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第三次ニコロワ大戦Ⅱ ――Ragnarok ◆cpYAzLvx8.




「なげーよ馬鹿!」
「無駄に長いだけで、中身が無いわね」
「なにをいってるのか、よくわからない」
「神殺し、最高の下克上じゃねえか」

KASと霊夢が即座にツッコミを入れ、日吉の悪態とカービィの無垢な声が次に続く。
レナ、つかさ、遊戯は、HALから吹き荒れる圧倒的な威圧感の前に成す統べもなく、言葉を紡ぐことさえできない。

「ま、言うだけ言えばいいわ、生意気な口を叩けるのもこれで最後よ」

HALが動いたと思った瞬間、既にその場から消えていた。
消えたと思ったHALは、なんと遊戯の前に一瞬にして現れた。

「さっきのお返し」

遊戯の体が突如吹き飛び、肉片があたりに飛び散る。
HALはただ遊戯にでこぴんをしただけであった。
だがその指は、遊戯の頭骨を軽く砕く凶器へと変貌していた。
吹き飛ばされた遊戯は額から血を流して呻くももの、それは死んでいないだけで非常に危険な状態であることを表していた。

「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ、弱い弱い弱すぎるわねッ! 手加減したのにこのザマかしら」

ニコレンジャーの中心に現れたHALは、周りからの追撃を避けようとさえしない。
カービィが、KASが、日吉、ヲタチが一斉に飛び掛る。
しかし、その攻撃に対してHALは動かない、動く気すらないようだ。
そのHALの行動にはすぐに説明がついた、飛び掛った三人と一匹の前に何やらバリアのようなものが現れたのだ。

「これが私の新しい能力、無敵結界よ。効果に関しては、言うまでも無いわね」

魔王の血たる魔血魂には、さる世界では誰にも傷を付けられなくなるという無敵の結界を得る。
伝説のダイナマイトや武器などの例外はあるものの、それがある限り人が魔血魂を取り込んだ魔王や魔人に傷を付けることなど出来ない。
魔王アナゴでは不完全にしか取り出せなかった無敵の結界を、HALはモノにした。
そして、魔血魂は無敵の結界以外にも更なるパワーをHALへと与えた。


HALは無敵結界から弾かれた三人のうち、日吉にターゲットを定める。
だがしかし、そこへヲタチがしつこくHALにぶつかって来て、進むのには支障が無いが邪魔で仕方が無かった。

「あーうざったい」

HALは先ほどまで捕らえる事はできなかったでんこうせっかを、やすやすとその手で食い止める。
さらにHALは、手中のヲタチをグチュリと嫌な音を立てて絞りつくした。
それはまるで果物を搾るかのような動作で、HALの手中からは大量の赤い液体が垂れ流されていた。
HALの手が元に戻った時、そこにヲタチだったものを示すものは、紅く返り血で染まったHAL以外に何もない。

「ヲタチぃぃぃいいいいいい!」
「さて邪魔者も始末したし、さっき痛い目に会わせてくれた日吉の番ね」
「ふん、無我の境地がそれぐらいで破れるかよぉ!」

HALは心底舐めきった態度で拳を打ち出す、それに対して日吉は百錬自得のカウンターを仕掛ける。
無敵結界が発動するかと思われたが、HALの予想とは裏腹にカウンターで逆にHALが吹き飛ばされることになる。

「あたたたた……いくら無敵でも自分の攻撃に対しては無敵じゃないのね、油断したわ」

HALは頭を摩りながら立ち上がる、そこへプラズマやメタルブレード、ディバインバスターが乱れ飛ぶがHALには何一つ届かなかった。
自分からの攻撃ではHALに通用しないと理解したレナは、HALへの攻撃を止めさせる。

「ふん、カウンター狙い? 何度も同じ手に掛かる訳が無いでしょう」

HALはそう言って日吉の背後に現れ、日吉の頭を猛烈に引っぱたく。
日吉は反応さえ出来ず、地に伏すことになる。
そこでもHALは追撃の手を緩めず、日吉の腕を思いっきり掴む。

