※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

クッパ城で会った怖いマルクに屈しない ◆wC9C3Zbq2k




 オペレータールーム。
 マルクはパタが捕捉していた放送直前の遊戯たちの録画映像を見てつぶやく。
「ん~、遊戯くんは裏切ってくれそうにないね。せっかく身体を乗っ取る亡霊なんて入ってない同じ形のきれいなパズルをあげようと思ってたのに」
「いや、詐欺だろそれは」
「そうだ! キミにもあれをプレゼントしてあげないとね」

 マルクが部下に取ってこさせた参加者用の首輪を拘束されたままのKASに再度着けようとし、ついでに見栄えの悪くなった彼の迷彩服は破き捨てる。
少女の透き通った肌がKASの眼前に迫ったとき、彼はそれがマルクであると理解してはいても紅潮しそうになる顔を逸らさずにはいられなかった。

「酷いことしてるんだから照れなくてもいいのさ。この首輪は博麗の巫女がボクと戦わずにキミだけさらっていったりしないための脅しだからね」
「マリオがクッパを無視してピーチ姫だけ奪い返すようなもんか。レムーならやりかねないな」
「自分を姫扱いだなんていい度胸だね。その言い方だと、助けに来てくれることは信じてるみたいだけど……気付いてるんでしょ? 彼女が見た目よりずっと非情だってこと」 

 疲れてきたとみたマルクがKASの精神面を揺さぶる。
知り合ったばかりの相手を助けるために罠に飛び込んでくるほど彼女は愚かなのか。周りにいる人間はそんな危険な行動を止めようとするのではないか。そもそもお前は助けに来てもらえるだけの価値のある人間なのか。
だが、KASはゆっくりと答える。

「来るさ」
「根拠のない自信はみっともないのさ。信じられなくて不安なんだろう? なにせ来てくれなきゃ人質の意味もなくなるものね! キャハハハハ!」
 マルクの言葉を遮りながら、KASは続ける。
「あいつはお前を倒すって決めたはずだ。どんな罠だろうと仲間だろうと、レムーを止めきれるはずがない」
「仲間でも止められないって……ただの暴走?」
「何とでも言え。このリボンの持ち主は、俺以上に自重しないから」

 マルクはそれっきり口を閉じたKASに不満を持ちながらも、同時に感心する。
確かに霊夢はこちらへ来るだろう。時々吹っ切れたようなそぶりも見せていたが、それはあくまで記憶通りの奔放な振る舞いを真似しているだけ。彼女が本来の状態に戻ることはない。
結界で全員に「高速飛行」を禁止しているため、彼女の基本特性である「空を飛ぶ程度の能力=何事にも束縛されない存在であること」にも今まで見てきた限り確実に影響が出ているのだ。
だから今までの経緯から見ても彼女は仲間が全力で引き止めでもしない限り救出に動くはず。
他に結界に手出しできそうな参加者はいない上に最高の弾幕ごっこが楽しめる。マルクにとってはいいことずくめのはずなのだが……何故だか不安がよぎった。
その苛立ちは拘束されたままのKASへとぶつける。

「人質が余裕ぶるのは気に食わないな。巫女の死体を見れば考えも変わるかな?」
「……弾幕『ごっこ』じゃなかったっけオイ? それに主催者がその気なら最初から全員殺せたっていう」
「あのときと違って、今やボクも飛び入り参加者の一員。このまま撃破数ゼロじゃ格好がつかないのサ。殺す気でやらないと能力制限のほとんどない彼女に勝つのは難しそうな雰囲気だしね」

 来てくれるという確信はあっても、KAS自身が目の前の少女に敗北している以上根拠もなく霊夢なら必ず勝てると信じ切ることはさすがにできない。それでも不安をを振り払うかのように反論する。

