※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

惑いて来たれ、遊惰な暗黒神 ◆wC9C3Zbq2k




「はぁ……」

 見上げても岩肌でできた天井。星の光も届かない闇のなかでつかさはため息をつく。
ランタンはことのはに渡している。黙っていると心まで暗くなっていきそうだった。

ことのはさんはボールに入っていたモンスターだけど、私より強くて賢くて、今も結界をどうにかしようと頑張ってくれている。なのにどうして私にはなにもできないんだろう。
これでも巫女なのに、形式的な儀礼以外何も学んでこなかった。ひょっとしたら何かを知ることができていたかもしれないのにフツーの女子高生として日々を浪費してきた。

それはそれでかけがえのない大切な日常だったとつかさは思う。それでも、今はそんなことに使っていた時間が惜しかった。
もう二度とその幸せな日々が戻ってくることはないだろう。姉のかがみも親友のこなたもここで死んでしまったのだ。もし自分までここで亡くなるようなことがあれば少女三人の失踪という形になって真実はどこにもなくなってしまう。

「せめて心だけでも、強くなくちゃ」

まず非力であることを受け入れる。悔しいが今の自分には戦闘力も知識も足りない。
こなたを守ろうと必死になったときはありえない力が出せた気がするが、あれも何か別の力が働いた結果だろう。日本刀なんて普段の自分では重くて振り回すこともままならないのだから。

ツンツン

いつのまにか寄ってきていたことのはが膝をつつく。準備ができたのだろうか。
だが、ことのはの告げた言葉は彼女の理解をすこしだけ超えていた。

「血」
「なあに? 舌打ちじゃないよね」

曰く、結界は魔導書なしの詠唱だけで発動可能な黒魔法では正直厳しいこと。
曰く、魔法の触媒として用いる人魚の泡や青い結晶を初めとするマジックアイテムが一切ないこと。

「ですから、処女の生き血で喚起のための魔方陣を描きます。協力して下さい」
「あわわー。黒魔法ってことばの意味通り黒いんだね……」

妖精の剣の刃先をこちらに向けることのは。
生気の宿っていない瞳でそれをやられると今にも首を刎ねられそうで非常に怖い。

「えとえと……半分ずつじゃダメかな?」

つかさは提案する。
痛いのを我慢するのが苦手なこともあるが、多量の出血は体力も思考力も大きく奪うはずだ。できれば一人で引き受けたくはない思ったのだが、ことのはは首を振った。

「もしかしてー、オトナなんだ!?」

ことのはは否定も肯定もしない。実際は非処女とかそういったレベルの問題ではなく、彼女がポケモンの中でもゴーストタイプであるがゆえに「生き血」は出せないだけなのだがつかさには知りようがなかった。
仕方なくつかさは彼女の求めるがまま、指先――それでも魔方陣を描くには到底足りず、結局両手首に剣の刃を滑らせる。

上着の袖を切って止血のために強く巻き、襲ってきた貧血のふらつきを和らげるため横になる。ことのはに任せきりなのはよくないと思うが、もう今のつかさに手伝えることなどない。
ことのはは魔方陣を描ききり、ぶつぶつと棒読み気味に何か言っている。
「イア イア シアエガ―――」

どうやら呪文らしい。魔方陣ができて呪文を唱えている。結界の完成ももう少しのはずだ。つかさは安堵する。
だけど、何かがおかしかった。魔方陣が僅かに隆起しそこで緑色の血管のようなものが脈を……なにかが、出てこようとしている。

「ひっ……」
気付いた途端、震えが止まらなくなった。根源的な恐怖。
つかさはことのはを探す。彼女は一体何をしたのだろう。結界を作るために悪魔の力を借りようとして失敗した?
混乱する頭でようやくことのはの姿を見つけ出す。彼女は魔方陣から半身を乗り出したその異形をぼんやりと眺めている。

「ここは結界のせいでこの世界にいないと気付けない場所でシュね。お前にはシュマがどんな形に見えているんでシュか?」
「グロキュアポケモンの、さやチャンに似ていると思いました」
「話す価値もなさそうな答えで残念でシュ。もう一人は?」

