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D-2草原大炎上戦(後篇) ◆jVERyrq1dU




どうなっとるんぞ閣下……。本気で化け物やないか。
「古泉ッ!」
「……あっこら!お前の相手は俺ぞ!」
永琳が博之との戦いを放棄し、救援へ向かう。

「ふう……ふう……」
足りない。まだまだ足りない。もっと回復しなければ

永琳が閣下に斬りつける。それを木刀で防ぎ、閣下は蹴りを繰り出した。
直撃は避けたものの、永琳はバランスを崩す。そこへ木刀の追撃が迫る。
「そおらぁッッ!」
「ぐ!」
木刀は脇腹に当たり、永琳は怯んだ。

「デーモン!あんたもさっさと手伝いなさい!」
一人では勝てないと判断し、デーモンに救援を求める。


デーモンは立ち上がらず、頭を抱えている。閣下に受けた傷が痛む。
デーモンにはさっきからずっと気になっていた事があった。

八意永琳は何者なのか。どこかで見た事があったが、これまでは距離が離れすぎていて判別できなかった。
今では、よく分かる。懐かしい。この女は薬屋前で見た女だ。つまり……

(やめなさい!八意永琳は味方なのよ!状況は変わったわ!)
(彼女を殺せばさらに状況は悪化する)
(勝手な行動は慎んで欲しいですねぇ)
「黙れ……」

「八意永琳、お前を殺す」
デーモンはぬらりと立ち上がった。情報操作で左腕を無理やりくっつけ、永琳を凝視する。

やめろやめろやめろ!
もう状況は変わったんだ!この状況で暴走してしまえば我々の命に関わる!
自重しろ月のうさぎ!このデーモンに主導権を返せ!

以前のように人格を封印できない。それほどまでにうどんげの人格は暴走していた。

「ぐっ…かっ…永琳……! 死ねえッ!」
戦闘中の永琳もさすがに異変に気づき、デーモンに注意を向ける。
デーモンが飛び掛ってきた。怪物の鋭い爪が永琳に迫る。

――やめろぉーーーーーー!!!
デーモンの残りの人格が、僅かだが暴走を押しとどめる。そのため、永琳は間一髪爪を避けることが出来た。

「何お前ら仲間割れしとんぞ!」
「うっ!」
博之の拳が永琳の頬を殴り飛ばす。

永琳に博之が迫る、閣下が迫る、そしてデーモンまで迫る。
まずい……どうしてデーモンは私を攻撃するの!? このままでは殺される。

「お前らこっちを向けェェェーーーーーーッッ!!」
「いかん! 閣下!あいつの方見るな!」

ゆめにっきね!さすがは古泉!

古泉はなけなしの体力を振り絞り、ゆめにっきを四人に向かってかざす。
博之と永琳は種が分かっているので当然見ない。閣下も博之の助言に助けられ、見なかった。
唯一日記を視界に入れてしまったのはデーモンだ。

永琳への呪いの言葉を吐きつつ、デーモンはゆめにっきに吸い込まれていった。

肋骨が粉砕された痛みと、エネルギードレインで、古泉の目をすでに空ろだ。
もはや日記をかざす事もままならない。

「どうなってんの?」
「閣下!あの日記、奪うぞ!」
博之は叫び、古泉の元へ急ぐ。博之に言われ、閣下も続く。

古泉は必死にゆめにっきを抱え、走り出す。
とにかく閣下から離れねば、エネルギードレインだけで殺されてしまう。
超能力者とはいえ、今ではただの一般人にすぎない古泉にとって、エネルギードレインは本当に脅威だ。

「まだ私がいるわよ!」
「博之行きなさい!」
永琳と閣下が対峙する。その隙に博之は古泉の元へ走る。
あの日記を抑えなければ危なっかしくて仕方がない。

古泉は懸命に逃げるが、どうしても博之の方が速い。
このゆめにっきは使いようによっては最強の武器だ。
そのため、敵に盗られるわけにはいかない。

しかし、逃げ切れない。どうしたものか……!

