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星の光はすべて君 ◆irB6rw04uk





かっ……すす……

ぱらっ……

ごちゃごちゃとさまざま物が散らかしてある。
いや、失敬。これでもキチンと整理整頓して置いてある。
しかし、傍から見ればここは倉庫なのだろうか? そう疑問に思わざるを得ないくらい物であふれている。
ただ物が多いだけ。品揃えはばっちりってことさ。
現に香霖堂の看板は水平を保っている。

まぁ、誰がどう僕の店を思おうが知ったことではない。
要は買うか買わざるか? それだけだ。

とは言っても、今日はもう店じまいだ。詳しく説明するまでも無いだろう。
もう店の中は真っ暗だし、窓から覗く空にはきれいな満月が夕闇に浮かんでいる。
すばらしい名月だ。ここに焼酎でもあったら最高の目の肥しになってさぞや美味しいだろう。あとは美味しい御摘みがほしい。そんなことを思えるだろう。

しかし、今の僕はそんな気分になれそうに無い。

かっ……
僕は「えんぴつ」を走らせるのをやめた。

「――――――1週間か……」


きぃっとイスのばねがしなった。
これも詳しく話す必要はなさそうだね。そう、霊夢がバトルロワイアルという奇妙なゲームから生還して……だ。

この話を聞いたのは今から3日前。
霊夢から直接話を聞いた。

そう……3日前。


         〆


――カランカラン

僕は読んでいた本から目線をあげて、来店した人物を見定める。
「いらっしゃい」

なんて言わない。なぜなら買い物客でないことのほうが多いからである。
買わない客……すでに客ではないな。に「いらっしゃい」なんて言うだけ無駄だ。

僕は「いらっしゃい」とは言わなかった。つまり買わない客のほうだった。

「久しぶりだね。霊夢」
「ええ。お久しぶり……霖之助さん」

店内に入ってきた人物は霊夢だった。
霊夢は返事もそこそこに売り物のつぼの上に座った。

僕は不審に思う。
いつもの霊夢と行動パターンが違うからだ。
そして霊夢とは違う人物のパターンと重なった。

「座り心地、悪いわね」

そうつぼの座り心地を一蹴すると霊夢はずこずこと店の奥に進んで茶棚から勝手にお茶を取り出した。
この行動こそ霊夢の行動パターンである。
僕は最初に行った行動に疑問符を浮かべつつも
「だから、勝手にあがるなって言っているだろう」

僕もいつもの行動を行った。


        〆


「………まさか……」
「全部本当よ」

最初に切り出したのは霊夢だった。
お茶を僕の横において彼女もその横に腰掛けた。
今思えば口を湿らせるためだったのかもしれない……。霊夢はお茶を一口飲んだ。

幻想郷から霊夢が姿を消してからの数日間の間に起こった出来事。
バトルロワイアル。
人間、動物、妖怪……最後の一人になるまで殺しあうゲーム。
まるで作り話や童話のようなうつつ離れした内容だった。

無論、霊夢がこんな冗談を言うわけもない、むしろ霊夢がこんな趣味の悪い冗談を言うほうが冗談だ。
だからよりいっそう僕は混乱する。

混乱の最中でも霊夢は話し続けた。そう、まるで壊れた道具のように……


すべてを聞き終わったときには、僕は何を考えているかわからなかった。
驚くも、悲しむも、怒るのも……すべてを通り越して無になっていた。

霊夢は「話を聞いてくれてありがとう」と言ってすっかり冷めてしまったお茶を一口……

僕は霊夢に問う。
「これからどうするんだい?」
霊夢はさも当然のごとく
「これからって何が?」
と聞き返した。
「魔理沙は死んでしまったのだろう?」
核心に近い問いだ。それでも霊夢は
「お葬式を……挙げないとね」

そう……答えた。僕は
「そうか……」
と、答えるしかなかった。


その後霊夢は何をすると言うわけでもなく店内をぶらぶらと見回った後。
「お邪魔したわ」
「帰るのかい?」
「ええ。もうすぐ日が暮れるわ」

店の扉を開く。
――カランカラン

扉につけられたベルが鳴り響き店内に一筋の波長の長い赤色の夕日が差し込んだ。
霊夢は外に出て扉から手を離す。
ゆっくりしまる扉……

―――さびしくなるわ


閉じられる扉。


僕は大きなため息をつく。
まだ閉店時間には少々早かったが、店じまいの準備をして自室に入った。


        〆


次の日僕は人里まで来ていた。
理由は一つだけ。なんて言おうか考えつつ、霧雨家を訪れた。

霧雨の親父さんは僕を見るとすぐに客間に通してくれた。
一度姿を消し、お茶を持って再び現れた霧雨の親父さんは僕の正面に腰を下ろした。

「どうした? 随分と早いじゃないか」
霧雨の親父さんが疑問に思うのも無理はない。
僕は10年以上もの間会っていなかったことがあった。しかし、今度は1、2年である。周期的には外れすぎている。

