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阿部高和は逃げた。走り続けていた。
しかしそれは阿部自身の主観的な感じ方であり、傍目にはよろよろとふらつきながら進んでいるに過ぎなかった。
数々の連戦で受けたダメージは阿部の鍛え上げた肉体をボロボロに破壊してしまい、その体は気力のみで動いているに等しい状況であった。
ただ阿部は、死にたくない、こんなところでは終われないという思いだけで逃げ続けていた。
彼の悲願である不良息子の更正に成功したと言うのに、ここで萃香に殺されては困るのであった。
限界ギリギリの体を、ずぶ濡れである以上に重く、鋼鉄よりも重く感じられる足を動かし、ひたすらに歩む。
後ろを振り向く余裕すら無く、追っ手が来ていないだろうという希望だけを胸に、前を見て脱出口を探す。

辺りは針葉樹林で形成された森のようだが、その幹は土の上ではなく、何者とも分からない漆黒の床から生え揃っていた。
その樹の幹に阿部は体重を押し付け、少しでも体が楽になるようにしながら、それでも休まずにただ進んでいた。
阿部が床をちらりと眺めれば、インドやアステカ風ではあるが、エキゾチックや神秘性の欠片もない不気味な絵が浮かび上がっていた。
その何ともいえぬ理解不能の絵や光景は阿部にとってとにかく不快で、そして不気味であった。

ザッ、ザッという阿部の足音だけがその場を支配しており、不気味とも言えるその光景さえ気にしてはいられなかった。
ゆめにっきの彩る理解不能の世界観さえ気にならないほど、ただ死にたくないという衝動だけが頭の中にあった。

「絶対……殺されてたまるか…………」
自分の恐怖に押しつぶされないように、気を紛らわせるべく独り言を呟く。
「生きて、生き延びて、もっといっぱいヤってやるんだ……
 手始めにあのキョン君のお友達の古泉君に一人殺してきた報酬として掘って、それから食い損ねた彦麿をもう一度たいらげに行って、それからそれから……」

ぶつぶつぶつと呟き、気を紛らわせるうちに阿部の気分はだんだん高揚してきた。
二度と男をヤレないどころか、女で勃つという生き地獄に比べればよほどマシとも思える状況だった。
いい男達の雄姿を思い浮かべれば息子は上を向き、女のぶにょぶにょとした感覚を思い出すとちゃんと下を向く。
そんな当たり前の光景が戻ってきたというだけで、この先の未来が明るく見えるものだ。
絶望の淵は当に乗り越えたのだから、後は生き残るだけなのだ。
生きてさえいれば、受けた屈辱、やり損ねた据え膳も食べ放題なのだ。

どれほどの時間が経過したのか分からないほど歩き続け、ようやく阿部は周りに生えている針葉樹と不気味な幽霊のオブジェクト以外のものを発見した。
そこにあったのは柱が二本、杭のように生えていた。
「これは、何だ……?」
阿部はそのそそり立つ棒を手に取る。感触は無く、正体は分からなかった。
その棒について考えてもしょうがないと考えた阿部は、何やらありそうな二本の柱の間に立つ。
すると阿部の目の前の光景が変化し、角のような柱に囲まれた部屋のような場所であった。
そこで阿部は一息つこうとするが、阿部の目の前に不気味な鳥人間が現れる。
普段ならともかく、消耗した阿部に相手をする余裕は無いため、一目散に駆け出した。
再び光景が入れ替わり、後ろを見ると先ほどの針葉樹林の森に入れ替わった。
その柱の間から鳥人間が現れ、襲ってくる様子は無い。
「しょうがない、ここで一息つけるか…………」

扉にもたれ掛った阿部は、そのままずるずると、黒く冷やりとした床に崩れ落ちる。
再び休息しようとした阿部の耳に、静寂以外の雑音が混じる。
その音を聞き、阿部は扉に手を掛け、再び立ち上がる。
「こっちはそろそろ休みたいっつうのに、ちょっとばかりハードすぎるぜ……」



■    ■    ■



「なぁ萃香、これからお前どうするつもりや?」
「阿部を殺す……のかな。今は少し……、迷ってる」

逃げた阿部を追うことはせず、萃香と博之は大樹の中にある部屋で休息をしていた。
博之は椅子に、萃香はベッドの上で。
「俺は……それは良くないと今は思っとる」
「そうだろうね、でも私には妹の仇を取りたいっていう気持ちもある」
「でも妹の奴はそんなことを望んじゃいないと思うぞ」
「だから、迷ってる」

