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終端の王と異世界の騎士 ◆wC9C3Zbq2k





「小悪党マルクに神の鉄槌を下すときがきたようね。位置は特定できたわ!」

オペレーターを喰らったことで知りもしなかったコンピュータの内容が理解できる。
ついでに面白そうなものも見つける。ハルヒの上機嫌は治まるところを知らない。
見つけたマルクの所在とは異なる方向へ歩き出そうとするハルヒにセイバーが問いかけた。

「どちらへ行かれるのですか」
「画面のここの部屋に宝箱があったのよ。行かないわけにはいかないじゃない。
中身はとてもきれいな…虹のしずくっていうの? マルクの背中の羽根に似てたわ。そういうアクセサリね」

水銀燈の翼はいいがデーモンの無骨な黒翼は見栄えが悪いためそれを装身具として身に付けたいのだとハルヒは語る。颯爽かつ華麗に登場してこそ神なのだと。
セイバーの感覚でいえば今のハルヒの格好はオシャレ以前の問題なのだが、本人が裸マントを問題だと思っていない以上それはただの文化の違いなのだろう。
従者はとやかく言うべきではない。そう判断して多くの言葉を飲み込む。

「お供します」
「美しさは罪っていうけど、そんなことが罪であるもんですか! 女装した化け物なんかに神が劣る点があっちゃいけないのよ」
上機嫌のハルヒは語る。

もちろんそのアクセサリ、ハルヒやマルクが装備するためのものではない。
それどころかドラグーン(乗り物)の一部なのだが、あまりに幻想的かつ人の基準からみて小さすぎるため彼女が必然的にそれを曲解したというだけのことだ。
格納庫の方向へ軽く浮きながら二人は向かう。

「それからアル…なんだっけ、あんたの名前」
「私は貴女の一介の駒に過ぎぬ存在。役割としての名であるセイバーで結構です」
「セイバー、あとどれくらい実体化できるの?」

召喚したモンスターの有効期限はどこにも書かれていなかった。
ハルヒの予想では長くて六時間、短ければそろそろ消滅するころ。
思っていたより強いことがわかったのでできれば最後まで有効に使いたい。

「申し訳ありません。残された時間はあと僅かです」
「だめよ。あんたには参加者のゴミどもを掃除してもらうつもりなんだから。
デジヴァイスだって光ってるわ。この勇気のタグ? とかいうので進化してもう少し持たせなさい」

そう言った途端黒い光がセイバーを包む。外見の変化は見受けられなかったが、身体が甲冑ごと軽くなっていることには気付いた。
本当に進化したらしい。セイバーは驚いたようにハルヒを注視する。

「これでやれるわね。格納庫にいる連中の皆殺し、任せて大丈夫かしら」
「相手が人間であれば、何人であろうと遅れをとることはないでしょう。英霊とはそういった存在です」

自信ありげなその答えにハルヒは満足する。モンスターにしておくのが惜しいほど忠実ではないかと。時間内に片がつくのなら単騎で殲滅してもらおう。
格納庫の入口で立ち止まり、ハルヒは言い放つ。

「遠くに見えるあの集団がそうよ。食べたい気持ちもあるけれどさっきちょっと食べ過ぎたし、全員価値もないただの人間だから好きなように殺してかまわないわ。きひゃひゃっ!
とりあえず先に半殺しにしておいてあげる。あたしはこれを撃ち終えたら例のアクセサリを拾いに行くから。つまりここで一旦お別れね」
「かしこまりました。マイマスター」

ハルヒが目を閉じ、声がブラックナイトマジシャンガールの野太いものへと切り替わる。能力を本気で使うために支配下に置いた存在を表層へ出したらしい。

「セイバー覚えておけ。神の崇高な理念を解さぬものは、いつか必ずこうして葬り去られるということを。アルカス・クルタス・エイギアス、煌きたる天神よ―――」

ラテン語と日本語の入り混じった詠唱によって、格納庫の天井に巨大な光の魔方陣が形作られる。その文字が示すものは、豪雷。

「サンダーフォールッ!」
幾本もの雷の柱が、少年少女の下に降り注いだ。



レナたちによるハルバード内部の探索の結果は上々といえた。
マルクはこれほどのものを密かに建造していたのかと憤慨していたピエモンが、これならプロテクトを解除するだけで操縦でき、かつ皆を元の世界に送り届けることができるはずだという結論を出したのである。
そしてその問題は、主要プロテクトのすでに外されたnice boat.のメインコンピュータで代用すれば解決可能なはずだと。

