクさんはピエモンさんをもっと見習うべきですよ。
 文字通り、失敗は許されない。もっと警戒するべきなんです、ピエモンさんのように」

私の睨みに怯んだのか、マルクは大人しく私の話に耳を傾けている。

「マルクさんが嘘を吐くようでは一致団結なんて決して出来ません。どこかでミスが生じるかもしれない。
 慎重に事を進めるためにも、ピエモンさんに我々の目的をちゃんと伝えておくべきなんです」
「うーん……大丈夫かなぁ。ノヴァをあげるって言ってあるから、ある程度は大丈夫だろうけど……」

マルクは未だに、ピエモンが呆れて帰る事を恐れていた。
妙なところだけ慎重だ。常にこうだと有難いのだけど……。


その時、一匹のデジモンが私の部屋に入ってきた。そして口を開く。

「ピエモン様が撤去工事を終わらせ、こちらに帰ってまいりました」

私はこの言葉を聞き、小さくガッツポーズをとる。これで電車が使える。
不測の事態にも対応出来るだろう。そして──

「さぁマルクさん行きますよ!我々の真の目的を話しに行きましょう。隠し事なんてしてはいけません!」

私は嫌がるマルクの手を握り、引っ張りながら、司令室へと向かった。


司令室に着くとピエモンは備え付けのソファの上に横になっていた。
私達と同様、彼もまた過酷な労働をこなしていた様だ。

「お疲れ様です、ピエモンさん」

私が声をかけると、ピエモンはゆっくりとした動作でこちらを向いた。

「ああ、コイヅカ氏か……すまないがハイポーションを貰ってもいいだろうか」

疲れきった表情でピエモンは言った。きれいなハイポーションは残り少ない。
しかし、私とマルクは彼のあまりに哀れな姿に心を痛め、残り少ないハイポーションを使う事にした。

「ふう……すまないな。で、何か用かね?」

ハイポーションを飲み干し、すっきりとした表情になったピエモンは体を起こし、ソファに座った。
私とマルクも、彼の向かい側の椅子に座る。

「ピエモンさんは私とマルクさんの目的をご存知ですか?」

私は意を決して言葉を紡ぐ。ピエモンは唐突な質問に少しの間、混乱していた。

「いや、知らないな。君達も私の目的は知らないだろう?」
「どうせノヴァの力で世界征服でしょ? ピエモンは分かり易いのサ」

マルクの言葉を聞き、ピエモンは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「ま、簡単に言えばそういう事だ。しかし、どうせ、などと言われるとさすがに不愉快だ」
「ニコ厨になったくせによくそんなありきたりな夢を持てるね」
「いや、ありきたりではないだろう、明らかに。何なんださっきから一々、噛み付いて」
「すいません」

私はマルクの代わりに頭を下げる。マルク本人はどうでもよさそうだ。

「ピエモンさんの目的は分かっているのに、こちらの目的を貴方に知らせないのは失礼かと思いまして」
「教えに来てやったのサ」

マルクさん……ピエモンさんの事馬鹿にしてる?

「ふん、まあ我々のチームワークを高めるという意味で、そういう話し合いは有効かもしれないな」

マルクの言動に気分を害されたのだろう。少し荒っぽい口調になっている。

「では、話しますね。ピエモンさんは私の事をただの技術屋だと思っているらしいですが、それは違います。
 私は数ヶ月前、マルクさんにニコロワ開催について話を持ちかけました。
 黒幕、という言葉はあまり好きではありませんが……まあ、私こそが今回のイベントの黒幕だったわけです」

私は前置きを言い、目の前の机に置かれたお茶を飲んだ。
長い話になる。なにしろ、私の半生を語る事になるのだから。


「私は数十年程昔、ニコニコ動画を開発しました。
 ニコ動には沢山の動画がうpされ、大変な賑わいを見せました。
 貴方達の知っているように、ニコニコ動画にはニコニコオールスターというキャラ達が存在します。
 彼らの人気は、ニコニコ黎明期の頃から絶大なものでした」