「レムーなめてると虫歯になるぜマルキュー」
「⑨扱いしないでもらえる?」
「俺たちは……元の世界に帰るんだ! お前たちを倒してな!」
「ふーん」

 沈黙ののち、マルクは告げた。
「元の世界に帰りたいなら、ボクたちだけじゃなく全員殺すべきじゃない?」

 嘲笑うかと思っていたマルクがおかしな返答をしたのでKASは戸惑う。
「ノヴァは現在進行形で『バトルロワイアル』を実行しているから、他の願いは受け付けないはずなのサ。いまさら壊して回っても元の世界に戻れなくなるだけだよ?」
「えっと……すまん。言っていることがよくわからない」
「なーんだ。ギャラクティックノヴァのことも知らなかったんだ」

 大雑把にマルクはKASにニコロワのシステムを説明する。
次第にKASの常に能天気だった顔が険しくなり始める。元が単純なだけにマルクも注視していなければ気付けなかっただろう。

「優勝した奴だけが元いた世界に戻れる……!?」
 最初から説明されていた当たり前のことなのに、KASは驚きを隠さない。やっぱりこいつはバカなのだろうかとマルクは今更のように思った。
「ここからの脱出は不可能ではないけれど、生き残った中でこの平行世界に居場所があるのはカービィとボクと……あと一部のデジモンたちだけだね。
仲間も含めて皆殺しにすれば元の世界に帰れるし願いも叶うけど、主催を倒しただけで何かが変わるものでもないのサ」

 首輪が外されて以降主催者が乱入しだしたことでもわかるでしょと屈託のない笑みで告げるマルク。
確かに戦場に姿を現すくらいなのだから殺し合いの中で全員死亡する可能性はある。だが本当に全滅させても終わらないなどとはKASも思っていなかった。
ニヤニヤとこちらの動揺を窺う少女の姿にKASは精一杯の反抗をする。

「地球によく似た星で暮らさなきゃいけなくなるのか。これがほんとの開拓者精神」
「うわっ、順応性高ッ! 気に入ったよ」

 KASは言えなかった。外部からの助けさえ来れば元の世界に戻れるんじゃないかと。
聞くのが怖かったのだ。あらゆる生還の可能性が主催との対話で全て霧散してしまいそうなこの流れが。だからせめていつも通り強気に振る舞う。
胸の核鉄が己を生かし続ける限り、決して諦めてはいけないのだから。

「腋巫女をやっつけたら人質の役目は終わるわけだから、無造作に殺すのも盛り上がりに欠けるしキミは開放してあげるよ。
折角の三国志なんだからゲームに乗るなり孟獲みたいに七回くらい立ち向かってくるなりすればいいのサ」

「レムーは俺と帽子を交換した仲だぜ! 例えるならなの×フェ! 颯爽と登場して、お前なんかケチョンケチョンにしてくれるに決まってる!」
「……なんだか、いいライバルになれそうな気がしてきたよ。ボクを倒すのは霊夢じゃなくキミかもね」
「奇遇だな。てめーは俺が倒さなきゃいけない相手だった気がしてきたよ。レディーファーストでレムーに譲るからしょうがないけどな!」
「おっほっほっ。負けて拘束されている人間が言うことじゃないよそれ!」

 ひとしきり笑ったあと、マルクは時計を見て言った。
「さて、ボクは今日は食堂で夕食にするつもりだからしばらく席を外すのサ。……ってあれ? なんだろうね」
 オペレータールームの出口奥に見張りのデジモンたちが立ち、道を片方塞いでいる。マルクは気になってそちらへ歩いていった。

「お前たち何をしているのかな? 日替わり定食のあんかけチャーハンが楽しみなのはみんな同じなんだから、道は開けておいてもらわないと」
「くっ……。しかしマルクたんの願いであっても俺たちには退くわけにはいかない理由があるんッス!」「そうッス!」
「言ってごらんよ。つまらない理由だったら通常弾幕が降り注ぐだろうけど」
「禁則事項で」

ピチューン

「うう……マルクたんの愛の鞭は手加減されてても痛すぎるッス……」
 平然と踏み越えてマルクは行く。邪魔だったのと、なんとなくそのほうが喜びそうな気もしたので。振り返ると案の定踏みつけたデジモンの顔は緩んでいる。