となると正式に運用するために足りないのは各所に配備する人員だけということになるが、これは残念ながらオペレータールームからピエモンに従ってくれるデジモンを引き入れるしかない。
マルクを探し出して決着をつけたのち禍根を絶つべくノヴァを完全停止させ、その後オペレーターを拉致して順にもとの世界へ帰還する。これが現在の優先順位だ。

一応人数だけなら核鉄の能力で分身できる日吉とディパック内で9体にまで増えていたケラモンで最低限は確保できる計算なのだが……
残念ながら、彼らにオペレーティング技術はない。日吉はひたすらにテニスに打ち込んできたスポーツ少年。ケラモンは電子的な存在でこそあれ精神的に幼すぎるクラゲ。
そしてなにより、彼らによる共同作業は不可能だとレナは判断せざるを得ない。

日吉は口数が少なく一見クールに見えるが根は圭一に近いかなりの熱血漢だ。
自分や仲間を攻撃し重傷を与えた化け物と手を組むことに対して非常時だからとすぐ割り切れるほど冷酷非情な男ではない。
この件に関してはむしろレナのほうが異常なのだ。卑下するつもりはないがこんな環境で感情を抑えきれるほうがよっぽどおかしいということは彼女も認識していた。
そう。例えるならば、皆にとってクラちゃんたちは「人を噛んだことのある毒蛇」。

それほど危険で敵性の高いものをいま友好的に見えるという理由だけで檻にすら入れていないのだから非難されても仕方がない。
皆仲違いを恐れてか誰も強くレナに主張しなかったが、内心で不安がっていることは確実だろう。
クラちゃんに関しては所持を告げた時点で殺せと言われなかっただけましだと思うしかない。

(それに……)

まだ戦いは終わっていない。この先何人仲間を失うことになるかわからない。
どれだけ自動化が進んでいようと宇宙戦艦は怪我人と棺桶で回せるほど甘くはない。
使えそうな道具も携帯するには難のある大きなものばかりだったので、全員揃って艦を出る。
ピエモンだけが妙に艦の技術に興味深げで格納庫から出ることを渋っていたが、遊戯の説得で歩を合わせ始めた。

「それにこんな大きな船、計画のどの部分に必要だったんだい? 地上にいる僕たちと戦うのにロボットならともかく戦艦なんて必要ないよね」
「うむ、その通りだ。脱出用の宇宙船ならともかく戦艦などバトルロワイアル遂行には明らかに不必要。マルクが何か別の目的で動いていた証拠に他ならない。
やはり正さねばならぬようだな。裏切り者マルクを」

遊戯の誘導に少女ピエモンが意気揚々と賛意を示す。相変わらず彼のマルクへの疑いは揺るがないようだ。
脱出艇でなく宇宙戦艦なのは確かに無駄が多すぎるように思えるが、時空管理局などの組織がここを発見した場合に逃げ切るための武力と考えれば決しておかしな話ではない。
もっとも、ただ派手好きなだけなのではないかという疑念も拭いきれないが……。

「まだ警備は来てないが、来られると厄介だ。合流を急ごうや」
「そうだね。霊夢ちゃんもKASくんも、カービィちゃんまで生きていてくれてどこかにいるみたいだし」

全員城にいる。古泉だけが会場に取り残されている可能性もあるが、おそらくは彼も城に招かれている。マルクならきっとそうするだろうとレナは考える。
古泉をこちらに引き入れることはできるか。彼がいつもの表情で降伏勧告を受け入れたとしてそれを信用できるか。できる限りの参加者を救いたいのにその壁はあまりに厚い。