ピエモンは早速驚いている。私がニコ動を開発したとは夢にも思ってみなかったのだろうな。

「合計マイリストランキングも彼らオールスターが独占する事になります。
 当然です。彼らには人気があったのですから。しかし、一つだけ問題があったのですよ」
「本当に面白い動画、ためになる動画がランクインし難い時があるのサ。人気キャラを出さなかっためにね」

マルクが代わりに言う。ピエモンは頷き、理解したことを示した。

「ニコニコが始まって数年はそんなに酷くはありませんでした。
 毎日のランキングの中に、オールスターキャラとは無関係な動画が沢山ありました。
 しかし、次第に、傾向が変わっていきます。何故だか分かりますか?」

ピエモンは首を傾げ、分からないな、と答えた。

「オールスターキャラが少しずつ少しずつ増えていったからなのサ」
「あるキャラの動画がランク一位を獲り、次の日それに関連した動画が次々とランクインしたとします。
 そうなれば、そのキャラはもうオールスター入りですよ。こんな風にしてどんどんどんどん、オールスターが増えていったわけです」

私はまた一口、お茶を口に含んだ。デジモンが選んだにしてはなかなか美味しい。

「うp主だって人間です。自分の動画がランクインすれば嬉しいでしょう。
 そしてランクインさせるには、人気キャラを使うのが手っ取り早い。
 こうして、オールスターは増え続け、彼らを出演させるうp主も増え続けました。ランキングがどうなるか分かりますか?」
「オールスターキャラのバーゲンセールというわけか……」
「人気キャラがいない動画は滅多にランクインしない。そんな動画サイトになってしまったわけです……」

そんな動画サイトなんて……! 私の心に殺意の炎が燃え上がる。

「そして、私は決意しました。ニコニコオールスターを根絶やしにする事をね……しかし、ただ殺すだけではなんの面白みもない。
 否、今まで図らずも、ニコニコを盛り上げて来てくれた彼らに対して失礼だと思いましてね。
 彼らの墓標を建ててやろうと考えたわけです。勿論動画という形で……」

私は温くなったお茶を一気に飲み干す。

「それがニコロワの開催理由。ニコロワを動画にして、ランク一位を獲る。
 この動画は、彼らニコニコオールスターの栄光を後世に知らしめます。
 そして、一部のキャラが幅を利かせるとこんな無残な最期を遂げるんだという脅しにもなります」


ピエモンは少しの間沈黙し、何かを思考していた。
そして口を開く。

「コイヅカ氏は何故そうしようと思ったのかね?」
「……私にとって、ニコ動は可愛い子供のようなものです。
 一部のキャラが幅を利かせるような、そんな閉塞的な動画サイトにはしたくありません。
 正直言って私はニコニコオールスターを憎んでいます」
「ちょっといいかね」

ピエモンは身を乗り出し、居ずまいを整えた。
何か重要な事を言うのか?

「一人のニコ厨として意見するが、動画サイトというのは、あくまでユーザーのためにあるべきモノではないのか?
 運営が口を挟むのは御法度だと私は思うがね……」

……痛いところを突かれた。確かに、確かにそういう考えもあるだろう。
むしろそんな考え方の方が一般的なのだろう。しかし、しかしだ。

「そういう考えも分かりますよ。運営側はあくまで成り行きを見守るだけ。
 普通はそうあるべきです。ですがね──ニコニコオールスターのキャラ達が嫌いな人達だって無論いるんですよ?
 私はニコニコが特定のキャラ達が持て囃されるだけの閉鎖的なサイトにはしたくない。絶対にね。
 そのためなら何だってしますよ」

ピエモンは顎に手を当て、頷く。

「ふむ。コイヅカ氏の言いたい事は分かった。氏がそうしたいと言うならそうすればいいさ。
 私が口を出す事ではない。幸いな事に我々は利害が一致している。ところでマルク──」