「ずいぶんと向こうが騒がしいよね。連中はサボって何をしているのサ?」
「あくまでたとえ話ですけどね。突然空から美少女が降ってきたらマルクたんならどうします?」
「ギャルゲーのプレイ動画を見すぎたんだなと思ってネットの時間を制限するよ」
「そんな……」

 聞きだそうとしてもらちがあかない。ならば直接怒鳴りつけにいくまでだ。
食堂への少しずつ喧騒の強まる道をマルクは急いだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「ぽよ。これもおいしい」
 一目惚れした大勢のファンによって医務室に運ばれたはずのカービィだったが、腕の欠損も胸元の痕も傷としては既にほぼ完全に塞がっていた。
お医者さんごっこを期待していた取り巻きも全身にあったスリ傷の治療でしみる消毒に涙目になるその姿だけで充分満足し、くぅと鳴った彼女のおなかを満足させるために食堂へと連れて行ったのであるが……

 その食堂で、いま伝説が生まれようとしていた。

「なあ、誰かあの子の名前聞いたのかよ。紳士の社交場なのに名前で呼べないとか」
「未だに教えてくれないんだよ。妹にしたいほどのかわいさで名前が内緒だから内緒妹でよくね?」
「いやいや、俺は隻腕の美少女だからアームちゃんと呼びたいね」
「あむちゃんか。それいいな! ピンク髪だし俺の美希がおにぎり食べるときの擬音だし。それにしても、あんなに嬉しそうにパクパクしてたら奢るしかないじゃないか……」

 女の子には甘いものということで最初にゆとり達が注文したデザートを瞬殺し、だったらこれもいけるんじゃないかと冗談で誰かが言い出した特別メニュー『あんこ入りパスタライス』も片腕で難なくたいらげる。
右腕だけを駆使し、奢られたメニューを全て制覇しようかという勢いで食べ続ける彼女は、その気持ちのいい食べっぷりでどんどんギャラリーを増やしていた。

「出たぁー! あむちゃんの1秒間に10個ハンバーガー踊り食い!」
「すげぇよこれ。みんなにも召集かけてやらねーと……片腕だけが目で追えない速さで動いてるとかどんだけだよ」
「早食いなのに優雅ささえ感じるほどに自然体だな。追いつく量作ってる料理長もすげえし、奢る俺たちは超ヤベェ!」

 ゲロッパうどんをすすりあげ、照り鶏にかぶりつき、もやし炒めやテラ豚丼を豪快に減らしてゆく。人間形態でも箸を持たせればこれくらい何のことはない。
カービィにとって通常量の食事をとることができたのはここへ来てから初日の早朝のみ。あのときの杏仁豆腐はおいしかったなぁと思いながら彼女は今までのことに思いをはせる。

 みおん・谷口・いさ・アリス・ぴこ。ほかにもいっぱい。ここに来てから出会った優しいともだち。
なのにみんな戦いの中に巻き込まれ、既に何人もが帰らぬ人となった。記憶が戻った今、マルクをよく知っている自分こそが元凶である奴を倒さなければいけない。
そろそろまた放送のあるころだろうか。それとももう済んでいるころだろうか。今いるこの場所からではよくわからない。
ただ、これだけはわかる。この殺し合いを一刻も早く止めないといけない。

 前人未到間違いなしの大食い記録に驚く観衆を気にも留めず、椅子から立ち上がる。
「そうだよ。マルクはどこっ!」
「呼んだかな?」
 叫んだすぐその先、正面入口に悪魔の道化となった少女は立っていた。

「お前たち、十数人もが集まって何をしているかと思えば……仕事をサボって見かけない女の子とデートごっこを楽しんでたわけだ。
もし侵入者が忍び込んできたら手厚く歓迎してやれと言ってたかもしれないけど、そういう意味じゃないよ? 死にたいの?」
「ひいっ!」
 酷薄な笑みを傍のデジモンに向けながらマルクはカービィに目をやる。