ハルバードから離れてしばらくのち、不意に周囲の景色が鮮明になる。
それに気付いた集団の最後列にいた遊戯が誰にとはなしにつぶやいた。

「なんだか少し明るくなった気がしない?」

最初に気付いたのはクロスミラージュだった。

『屋内でなんてことしやがる! 避けられねえ、伏せろっ!』
「上!?」

中空に突如浮かんだ巨大な魔方陣から発せられた幾本もの稲光が、彼らに降り注いだ。

天候操作で強引に発生させた本物の落雷である。肉体の鍛えようなど関係なくただ命中したものに残酷な死を与える。
ハルヒの計算ではこれで半分は即死し、半分くらいは何らかのアイテムで生き残るが身動きのとれない重症に陥る。
そうなれば残りはセイバーが難なく駆除できる。そのつもりで放った強力な儀式魔法だ。
だが、轟音が去ったあとに倒れ伏した黒影はなかった。
全員が、身体の痺れに耐えながらも立って新たな来訪者を見つめている。

「驚嘆すべき力です……。雷撃も、あなたたちも」
「そいつはどうも。あんたもデジモンか?」

皆の前に現れた女騎士の感嘆の言葉を日吉が受け流す。
メタルブレードの掃射と防護魔法で電流を逃がそうとしたレナ、フライパン一本でレナの背後にあった例の棺桶を全員の盾になるよう強引にサーブした日吉。
同じくその大きすぎる隙間を埋めるように瞬時にレッドアイズを喚んで壁にした遊戯。ピエモンを野放しにはできないと遊戯が手放した包丁を手に取ったが雷のときに金属はまずいと思い直しあわてて投げ捨てたつかさ。
その包丁がいきなり眼前をかすめて背筋が凍ったピエモン。二人ほど役に立っていない気もするが、結果的に全員が全身の痺れを訴える程度までの被害で済んでいる。

女騎士は告げた。
「マスターのため、あなたたちを殺しにきました」

レナが女騎士に問いかける。
「ずいぶんと理性的だね。なのになんでそんなおかしな命令に忠実なのかな?」
「『圧倒的な力による支配』も世界に平穏をもたらすための正しい手段のひとつだと私は考えています。その力がマスターにはあって、あなたたちにはその力も意思もない。
対立する存在だからこそ、いま滅ぼしておかねば悪い結果を招きます」
「力なき正義は意味を為さず、正義なき力もまた無意味…だっけ。誰のセリフだったかな?」

二個目の質問に答えることなく、女騎士は腕を降ろし再度口を開く。

「あなたがたの存在はただの危険因子。未来を失わぬためなら、私は冷酷な一振りの剣となることにためらいはありません。それこそが、セイバーと呼ばれる私がここにいる理由なのでしょうから」
「所詮それは虚飾だよね。その努力で作られる平穏は、刹那のものじゃないの?」
「どれだけ希望がなくとも、私は世界を終わらせたくはない」

そう吐き捨てたセイバーの姿に威圧感を覚え皆が黙り込む。
その沈黙を破ったのは遊戯だった。

「この人…モンスターカードだ……。つまり、どこかに使用者がいる!」
「わかるの? 遊戯くん」
「うん。デュエルディスクのおかげかな。セイバー……攻撃力4500/防御力3000。ブルーアイズっていう僕らが使った最上位のドラゴンより遥かに強いよ。気をつけてみんな!」

絶望さえ覚えそうな数値をレナは茶化す。

「はうぅ。遊戯くんに伝説の英雄くらいじゃないと勝てないって言われた気がする。どうしよう日吉くん」
「てめーは充分伝説の英雄だよっ! 竜騎士レナ!」
「あなたも、騎士…なのですか。竜の姿が見えませんが」

「じゃあ貴女も騎士なんだ、セイバー。でもね、竜騎士っていうのは竜に乗るとは限らないんだよ? いくよ、クロスミラージュ。……モードⅡ」
『よしきたぁ!!』

セイバーは驚愕する。僅かな痛みと軽い疲れが自分を襲ったことに。
間違いなくそれは竜騎士レナの攻撃。ほとんど何のダメージにもなっていないとはいえ、ありえない挙動から攻撃を受けたという事実は軽視していいものではない。
目の前のレナは拳銃に見えたはずのものから魔力刃を伸ばし構えている。何をしたのかよくわからないからこそ警戒を強めなければいけない。