「けひひ、私を忘れてもらっちゃ困るわ」
「ハルヒ!」
ハルヒが古泉の救援に現れた。KASから奪ったのだろう。
彼のデイパック、そしてアイスソードを持っている。

「今更お前に何が出来るんぞ!」
「口を慎め!私は神なのよ!この駄目人間め!」

「いかん……!」
アイスソードから吹雪が発射される。博之はなんとかぎりぎりのところで避ける事が出来た。
「涼宮さん!逃げましょう!」
「どうしてよ!?私にだって殺せるわよ!」
嫌がるハルヒを無視し、古泉は彼女の手を引っ張り、無理やり逃げる。

ある地点まで逃げた古泉は、自身の体が一気に軽くなった事に気づく。
なるほど、ここまでがエネルギードレインの射程距離というわけか。

二人に追いついた博之が古泉に向けて拳を放つ。間一髪それを逆刃刀で受け止める。
が、全身に疲労が溜まり、肋骨も粉砕されている古泉がそう長くもつはずがない。
博之は軽く逆刃刀を掃い、古泉の脇腹に蹴りを繰り出した。

「古泉ッ!」

蹴りが古泉に当たり、空しく倒れる。しかし古泉はまだ諦めてはいなかった。
制服のポケットから小型爆弾を取り出し、博之に投げた。

「またか!」
博之が炎を避けている間、古泉は這いながらハルヒへと近づく。
「さあ、早くあいつから離れましょう!」
必死に立ち上がり、ハルヒと共に逃げる。

「デーモンが暴走し始めました!これはどういう事なんですか!?」
「は!?何の事よ暴走って!?」
ええい煩わしい。このクソ女め!見ていなかったのか。
早くしなければ博之がまたこちらに来るだろう。古泉は早口にまくしたてる。

「デーモンが八意さんを攻撃したんです!どういう事ですか!」
「知らないわよそんな事!あんたデーモンをさっさと出しなさい!神のパートナーよ!」
クソ!状況が理解できていないのかこの女は!八意さんとは月とすっぽんだ。
「だから出したら危ないんですって!涼宮さんは何か知らないんですか!」
「だから知らないわよ!見当もつかないわ!」

古泉は役に立たないハルヒを睨みつけ、懸命に思考する。
デーモンを元に戻す術を模索する。

復活した閣下の強さは相当なものだ。もはやデーモンと互角、と言っても過言ではない。
その上、博之までいる。デーモンがいなければ古泉達は例え三人がかりでも負けるだろう。
これが古泉の予測だ。

古泉はハルヒがデーモンを元に戻す方法を知っているものだと思っていた。
しかし、ハルヒは知らないと言う。デーモンと最も付き合いの長いハルヒが知らないと言うのだ。
永琳と古泉に分かるはずがない。

どうする……考えろ古泉……!

「デーモンを元に戻したいのね!?」
「そうです、何か方法を見つけましたか!?」
「ふん!何度も言わすんじゃないわよ。分からないわ。でも……」
「でも何ですか!?」
考え込むハルヒ。頼むからさっさと答えてくれ。下らない事言ったら殺してやる!

「私が説得するわ!あいつと私は一心同体だもの!私の言う事に逆らうはずが無いわ!」
「…………」
妙に自信あるな。

古泉は少しの間考え、決意したかのようにゆめにっきを取り出す。無論博之から逃げながら。

「この本の中はまるで悪夢のような世界が広がっています!ですが怖がる必要はありません!」
「分かったわ!」
「それと、この剣とかブレスレットとか全部貸して貰いますからね」
ハルヒから全ての持ち物を頂く。これから自分は一人で博之と戦わなければならないのだ。
武器を貰わなければすぐに殺されるに決まってる。

古泉は最後にハルヒの耳元で、頬をつねればいつでも出られます、と言いハルヒに日記の最後のページを見せた。
次の瞬間、ハルヒは消え、古泉だけがその場に残った。急いでゆめにっきを自身のデイパックへ入れる。
ページは開いたままだ。こうしておかないとハルヒ達が出て来れない。