「テニヌプレイヤーだっけ? 一番大事な腕が無くなるのはどういう気分かしら?」
「なん……だと?」

日吉の疑問に対して、HALの行動が答えを示した。
HALは日吉の背中を足で押し付け、勢いよく日吉の腕を引っ張り上げたのだ。
その力に耐え切れず日吉の腕は引きちぎられ、肩から先と腕が生き別れになる。
テニスとボブ術で鍛え上げた人の体をまるでおもちゃのように、HALは両腕を引きちぎって笑っていた。

「ぐああああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!」
「ぎゃっはっはっはっハッ……ゲヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
「日吉君!」
「痛い?でも私の心はもっと痛かったのよ、もっともっと苦しむのがあんたの役割よ、ヒャアハハハハハハハ……!

そう言ったHALは、日吉の苦悶が止まるまで、何度も、何度も、何度も日吉を蹴りつけた。
レナが、霊夢が、カービィが、KASがHALに攻撃を仕掛ける。
だが無敵結界に阻まれたHALに対して何の干渉も出来ず、蹂躙される日吉をただ眺めること以外はできなかった。
そのHAL自身は日吉への攻撃が一段落つき、その日吉の腕にはまるで興味が無いといった様子で、その辺りにぽいと投げ捨ててしまった。

「ちきしょー!」
「KAS君、不用意に飛んじゃ駄目ッ!」

KASがホップステップジャンプで日吉を踏みつけるHALの元へ飛ぶ。
しかし奇跡は起こらず、KASの攻撃はHALに通用することが無い。
そしてそのまま、先ほどの再現のようにKASの足はHALの手の中にガッチリと収められ、振り回される。
バランスを崩したKASは頭をゴイン!とぶつけ、半分ピヨりながらHALの手中へ落ちた。

「さてKAS、あんたには私が特別に、閣下と同じ無様な目にあわせてあげるわ」
「閣下のことを言うんじゃNEEEEEEEEEEEEE!」

閣下のことを持ち出されたKASは必死にもがくも、状況は好転しない。
どれだけ暴れても動けない、HALに対しては何の意味も無い。
助け舟を送ろうとしていたレナやカービィも、無敵結界に攻撃を仕掛けるのは無駄と分かっていたから、何も出来ない。
完全に次元が違うHALの強さを、蹂躙を眺めること、ただ傍観することしかできない。

「いっくわよ~☆、心臓破りのHALHALパーンチ!」

HALから気の抜けた必殺パンチが放たれ、やすやすとKASの胸を貫く。
だらりと垂れ下がったKASの肢体からHALの腕がずるりと取り出され、その手中には六角形の金属があった。

「ふんッ!」
「ぐぁぁぁぁあああああああAAAAAAAA!!!」

HALが力を込めると、核鉄は粉々に砕け散った。
そして、それはKASの新たな命がゴミのように砕け散ったことの証明でもあった。

「KAS!」
「KAS君!」
「KASくん!」
「かすっ!?」
「まっ、ざっとこんなもんよ」

HALはだらりと力なく倒れるKASの頭を二、三度踏みつけ、残りのメンバーに居直る。

「さぁ、次は誰がいい? そこのピンク玉がいいかしらね、フヒヒヒ……」


レナは頭を抱えるしかなかった、できなかった。
つかさが倒れない限り、皆が死なない限り赤とんぼで回復できる。
でも、それが何になるのだ。既にKASは死んでしまったのだから……。
目の前の怪物には攻撃はほぼ通用しない。唯一通っていたと言っていい日吉のカウンターは封じられた。
そして、HALが二度同じ攻撃を食らうことは無い。
つまり、打つ手が無い、どうやっても目の前の怪物には勝てないということになる。
だが、どこかに打開の目はある、しかしそれはどこにあるのか。
レナは思慮の海に沈み、恐怖に打ち震えていた所に霊夢が声を上げてHALの前に立つ。