「りゅうけん…魔力増えたかな? クロスミラージュ」
『おうよ。けどああ警戒されちゃあ二度はないな。ダガーモードはティアから聞いてたんだな?』

ティアナが生前にクロスミラージュのことを伝えていたという事実はない。レナはただ不思議に思っていたのだ。
魔法の実在する世界で発動体であるデバイスが銃の形をする必要性は全くない。
魔力弾を創り出し精度の高い射撃を行うことが銃の形状をしていなくとも可能である以上、拳銃であることは手の自由を奪うマイナスの意味しか持っていないことになる。
直接攻撃できる剣や槍をデバイスとして用いるのならわかるが、そうでないなら手袋か腕輪のように両手を使えるものであることが望ましいはずだ。
ただの一丁にも二丁にもなるアンカーガンではあきらかに能力不足。
だから、手で持つ以上近接戦闘用の機能はないとおかしかった。それを試す機会が今までなかったというだけのことだ。モードⅡという呼称も思い付きである。

「なるほど。貴方達ほどの傑物と剣を交わすことができたことを、光栄に思いましょう」

セイバーが剣を構えるでもなく宣言する。が、警戒して距離を詰めれずにいることは明らかだった。レナは遊戯に告げる。

「つかさちゃんとピーちゃんを連れて、マスターを探して! この人はレナと日吉くんで止めてみせるから」
「でも、デュエルモンスターズをよく知っている僕のほうが」
「とっておきのある遊戯くんにしかできないの。予想が当たっているなら、力押しだけじゃ彼女のマスターに勝てない」

一拍おいてレナは続けた。

「彼女のマスターは、古泉くんじゃなくてハルヒだから」

セイバーとレナを除く四名に衝撃が走った。

「馬鹿なっ! ハルヒは放送で死亡を宣告されたはずだぞ」
「なんで、なんで? カービィちゃんが生きてたことと関係あるのかな?」
「ハルヒが…そうか。レナは、僕に切り札があることも知ってたんだね」

ざわめきだす後衛に、真っ先に気を取り直した日吉が怒鳴りたてる。
「理解はあとでいい。俺たちがこいつに負ける前に行ってハルヒを止めろ。カードは使用者さえなんとかすれば止まるんだろうが!」
「うん! 強さがわかってるだけに勝ってとは言わない。だから――無事でいて!」

遊戯がつかさとピエモン、二人の手をとって駆け出そうとしたところにセイバーが割り込もうとしたが、彼女はその場にいなかったはずの誰かに飛び膝蹴りをくらい真横へ吹き飛ばされた。

「!?」

レナが叫ぶ。
「遊戯くん今のうちに! つかさちゃんも走って!」

セイバーが振り向いた先、鮮やかな水色の髪をツインテールにしたベビーフェイスの女子レスラーが、沈痛な面持ちをしてそこにいた。
「ウタイタイ…ウタイタイヨ……」
「伏兵ですか」

セイバーは驚く。どこから出てきたか全く気配を感じさせなかった。
相手がほぼ全力で攻撃してきたことは確かなので強さそのものは警戒するほどではないが、それでも斬り飛ばして離脱しようとする三人を追えるほど強行突破は容易ではない。
日吉もレナも隙あらばとこちらを伺っているのだ。命令の完全な遂行が望めなくなるのは痛手だがこれ以上無謀な行動は取れなかった。

今にも泣きそうな顔をしたツインテールをレナが諭す。

「聞きなさい初音ミク。ここにそんな自由はない。もしあなたの存在意義が歌うことだとしても、闘いの果てにその権利を勝ち取らなければあなたが歌う機会は決して来ないの。
私は戦う力・北米版パッチをあなたに与えた。すべきことは分かってるよね?」
「タタカイハ イヤ…ウタウコトト ネギガスキ」
「私たちが、好きで戦ってるように見える? 見えるなら好きにすればいいよ」
「…ワカリマシタ」

「今際の際に口論は不要。そこまでです」
そう言いながらセイバーが突進するが、フライパンを構えた日吉に阻まれる。

「武器も見せずになめてんじゃねーよ」
「日吉くん、違っ!!」

セイバーの両腕がまるで剣を握っているかのように日吉に向けて一閃する。手にしていたフランパンはたやすく両断され、彼の右肩から激しい血飛沫が舞った。
そして、ゆっくりと、その長身は前のめりに倒れた。

凄惨な光景に声を震わせながらレナは叫ぶ。
「セイバーはすでに剣を構えてたんだよ…どうして気付いてなかったの? 日吉くん!」

返事をする者はない。あれだけの出血、すぐにでも治療しなければ意識の戻らぬままこちらには帰ってこられない存在になってしまうことだろう。
血を浴びたはずの彼女の剣は変わらず不可視の刃のままだ。レナはセイバーを睨み付ける。