「ノヴァの外から来たのかな? ボクの名前をどこで知ったかは知らないけど、招かれざる客人は排除させてもらわないとね」
「?」
 萌えもんパッチのバージョンが違うせいで外見も以前とは異なっていることと、マルクがカービィを完全に死亡したものと思っていたために生じた齟齬。
このときもし彼女こそが怨敵のカービィであると気付いていれば、マルクは放送結果を正当化する名目で容赦のない虐殺を行っていたことだろう。

「マルクたん勘弁してあげてください! この子は片腕を失ってるかわいそうな美少女なんです!」
「それを言うならボクだってフランちゃんの姿じゃなければ両手なんてついてないよ? でもまあ食堂で殺人は両方の意味で後味が悪いから命までは取らないのサ」
 騒動の大きさに厨房からコックたちまで顔を出している。ここで血なまぐさいことをする気はマルクにもなかった。

「マルク! 殺し合いをやめさせるんだ!」
 対してカービィは非常にやる気だった。一度は倒した相手である。今戦っても負けるとは思っていない。
一触即発の雰囲気を察してマルクは食堂にいる部下たちを下がらせた。

「この侵入者、ボクのことをなめすぎだよね。殺さない程度にここでやらせてもらうよ」
「俺達はマルクたんに従いますっ! 頑張ってマルクたん!」
「どうしちまったんだ同僚! マルクたんもいいけどあの子も違う良さがあるってさっきまで言ってたじゃないか!」
「うるせー! かわいいが正義は基本原則なんだから勝った方に萌えればいいんだよ!」
「なんだとー! どっちつかずのペド野郎が! 俺はこっちの子を応援するぜ!」
「俺もだ! ふくらみはないのにそれでいて柔らかそうなとことかたまんねぇ!」

 口喧嘩を始める部下の醜態を呆れた顔で見つめたのち、マルクはカービィへ向き直る。
「やれやれ……これだからゆとりは。待たせたね。そうまで言うなら気の済むまでやってあげようじゃないか」
 大気が軋みをあげるほどの急激な魔力開放。決して低くなかったマルクの魔力はパッチで妹様と化したことによる器の増大で以前より遥かに強まっている。
カービィも急いでコピー能力のファイアを撃てるよう準備を整えた。外見も美少女がマリオ3のファイアマリオになったような色合いへと変わる。

「せっかくだから弾幕の練習台になってもらうよ。キャハハハハ!」
 狭い室内にいきなり四方向に弧状のカッターを飛ばしてくるマルク。長机が吹き飛び、または空中へ至る前に両断され、カッター本体をかわしきったカービィに降り注ぐ。
迎撃も考えたがファイアの威力では破片を瞬時に燃やし尽くすには至らない。これでは明らかに不利。カービィは潔くコピー能力をファイターに切り替える。

「また色が変わった!? 何なのサこいつは!」
「せいやあっ!」
 跳び蹴りで距離を詰めると同時にその一撃を少女マルクの鳩尾に叩き込む。
ここから相手に反撃できる機会を与えないよう連係を決めればマルクといえど降参せざるを得ないだろう。
魔法使いは魔法に長けているがゆえに怪物化でもしない限り身体能力は決して高くない。
が、そんなカービィの目論見はあっさりと崩れ去った。二撃目は衝撃波に弾かれる。

「やるじゃないか。スペルカード発動~氷棺『ヴァニラ・アイス』だよ♪」
 マルクがそう告げて衝撃波の発生源かと思われる何かの札をかざした途端、見覚えのある複数の黒い球が少量のばらまき型魔力弾とともに眼前に現れた。
これは昔戦ったときにも怪物化したマルクが吐き出してきたものだ。強烈な衝撃波を発生させる爆弾。名前から察するに氷結弾なのだろうか。とにかく吸い込める。
隙はあるのだが食堂という狭い場所では再度接近戦に持ち込むのは難しい。ならばいっそここは元の姿に戻って吸うべきか。
カービィがそう決めて駆け出した途端、ひどい悪寒がした。寸前でパッチを吐き出すことをやめ緊急停止を優先させる。