「……私に任せて、レナ、カービィ、つかさ」
「ふぅん、そこの魔法少女くずれが私の相手なのね、いいわよそれでも」
「本当は本気なんて出したくないけど、あんたみたいな糞外道相手にスペルカードルールだなんだと躊躇していたのが間違いだったわ。
 ……私が一歩を踏み出せなかったから、KASは死んでしまった…………。」
「まさに名前通りのカスらしい笑える生き様だったわね! ギャハハハハハハハハハハ!!!」

「KASのことを侮辱するな」

怒りに打ち震える霊夢に体が宙に浮かぶ、そして霊夢の周りに陰陽玉が現れた。
HALはニヤニヤと眺めている。何が来ても負けは無いと言った感じだ。
ピエモンから知ってることは洗いざらい掃かせたから、もうニコレンジャーに抵抗の手段が無いことはHALにとって自明の理であったからだ。

「夢想天生!」

そして霊夢の周りの陰陽玉から、大量の博麗アミュレットが打ち出される。

「何度も何度も油断すると思ったら大間違えよ!」

だがHALは霊夢の夢想天生が放たれた瞬間、極光のエネルギー弾を打ち出す。
その極光に巻き込まれて、霊夢の姿は掻き消えた。

「あっ……あああっ…………」
「つかさちゃん、今は霊夢ちゃんを信じましょう……
 それに、みんなを絶対に死なせないように笛をお願い」
「う、うん!」

極光を放ったHALは、これで終わったと確信した。
遊戯は一撃でオネンネ、日吉は再起不能、KASはこの手でぶっ潰した。霊夢もこの一撃で消し去った。
残るはカービィ、レナにつかさ、笛がかなりウザいが物の相手ではない。
最悪、霊夢と同じ様にまとめて消し去ればゲームオーバーだ。
HALを含めた皆の視界が晴れる。そして全ての表情がそこで変わった。
霊夢は健在だった、傷一つ付いてはいない。

「……ふ、ふぅん。何かの防御結界か何かかしら?」

まぁいいとばかりに、HALは全力で情報改変を仕掛ける。
だが、情報改変のさなか、初めてそこで異常に気が付く。
情報を改変しているはずなのに、まるで得体の知れない何か、というよりは空気を鷲掴みにするような不思議な感覚がHALを襲う。
そう、それはまるで実体の無い影を捕まえるような、掴みようのない、徒労という言葉が第一に浮かぶ。
干渉しているはずなのに、干渉できない。
その異常に気が付き、HALが恐怖で打ち震えた瞬間に次なる脅威が襲い掛かった。
霊夢から放たれた博麗アミュレットは、HALの無敵結界を貫通して襲い掛かってきたのだ。





「何よ、それ、何よ……。

 何よそれぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!」


HALは霊夢に向かって突撃を仕掛ける。
だが、飛び掛ったHALが霊夢を捕捉することは出来なかった。
HALは霊夢に飛びかかかったはずだったのだが、まるで影に触れたかのように通り抜けた。
光線も効かない、物理攻撃も効かない、情報改変も効かない、無敵結界も通用しない。
そう、ありとあらゆる干渉を拒否するかのように、霊夢はそこにいた。
博麗アミュレットの第二陣がHALを襲う、HALは光線弾で博麗アミュレットを打ち落とそうとするが、博麗アミュレットの弾幕は超エネルギー光線弾にすら干渉されない。
HALはやむを得ず高速飛翔して博麗アミュレットを避ける、だがどれだけ逃げても、どれだけ早くても博麗アミュレットは一定のスピードで迫る。
一撃一撃は重くない、だがダメージは確実に、HALを傷つけるには十分な量が加わる。
そして逃げても逃げても、振り切ることは決して出来ない。

