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 毎週金曜日の夜はいつもよりも夜更かしをしている。 今までなら夜の11時まで起きていられずにベッドの中でぐっすりと眠っていた。 それが今でははっきりと目が冴え、ベッドに潜ってもしっかりと”一時間は”起きていられるようになった。 何で一時間限定なのかというと、舞美ちゃんのラジオが放送される時間が一時間だからである。 枕元にお父さんから借りた小さなラジオを置き、アンテナを伸ばして、無事に電波がキャッチ出来るように調節する。 たまにノイズが混じることもあるけど、ほとんど綺麗な状態で番組が聴ける。  番組が始まると、枕をクッション代わりに抱き締めてベッドの上でごろごろと転がって聴いていることが多い。 舞美ちゃんの声をまたラジオで聴けるかと思うと、自分が一緒に出ていなくても嬉しいのだ。 前の番組では僕と愛理がいたから舞美ちゃんにツッコミを入れる人がいたけど、この番組には一人もいない。 舞美ちゃんは一人で番組が出来るかな、と心配になりながら、一言も聞き洩らすまいと耳を傾ける。 『こんばんは~矢島舞美です』  おっとりした舞美ちゃんの声で番組が始まり、僕の心臓の鼓動はどんどん早くなる。 鏡をみたら、きっと気持ち悪い顔をしているのが自分でもわかる。 ℃-uteで一緒に活動しているといっても、四六時中いるわけではないから、自分がいない時の舞美ちゃんの声が聴けるのはすごく嬉しい。 今日もまたおかしなことを言い出すんだろうな、と次に会ったらネタにしてやろうと思っていたら、つい聴き入ってしまう話をしだした。 『私が℃-uteで仲がいいのは・・・』  たぶん、この一瞬が僕にはどれだけ長く感じられたかを表現するのは難しい。 鼓動が早くなるのとは逆に、時間の流れだけがやけに感じた。 舞美ちゃんが仲がいいと言うのは誰だろう、と予想はついていたけど、僕と言ってほしい気持ちが強い。 言ってもらえないのはわかっていても、僕は『岡井千聖』と言ってほしかった。 舞美ちゃんが仲がいいというのはあの娘だ、鈴木愛理。 だけど、ラジオから聴こえてきた名前は僕の予想外の名前だった。  私の大好きなお姉ちゃん・舞美ちゃんの単独番組が秋から始まる。 中学生に上がったばかりの私が起きているには少しきつい時間でも、頑張って起きていることを決めた。 仕事で帰りが遅くなることがあるから、少しくらい無理して起きているのは平気だ。 今日も舞美ちゃんは『噛み噛みクィーン』のニックネーム通りに、何度もセリフを噛んで大変なんだろう。 危なっかしい舞美ちゃんだけに、側にいる時だけは私が守ってあげなくっちゃって強く思う。 小さい時から妹みたいって可愛がってくれていたけど、大きくなってきた今は逆に守ってあげたくなる。 お家では舞美ちゃんもお姉ちゃんではなくて、二人のお兄ちゃんがいる末っ子だもんね。 ℃-uteではリーダーの役目を果たそうと、本人なりに仕事をこなしていても、どこか抜けているのがいい証拠だ。 そんなリーダーは、どこを探してもうちの舞美ちゃんだけだろう。 でも、舞美ちゃんは℃-uteにはいなくてはならない大事なリーダーなんだ。  パジャマに着替え、いつでも寝られる状態にして、ステレオのスイッチをつけてみる。 舞美ちゃんの声をラジオでまた聴けるのは素直に嬉しいけど、少し複雑な気持ちがなくはない。 あいつも舞美ちゃんのラジオを心待ちにしているはずだからだ。 千聖は舞美ちゃんが大好きだから、始まったばかりのこの番組を毎週聴いていているはずだ。 本人に訊かなくても、土曜日に仕事があって会ったときは嬉しそうな顔でいるから、そうなのだろう。 あのにんまりした笑顔をみると、好きなのにムカつく。 何さ、舞美ちゃんにデレデレしちゃって、と嫉妬丸出しの鋭い目でしか見られない。 舞美ちゃんに奪われるのは悔しいけど、舞美ちゃんなら仕方ない気持ちも心の中にはある。 スポーツ万能で優しくて、天然ボケはみているだけで癒される。 あいつが好きになるのも仕方ないとは思いつつ、どこかライバル視してみている自分がいるのも知っている。 そんな目で大好きなお姉ちゃんをみている自分はとても嫌だ。 私はお姉ちゃんが大好きなはずなのに・・・  お姉ちゃんの番組は進み、ある質問が来たところで自分が℃-uteでは誰と仲がいいか話し始めた。 お泊りにも行った仲だから愛理と言う気がしていた私は、呼ばれた名前にすっかり驚いてしまった。 『萩原舞ちゃんです』 わ、私!? 意外な名前を言われて、少しの間放心状態でラジオをみつめてしまう。 本当に私って言ったの?、って思わずステレオに近づいて、また言ってくれないかなってお願いする。 お願い、もう一度だけ名前を教えて。 でも番組は進んで、舞美ちゃんはBerryz工房では千奈美ちゃんと仲がいい、と話をしていた。 その後は番組のことがちっとも頭に入ってきてくれなかった。 千聖のことを思えば、あそこは千聖と言ってほしかったけど、私と言ってくれたことが嬉しい。 どちらも大事だから、どちらにも幸せになってほしいのに、私を含めて全員が幸せになるラストなんてないんだ。 皆が幸せになれればいいのに、と夢をみながら私はステレオの電源を切った。 [[次のページ→>舞美編 2]]

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