ピエモンはマルクの方を向き声をかける。

「お前は私に嘘を吐いていたという訳だな」
「ごめんなのサ。でもさ、ピエモンはいきなりニコ動のためにバトロワしようなんて言われたら警戒するでしょ?
 だから回りくどく言ったのサ」

ピエモンがねちっこい視線をマルクに投げかける。

「まあ、私はノヴァが貰えればそれでいいんだ。
 マルク、お前が一度ノヴァと共に消滅したという話も嘘か?」
「大嘘なのサ。この話をしておけば、カービィの奴に復讐したいからバトロワを開いたって話が出来るじゃん。
 だから言ったのサ」
「ふん……いい加減なように見えて、中々の策士だな、貴様も」

ピエモンが感心したかのように呟く。

「お前の本当の目的は何なんだ?」
「それは私も気になりますね。何故あの時、私の言う事に素直に従ってくれたのですか?」

私とピエモンはマルクに詰め寄った。マルクが困ったような表情を見せる。

「うー、質問が二つになっているのサ」
「順序立てて話してくれ。今更嘘を吐く必要もあるまい」


マルクもまた、目の前にあったお茶を一息に飲み干した。
姿勢を整え、観念したかのようにマルクは語りだす。

「僕がノヴァに願いを言おうとした時だったかな、確か。コイヅカ君とはその時会ったのサ。
 僕が願いを叶えようとしたところを無理やり割り込んで来るんだもん」

マルクは不機嫌そうに言った。
必死だったんだな、とピエモンが呟く。
私はとても申し訳ない気持ちになり、マルクに頭を下げた。
マルクは、別にいいのサ、と言った。何も気にしてないようだ。

「僕が呆気にとられてる間に、ノヴァはコイヅカ君の願いを叶えていたのサ」
「この城もノヴァから頂きました」

この城もか! とピエモンは驚いた。

「最初は殺してやろうかなあ、とか思ってたんだけど。
 コイヅカ君があんまり必死に主催者やってくれって説得してくるものだから、OKしちゃったのサ」
「その後、ノヴァの力を借りて、ピエモンさんを救出したというワケです」

一通り話し終えた。私とマルクは一息吐く。

「待て待て待て待て……肝心のマルクの動機が抜けているぞ。どうしてOKしたんだ?
 お前はポップスターを支配したかったんじゃないのか?」

ピエモンの台詞にマルクは戸惑った。実のところ私も気になる。
どうして彼は何も持たない私にここまで協力してくれるのか。

「ニコニコオールスターを殺せば、自分のニコニコでの人気が上がるから。
 とかいう考えもあったんだけど。一番の理由は──楽しそうだったから……なのサ」

た、楽しそうだったから……
私とピエモンは口をぽかんと開けて呆れ果てた。マルク、彼はやっぱり只者ではない。

「そ、そんな理由でか……」
「僕はピエモンと違って遊び心満点なのサ。ピエモンももっと僕みたいに人生を楽しむべきなのサ」

楽しむって……
私とピエモンは言葉を失った。

「幸運な事に僕達の利害は一致しているのサ。
 ピエモンはノヴァのために、コイヅカ君はニコニコ動画のために、そして僕は自分の楽しみ、
 あとニコ動での自分の人気アップのために、バトルロワイアルを完遂させなければならないのサ」

マルクが話を締めた。そうとも、我々の利害は一致している。
運命共同体なのだ。隠し事などしている場合ではない。

「我々は運命共同体だ。今更隠し事なんて無しだろう。そこで質問があるんだがいいかね?」

ピエモンが言った。私とマルクはピエモンに視線を投げかける。

「まず、ここはどこだ?独自の調べで地球でもポップスターでもない事は分かっているが」
「どこと言われても困るのサ。この星には名前なんてないのサ。
 強いて言えば、ノヴァが見つけてくれた、地球によく似て、バトロワをするのに都合がいい星……ってとこかな」

なるほど、とピエモンは呟いた。

「宇宙のどの辺りなのかは未だに見当がついていませんが安心してください。
 いざとなればノヴァが用意した宇宙船で宇宙のどこにでも行けます。高性能の宇宙マップがインプットされているようです」

捕捉するように私は話に割り込んだ。

ふむ、とピエモンは納得を示した。それを見て私も満足する。しかし、マルクは違った。

「ピエモン、僕からも質問なのサ」
「……? 何かね?」

マルクは一呼吸置く。そして言った。


「何を隠しているのサ」


私の首筋に一筋の冷たい汗が流れた。ピエモンはこの期に及んで、まだ隠し事をしているのか?