「逃げても逃げても無駄なら、これはどうかしら!」

HALは迫る博麗アミュレットに向かって拳を打ち抜く。
だが、それはHALが攻撃した腕だけが一方的に博麗アミュレットに切り裂かれただけで終わった。
そしてHALの攻撃も空しく、反撃のせいで回避が疎かになった所をカウンターの博麗アミュレットが襲う。
空中で全身をズタズタに切り裂かれ、HALは錐揉みながら落下する羽目になった。

「畜生畜生畜生ッ! なんで、なんで効かないの!? ありえないわよ!」

HALにとって、それはありえない相手と、ありえない結果だ。
それはまるで壁をぐいと押したら、押したはずが逆に押され返しただけという不思議な感覚。
押せば押したぶんだけ衝撃が返らず、逆に相手からの干渉だけがこちらを押す。
エネルギーも、物理も、魔法も、情報も、神の力も、何もかもの干渉を受け付けない。
HALのことさえ目もくれず、ただ空中でぷかぷかと漂うだけの霊夢がただひたすらに恐ろしく思えた。

「いいわよ、何もかもが効かないってんだったら、全世界丸ごとブチ壊してあげる」

HALはそう宣言した瞬間、空中に浮かび上がり、猛烈な剛火球を精製する。
それはどんどん膨れ上がり、赤から黒へ歪み、膨張を続ける。
閉鎖空間の大きささえ超え膨張し、閉鎖空間はHALの手中にある黒体に飲み込まれて吸収された。
黒体の成長は止まらない、もはやそのサイズは測定が不可能な段階に達した。
ただ見えた光景は完全なる黒、黒だけが上天全てを支配していた。
その黒体の周りの空間は歪み、綻びさえ見える。
地上にいるレナやつかさ、カービィでさえ、黒体から発せられる余剰エネルギーに翻弄されて動くことすらままならない。

「クロスミラージュ……、あれは、どれぐらい…………?」
『……例外だ、例外だよ。あれはもう、計算なんかしたら俺自身がぶっ壊れそうだ』

もはや抵抗すら出来ない、あれを霊夢が防げなければ、すべてが消滅するといってもよかった。
次元が二つも三つも違うその戦いを目に、ただ霊夢の打開を願うことしか出来ない自分の無力をレナは呪った。





「さぁ行くわよ、あんたが消えて無くなるか、私が消えて無くなるか!

 全てを破壊する神の炎、プラネットバスター!!!」



プラネットバスターが放たれたその瞬間、すべてが白く染まり、次に暗黒が訪れた。
白と黒の病的なコントラストが視界を汚染し、目を閉じていてさえ訪れる狂気の光がHALと霊夢以外の二者全てを翻弄する。

乾坤一擲の一撃を放ったHALは、願った。
その一撃で全てが壊れ、無くなることを。
しかし、願いは破られたのだ。

そこにいた、変わらぬ立ち位置で浮かび続ける紅白と、大量のお札が迫っていたことで。


「ぎぃいやぁぁぁあああああああ!!!」

プラネットバスターですべての力を消耗し尽くしたHALは、目の前に迫っていた博麗アミュレットに再びその身を蹂躙されることになった。
全身が絶え間なく切り裂かれ、幼いその身はもはやただの肉片に変化しつつあった。
何の抵抗も出来ず、頭に付けていたアカギパッチが剥がれ、更に弱体化したところを第二陣が再び迫る。

「何よ、何よ、何よ、何よ! 一体、あれは何なのよ!?」

その疑問に答えるものは居ない。いや、答え様は無かった。
崩壊したと思ったクッパ城は、ボロボロになりながらもいまだ健在。
ゆとりもニコレンジャーも、プラネットバスターの余波は微塵も受けていないようにさえ見える。
空間に大量のヒビが入り、今にも崩壊しそうな空と地平だけが、プラネットバスターが存在したことの証明だった。
プラネットバスターが炸裂するはずだった地上に、その被害はまるでない。
ありとあらゆる干渉を否定された霊夢の前に、超絶規模の破壊さえ無意味に消え去っただけだった。

それは恐怖だった。四度目の死の恐怖であった。
何も出来ぬまま、何も残さぬまま、この紅白に蹂躙されてその身を消される。



(嫌だ、嫌だ、嫌だ! 私は絶対、絶対にもう死にたくない、死にたくない、死にたくないッ!)