僕は一口お茶を飲むと……本題に入ることにした。


        〆

「――そうか」
霧雨の親父さんは目頭を押さえて搾り出すように言った。
「馬鹿娘め……親より先に行く親不孝者め……」

僕はどうして魔理沙が勘当されたかは知らない。
だが例え勘当されたとしても実の娘であることは変えようのない事実だ。
霧雨の親父さんはぼぉっと空を見ながら言葉をこぼした。
「最後の最後まで魔法に人生を尽くしたのか……」
「はい。博麗の巫女の話によると……」
「そうか……」

それから霧雨の親父さんは無言で部屋を出て行った。
しばらくして霧雨店の店員が来て「今日は店をしめるそうです」と言った。

僕はその店員さんに「そうか。だったら僕も帰ることにするよ。霧雨の親父さんによろしく」と告げて霧雨家を後にした。


        〆

その後、霧雨家で何があったか僕には知る由もなかった。
今日も太陽は東から昇った。そして西に沈んだ。月が太陽が隠れたのを見計らったかのように東から顔を出す。
太陽が居ないことをいいことにあたかも自分が太陽になったかのように空を照らす月。

月はさんさんと輝き、夜空を明るく照らす。
今日の夜を歩くに灯りは必要なさそうだ。

10年、20年……50年……
変わること無い月だ。
――いや、2回くらいは変わったかもしれない。
でも、アベレージの視点から見れば変わらない月だ。

変化は唐突に起こるものだ……
一番近くの机を眺める。机の上に一つの8角形の塊が置かれ、月明かりに照らされている。

僕が作ったマジックアイテム、緋々色金製の火炉だ。
数々の殺し合いの中を渡り歩いてきたらしい。目立たない程度だが、希少金属「緋々色金」に無数の細かい傷がついている。
これだけでどれだけ激しい戦いがあったのか容易に想像ができた。想像を絶する戦いだったのだろう。

魔理沙はその戦いに敗れてしまった。
霊夢にいつも負けていた魔理沙のことだ。
好戦的な魔理沙のことだ……

ずいぶんと損をする立ち回りをしていたのだろう。
逃げればよかったものを、あくどい手を使えば勝てたものを……

いや、それは魔理沙ではないな。
YOKODUNAという者に敗れたらしいが、きっと正面突破、正々堂々の戦いだったのだろう。
そのほうがよっぽど魔理沙だ。

「天晴れ、だよ。 魔理沙……」
天を仰ぐ、雲ひとつ無い満月の夜空だ。


「しかし、星の光はどうしてこうも弱い?」

満月、月の光が最大の日だ。星と月は仲がいいように見えるが実はとても仲が悪い。
月の光は星の光をすべて隠してしまう。

満月の日に夜空を眺めても殆ど星の光は目に入らない。

「天の光は……すべて月……か……」


僕はもう一つ、机の上に置かれたものを持って外に出る。

僕の能力と紫が連れて来た妖怪たちのおかげで使い方はわかる。
教えてもらった記憶を探りながら抱え大筒に弾をつめた。

アリス・マーガトロイドが残した品、「RPG-7」だ。


        〆


僕は霊夢にこの品のメンテナンスを頼まれている。
そのほかにも「拳銃」とかバトルロワイアルで使用された道具とかの大半を押し付けられた。
何でも、「拳銃」は異世界人たちの世界に持って帰ると「銃砲刀剣類所持等取締法」という決まりに違反して御用になってしまうらしい。異世界人たちはどうやって武器もなしに己のみを守るのだろうか?
そんなことはさておき、僕はそれらの道具に興味があったので快くOKを出した。