萃香の一言があって、それから少しの間はどちらも口を開かなかった。
椅子の軋むキィという音の他は、静寂だけがその場を包んでいた。
たった一日で沢山のことがあって、沢山のものを失った。
二人とも疲れていたから、何も考えずに休んでいた。
でも不思議と寝る気にはなれず、お互いぼーっと、天井や壁を見つめていた。

『チキショー、シリアスすぎて話についていけねぇよ! もっと俺についていける話をしてくれぇ!』
「お前は素直に黙ってろ、クロスミラージュ」
『くすんくすん……。お前が裸じゃなかったら、裸じゃなかったら……』
沈黙の変わりとして、その場にクロスミラージュのすすり泣きが響く。
こうなるとぼーっと黙っているわけにも行かず、博之がふいに話しかける。

「……なぁ、萃香」
「何だ」
「あいつのことは、もう忘れとけ。それよりも俺らにはまだまだやることがいっぱいある」
「それは嫌だ」
「なんでぞ? あんな奴に関わってもしょうがないわ」

「あんなのでも友達だったから、なおさら放っておけない。
 自分のことばかり考えてる奴だけど、あの時は私もそうだった。だから今度は私が殴ってでも止めるべきだと思っているんだ」

「……勝手にせい」
「元々そのつもりだ、私の喧嘩に博之を付き合わせる気は無い」
『またシリアスかよ……まあ幼女を殺やがったあのド変態は地獄の業火に焼かれるべきだと……』
クロスミラージュの戯言を黙殺し、萃香は上体をひょいと起こすとゆめにっきの中へと向かった。
足音が一つ余計に多いと思った萃香は、後ろを振り向く。
そこには博之がいた。

「博之、別に付いて来なくてもいい。お前はここで待ってるべきだ」
「俺も色々煮え切らないものがあるしな。妹の奴も最初はアレだったけど、いざ死なれると何ともいえんのやが」
「ありがとう博之、でも手は決して出さないで欲しい。この喧嘩のケジメは私が一人でつけなきゃいけない」
「悪いがそれは約束できん。これ以上人が死ぬのはもう御免や。俺が行かなかったせいでお前が死んだら、寝覚めが悪くてしょうがないわ」
『そうだそうだ、俺はこんなくそひろと二人きりなんて死んでも御免だ!』
「だからお前は黙っとけ!!!」

「とにかく、一人で行くのは絶対駄目だ」
「いいや、行く」

両者は一歩も譲らず、お互いの目を合わせて睨み合う。
お互い沈黙のまま見つめあい、時が過ぎていった。
その静寂は萃香から先に破ることになった。

「どうしても、引く気は無い?」
「ああ、無いぞ」

「なら、博之には悪いけど強硬手段を使わせてもらう」

その言葉と同時に博之の口から呻き声が漏れる。
博之の脇腹には萃香の右拳がめり込まれており、立つ事さえままならない博之はそのまま膝から崩れ落ちた。
ぐぐっ…と声にならない呻きだけが博之の口から漏れていた。

「……ごめん、本当にごめん」

萃香は博之に謝罪の言葉を二言投げかけると、12ある扉の中から阿部が逃亡した緑の扉を進んでいった。

『ちょっと待てぇ! 俺を置いていかないでくれ萃香ちゃ~ん
 こんなくそひろと二人きりとかやめてくれよおおおおおおおおおお!』



■    ■    ■



柱を潜り抜けた阿部の前の光景が入れ替わる。
阿部は目を凝らして周りのものを確かめる。
正面には同じ様な柱が二本、その近くには鳥人間と、赤くて四角いものが一つ。
他には床の絵から生える子鬼のような角が何本かあるだけだった。
阿部は全力を出して走る。鳥人間の歩みは速いとも遅いとも言えず、ただ不気味に接近を続けてくる。
角のような柱を調べても何も起こらなかったため、阿部は正面の柱を目指す。
そして潜り抜けるが、潜り抜けた先は先ほどの森だった。
ただ違うのは、出てきた場所が表か裏かの単純な違いであった。
先ほどの足音はより強く、早くなっていた。