死に物狂いのHALは、博麗アミュレットを奇跡的に回避する。
ほんの少し体を捻っただけなのだが、補足した座標を追跡する特性を持つ博麗アミュレットに対しては幸運に働いた。
そのHALの僅かな抵抗、俗に言うチョン避けによってHALは九死に一生を得た。

追尾が続くことには変わりないが、ようやく活路を得た。
いずれ力尽きるとしても、このまま何もしないまま死ぬわけには行かない。
ようやく地上へ降り立ち、まずは空中で落としたアカギパッチを探す。
HALが横方向でそれを補足した頃には、レナが既にそこへと迫っていた。

「はぁぁぁぁっ!」

HALが動いた時には時既に遅し。
アカギパッチは、レナの鉈で真っ二つに粉砕されてしまった。

「畜生、畜生、畜生おおおおお!!!」

ヤケクソのHALがレナに向かって光線弾を放つ。
しかし、それさえも博麗アミュレットが全て吸収、消滅してしまった。

「あっ、あっ、嫌ぁぁぁぁああああああああああ!!!」

半狂乱でHALは頭を押さえ、その場で蹲って身を守ろうとする。
博麗アミュレットの蹂躙を心底恐れているからこそ、もう何もしない、できなかった。
だが、そこへ博麗アミュレットが訪れることは無かった。
HALがそれに気が付いたのは、霊夢の気の抜けた声が原因だった。


「あれ、おっかしーなぁ?」

霊夢自身は夢想天生を止めようとは思わなかった。
そして、霊夢がそのことを疑問に思っても、何故そうなるのかは分からなかった。

「レイジングハート、なんで夢想天生が止まったか分かる?」
『……いえ、レナに向けた砲撃を防いだ所で、急に霊夢の状態がいつものように突如戻ったとしか…………』

霊夢がレイジングハートに問題を尋ねるが、その答えはおぼつかない。
その答えは誰にも分かる筈が無かった。
誰かを守ろうとする尊い心が、ありとあらゆる場所から浮かび上がり、干渉を否定する夢想天生を否定したのは、もはや皮肉としか思えなかった。
霊夢は信頼できる仲間を守ろうとしたが故に、無限の力を自ら放棄したことに、気がつけない。

『霊夢!』
「何、レイジングハー…」

レイジングハートが注意を促したときには遅すぎた。
最大の脅威が過ぎ去ったことを理解したHALが、霊夢の困惑を前に先手を取って逆襲を行ったのだ。
猛スピードで突撃したHALの拳が霊夢に突き刺さり、霊夢の背中からHALの肉隗と化した拳が生える。

「か…はっ……」
『霊夢!』




「本当に死ぬかと思ったわ、ええ、本当に…………。

 ……だからとっとと死にやがれええ!!!」


拳を霊夢の腹から引き抜くと、そのまま崩れ落ちる霊夢に猛烈なラッシュをぶちかます。
とっさに発動したシールドは、HALのラッシュの前にはまるで紙のようにあっさりと崩れ落ちた。
霊夢の顔に、腹に、胸に、足に、HALの拳が突き刺さる。
その全身はズタズタに切り裂かれ、もはや生きているのか死んでいるのかすら疑わしい状態になってしまう。
崩れ落ちる霊夢の体からHALはミンチと化した霊夢の右腕を引き抜き、あろうことかそれを口へ運ぼうとする。