(さて……大変なのはここから……涼宮さん、お願いですからさっさとして下さいよ)

「アイスソォォーーーーーーッッド!」
追って来た博之に向けて吹雪を放つ。しかし博之は読んでいたのだろう。
軽々と避けてしまった。

(この身体能力、間違いなく人外……支給品をフルに活用しないときっと瞬殺でしょうね)

「古泉……!お前には個人的に恨みがある……」
「あのジャンクの事ですね。前の放送で呆気なく死んでましたねぇ」

黙れ!と博之は叫び、古泉と同じく、戦闘体勢をとる。


「ハルヒはどこへ……?」
「何言ってるのよ……貴方の相手はまだ私よ……」
閣下は辺りを見回し、急に消えたハルヒを探す。
あいつだけは自分の手で殺したい。なんとしても。

永琳の体力は次第に衰えていく。当然だ。
彼女はずっとエネルギードレインによって体力を奪われている。
元々の身体能力も閣下の方が上だ。その上、シルバースキンまである。

「ふう……ふう……」
閣下は頭を切り替え、永琳を睨みつける。
草原はもはや焼け野原と化し、植物からのエネルギー補給はほとんど期待ではない。
それでも閣下は永琳、古泉、博之からエネルギーを貰い体をかなり回復させた。しかし全快には程遠い。未だにぼろぼろだ。
油断はしない。こいつらのしぶとさは身に沁みて理解している。
私は閣下として、いかなる時も冷徹に事を進める。

気になる事は唯一つ。KASは本当に死んだのか?

対峙する古泉と博之。永琳と閣下。焼け野原となった草原を舞台に、大乱闘は佳境へと……

 ▼ ▼ ▼

「ピエモン様、監視班から連絡が……」

場面は変わり、ここはクッパ城。部屋で思索に耽っていたピエモンの元に一匹のデジモンが現れる。

「天海春香が本格的に戦闘を始めたようです」


天海春香。ピエモンにとって、進化するために必要な生贄の一人である。
死体を食す傾向にある神(笑)の二人と戦闘を始めたので、ピエモンはずっと気が気ではなかった。
それでも春香自身、足止めをするだけと言っており、死亡する可能性は低いと判断し今まで静観していたのだが……

(くそ……我々の行動は裏目にばかり出るな……)

「デーモンは予想以上に強く、春香は足止めどころではなくなったようです」
「つまり……彼女は劣勢という事か……」

早急な判断を要す。
もしマルクが本当に何かの企みを隠しているのなら、さっさと春香を拉致してしまう方がいいのかもしれない。
デーモンに食われては、全てが水の泡だ。

「早急に春香を拉致する準備を進めるんだ!」
「はあ……それが……」

ああ、またこのパターンか……

「今度はどんなハプニングだ?」
ピエモンは心底うんざりした様子で質問する。
「いえ、ハプニングというワケではないんです。ただ単純に、人手、いえデジモン手が足りないんです」
「人手が足りない事くらい分かってる。
だが、デーモンや春香を監視しているデジモン達を合わせれば、それなりの人数になるだろう?」
「いえ、それが……デーモンの所為によってですね……全滅してしまいまして」

「デーモンだと?何故だ、あいつは春香と戦っているのだろう?監視班を全滅させる暇なんてないはずだ」
「正確に言えば、監視班は巻き添えを食らったんです。デーモンのフレイムインフェルノによってですね……」

あれか……
思い当たる節がある。城の東の草原辺りで、巨大な炎が突然現れたのだ。
エリート達は、すでに城やNice boatに回してしまっているから、
それ以外の監視班はほぼゆとりで構成されている。
ゆとりなら炎に巻き込まれても仕方が……