 ガ オ ン

 目の前を通り過ぎた黒い球が、食堂の壁を凍らせることなくそのまま消失させていった。
「うまくよけるね。カービィを騙せるよう開発した弾幕なんだけど、元を知らないと普通にかわせちゃうのかな? あいつはコイヅカ君が片付けてくれたし。ほっほっほっ」

 カービィは愕然とする。力量差がありすぎる。
以前なら強敵だとは思っても勝てないだなんて思うことはなかった。だけど今のマルクにはこのままの自分では到底敵わない。この時点ですでに手加減されているのだ。
この狭い空間ならマルクが黒い球を出した後変身して突風を放っていれば間違いなく自分は殺されていた。わかってしまったがゆえに、寒気が走る。

「さあ、次は初見殺しを試してみようか。かわいい女の子を嬲るのは楽しいけど殺したいわけじゃないから、直撃しないよう努力してほしいな!」

 マルクが先程とは違う色の札を掲げようとしていた。
カービィもより厳しい攻撃を予測し、本来のデラックス能力ではないハイリスクな手段に賭けることにする。城で日吉と亜美が特訓するのを眺め続けていたからこそ、今この場でもできると信じたい。

「ペイントっ!」

 夕闇のキャンバスにはワインレッドの夕日を。紅き悪魔の道化には緋の呪印を。
片腕しかないこの身で狙い通りに描く困難さは、日吉の踊るような動きが解決してくれた。
見よう見まねのボブ術。アフロの西洋人を開祖とする一切の無駄を省いた塗りの手法がマルクのその身を染める。
これさえ決まればマルクだって紋様の効果で魔法が使いにくくなるはず。そう思ってカービィがやりとげた表情で顔を上げると、

「スペルカード発動~鋒矢『ヴィゾフニルの尾羽』♪」

 大量に現れた白い魔力の矢が、横殴り気味に全て己の身を目掛けて降り注ごうとしているところだった。
武術を見て美術を学んだつもりになるのは愚かなことだったのかという後悔の中、カービィは無数の矢に全身を貫かれ、

 気を失った。

「ぺっ。何だこれ油絵の具じゃないか。シャワー浴びたくらいじゃ取れないかも。ひどい攻撃だね」
 意識もなくただ横たわる傷だらけの少女カービィを見下ろしながらマルクはそうつぶやき、避難していたギャラリーを呼び戻す。
「おーいお前たち。終わったから出てきな」

 その大声で勝負がついたと理解した部下のデジモンたちが破壊された椅子や壁の跡に脅えながら戻ってきた。
「あむちゃん負けたの? 非殺傷設定っぽいけど気絶させて陵辱展開?」
「それにしてもひどく壊しましたねー。これじゃあ厨房は使えても食堂は使用不可にするしかありませんよ」
「冷凍庫のハーゲンダッツさえ残っていれば食堂が使えなくとも俺はまだまだ戦えるね!」
「あ、ゴメン。それなら俺が食った」
「んだと!? たとえ親方でもあんただけは許せねぇー!」

 あいもかわらず統率も何もあったものではない。これ以上粛清してもどうにもなりそうにないので、見た目からして良識がありそうなコック帽をかぶったべジーモンにマルクは声をかける。
「お前は赤くないんだな。厨房係なのに悪いけど、この子を治療はしなくていいからハルバード内にある脱出ポッドに載せて宇宙へ送ってやってくれないかな?」
「かしこまりました。惚れ惚れするほどの大食いを見せてくれた方ですから、命令に逆らうようで申し訳ないのですが治療だけさせてもらってから送らせて頂きます」
「そうしたいならそうすればいいよ。ボクは参加者でもない雑魚に構ってる暇なんてないからさ。ほら、来てくれる巫女に出すお茶もいいのを選ばなきゃいけないし」

 マルクはそう言い終えると、自らが暴れたことによって無残な姿を晒している食堂内を見回す。
(……やりすぎちゃったね。ボロボロだ)
 これではしれっとあんかけチャーハンを注文するのがためらわれるどころか、この先多くの部下が食事をする場所に困るに違いない。