「……言ってる意味が分からないな……」

ピエモンは落ち着き払って言った。

「残念だけど僕はピエモン以上の策士なのサ。君が何かを隠している事ぐらい分かるのサ」

マルクがピエモンを威嚇する。


「やれやれ……」

ピエモンはため息を吐いて言った。

「良かろう。だが欲しいとか言うなよ。アレは私がノヴァの技術を参考にして作り上げた物だ。私の物なんだ」
「それは何? どこにあるのサ」
「倉庫に入れてあるよ。君達から隠すのは大変だった。……ジアース、と名づけた。私達の切り札となり得る巨大ロボットだ」

やたらともったいぶった言い方だ。

「ふーん」

私とマルクの白けた表情を見て、ピエモンは苛ついたのだろう。
席を立ち、司令部のスクリーンに取り付けられたボタンを押した。画面が発光し、巨大な人型ロボットが映し出された。

「おお、想像以上に凄いのサ!」
「これ本当に動くんですか?」
「ああ、勿論動くとも。部下に操縦させてみたところ、普通に動いてくれた。ただその部下は今行方不明になっているんだがね」

それは凄い。最後の台詞は少し気になるが、これを自由自在に動かせるならば物凄い戦力になる。

「行方不明って何か呪いでもあるんじゃないの?操縦したら死ぬとかサ」

マルクが茶化す。私は少しだけぞっとしたのだが、ピエモンはその言葉を陽気に笑い飛ばした。

「ははは、何を馬鹿なことを。大方どこぞで迷子にでもなっているんじゃないか?
 操縦させたのはゆとりのレッドベジーモンだ。どこに行こうが構わないさ」

またゆとりか。人使いの荒い人だ。

「隠し事ってそれだけですか?」
「ん? ああ、それだけだ。今更だが、別に隠す必要もあまりなかったな」
「ですが、頼もしいですよ。万が一参加者どもが脱出した時、そいつで殺せます」

ピエモンは頷いた。満足げな顔だ。

「まあ、この城に侵入でもされた時にはさすがに使えないだろうな。ジアースを使うとしたら屋外戦だ。
 そんな事は確実に起きないがね」

ピエモンが語り終わると、マルクがにやつき始めた。
何なのか質問してみる。

「ふっふっふ。実は僕も切り札を用意してたのサ。残念ながらピエモンよりはしょぼいけどね」

そういって、ボタンを押す。画面が再び切り替わった。

「こ、これは……!」

画面に映し出されたのは巨大な戦艦。船首が何かの仮面のように見える。

「戦艦ハルバードなのサ。
 カービィが沈めた奴をサルベージして、新品同然に修理したのサ。ノヴァを利用して宇宙地図もインプット済みなのサ」

私とピエモンは感嘆の声を漏らした。
これがあれば、ハルバードとジアースがあれば、例え参加者が会場を脱出したとしても簡単に皆殺しに出来る。
凄い……。私は再び呟いた。

「コイヅカ君、いくらなんでも驚きすぎなのサ」

マルクの声は弾んでいた。

「ま、どちらも使わないに越した事はないだろう。私達の目的はあくまでバトロワを完遂させる事だ。
 これからも我々は参加者どもをしっかりと監視し、緊急事態に備えるべきだな」
「その通りですね」
「その通りなのサ。ピエモンも言う時は言うねぇ~」