「ってふざけるなああぁぁぁぁ!!どうしてお前達はこうも役に立たないんだ!」
「ひっひええ、そんな事私に言われましても……」

少し前、ピエモンはマルクに馬鹿にされたのだ。
『君の部下、ゆとりばっかりで使えないのサm9(^Д^)』
そのため、今回の件はもうさすがに納得出来ない。

「あ、あの……」
ピエモンの気を窺いつつ、デジモンはおずおずと話しかける。
「マルク様が何か企んでいるなんて……杞憂なんじゃないでしょうか……」
「そうだといいがな……だがその可能性は低いだろう。奴は底が知れない、邪悪だ」

「Bのくせに馬鹿にしやがって……マルク様あんなに可愛いのに邪悪とかひでぇよ……」
ロリコンの傾向があるこのデジモンはピエモンに聞こえないように、こっそりと愚痴を吐いた。
「なんだと貴様ッ!」
「え……? い、いやいやいやいや私は何も言ってません!」
ピエモンは恐ろしい形相でデジモンを睨んだ。
睨まれたデジモンはガタガタと震え、失礼しますと言い、ピエモンの部屋から一目散に逃げて行った。

「くそ……」
マルクがあの姿になってからどうも部下達の様子がおかしい。
まさかあいつは私の部下達を懐柔しようとしているのだろうか……。
だとしたら本当に恐ろしい奴だ。

とにかく春香達のリアルタイムでの情報が欲しい。
ピエモンはオペレータールームへと足を急がせた。

 ▼ ▼ ▼

「山の禁止エリアがどんどん解除されてます!」
「馬鹿野郎!今は山なんてどうでもいいだろうが!」
「あわわわわ、バトロワシステムが~~」
「はあはあ……マルクたん……はあはあ……うっ……」
「なんとかエコノミーモードで耐え凌ぐんだ!」
「アイスデビモン様なんとかしてえ~~~~」
「もういい!さっさと全参加者の首輪を爆破しちまえ!」
「あわわエコノミーモードにしても流星群止まりませんよ!」
「データ流出データ流出!」
「おのれカイバーマンめ~~~~」
「首輪の起爆コード何だっけ?」
「ふぅ……」
「そうだそうだもう爆破しちまえ!めんどくせえ!」
「賛成賛成!」


「いやそれは駄目なのサ。みんなもうちょっとクールにクールに」
マルクの一声によってカオスなオペレータールームが再び静まり返った。
「てめえらもっとしっかりしろォォォオォォオオ!!」
昔の血が騒ぐのだろう。コイヅカがいつもとは違う様子で、檄を飛ばしている。

ニコニコ流星群は完璧だった。
どう防御しようと、小さな小さな穴から次々とデータを盗まれ、システムを壊され、散々である。

「うぐっ!エコノミーモード崩壊!」
室長のビックマメモンが苦悶の声を上げる。

「しかしもう爆破しかありませんよ!常識的に考えて……」
「残念ながらそっちの方の対策も完璧みたいなのサ。そうでしょ?コイヅカ君」
「そうですね……実は何度か試してみたんですが……誰も爆破しません。
かなり強力な妨害をカイバーマンはしているようですね」

「爆破出来ないってやばくね?」
「爆破出来ないのは今だけですよ。もうすぐしたらこちらのシステムは回復するはずです。
ただその間に首輪のデータなんかを盗まれては目も当てられませんけどね」
「現状では盗まれる危険、大ありなのサ……」

「マルク様~~エコノミーモード崩壊しました~~~」
涙目になったビックマメモンがマルクの元へ現れる。
マルクはどうもこいつが苦手だった。性的な嫌らしい視線でマルクを舐めまわすように見るのだ。

「崩壊したらどうなるのサ」
「あ~今まではエコノミーモードでも参加者の強さを制限出来ていたのですが……
その制限が緩くなってしまったというか。
ああこちらはまだ会場全体にかけた制限があるのでまだなんとかなるんですが……」

「まずいですよマルクさん……生死の判別機能が曖昧になっています。」
ビックマメモンの代わりにコイヅカが言った。
「だったら何なのサ」
「分かりませんか?死人の首輪は機能停止するんですよ?」
「あ……!」
「そうです。運が良ければ、参加者達は簡単に首輪を外せてしまう、という事です」