「糞ッ!」
阿部は悪態を付きながら再び柱へ潜る。
するとそこには鳥人間がいた。
体が反射的に動き、阿部は襲い掛かってくる鳥人間に蹴りをぶちかました。
すると鳥人間は阿部の一撃が効いたのか、消え去ってしまった。
阿部は食い殺される危機は乗り越えたものの、後門から迫る鬼のせいで一息入れる暇も無かった。
そこで阿部は最後の赤くて四角い何かを調べる。
すると辺りの光景が入れ替わり、赤くて毒々しい通路へと変化した。
それは通路と言うより、複雑に入り混じった迷路だった。

阿部は果てしなく続く迷路を見渡すが、現在いる場所から見えるのは先ほど触れた赤くて四角い物体がくるくる回っているだけだった。
今更戻るわけにも行かず、阿部は逃げ道を求めて彷徨い歩く。
しかし、阿部が進んだ先は行き止まりだった。
「ああもう、なんだこの迷路は!」

阿部は悪態を付きながら来た道を戻る。
視界は赤ばかりで目には毒で、阿部はどこを進んでいるのかさえ分からなくなっていた。
阿部はまた妄想をして少し気を持ち上げ、進むも出口どころか最初の場所にさえ戻れない。
視界に偶然赤い通路以外のものが眼に映ったとしても、そこへ辿り着くために迂回するうち、また迷う。

「何なんだ一体、こんなんじゃあの萃香ちゃんに追いつかれ……」
「……見つけたぞ、阿部」
「のわっ!」
阿部は萃香の姿を見ると一目散に駆け出した。
だがすぐに行き止まりだったので振り向くが、そこには萃香がいた。
結局阿部は袋小路に追い詰められることになってしまった。

「ま、まて萃香ちゃん。話せば分かる」
「……阿部」
「頼むから怖い顔をしないでくれ、な。話し合おうぜ、な?」
阿部が必死に対話を要求するが、返答として帰ってきたのは萃香の拳だった。
げふっと息を吐き、阿部は顔面から地面に叩きつけられる。

「謝れ、阿部」
「萃香ちゃん……」
「まずお前のことを許してやった妹に謝れ」
「そ、そんなことでいいならいくらでも謝る。悪かった、この通りだ」
阿部は起き上がると頭を赤い床に付け、許しを請う。

「それから…………私が言えた義理じゃないけど、今まで殺してきた人たちに謝るんだ、阿部」
「ああ、いくらでも謝るよ、悪かった」

「阿部、下手な嘘をつくな。いくらなんでもそれぐらい私でも分かる」
「いや、嘘じゃない、嘘じゃないぞ!
 それに萃香ちゃん、俺は人を殺したくて殺したわけじゃない。萃香ちゃんだって見てきたんだから分かるだろ?」
「でも阿部、お前のせいで沢山の人が不幸になった。私も阿部と同じ様なことをしてしまった。
 それは間違いだったんだよ阿部。私達はこんなことをしてる場合じゃないんだ」
「そ、そうだ萃香ちゃんだって人を殺したじゃないか!
そのことを棚に上げて俺だけ謝らせるのはおかしいぞ!」
「言うとおりだ、阿部。だから私は間違いを正すため、不幸にしてきた人に償いをすることにしたんだ。
 ティアナの……起動六課の意思を継いで、つるぺただけじゃなくて、巨乳だろうと関係なく、もう人を殺さない、殺させないことが私の償いなんだ」
「そ、そうか、萃香ちゃんは偉いなぁ」
「私は偉くなんかない、下手なお世辞は必要ない」

「阿部、今までの自分勝手な行いを真剣に謝れ。そしてもう二度と自分勝手に人を襲わないと誓え」
「…………嫌だ」
「そうか……」
「突然殺し合いに巻き込まれてよ。変な女に絡まれて、俺の事情も知らずに都合を押し付けるな!
 こんな状況なんだから、男とヤリたいようにヤルぐらい自由にやらせろおおぉぉ!」

「阿部えええええぇぇ!!!!!」
萃香の一撃が阿部の上半身に突き刺さる。
阿部はろくな抵抗すら出来ないまま、萃香の拳に嬲られていた。
阿部はゲホゲホと息を吐き、床に蹲っていた。
萃香はそんな阿部の元へ近づく。