マルクがピエモンをからかったのを最後に、我々の長い話し合いは終わった。
この話し合いは意味があるものだったと私は思う。
隠し事をしていては結束できない。全てを吐露し、私達は以前よりも団結したはずだ。


 ▼ ▼ ▼


「ピエモン様、マルク様」

私達の元に一匹のデジモンがやって来た。何やら深刻そうな表情だ。

「この映像を見てください」

メインスクリーンを操作し、画面を切り替える。
画面に映ったのものは、会場で殺し合いをしている参加者達。かなりの人数だ。
背景を見る限り、城のようである。

「城組か……? これがどうかしたか?」
「よく見て下さい。何やら固まってごそごそとしているではありませんか」
「それぐらい、してもおかしくはないだろう?警戒しすぎではないのか?」
「いいや違うのサ、ピエモン!」

マルクが何かに気づいたような声を上げた。
私は画面を凝視する。そして、気づいた。

「メンバーがまずい……」
「コイヅカ君、その通りなのサ。駅に侵入したKAS。同じく駅に侵入し、やたらと鋭いレナ。
 妙な船でこそこそしてた海馬に霊夢。いつの間にか怪しい人物が城に大集合しちゃってるのサ」
「こいつら……監視に見えないようにして何をしている?」

ピエモンが怪訝そうに言う。

「盗聴器からは何か聞こえたか?」
「いいえ、特に何も」
「あれだけ集まっていて会話の一つもしていないのか」
「いえ、まあ、他愛のない話はちらほら聞こえてきますが……」

その言葉を聞き、私の頭は一瞬にして冴え渡った。

「筆談……か?」

可能性は充分ある。

「あいつら、何かしようとしている……ゲームを破壊しようとしているんじゃ……」

私の顔はどんどん青ざめていく。

「監視デジモンにもっと近づくよう連絡するのサ!」
「それが、参加者ども、警戒しまくっていて……これ以上近づくのは厳しいようです」

糞! 私達三人は毒づく。

「まあ、慌てる事はないのサ……
 様々なバグはともかく、僕とピエモンが作った首輪は絶対に絶対に、ぜッ~~~~たいに外れないのサ」
「マルク、万が一と言う場合もある」
「私もそう思います」
「じゃあどうするのサ。首輪を爆破する?まだあいつらが何をしようとしているか分からないんだよ?
 そんな事絶対に嫌なのサ。興ざめってレベルじゃねーぞ」

マルクが手を振り、強調する。
そうだ。マルクの言う通りそれだけはしてはならない。

「それは私も嫌です」
「私も嫌だ。そんな事は無論、言語道断だ」
「ではどうするんですか!? もう監視を増やす事は出来ませんよ! さすがに人数が足りません」

デジモンが困ったように叫ぶ。

どうする。監視も増やせない、爆破も出来ない。この場合どう対処すればいい?
手をこまねいている間に取り返しのつかない事になったらどうする。

「もうすぐ放送なのサ。とりあえず参加者どもに脅しをかけてみるのサ」
「脅しか。何をしているのか知らんが、止まりはしないだろうな。なにせ奴らは前に進まないと死ぬだけなんだから……」
「じゃあどうすればいいのサ! ピエモンももっと考えるのサ」

ピエモンとマルクが口喧嘩を始めた。

考えろ……まだ何か使えるカードがあるはずだ。
要するにもっと、今の監視よりもずっとずっと優秀な人物が監視をすればいいのだ。
そうすれば、万が一脱出されても、首輪を外されたとしてもすぐに対処出来るだろう。
優秀な人物──


「そうだ。まだあいつがいた」

私は尋常ではない様子で呟いた。

「ああッ! そうか、あいつなら駅にいるからすぐに行動できる」
「そうか、彼ならもっともっと上手く連中を見張れるのサ!」

我々三人は脳裏に同じ人物を思い浮かべた。
私達の持つ最強のカード──アイスデビモン──




薄暗い駅。

「は、はっ。了解しました」
『いいか? 奴らがゲームをぶち壊すような事をするまで、もしくはぶち壊そうとしていると確信できるまで決して何もするな!
 本来首輪は確実に外れないものなんだ。お前は監視をするだけでいい。何らかの対応をとったり、攻撃を仕掛けるのは万が一の場合のみだ!』
「はい。分かっていますってヴぁ」
『透明マントや石ころ帽子は持っているな?』
「勿論です。部下から取り上げました」
『そうかならばすぐに向かってくれ』