会話、していた。その異形とことのはが。
口などどこにもないその緑色の肉塊から声が聞こえていた。発声器官があるのかテレパシーなのは定かではないが、彼女はそれを怖れず意思の疎通を可能にしている。
……見えているものが、違う。つまり、私の恐怖心があれを怪物に見せている?
つかさは深呼吸する。黒魔術で呼び出した悪魔ならこんなことがあっても不思議じゃない。意思を強く持てば本当の姿が見えてくるはずだ。

「私には……」
 だめだ。何度目をこらしても緑色の触手がうねりをあげる一つ目の軟体生物にしか見えない。そう見えているのだから嘘はつかずにいようとつかさは決心する。
「威厳のある緑色のタコ……かな?」

怪物の単眼がぎょろりと縦に伸びつかさを覗き込んだ。
「人の尺度で神は測れない。けれどそれはもっとも限りなく正解に近いでシュ」
「あ、ありがと……。おっきなタコでいいんだ」
「シュマの普段の姿は、地球人の基準だと木星の数倍おっきいでシュからね!」
大きすぎるにも程がある。けれど、震えは止まって心も落ち着いていた。これが黒魔術だというならば彼に願いを叶えてもらわないといけない。つかさは一歩踏み出す。

「結界を、作りたいんです」
「出すもの出してからお願いはするものでシュ」

死んだら魂を差し出せとでもいうのだろうか。それで生きているみんなを助けることができるなら安いものだとつかさは思った。同時に違うことにも思い当たる。

「触手でいやらしいことしたいとかなら、ダメだからね」
こなたの家に行ったときにそういう本があった。こなちゃんに未成年なのにとかそもそも女の子なのにとか言うつもりはないけど、自分があんな目に遭うのは絶対に嫌だ。
世界の危機だろうと、乙女としてその一線だけは譲れない。
「酷い言い草でシュね。我が盟友ロックマンの頼みだからあの星の生命根絶は我慢してあげてまシュのに」

実際は地球の大魔導師に相打ちに持ち込まれた経緯もあってもとから別格扱いなのだが、異界の邪神がわざわざ女子高生にそこまで説明をする義理はない。

「……ロックマンさん?」
「知り合いでシュか。ならお前の世界にはX-MENやファンタスティック・フォーもいることになりまシュ」
「ファンタスティック・フォー? そんなのいないよ。ロックマンさんはここにいたんだし」

その答えを聞いて緑色の怪物はしばらく目を閉じ、勇敢なロボットがこの地で果てたという事実を確認したのか頷いた。
「ロックマンも消えたし、お前がいたのも全然違う世界の滅ぼしても構わない地球でシュね。なら帰りまシュ」
「え、ええっ!? なんでそうなっちゃうの?」
「取るに足らない生き物は滅ぶべきでシュ。そうでないなら抗い続ければいいでシュ」
「黒魔術でお呼ばれしたんだから結界くらい作っていこうよ、ね?」
「きれいな宝石か美味しいカレーを今すぐ捧げるなら結界くらいお安い御用でシュが?」
「うぅ……無理だよぅ……てか魂とかじゃないんだ……」

困惑するつかさと、神を斬るのはチェーンソーとつぶやきながら辺りを見回すことのは。当然そんなものもここにはない。

「……この結界を無効化したいなら、素直に結界そのものを消せばいいんでシュ」
「でもでも、神社を壊しても結界には影響がないってことのはさんが言ってたし」

こくりと頷くことのは。

「伝説のバロック式ソプラノリコーダーの音色か、しゃべる杖の忘れさせられている魔法。使えばその道具は壊れるだろうけれど、お前でもどちらか使えば結界は壊せまシュ」
「なんでそんなことがわかるの!?」
「シュマが神だから。神に仕える人間も落ちたものでシュね」

いくら父が宮司でも日本神道にすら詳しくない人間が邪神の凄さなど知るはずもない。つかさは理不尽だと思った。

「というか、忘れちゃってる魔法なんて知りもしない私が使えるの?」
「そこまで面倒見る気はありまシェン。さらばでシュ!」

空間に裂け目が生まれ、その奥になにかぞわぞわしたものが蠢いているのがつかさには見えた。腰が抜けそうになるがどうにか尻餅をついただけで耐える。
そうしてその隙間に飛び込んで、蛸を思わせる緑色の奇怪な神は消えていった。