「なぜそんな顔をするのですか。人は戦場において誰しもあっけなく死んでいくものだというのに。それよりも貴女が風王結界に気付いていたことのほうが驚きです」
「戦争をしたことがなくても、もうそれくらいわかってるよ。でもね…そうでない世の中であってほしいとみんな願ってたの。だから、手の届く範囲だけでも叶えていかなくちゃいけないんだよ」

「恥ずかしいこと言ってんじゃねえよ」
「あなたは…日吉!」
「日吉くん!」

無傷の青年がそこにいた。確かに命を奪った手ごたえがあったはずなのに。
だが、彼が倒れていたはずの場所を確認しても今は血の跡しかない。つまり仕留め損ねたということ。
戸迷いながらもセイバーはすぐさま振り返り剣を振るう。

「甘えよ。なんのために一度斬られたと思ってる」
「なん…だと!?」

勝利を約束するはずのその伝説の剣は、まるで見えているかのようにあっさりと彼の握った月牙で弾かれた。
しかも彼の言うことが本当なら剣の間合いを知るためにわざと斬撃を受け、たった一度で騎士王の剣筋が見切られたということになる。
すぐに気を取り直し反撃に備えて防御体制を取ったさせたセイバーだが、彼の攻撃はKIを纏った左手での掌打。防ぎはしたもののあまりの威力に体勢を大きく崩す。
日吉は叫んだ。

「今だやれっ! 初音なんとか!」

姿勢を下げて全速力で向かってくる小柄な女子レスラー。だがセイバーの見るその姿にはちらつきが混じっていた。
(幻術魔法……本体はどこに!)
気配は正面の虚像から感じるのみ。初撃を受けたときと同じように考えれば、ミクという少女は気配を完全に殺せることになる。

正面のミクが何かを唱えようとする瞬間、セイバーの斜め上に気配が生まれた。
これこそが本体と判断したセイバーはその空間を斬りつける。

「せいっ!」
が、直後に耳に届いた少女の絶叫を聞いてセイバーは直感が外れたことを思い知らされることになった。
そして、正面が本物だとしてもたいした攻撃力ではないという計算すら誤りであったことも。

「ウンドウカイ プロテインパワー!」
強化されたミクの叫ぶように叩きつける最高速の拳が、防御力3000といわれた彼女をなすすべもなく遠方の壁に激突させた。

セイバーの吹き飛ばされた先を警戒しながらレナは日吉の前に降り立つ。

「核鉄の能力かな? 本気でびっくりしたよ」
「あれ以外に方法が思いつかなかったんだよ。文句は勝ってから言いやがれ」

何のフェイクでもなく“二人に増えてから一人死んだ”日吉がまだ血色の戻らぬ顔で悪態をつく。
スパイダーマンも用いたサテライト30の正しい使い方ではあるが、日吉にとっては何の事前情報もない大博打。今も死の恐怖と感触は生々しく残っている。
氷帝で次期部長候補として先輩たちに徹底的にしごかれた経験がなければ紙一重での回避も感覚と身体のどちらかが追いつかず失敗していただろう。

「レナこそやるじゃねえか。adobe部長を思わせる知略だったぜ」
「ありがとう。でも誰それ」

レナが使ったのは、幻術魔法による二重のフェイク。
突進したミクは幻影を被せた本物のミク。不意打ちしようとしたミクは幻影。
さらに日吉の死に動揺し立ち尽くしていたレナも幻影で、本物は透明化した上で上空からの奇襲を狙っていた。補充した魔力も再度枯渇状態になるほどの大盤振る舞いだ。

「まだ終わってないよ。油断しないで」
「勿論だ。だが、レナの指揮なら安心して戦えるぜ。俺たちの大将はもうお前しかいねえ」
「もう……か。責任重大だね」
「そら行くぜ下克上、此処に集え! 我等竜宮一家だ!」