「せめてもの情けだ、もう苦しまないように一撃で殺してやる」
「萃香ちゃん、お前はまた人を殺すのかよ」
「えっ……」
「…大体萃香ちゃんは自分勝手すぎるんだよ。自分の思い通りにならないから殺すのかよ。
 俺は別に殺したくて人を殺してるわけじゃないのはさっきから言ってるだろ。
 でも萃香ちゃんは自分の都合で俺を殺すのかよ」
「でも、お前は人を…」
「…だからって殺すのかよ。俺だって被害者なんだぞ! なのに自分の意思で殺すのかよ。
 俺に言わせれば、それでどこが罪償いなのか理解できないね」

「阿部……」
「再会した時から思ってるが萃香ちゃん、変わったな。
 あの時誓い合った友情なんて偽善の前に消えてなくなるほど薄っぺらいのかよ。だから女は嫌いなんだ……」

阿部はぐちぐちと言葉で攻める。ろくに体も動かず抵抗も出来ない阿部にとっては萃香を懐柔するしかないからだ。
詭弁としか言えない理論で、攻めるしかなかったのだ。

「それは……私が変わったのはたぶん高町なのはのリンカーコアのせいだと思う」
「高町なのは? 誰だそいつは」
「阿部、あの時一緒に戦ったあのポニーテールの魔法使いだよ」
「ああ、あの襲い掛かってきた糞女か、それが何の関係がある?」
「高町なのはの死体から出てきたリンカーコアを食べたんだが、それが原因じゃないかと思っている」
「そんなことがあったのか、……ううむ、俺に言わせれば萃香ちゃんはおかしいぜ、間違いない」
「私は間違ってない。間違ってるのは阿部、お前だ」
「いいや、萃香ちゃんだね」
「阿部、なんでそう思うのか言ってみろ」


「鬼は人を襲うって言ってたのは萃香ちゃんだろ。それが移動ロッカー?いや起動六課の意思を告ぐ?
 妖怪は人食いなんだろ? なら人殺しを罪だと思うほうがおかしいんじゃないか?」
「たしかに人を襲ってきたし、その時は罪悪感も無かった。でもそれは間違いだったんだ」
「長生きの萃香ちゃんがそれまで変とも思わなかったのに、突然心変わりしたんだろ。それはおかしいだろう。
 ひょっとしたら萃香ちゃん、あんたその高町なのはに乗っ取られたんじゃないか?」
「そんなことは無い! 私は……わた…し……だ……?」

萃香が頭を抑えて蒼白になる。
今までの自分は何だったのか、でもそれを言ったら妹やティアナの犠牲はなんだったのか。何故あの時約束したのか。
自分の立ち位置が分からない。
伊吹萃香、酒が好きなただの鬼のはずだった。
鬼は人を襲うが、今はそれが間違いだと思っている。約束したからだ。起動六課の意地を見せる。仲間を守ること。
鬼の誇りである角を捧げてでも約束を守ると誓ったからだ。
でも妹は守れなくて、それで今私は人を殺そうとしている。
何が正しくて、何が間違ってるのかよく分からない。
「わたしは……」

膝をついて、阿部のことさえ気にせず、両手をついてその場で考え込む。
阿部は許せない。でも許せないからといって人を殺してもいいのだろうか。
あの時妹は憎い仇敵の阿部を見逃した。人を殺さず、仲間を守ろうとした。
私は妹の仇を打つ資格があるのだろうか。
阿部は仲間じゃなくて友達だから殺していいのか、それは正しいのか正しくないのか。
阿部とは高町なのはとの戦いで共闘して、それで気があって友達になった。
その友達のことを殺すのが本当に友達がやることなのか。
どうして自分はあの時ティアナに嘘をつこうと考えたのか。
考えても考えても萃香に答えは浮かばなかった。


その萃香の思考が中断されたのは、ゴトリと何かが落ちた音だった。
ハッとなった萃香が音源の方向を見ると、そこにはワインが転げていた。
そしてその隣に、萃香のもっていたディパックを弄る阿部の姿が見えた。
「阿部……」