「いいなーべジーモン。合法的に少女を密室に連れ込めるんだぜ?」
「そっかー脱出ポッドは密室だもんなー。何でもできるよなー」

 思い直す。気にする必要はなかった。こんなにもサボり魔が群れられるほど人手は余っている。これでどうして見張りやシステム管理がいっぱいいっぱいなのだろうと思うほどに。
半数が交代から戻ってきた見張りだとしても、残り半数の説明がつかない。ほんとなんなんだろうこいつらは。

「そこの仕事をサボってた十数名は全員ここの片付けが終わるまで夕食禁止なのサ! 椅子や机はもう使ってない一番奥の会議室から持ってくること。ほらさっさと動く!」
「ちぇー。マルクたんが負けてればよかったのに」
 マルクが指示を出すとようやくとろとろと動き出すデジモンたち。面と向かってピエモンに人選について文句を言うつもりはないが、ゆとりが多すぎるのは困るとマルクは思った。

「じゃあボクはオペレータールームに戻るよ。冷蔵庫からおやつだけもらっておいたからね」

 そう言い残してマルクは食堂から消えた。
残ったのは厨房係のベジーモンと傷だらけの少女、そして大量のロリコ…デジモン達。

「う、うぅ……」
「あれ? この子ひょっとして目を覚ますんじゃね?」
「まだ触り心地も確かめてないのに?」
「あなたたちはどいてて下さい! 色々と有害です! さあ復旧作業に戻って戻って!」

 マルクに信頼されたという自負のあるべジーモンがゆとりデジモンどもを押しのける。
軽く意識が飛んでいたカービィが目を開けて最初に見たものは、彼の白いコック帽。
「えっと……マルクは?」
「あなたはマルク様に負けたんです。命を取ったりはしませんが、これから傷の治療だけして宇宙漂流刑を受けてもらうことになります。けっこう生存率は高いそうですが……」

 いやだ。カービィは思った。
ここで宇宙の外へ放り出されたら今は平気でもたぶん餓死してしまう。
ひょっとしたら運の良さには定評があるから生き残ることができるかもしれない。
でも、そのかわりに、みんなを助けることも、マルクと決着をつけることも、きっとなにもかも二度とできなくなってしまう。そして大切な友達がみんな殺されてしまう。
けれど全身を射られ体はもうほとんどいうことを聞いてくれない。久々に美味しいものをあんなに食べたのに、この体はまだ食べ足りないとでもいうのだろうか。
……いや、その通りだ。

 まだ手はあった。しかし、それは最低の手段ともいってよかった。
「ゲハッ。ケホッ、ケホケホッ」
「大丈夫ですか?」
 ベジーモンが急に背を丸めて咳き込み始めたカービィを心配する。彼が背を撫でたおかげで彼女の咳は収まり、直後割れたCDが口から吐き出された。
未発達の幼い少女の身体だったその容姿が、さらに小さくなってゆく。

「え、ええっ! お前は!?」
 カービィは元の大きさに戻り、自らの倍以上の大きさはあるベジーモンの顎に一撃入れて無理やり吸い込んだ。そのまま彼の存在を自分の力に変換してコピー能力を発動させる。
 同時に周りにいた全てのデジモン―――いわゆる雑魚敵。そう思いたかった。
けれど違うと理解していた。偽りの姿とはいえ自分を愛してくれていた、そんな心優しきロリコンたちが、巨大な大鍋の中に次々と吸い込まれていく。

「あむちゃん大丈……!? カー」「うるさいなぁベジー」「ニャーニャー」「す、吸い寄せられっ」「片付け手伝えよおま」「何が起こっ」「うわぁああああ」

 彼らは全て、『コック』の能力で体力回復のための食料へと変わるのだ。

 カービィは断末魔の叫びがいつまでも聞こえてくる気がして目を閉じる。
彼らは主催者の部下だったというだけで決して敵対する存在ではなかったというのに。
それでも、自らの意思で殺した。完全回復するためだけにみんな殺した。