「そこだけでも直さないと大変です!」
「だったらさっさと作業に戻るのサ!一々こっちに来るんじゃないのサ!この馬鹿っ!」
マルクに罵られたビックマメモンは一瞬だけ恍惚な表情を見せ、席へと戻って行った。

「くそうッッ!!」

このオペレータールームで今誰よりも怒っているのはおそらくコイヅカだろう。
当然と言えば当然。彼こそがこのデスゲームの黒幕であり、元凶なのだから。
彼の意思がなければ、バトルロワイアルは開催されなかったのだ。

悔しがるコイヅカをちらりと見て、マルクはほくそ笑む。

コイヅカ君にも対処出来ないみたいで安心したのサ。
現在、ニコ動にうpする動画、『ニコニコ動画バトルロワイアル』は対主催に向けて驀進中ってわけなのサ。
うんうんいいねえ。そっちの方が人気出るだろうしね。

こちら側にはアイスデビモン、ピエモン、ジアースとまだまだ戦力が残っている。
マーダー達もまだ生存中なのサ。視聴者好みの派手な展開がこれからも目白押し!
それでラスボスは当然ボクなのサ!いやあ面白くなってきた。監視班頑張れぇ~~

ん~それにしても生死の判別がつかない……か。
どうなるんだろうねえ……あいつらにはボクがお遊びで支給したアレがあるからなあ。
もしかしたら……とんでもない事になるかも。ま、別にいいけどね

 ▼ ▼ ▼
日は高く上り、時刻はまもなく正午に差し掛かろうとしている。
焼け野原での大乱闘。たった今、舞台に立っているのは四人。


「行くぞ古泉……」
博之は怨敵、古泉一樹を睨みつけた。
水銀燈はTASによって殺されたが、その背後にはハルヒが絡んでいたらしい。
そしてハルヒと古泉は仲間どおし。もはや博之には水銀燈の死と古泉の所為が無関係とは到底思えない。
ハルヒに指示を出した何者か、それは古泉と永琳に違いない。

ゆえに博之は気合を入れる。古泉には絶対負けない。
水銀燈の仇が目の前にいるのだ。

「来い!永井博之ッッ!!」
古泉は珍しく一喝する。普通に戦ってはまず勝てない相手。
死を覚悟しなければ。珍しく感情を露にし、雄叫びを上げる。

(先手必勝だ!)
古泉はスパイダーブレスレットから糸を発射する。しかし博之を捕らえる事は出来ない。
博之は翼を広げ、舞い上がる。空中ならば如何なる攻撃も当て難いと考えての行動だ。

(飛べたのか博之め!)

博之は目にも止まらぬ速さで古泉へと接近する。
古泉にしては身体能力の差がありすぎるので、なるべく離れて戦いたいところ。
しかし博之の接近を止める手段などない。

「くらえーーーーッ!」

博之は黒い羽を古泉に向けて放つ。思索に耽っていた古泉は、避けきれず足と腹に傷を受けた。
まずい……博之に近づかれては終わる。どうすれば……

その時、古泉に電流走る────

古泉は素早くゆめにっきを取り出し、博之に向けて掲げた。
博之にはもう種がばれている。当然の事ながら、博之は顔を背けゆめにっきの中に入り込まない。
しかし、古泉はにやりと口角を吊り上げた。

「元々本の中に消えてくれるとは思っていませんでしたよ……ですが……顔を背けましたね?」
「しまっ────!」

古泉は博之の一瞬の隙を突き、思い切り赤甲羅を投げる。
他所を向いていた博之はさすがに反応出来ない。顔面に思い切り甲羅を食らってしまった。
昏倒する博之。思わずデイパックを下に落としてしまった。

「あのジャンクの能力をわざわざ引き継ぐから痛い目見るんですよ!」

博之が空中で昏倒している間に、古泉はトカレフに残る全ての弾を撃ちまくる。
トカレフであるため、命中率は悪い。それでも何発かは博之に当たってくれた様だ。

古泉の追撃は止まらない。続いてスパイダーブレスレットで動きを封じる。
羽を縛られた博之は必死にもがき、糸を取ることが出来たが、そのタイムラグは致命的なものだった。
見ると、古泉がアイスソードを構えていた。剣先から吹雪が発射される。

博之は急いで回避運動に移る。しかしどうしても避けきれない。
吹雪に体を貫かれ、地面へと墜落していく。

(ふん……あの時の仕返し……今こそ!)