「阿部ええええぇぇぇぇぇ!!!」


阿部の態度が憎かった。
阿部は真剣に、自分の罪に対して問いを投げかけているのだと思った。
だが、阿部は萃香が悩んでいる間に、萃香から逃れることだけを考えていた。
ただひたすらに自分のことだけしか考えず、そのために人の、いや鬼の情を裏切る。
人が鬼を裏切り、卑怯な行いを働いて互いを尊重しなくなった。
鬼は卑怯なのが嫌いだ。それは萃香も例外ではない。
阿部が萃香の目の前で行ったのはまさにその裏切りであった。
そんな奴、友達とはもう思えない。

「阿部、お前っていう奴はあぁぁぁ!!!」


憤怒の表情の萃香が阿部を殴りつける。
阿部は憎憎しい表情をしてただ耐えていたが、それさえもできなくなくなりつつあった。
阿部の体中はボロボロに傷つき、口からは血反吐が毀れていた。
そのまま萃香は阿部を殺すかと思われたが、突然阿部の前から離れた。

「阿部、少しだけ待ってやる。私の問いに答えろ。
 どうしてあんなことをした。お前が言う友達があんな盗賊まがいのことなのか」

ガハゲホと息をつく阿部は立ち上がらず、そのまま崩れたままだった。
見かねた萃香は阿倍の元へよると、首元を持ち上げてその顔を近づける。

「……俺は本当のことを言ってるだけだ。萃香ちゃんがおかしい。
 おかしな萃香ちゃんにh…ゲホッ! 話が通じるわけ無い。
 所詮萃香ちゃん、お前も信用ならない女なんだよ」

「そうか、それで言いたいことはそれだけか?」
「……」
萃香は阿部の元を離れると、ミニ八卦炉を取り出す。
そこに魔力と霊力を集中させる。

「阿部、お前の言ってることは本当だ。私はどこかおかしいんだと思う。
 でもな、私はあいつらに約束したからさ。当分はあいつらの信頼に答えるのが正しいんだと思うよ。
 おかしな私の考え方は、幻想郷に帰ってからゆっくり考え直す。
 でもな阿部、お前がいるとあいつらが守れない。だから悪いけど大切な仲間を守るためにここで死んでもらう。
 正しくないけど、それが今は最善なんだ。すまない」

ミニ八卦炉に魔力が集中し、いつでもスターライトブレイカーは発射可能な状態になっていた。
萃香は阿部の最後の言葉か、行動を聞き次第すぐにでも発射するはずだった。
「阿部、黙ってるならもう発射……」

萃香がいざ発射すると身構えた時、阿部は不適に笑うと後ろを指差す。
それが気になって後ろを振り向けば、そこには不気味な鳥人間がすぐ近くに忍び寄っていた。
阿部の真意を理解した萃香は、体ごと反転して集中した魔力を発射する。

「スターライトブレイカアアアアァァァー!!!」

苦虫を踏み潰したような表情の萃香は、ただ放出した魔力が止まるのを待つしかなかった。
強力すぎるその威力が足枷となり、急な反転をすることはできなかったのだ。
とはいえ阿部はもう死に体、もう反撃する体力は少しも残っていないはずなのだ。
現に阿部はがら空きの背中を攻めようとしない。
あの手この手で時間稼ぎをしていた阿部だが、萃香にはもう容赦をする気持ちは微塵も無かった。



砲撃が止まった萃香が動き出そうとした時、体が動かなかった。

「エネミーコントローラー、うまく決まってよかったぜ」
阿部はふらふらになりながらも立ち上がり、萃香の元へと近づく。
再び憎悪の表情で阿部を睨み付けるが、阿部にとってはどうでもよかった。

「一ついいことを教えてやろう萃香ちゃん、いい男ってのは諦めと手癖が悪いもんなんだぜ」

「阿……部!!!!」
「やっぱり女は駄目だな。それじゃあ、さっさと死んでくれ」

阿部はその手に持つコントローラーでコマンドを入力していく。
「↑←↓→B、――――破壊だ」

その言葉とともに萃香の体から血飛沫が迸り、肉体が破壊されていく。
そこへ阿部は止めと言わんばかりに、拳を叩き込んでおいた。
阿部の拳に貫かれた萃香は、そのまま一言を発することなく床へと沈んでいった。

阿部は本当に萃香が死んだのか確信できず、血まみれで見るに耐えない姿に変わり果てた萃香の体を調べていた。
そして萃香は死んだといわんばかりに、そこへ白く小さな玉が口から飛び出してきた。
「これがリンカーコアって奴で、ソウルフレンドをおかしくした諸悪の根源か」