──了解。

俺は部下から取り上げたマントを着け、石ころ帽子を被り、回転扉を押した。
太陽は昇りかけており、明るい。もう数分もすれば放送だろう。


俺は高性能首輪探知機の電源をつけた。
これは参加者に支給しているものとは違い、光点の横に名前も表示される。
索敵範囲も会場全体と、格段に広い。支給しているものとは比べものにならないほど高性能だ。

「ピエモン様に逆らう奴らは容赦しないぶるぁあああ!!!」

塔にアイスデビモンの野太い声が響いた。


「さて、城に行くか」

探知機を見る。城にいる参加者達は三手に別れていた。

何ィイイ! ……どのグループを監視すべきなんだ? 城まで遠いから間違えるわけにはいかねぇぞ。



【E-4 塔内部/二日目・早朝】
【アイスデビモン@若本】
[状態]:健康
[装備]:エネミーコントローラー型首輪起爆装置、透明マント、石ころ帽子、高性能首輪探知機
[道具]:連絡機器
[思考・状況]
1、どのグループを監視すべきか……
2、城でこそこそしてた奴らがゲームをぶち壊さないか見張る。
  ぶち壊したら、もしくはぶち壊そうとしていると確信できたなら、何らかの対応をとる。
3、オールハイルピィエタァァァニア! ぶるぁあ! 不満なぞぉ! 漏らしてるじゃねぇえ!


【クッパ城/二日目・早朝】
【マルク@星のカービィ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考・状況]
1、次の放送で参加者達に脅しをかける
2、自分の楽しみのため、オールスター入りを果たすため、なんとしてもバトロワを完遂させる。

【ピエモン】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考・状況]
1、ノヴァを手に入れるため、なんとしてもバトロワを完遂させる。

【コイヅカ@現実?】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考・状況]
1、ニコニコ動画の発展のため、なんとしてもバトロワを完遂させる。

【備考】クッパ城にジアースと戦艦ハルバードがあります。城のどこにあるのかは不明です。
【備考】現在、アイスデビモン直属のデジモン軍団が駅を守っています。
【備考】駅の工事は終了しました。
【備考】クッパ城のどこかにジアース、ハルバード、宇宙船があります。


【高性能首輪探知機】
首輪を探知するレーダー。拡大すると余裕で会場全体を見渡せる。縮小は半径10m圏内の詳細が見える。映画や原作と違いカラー表示で地形も表示されるなどアップグレードされている。名前も見える。

【戦艦ハルバード@星のカービィスーパーデラックス】
カービィが沈めたメタナイトの戦艦。マルクがサルベージして新品同然に修理した。

【ジアース@ぼくらの&ピエモン】
ピエモンがノヴァの超技術とぼくらの本編を参考にして作り上げた。勿論本物より性能は劣る。
本物とは違い、いつでも搭乗可能。本物よりかなり小さい。頑張れば生身でも破壊できるかもしれない。
戦闘は基本的に格闘だが、レーザーも発射できる。偽者なので破壊されても宇宙は消滅しない。
操縦したら死ぬ、かどうかは不明。
色々な兵器が搭載されていると思う。船首はメタナイトの顔。



sm187:ねこなべとともに 時系列順 sm189:月(前編)
sm187:ねこなべとともに 投下順 sm189:月(前編)
  コイヅカ sm204:D-2草原大炎上戦(前篇)
sm169:第四回定時放送 マルク sm190:第五回定時放送
sm169:第四回定時放送 ピエモン sm190:第五回定時放送
sm169:第四回定時放送 アイスデビモン sm203:俺らboatさ行くぶるぁ



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