その中の2つ「RPG-7」と「M1911A1」は霊夢が保管したいと言ってきた。
理由を聞いてみても、「この二つは特別なの」と言って、詳しいことは分からなかった。

僕はそれ以上の詮索もほどほどにして、霊夢の要望に応えた。
ただし、条件があった。
「この道具の点検をさせてほしい。壊れた道具を無理やり使おうとすると怪我をすることがあるからね」
こう霊夢に言うと納得した顔だったが、「だけど、点検の方法なんて分かるの?」と疑問を口にした。
もちろん銃なんて武器は幻想郷でそんなに簡単に見られるものじゃないし、僕も実際に見たのはこれが初めてだった。
だけど問題ない。霊夢と僕とでは「道の道具を扱う」と言う点に関しては僕のほうが優れている。

その後すぐに店に帰って二つの道具を調べた。
事前にどんなことができるのかを霊夢に聞いていたので、道具の点検はスムーズに進む。
「うぉおお!!! すげぇ! こーりんだ」
「すげぇ! ふんどしじゃねぇぞ!! どうなってるんだ!」
「掘られるぞ! アッー!」

とか言いながら店に来た妖怪「でじもん」に道具の詳細を聞いたりもした。
彼らは意外と素直に教えてくれた。ついでにわけの分からない物を「こーりん市場www」とか言いながら買っていった。いい客である。

「M1911A1」(えむいちきゅういちいちえーいち)と言う銃。「でじもん」が言うにはコルト・ガバメントらしいが、こちらの作業はあっさりと終了した。
名前は……かす……だったか? 彼はあまり使うことが無かったらしく傷が一つもなかった。「まがじん」と言う部分に弾薬がぎっしり詰まっていたので、「でじもん」に言われるまま試射してみると、普通に動いてくれた。
これならメンテナンスの必要はなさそうだ。
ただ、この銃の言うものは困った道具だ。強い反動と耳をふさぎたくなるような轟音。
何より弾幕の美しさのかけらも無い。

まぁその分、誰の弾幕よりも弾速が速いのは認める……

銃を使えば幻想郷最強になるのも夢ではなさそうだ。


反対に「RPG-7」は曲者だった。
銃身のいたるところにへこみがあったり、傷があったり……
相当ひどい使われようだったみたいだ。

でじもんたちも「あんまり使わないほうがいい」とコメントするほどだ。

それで?

使えないなら修理をするしかないな。
錆があるなら磨けばいい。
へこみがあるなら戻そう。
部品が無いなら補えばいい。

僕は「RPG-7」の修理に狂ったように没頭した。


        〆


月を見上げる。
いい「的」だ。

僕がメンテナンスをした「RPG-7」は生まれ変わっていた。
もうどうせ殆ど使うことがないんだ。
でじもんたちが「もういらないだろう」と言う店にあったすべての金属と緋々色金。
これを惜しみなく使った新しい「RPG-7」だ。
銃身が冷たい緋色で月の光を威嚇気味に反射している。

弾まで緋々色金で作ることはできなかったけれど、十分な存在感をあらわしている。

レチクルを覗き、照準を【月】にあわせた。

これが最初の試射で、メンテナンスの終了を告げる。


ドッ――――!!

闇を切り裂く爆音。RPG-7が光の矢を放った。

例えまがい物であったとしても、本物は世界の柱の人形であったジアース。それを葬ったこのRPG-7はただのRPG-7ではなかった。
さらに伝説の金属、緋々色金で出来たRPG-7だ。

発射音に負けないくらいの轟音を発しながら榴弾は炸裂した。
月の光すらも覆い隠さんばかりの閃光が天を照らす。

榴弾の爆破エネルギーとプラスして何かの不可思議な力が月を襲う。
次の瞬間、月は大爆発を起こした。

月の光を含んだ霧のような粒子が空を舞う。
まるで……星、

そう―――――――星だ!


満月が破壊されたことによって隠されていた星が姿を現す。

砕け散って空間を漂う星、そして本来の光の星。

星の光が夜空と幻想郷のすべてを多い尽くした。


「月は壊した……今日の光はすべて星だ。魔理沙……」


僕はRPG-7を調子をチェックすると店に戻った。
そういえば霊夢と紫が宴会をすると言っていた。

いつもは妖怪が出席する宴会に顔は出さないが……RPG-7を渡すついでに宴会に出向いてもいいかもしれない……


数え切れない星の夜空――
    ――月が壊れた跡地を一閃の流れ星が輝いた。



ep-2:THE END.60%(後編) 投下順 ep-4:SAMURAI DEEPER WAGASHI
sm233:第三次ニコロワ大戦Ⅴ ――Happily ever after 博麗霊夢 ep-7:永劫回帰
  森近霖之助  



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