それを見た阿部は、思い切り足で踏みつけた。
そのままぐりぐりとひき潰し、跡形も無くなったことを確認して足で払った。
「粉々に砕いちまえば、いくらなんでももう二度とふ……」


「がはっ!?」

突如阿部の体に強い衝撃と痛みが走り、萃香と同じ様な状態へと変化した。
擦れた視界で目に映ったのは、手に持っていたカードの効果を示す文章だった。
『1000ポイントのライフを消費する』

1000ポイントと言うのが阿部にはどのぐらいの大きさなのかは分からなかったが、それは致命傷としか言いようが無かった。
阿部はどれだけ力を入れても体は動かせない。それどころかもう全身の感覚すらなかった。
ただ虚ろな視界だけが、阿部が生きていることへの証明だった。
「もう……駄目なのか…………?」



『あーっ、貴重な幼女があああぁぁぁぁ!!!
 くそひろ、こいつさっさと殺せ!殺せ!』
「……黙ってろクロスミラージュ」

現場に、一足遅く駆けつけた博之は阿部の胸倉を掴み上げる。
血まみれになるのも気にせず、その顔を近づけた。

「……お前がやったんだな?」
しかし阿部は沈黙し、ただ笑っていた。

「道…下……お前…んでガホッ! …こにいるんだよ。お前はさ、俺を迎えに来…くれたのか?」
「質問になってないわ馬鹿が! ちゃんと答えろ!」
だがうつろな目で笑う阿部は、博之の質問すら理解せずにただ息を漏らしていた。

「ゲフッ! 俺、…じまうのか。なあ道下、まだ俺……の糞ったれな状況に巻き込まれた分ヤ……ないのに、死…じまうのかよ?」
『だめだくそひろ、こいつ完全におかしくなってるわ』
「言われなくても分かっとるわ。しかしこいつ、なんで俺のことをその道下って奴と勘違いしたんだか」
『お前の顔がそいつそっくりなんじゃねぇの』
「こんな状況で馬鹿言うな!」

「…下、とびっきりのをたのガハガハッ! 俺のケツにその太いのをた……」
「アホかこいつは!」
博之は馬鹿馬鹿しくなり、阿部をそのまま地面に投げ捨てた。
びくんと一度痙攣した阿部の体は、それきり動かなくなった。


「え……死ん…………だ?」


博之が阿部の様子を見るが、やはり死んでいた。
それどころか阿部はよく見ればもう生きているのが不思議なぐらいな傷を負っていた。
腕は折れ、ひしゃげ、頭からは血が漏れ続け、その場に血溜まりを形成するほどだった。
阿部の皮膚は真っ赤に染まり、いたるところからその肉と血管が顔を覗かせていた。
その奥に倒れる萃香は体を覆う服すら無く、阿部よりも酷い惨状を晒していた。

「うっ……」
『わー! くそひろ吐くな! 目を閉じて耐えろ、耐えるんだ!』
博之はそのまま目を閉じてうずくまり、口元と鼻元を手で押さえる。
そうやって息を止めてるうち、一息を入れる余裕が復活するにいたった。

「……なあクロミラ」
『なんだくそひろ、吐かなかったんだったらとっととこの場からスタコラサッサするぞ』
「こいつ……、俺が殺したんだよな……」
『……まぁ…………でもほっといても死んだだろうから、気にする必要は無いだろ』
「……」

博之は阿部の顔を見る。
その表情は笑っているようにも、苦しんでいるようにも見えた。
その顔を見た博之は、持っていた包丁を阿部の尻へ突き刺した。

『おいくそひろ、何やってんの?』
「たんなる自己満足ぞ、気にするな」

博之は二人の遺体を極力見ないようにし、ディパックを手早く回収して赤い迷路を引き返していった。

「なぁクロミラ」
『なんだくそひろ』
「俺、ついに一人になっちまったのか…………」
『あー、そうだ! 貴重な幼女分が綺麗さっぱり無くなってむさいくそひろと二人きりかよ!
 この世の地獄だあああぁぁぁ!!!!』
「ああ……そうや、地獄やが…………」
『な、なんだよまた真面目なりやがって、シリアルは禁止だろ?』