「させないっ!」

終始笛を吹きっぱなしで息切れが激しいつかさを後ろに、レナとカービィが霊夢を救出するべく走る。

「もう遅いわよ、さっきは焦ったけど、これで私は夢想天生のパワーを手に入れることが出来るッ!」

HALが霊夢の右腕を齧る。HALはそれを二三度咀嚼するが、すぐにその味の悪さに気が付いて口の中にあったものを吐き捨てる。

「グゲェ、ペッ!? 何よの味、余りにも不味くて食えないわ!」

HALは完全に霊夢の捕食に気を取られ、レナとカービィには目もくれない。
レナの鉈とカービィのプラズマ波動弾が襲い掛かる。
HALにとって夢想天生のようなごく一部の例外を除いて無敵結界が有効、故に気を回す必要が無いと判断していたのだが。

HALの前には何も無いかのように、プラズマ波動弾がそこを通り過ぎてゆく。
気が付いたころには既に遅く、プラズマで吹き飛んだそこへ、電撃を帯びたレナの鉈がHALの肉をチリチリと焦がし、切る。

「ぎぃやぁぁぁぁ!? 何で、何で無敵結界が発動しないのよ!?」

ボロボロのHALは無様に吹き飛び、肉片を飛び散らせながらゴロゴロと床を舞う。
その間にレナとカービィは、霊夢の様子を確認する。

「れいむ!」
「霊夢ちゃん、しっかりして!」

レナは強く呼びかけ、霊夢の頬を軽く叩くが反応は無い。
つかさの赤とんぼによって傷が癒されているので、死んではいない。
ただ、霊夢の全身からは大量の出血が酷く、つかさの笛が無ければその場で死んでいたほどの重傷だ。
引き抜かれた右腕を筆頭に、ズタズタに切り裂かれた柔肌が余りにも痛々しい。

緊急事態と判断したレナは回復アイテムはディパックの中身をブチ撒け、何でもいいから回復できるアイテムを探す。
しかしその目的が達成される前に、既にHALは起き上がっていた。
レナは慌てて立ち上がり、姿勢を構えなおす。
瀕死の重傷を負っているのはHALもまた同じであった、ふらふら、よろよろとしたその動きは既に余裕など無いことを顕著に示している。

しかし、その力の次元が違う。
いかに瀕死で弱りきったとはいえ、相手は手負いの獣、いや、獣と表現するにはそれは強すぎた。
獣ではなく、人を超越する巨体の竜や悪魔にも匹敵する、手負いの魔王だった。
回避、防御行動は間に合わないと判断し、HALの体勢が整う前に再び襲い掛かる。
レナの鉈とカービィのプラズマが迫る直前に、HALは超速の一歩を踏み出す。

「かっ……!?」

そして襲い掛かるレナに強烈な頭突きをぶちかまし、そのまま血しぶきを上げたレナを地へと落とす。
さらなる追撃は、ただの一歩で決まった。
HALから繰り出される圧力を持った足が、バリアジャケットで保護されたレナの肉体を易々と砕いた。

二歩目で踏み抜いたレナを、HALはその身を回転し、足から引き剥がす。
レナはそのままホールの床に真っ赤に染まった砂煙を上げながら、倒れて起き上がらなかった。
HALの蹴りはそれだけで終わらない。
プラズマバリアで覆われたカービィもものともせず、ピンクの球体をサッカーボールのように蹴りぬく。
HALの足がとっさに放たれたプラズマで焼け焦げるが、それは蹴りの威力を弱めることには何も繋がらない。
カービィは吹き飛ばされ、レナと同じ様に壁で激突するまで何も出来なかった。
よろよろとカービィが体勢を整えようとした瞬間、HALの二撃目がカービィのすべてを押しつぶす。
レナと同じ一撃を受けたカービィの体は足で踏まれた場所がそっくりそのままなくなり、ピンクの球体だったものを欠損させる。
カービィのコピー能力が解除されたところで、HALはさらにもう一発蹴りを入れてカービィの肉片を蹴り飛ばした。