蘇る記憶。昨日の今ぐらいの時間帯。自分は永井博之からなんとも間抜けな敗北を味わった。
永琳には特に詳しく言っていなかったが、今までずっと恨みに思ってきたのだ。

博之が地面に落ちた。
(今こそ勝利の時!死ねえ!)
古泉は再びアイスソードの切っ先を博之に向ける。

「甘いわ古泉!コカローチ・ナイト召喚!」

吹雪を身に受け、もはやぼろぼろの状態。それでも生きる事を諦めない。
博之の前に、蟲野郎のモンスターが現れる。しかし悲しい事に出番は一瞬。
博之の盾となり、吹雪を全て受け止め絶命した。

(しまった!デイパックを落としたから油断してしまった!博之はどこだ!?)

「こっちやわ……」
「ぶっ!!」

古泉の頬を思い切り殴り飛ばす。当たりさえすれば勝負は博之のものだ。
地面にぶち倒され、古泉の意識が飛びかける。そこで一歩留まったのは、古泉の優勝への執念か。

「俺の勝ちじゃッ!」
「ふん!」

振り向き様に古泉は最後の甲羅を投げつける。甲羅は博之の顎にヒット、しかし、博之の拳もまた、
古泉の顎へ一直線に伸び──

「がっっ」

当たった。博之、古泉両名倒れるのはほぼ同時だった。



「ヲタチ!出てきなさい!」
永琳はモンスターボールを投げ、味方を増やす。
火力、スピード、耐久力、全てにおいて相手の方が上、支給品を駆使するしかない。
デーモンの炎によって、草原は燃え、今はほぼ焼け野原だ。
生物はいないだろう。これは幸運な事だ。閣下のエネルギードレインをある程度封じられる。

こんなところで死ぬわけにはいかない。偽善であろうと、みんな元通りにするんだ。

閣下は木刀を両手で握り締め、切っ先を永琳へと向ける。
KASが拾い上げてくれたこの命。私は全身全霊をもって戦う!

(あいつの体力吸収は脅威!)

(奴のデイパックは何だか臭うわ。まだまだ切り札を持っているような、そんな予感)

ゆらりと閣下が永琳へと一歩目を踏み出し、答えるかのように永琳も前へ。
一方は王者の剣。一方は最強の木刀。

除々に距離を縮めていき、ついに間合いがちりちりとぶつかりあう。
はたから見れば恐ろしい光景。互いの刀が届く範囲に、互いの首がある。
身体能力は閣下が上。それでも、剣の腕は永琳が一枚上手。

 …相手はきっと持久戦を仕掛けてくるはず

奇しくも互いの思考は全く同じ。
しかし、二人の個性は、次の瞬間繰り出される戦術に大きく反映される事となる。

  短期決戦!!

両者が共に剣を振るう。閣下は永琳の脳天目掛けて、永琳は横薙ぎ。
剣速は優に音速を超える。命を盗られるのはどちらか。

閣下の胸に何かが衝突し、シルバースキンが弾ける。ヲタチのでんこうせっかだ。
思わずバランスを崩す。しかし木刀は止まらない。否、止めるわけがない。

焼け野原に乾いた風切り音が響く。閣下のシルバースキンがさらに弾け、ついに出血する。
傷を負ったのは閣下だけではない。閣下は傷を負ったにも関わらず、剣を止めてはいない。

(私は!私は閣下なのよ!)