攻撃モーションで硬直したままのミクに発破をかけるように踏み出しながら叫ぶ日吉。
だが、レナはそこに訂正を要求した。

「つかさちゃんがいない今だからいいかな? 竜宮一家じゃなくて園崎一家でも」
「園崎……殺されたそいつが、お前にとって人生の師匠だったんだな?」

コクリとうなずくレナを背中に、一騎当千の若獅子は下克上を復唱する。
最強の騎士を討つという試練も、きっと乗り越えられる。そう信じて。

「もう一息だ。折れんなよ!」
「うん!」

レナの力強い一言に対抗するかのように、遥か先のセイバーが構えをとる。
お互いメインとなる手の内を見せたいま、よほどの奇策がない限り後の先を取った側が有利。両者ともそれを意識してか睨み合いといった構図になる。
日吉たちに不利になるとわかっていて攻勢に出る理由はない。カードの所有者を止めれば彼女も消えるのだから遊戯たちが所有者をとめれば戦わずにすむのだ。
そしてなにより、セイバーは強い。一撃でもまともにくらえば命が危ういほどに。

時間が余っているわけではない。だがより焦っているのは、確実にセイバーのほう。その認識があるから冷静に待つことができる。

「初音がまったく動かないようだが、まさか死んだか?」
「緊急停止がどうとか聞こえたから、ただの故障だよ……たぶん。パッチが雷で壊れかけてたのかな」
「生身の体になっておいてそんな故障するのかよ。ひでえな」

そのまま睨み合いは十分近く続いた。
セイバーは眉をしかめながら無言でレナたちの様子を見続ける。
大言壮語を吐いておきながら半数を逃がし、さらに残った面子にも勝てずにいる。
ハルヒに敵う者が存在しない以上どれだけ望みが薄くとも彼女の機嫌を取り続けるべきだという考えが揺らぐほど、対主催集団は統率が取れていた。
しかし所詮は人の身。彼らはハルヒどころか主催者にすら反抗して確実に勝てる要素すら持っているわけではない。
せめてカリスマ性のある指導者でもあれば違っただろうが、層が薄すぎるのだ。
ハルヒの太鼓持ちに落ちぶれようとも、誰かがこの世界を滅ぼし新たに悪夢のような天地創造を行おうとしている神を止めなくてはならない。

(私はカードに封じられたただの英霊にすぎない。だが、最悪の結果だけは避けなければと決意した)

この身は朽ちても翌日にはまた召喚可能となる。ならば相討ちとなろうともここで一人は屠るのが己が道の示し方であろう。セイバーはそう覚悟を決めて踏み込む。
直後、セイバーの身体が金色の光に包まれ……その場から消えうせた。


周囲に鋭敏すぎるほどの警戒を送ったのち、日吉が述べる。

「……どういうことだ? 遊戯たちがやったのか」
「逃げられたようには見えなかったから、たぶん」

緊張の糸が切れたのかへたりこむレナ。
思い返せば、仮眠すら取らず連戦に次ぐ連戦を高校生にも満たない少女がこなしてきたのだ。そう気付いた日吉はレナを急かしてしまわぬよう自身の焦りも心の内に封じ込める。
そう。遊戯たちがハルヒに勝ったのなら、残る敵はマルクと雑魚デジモンだけ。バテ気味の自分たちが忙しなく動いて体力を浪費する場面ではない。そう信じて。

「北米版パッチってのはこれか。外しておくぜ」
「ありがとう。……ミクには、悪いことしちゃったな。はは…」
「あんまりモノに感情移入しないほうがいいな。お前はいま疲れてる」

日吉の心配をよそにレナはすぐさま立ち上がり、軽く柔軟をした。

「知ってるよ。だとしても立ち止まってる暇はないから。行こうか」
「……ほんとに中学生かよ、お前」
「それはお互い様だね」

初音ミクとパッチは日吉にそのまま持たせ、レナは日吉を先導しながら遊戯たち・霊夢たちを探して歩き出す。
その歩みを見たものは亡霊でも見たかのような不気味な力強さを感じたことだろう。
彼女たちを突き動かす原動力は正義感や生への渇望ではなく、生き残った者としての責任感と意地だった。