「ハァッ……ハァッ…………」

HALがゼイゼイと息を付くが、そこで響くのは間抜けな笛の音だけ。
だがHALはその笛がどれだけ危険なものかを知っている。
もし霊夢が死んでおらず、再び回復して立ち上がったら? 日吉が復活したら? レナにKASに遊戯にカービィが起き上がったら?
そのリスクを放置して休んではいられなかった。

「さっきからひっどい音で耳鳴りがして心底不快だったわ」
「ひ……ひっ!?」

突如つかさの視界にグズグズの肉隗が現れる。
しばらく目を凝らしてHALだと認識した頃には、つかさは腰を抜かして床に尻餅を打っていた。

「あんたの笛の力は知ってるわ、さぁ、その力で私を回復させなさい、さもないと……」
「い、嫌!」
「分かってるの?」
「あ、あなたみたいな人なんかに、私は絶対屈したりはしないッ!
 私はあなたとは違うッ! 私にはみんながいる、私の信じる皆が居る! だから絶対負けないッ!」

つかさが勢いよく啖呵を切る、しかしHALにとってそれは予定調和。

「じゃあ、笛を吹きたくなる楽しい遊びをしてあげる」
「へ……ああああぁぁぁぁぁaaaaAAAA!!!」

つかさの疑問は一瞬にして、激痛という名の代償で支払われた。

HALはつかさの指を掴むと、指を曲げてはいけない方向へと力を加える。
ぐりッっと嫌な音がして、つかさの指は決して曲がらない方向へと押し曲げられた。
それを、左手、右手と繰り返す。
つかさの嬌声をバックコールに、一つ一つHALは指を折ったり戻したりして様子を見る。

「少しはやる気になった?」
「……い、いやだ…………」
「ふぅん……、ところでつかさ、あんたは爪を剥がした事はある?」
「え……?」

鋭い針に変化したHALの指が、つかさの爪と指の間へと強引に割り込む。
再びホール中を切り裂くつかさの絶叫が響き、つかさの爪がパーンと勢いよく剥がされた。
その同じ工程を、先ほどとは違い、ゆっくり、ゆっくりと着実に実行していく。
つかさの口からは大量の唾が溢れ、脂汗が体中をひた走る。
手の爪を全て剥し終えたHALは、つかさの表情を見てニヤニヤと笑う。

「何勘違いしてるの、次は足よ」
「ひっ、ひぃぃぃぃいいいい!?」

HALはもがくつかさを一度殴りつけて大人しくし、つかさの足を握りつぶさないように、割れ物を扱うような手でゆっくりと靴を脱がす。
そして、つかさの足の爪にも、その鋭い凶器をねじ込んだ。
のた打ち回るつかさがどれだけ暴れても、それはHALにとって赤ん坊の児戯よりも弱く脆い力だった。
それでもつかさは、すべての爪を剥し終え、足指の骨をガタガタに折られてもなお、抵抗の意思を曲げることは無かった。

「強情ね、私にごめんなさいって一言言えば止めてあげたのに」
「ぜ…った……嫌…………」
「ふん、ならそれでいいわ」

HALはつかさを解放する。そして手から零れ落ちたFooさんの笛を手の持つ。

「こんなもの、使えないならいらない」

ホールの床に叩きつけられた笛は、余りの力に耐え切れないのか、バラバラに分解されてしまった。

「じゃ、死のうか?」

つかさの表情が恐怖一色に染まる。
それでも、決して許しを乞わないつかさの姿がHALにとっては不快でならなかった。






◆  ◆  ◆



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sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday 投下順 sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia
sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday 竜宮レナ sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia
sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday 柊つかさ sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia
sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday 武藤遊戯 sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia
sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday 日吉若 sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia
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sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday カービィ sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia
sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday KAS sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia
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