「つみはぜんぶ背負うよ。許してほしいなんて、いわない」
 もうぽよぽよ言っていた過去の自分ではない。
 何をしてでもマルクを止めたかった。間違った選択だったかもしれない。けれど、ここで立ち止まっては全てが無駄になってしまう。
今のままでは奴には勝てない。誰かと協力した上で、より強いコピー能力も入手しないといけない。
仲間の力と幻想級の能力をコピーできる機会があればきっと今のマルクとも渡り合えるはずだ。
そう信じてカービィは人の気配のしなくなったボロボロの食堂を飛び出し、城内を往く。
未だここがどこなのかも正しく理解しないまま……。


【クッパ城/二日目・夜】
【カービィ@星のカービィ】
[状態]:元のピンク玉、左腕喪失、胸部から腹部?にかけて傷痕、体力全快
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料全消費)、土鍋@ねこ鍋
[思考・状況]
1.マルクを倒すために、仲間と合流したい
2.マルクを倒せる武器か能力を探し出す

※第七回放送を聞いていません
※カービィ派の下っ端デジモンはほぼ全員が「行方不明」になりました。
 このため深刻な人手不足が発生するはずです
※銀河に願いをの記憶を取り戻し、五つのコピー能力が自由に使えるようになりました。
 うちストーン・ファイア・ファイターが判明済み。ペイントはデラックス能力ではなく習得していた使い捨て技能なので含まれないはずです
※若干、知能がアップしたような気がしない事もないです。
※ねこ鍋の中にいた 猫がどうなったか は想像にお任せします


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「ただいまー。早速で悪いけど霊夢は来そうかな? まだならレヴァンテインの行方を調べてほしいのサ」
 食堂から帰ってきたマルクを見てオペレーターたちは仰天した。

「どうしたんですか! 血まみれじゃないですか!?」
 ペイントされたせいでそう見えてしまうだけなのだが、鮮血の似合う外見なだけに初見でこれを塗料とと見抜ける人間はそうはいない。
「会場外から変な子が紛れ込んできててて、絵の具で攻撃されちゃったのサ。でもおかげで弾幕ごっこで本番さながらのウォームアップができたよ」

 しれっと戦闘してきたというマルクに周囲がたじろぐが、当人は気にしない。
「やっぱりフランちゃんならレーヴァテインが必要だね。ないものねだりはいけないと思って魔法の矢の弾幕を尾羽に見立てたけど、イマイチだったのサ」
「魔法とかずるいよな。矢はちゃんと弓で撃つもんだ」
 KASがつっこむ。が、マルクも即座に言い返す。
「剣でもあり弓でもあるあのデバイスなら両方使えてぴったりだね! 壊れてないといいなー」

 そう言いながら椅子に座ろうとし、絵の具を浴びたことを思い出してとりやめる。
「おっと、シャワー浴びてこないと汚れちゃってたね。KASも一緒に入るかい? 拘束がきつすぎて身動き取れないだろうから代わりに洗ってあげるよ?」
「な、なんだってー!」

 オペレーターたちの嫉妬の混ざった怒声が響く。当のKASはといえばそんなことはどうでもいいというかのように平然とマルクに質問した。
「なあ……なんで主催者なのに自分の命まで賭けるんだ? 怖くないのか?」
「そのほうが楽しいと思ったからサ。死って怖くなくちゃダメなの?」
「そか。風呂なら一人で行ってくれ」
 何か思うところがあったのか、KASは目を閉じ考え事を始める。

 マルクも楽しいことができなくなる死が全く怖くないわけではない。
溶岩に落とされようと何をされようと次回作にはちゃんと出てくるクッパを見習って城での戦闘には一応の保険もかけてある。
けれど、言ったことも本音だった。楽しそうなことならせずにいられるはずがない。
ロワを盛り上げながら遂行することだけが目的なら殺し合いに乗らず主催に反逆しようとする危険な参加者の行動を見逃し続ける必要などないのだ。
優勝者が出ない流れになるようならラスボスになると決めていたからこそ、殺し合いに向かない脱出用アイテムも用意したし、首輪の爆破命令は度を過ぎていると思われる場面でもしなかった。
どうすれば面白い動画になるかと考えた結果、基準が自分だから自然とそうなってしまったのだ。
もう終盤。派手な最終戦でニコニコオールスター仲間入りを目指せるだけの面白さにできるよう、あと少し頑張らなければいけない。