静寂が戻る。残されたのは、ことのはとつかさのみ。
「大丈夫でしたか?」
「よっこいしょういちっ……うん、平気。行かなくちゃ」

手を貸してもらって貧血にもかまわず一気に立ち上がる。
しゃべる杖は知らないが、ソプラノリコーダーならきっとあれだという心当たりがつかさにはあった。
城にいた誰かが自分のかわりに持っていてくれている。あとは破損せずちゃんと残っていれば、きっと吹ける。
あの神様は知るはずのないことまで知っていた。見た目は悪いが信じられる。

「そうだよね、琴姫さん。一緒に歌ったあのメロディーでいいんだよね!」
何を吹けばいいか自分は知っている。何の技能もないつかさにとってそれは初めて見える光明だった。

探さなければいけないのは、笛を持っている可能性の高い人物。すなわち城から出てあの老人のロボットと戦った中の誰か。おそらくはみな一緒にいることだろう。

具体的には、霊夢・レナ・日吉・遊戯・KASの五人。KASは見かけなかったから別行動かもしれない。
他は敵か、もう帰らぬ人。名簿であのとき城にいたと教えてもらったみんな。彦麿・アリス・春香・カービィ。みんなこんなわけのわからないことのために死んでいった。

「たったの五人……」 
つかさは考えをまとめようとしただけなのにとぞっとする。殺し合いなんてばかげてるとみんな思っていたはずなのに、こんなにも多くの命が失われている。
自らの罪から逃れたいなどというつもりは毛頭なかった。だが、ここには狂気が満ちている。そう思わざるを得なかった。

「何かうまく探す方法はないかな? ことのはさん」
「えいえんに」
即答。だがあれで探すのはいくら強い覚悟があっても御免被りたいとつかさは思う。夜は視界も悪い。

「そっか。じゃあどうしても急がないといけないときはお願いするね」
「今がその時ですよね」

またも即答……って? あれれ!? なんで私浮き上がってるのかな? そうつかさが思う間もなく、

「いやぁあああああ!!」

薄暗い夜の空を、二人の女子高生が乱高下しながら飛んでいった。


【D‐3/二日目・夜中 空中】
【柊つかさ@らき☆すた】
[状態]:全身に打撲、手と両手首に深い傷、熱と貧血と疲労でグロッキー
[装備]:ロールバスター@ロックマンシリーズ(損傷有)、くうき砲@ドラえもん
[道具]:ことのは(妖精の剣)@ヤンデレブラック
[思考・状況]
第一行動方針:仲間を探し出し、結界破壊のためのアイテムを受け取る
第二行動方針:もう一人の遊戯に会ったら謝罪する。
第三行動方針:死んでしまった皆の分も頑張って生きる。
第四行動方針:春香の最期が気になる。
第五行動方針:魅音を殺したことをレナに伝える。
第六行動方針:ハルヒ達のことが気になる。

※Fooさんの笛でさくらさくらを吹けば結界破壊ができるかもと思っています
※レイジングハートがスターライトブレイカー・プラスに関するデータを抹消されているようですが、今のつかさの知識ではそこまで理解できませんでした
※ヤンマーニBGM+SIGP210によるヤンマーニモードは、肉体、精神に膨大な疲労を残します。
※ヤンマーニBGM+SIGP210による覚醒中のみ、鬼狩柳桜が抜けました。
 他の人にも抜けますが、本来の抜く方法ではないためか、BGM終了後、人知れず鞘に戻っています。

※シュマゴラス@MUGENは興味を失い別の宇宙へ行ってしまいました



sm223:僕らのニコニコを守って! ~新旧外道対決~ 時系列順 sm226:星神飛行 HALッ☆
sm224:カービィのキャッスルトライアル 投下順 sm226:星神飛行 HALッ☆
sm221:ちょっと言葉さんで結界解除してくる(準備編) 柊つかさ sm227:明日の勇気 受け継ぐ者(後編)



|