回復薬だったはずの実を無理やり水で喉に流し込み、レナはつぶやく。
「ごめんクロスミラージュ。いまは貴方の声、うまく聞き取れないや……」


【3日目・黎明/クッパ城格納庫】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:悲しみ、かなり疲労、魔力枯渇気味
[装備]:
リアルメガバスター(93/300)@デッドライジング、メタルブレードのチップ、包帯
サイレンサー付き拳銃(6/6)@サイレンサーを付けた時とry、鉈@ひぐらしのなく頃に
クロスミラージュ@リリカルなのは、バリアジャケット(龍騎士レナフォーム)@07th Expansion
[道具]:支給品一式*13(食料3・水3消費)、日本酒(残り半分)、オミトロン@現実?、モモンの実*3@ポケットモンスター、鉄パイプ、
本『弾幕講座』、アイテム2号のチップ@ロックマン2、暗視ゴーグル@現実、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、
ポケモンフーズニ日分(四食分消費)@ポケットモンスター、ほんやくコンニャク(1/4)(半分で八時間)@ドラえもん、テレパしい@ドラえもん(残り2粒)、五寸釘@現実、
雛見沢症候群治療セット1日分(C-120、注射器、注射針)@ひぐらしのなく頃に、サイレンサー付き拳銃の予備弾95発@サイレンサーを(ry
桃太郎印のきびだんご(24/25)、ウルトラスーパー電池(残り30%)@ドラえもん、ゼットソーハードインパルス@現実、ハイポーション×2、
飛行石のペンダント@天空の城ラピュタ、十得ナイフ@現実、ナイフとフォーク×2、包丁、首輪の機械部品、MASTER ARTIST01~10@THE IDOLM@STER、
壊れたオセロ@現実、ノートパソコン(バッテリーほぼ満タン)@現実、RPG-7(残弾5)@GTASA、RPG-7の予備弾薬95発@GTASA
富竹のカメラ@ひぐらしのなく頃に、ピッキング用針金、 盗賊の棺桶@勇者の代わりにバラモス倒し(ry、フィルム、
ピーピーマックス@ポケットモンスター、ウィンチェスター M1895/Winchester M1895(狙撃銃、残弾5)@現実、ウィンチェスターM1895の予備弾95発@現実
無限刃@るろうに剣心(フタエノキワミ アッー!)、10円玉@現実?、札束(1円札百枚)、琴姫の髪 、クラモンD×9匹、Nice boat.のメインコンピュータ、フタエノ極意書@ニコニコRPG
[思考・状況]
1.霊夢ちゃんやみんなと合流したい
2.罪滅しをする

※時期は大体罪滅し編後半、学校占領直前です。
※身体能力が向上しています。それによってレナパンが使えるようになりました。
※ノートパソコンに海馬の残した何らかのファイル(飛行石関連その他)とメッセージがあります。メッセージは打開が成功したら読め、との事です。
※バリアジャケットはひぐらしを起動すると出てくるアレ、もしくは07th Expansionのトップのアレ


【日吉若@ミュージカル・テニスの王子様】
[状態]:ほぼ回復、中程度の疲労、覚醒、右腕に少し鈍痛
[装備]:サテライト30@真赤な誓い
[道具]:支給品一式*7(食料一日分、水二本消費)、ネギ@ロイツマ、長門の首輪、コイン*2@スーパーマリオワールド 孔明ブロック(大)@スーパーマリオワールド、
    炎道イフリナのフィギュア@ふぃぎゅ@メイト、首輪の残骸、上海人形、テニスボール*3、ジアースの機械、電気部品、北米版パッチ@エキプロ、初音ミク
[思考・状況]
1.天衣無縫の極みを会得し、主催に下克上する。
2.遊戯たちとの合流を急ぐ
3.レナの体調が少し心配

※無我の境地をマスターしました。KIも操れるようになりました。
※フタエノキワミをマスターしました。
※無我の扉の一つ、百錬自得の極みに到達しました
※ピーちゃんの事を間違えてビーちゃんと呼んでいます



sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして 時系列順 sm231:~The Endia & The Knights~
sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして 投下順 sm231:~The Endia & The Knights~
sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして 竜宮レナ sm231:~The Endia & The Knights~
sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして 日吉若 sm231:~The Endia & The Knights~
sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして 柊つかさ sm231:~The Endia & The Knights~
sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして 武藤遊戯 sm231:~The Endia & The Knights~
sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして ピエモン sm231:~The Endia & The Knights~
sm230:第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして 涼宮ハルヒ sm231:~The Endia & The Knights~



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