木刀は本来の狙いであった頭を外し、永琳の肩に当たる。
閣下はそのまま木刀によって永琳を地面に貼り付けにしてやろうと考えていたのだが、
永琳は倒れない。それどころか、こちらへとさらに迫ってくる。

(何か握ってる)

閣下は危機を感じ取り、木刀による第二撃目を放った。依然として狙いは頭。
永琳は閣下の二撃目を左腕で防御する。左肩が壊されたんだ。もう腕もいらない。
木刀が腕に当たり、骨が折れる音が響いた。

永琳は骨折の痛みも意に返さず、握り締めていた小型爆弾を先ほど開き、
まだ直りきっていないシルバースキンの穴へと押し付けた。

「ッ!?」
炸裂する爆弾。閣下の胸は爆ぜ、胸骨は折れ、内臓が飛び出す。
深刻なダメージだ。

(やったか!? ッ!?)
永琳に悪寒が走る。閣下の体はぐちゃぐちゃ。
しかし、それでも閣下の目は未だに死んでいない。

「う、がぁぁああッッ」
閣下はふらつきながらも、死に物狂いで永琳へ攻撃を仕掛ける。
木刀はついに永琳の脳天を捉え、噴水のように血を噴出した。

「そ、んな……馬鹿な事……」

永琳はふらりとし、地面に倒れた。意識が飛びそうだ。
自分の計画に狂いはなかった。シルバースキンを崩し、爆弾で止めを刺す。
その通りになるはずだった。それなのに……それなのに……

────化け物だ。
こいつは……本当に……

永琳はもはや恐怖に近い感情を抱きながら閣下を見上げた。
恐ろしい形相をしている。怒り、怒り、怒り。
これ以上ないほどの怒りに染まっている。

鬼だ────まるで……

閣下が木刀を掲げる。永琳は死を覚悟した。


しかし、その木刀が振り下ろされる事はなかった。
何かが閣下の防護服に当たる。銃弾だ。無論、それは簡単に弾かれ、閣下には傷一つ付ける事も出来なかった。

「ハァ……ハァ……」
閣下はゆっくりと銃弾が飛んできた方向を見つめる。

内臓が飛び出し、胸の辺りはもうぐちゃぐちゃ。痛いなんてものではない。
まるで高温で焼けた火箸を押し付けられているような激痛が休むことなく閣下を襲う。
周りにはもう生物が少ないので、エネルギードレインもあまり効を成していない。

それでも、それでも閣下は立ち止まろうとはしない。
今は全身を駆け巡る激情に身を任せておきたい。そんな気分だ。

「古泉……次はあんたの番よ……」

博之と並んで気絶寸前の古泉。
閣下に睨まれた古泉は、蛇に睨まれた蛙のごとく、硬直してしまった。
博之に殴られ、意識は朦朧としている。アイスソードを握り、立ち上がろうとしたが、古泉は大きくふらつき顔から倒れた。

(ここまでか……)

目の前の女は自分と同じく瀕死だ。しかし彼女は人間ではない。
人間などとうの昔に超越してしまっている。
閣下は一歩また一歩と古泉へと迫る。

そこへ──何者かが現れる。

(ああ涼宮さんやってくれたか……デーモンなら間違いなく勝てる。
今回ばかりはあの女に感謝しないといけないかもしれません)

しかし、登場したのはデーモンではなく────ハルヒだった。

「ふふ……あんたとまた会えるなんて嬉しいわ」
「けひひ、死ぬのがそんなに嬉しいのかしら?」

余裕の表情でにやにやと笑うハルヒを見て古泉は思った。

(お……オワタorz)



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sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) 投下順 sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) 八意永琳 sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) 古泉一樹 sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) チューモン sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) 涼宮ハルヒ sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) 天海春香 sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) 永井博之 sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) KAS sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) ピエモン sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) マルク sm204:ラストバトル 閣下VS神
sm204:D-2草原大炎上戦(中篇) コイヅカ sm204:ラストバトル 閣下VS神



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