それきり博之は何も言わず、クロスミラージュもバツが悪くなったのか何も口に出すことは無かった。



【ゆめにっき・赤い迷路/二日目・午前】
【永井博之@永井先生】
[状態]:深い悲しみとそれを超える脱出への誓い、精神的疲労大、魔人ピロ(紫)、ひろが如く 、翼が生えた
[装備]:薬草(3/99)@勇者の代わりにry 、クロスミラージュ@リリカルなのは
[道具]: 支給品一式*4(食料2食分・水3食分消費)、
【使用可能】ラーの翼神竜(遊戯、海馬のみ)、青眼の白龍2枚、黒騎士の魔剣少女、コカローチ・ナイト(深夜に二度使用)、進化の繭
【昼まで使用不可】死者蘇生、セイバー
【次の深夜まで使用不可】ブラック・マジシャン・ガール、ホーリーエルフの祝福、強制脱出装置、ゴキボール
【次の朝まで使用不可】オレイカルコスの結界、オシリスの天空竜、オベリスクの巨神兵
ダンボール@メタルギアシリーズ、ヴェルタースオリジナル@ヴェル☆オリ、携帯電話@現実、庭師の鋏@ローゼンメイデン、おたま@TOD、
カワサキのフライパン@星のカービィ、ミニ八卦炉@東方project、ワイン(残り半分)、傘@現実
A.C.E.3@現実(少し詩音の血がついている)、DMカード(エネミーコントローラー(次の午前まで使用不可能)、融合)、塔組の推理メモ、塔の『バグ』について纏めた紙 、バルサミコ酢@らき☆すた
グルメテーブルかけ(残り19回)@ドラえもん、萌えもんパッチ@ポケモン言えるかなで擬人化してみた、時計型麻酔銃(予備針残り0本)@名探偵コナン
[思考・状況]
1.少数派による運命の打開
2.とにかくゆめにっきから脱出したい
3.少し落ち着きたい
4.D-2へ行ってオカマ野朗を倒し、水銀燈の入ったディパックを取り戻す
5.その後城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。
6.水銀燈の分、詩音の姉へ償いをする。
7.水銀燈の右足を見つけたい
8.必ず生還し、水銀燈を直して再会する。
9.脱出の方法を皆に伝える

※ローザミスティカの力を得て魔人覚醒をしました。身体能力は遥かに向上、そしてどうやら水銀燈の力は行使出来る様です。
 しかし、まだ魔人の能力を行使出来るか不明です。
※ただの人間がローザミスティカの力を得た為に、副作用を受ける可能性があります。
※水銀燈の見てきた全ての記憶・感情を得ました。
※博之はハルヒの正体をレナから聞きましたが、あまりよく理解していません。
※水銀燈の能力のおかげで翼が生えています。
 イメージ的にはローゼンメイデン2期、アニメ本編の最終回の真紅みたいな感じです。


ゆめにっきについての考察

3人は主催の作った模造の世界だと考えました。
主催者が窓付きの夢に入り、リアルでゆめにっきをプレイしていた可能性があります。
おまけステージの感覚で作り、ロワの隠し要素として入れたようです。
なので現実の夢の世界という感覚です。
数字の世界から行ける現実への階段は、大樹の扉に繋がっています。
複数の世界と繋がる扉の間には監視が行き届いていないようです。
※支給品などでエフェクトも使えます。
※窓付きの部屋に支給品のゆめにっきと同じ日記帳があります。


※包丁は阿部の遺体に突き刺さったまま放置されています。
※阿部の死体と萃香の死体はゆめにっき内、赤い通路に放置されたままです。




【阿部高和@くそみそテクニック 死亡】
【伊吹萃香@東方Project(つるぺったん) 死亡】

【残り17人】



sm195:迷走Mind 時系列順 sm197:王様「HA☆NA☆SE!このガチホモ野郎!!!」
sm195:迷走Mind 投下順 sm197:王様「HA☆NA☆SE!このガチホモ野郎!!!」
sm194:ゆっくりした結果がこれだよ!!! 阿部高和 死亡
sm194:ゆっくりした結果がこれだよ!!! 永井博之 sm200:変態という名の幼女
sm194:ゆっくりした結果がこれだよ!!! 伊吹萃香 死亡



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