「ボクすら楽しませられないようなら、その罰は全滅だからね! ほっほっほっほっほ!」

【クッパ城オペレータールーム/二日目・夜】
【マルク@星のカービィ】
[状態]:体の複数箇所打撲(ほぼ回復)、悪魔の道化、絵の具の赤で染められた
[装備]:萌えもんアカギパッチ@萌えっ娘もんすたぁ
[道具]:超進化プラグインS*4@デジタルモンスター
[思考・状況]
基本:自分の楽しみのため、オールスター入りを果たすため、なんとしてもバトロワを完遂させる。
1:まずはシャワー! 覗いたらメッなのサ
2:なんか妙な事になっちゃったけど、まあいいや。レバ剣あたりを手に入れて今後のために弾幕を改良していく
3:KASを人質にして霊夢を連れてこさせ、ラスボス戦に相応しい超弾幕バトルを繰り広げる。
4:三国志状態ももう終わるかな? ラスボスとして準備を始める。 ラスボスを他の奴に譲るつもりはない。
5:遊戯を言葉巧みに騙し、仲間に引き入れたかった。惜しいなぁ
6:ピエモン無事かなあ
※涼宮ハルヒ、永井博之、カービィの三人は死んだと勘違いしています
※霊夢の性格に制限が効いているという推測はどうやらハズレのようです
※レヴァンテインが散ったことをまだ知りません
※クッパ城内部でのマルクの評価がさらに高まりました。カービィ派のデジモンはもうほとんどいません。
これによりクッパ城内部のデジモンはマルクの命令を優先します。マルク>ピエモン
※城の結界の一部に損傷があったようです。現在ビッグマメモンが修復中です。
※ピエモン支援隊がクッパ城を出発し、ピエモンの元へ向かっています


【KAS@KAS動画】
[状態]:拘束、首輪装着、重傷(若干回復)、右拳骨にヒビ、お尻に火傷、チビマリオ、知恵熱
[装備]:シルバースキン@真赤な誓い、洞爺湖の木刀@銀魂、レムーのリボン(バンダナ)、首輪探知機(残り電池80%)@バトルロワイヤル、M1911A1@MGS3残り弾数(7/7)
[道具]:
[思考・状況]
1.やっぱり暇だ…………
2.この状況を打開したい。このままじゃ一人でトイレにも行けねー
3.このクソゲーをぶち壊してこいつを土下座させても、悪い奴以外全員生き返らせたりはできないってことなのか? うーん……わからん
4.レムーはきっとみんなと来てくれる! というかはやく来て!
5.閣下の分も生きる。絶対に生き残る
6.あのカード、どこ行ったんだろ?  
7.笛が気になる。 あれがもう一本あればボスの所まで行けるはず……って既にここじゃねーか!
8.なんであんな所に孔明の罠があったんだ?

※ニコニコ動画に関する記憶が完全に戻りました。
※涼宮ハルヒ、永井博之、カービィの三人が死んだと勘違いしています。



sm218:神様ゲーム 時系列順 sm220:えーりんと闇AIBOに死ぬほど言葉攻めされて涙目なピエモンB(前編)
sm218:神様ゲーム 投下順 sm220:えーりんと闇AIBOに死ぬほど言葉攻めされて涙目なピエモンB(前編)
sm215:THE 最終局面(後) カービィ sm224:カービィのキャッスルトライアル
sm216:第七回定時放送 マルク sm222:伝説のパソコンハッキング~裸間撮影、パシャ☆
sm216:第七回定時放送 KAS sm222:伝説のパソコンハッキング~裸間撮影、パシャ☆



|