「5」(2008/08/11 (月) 17:32:02) の最新版変更点
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僕が参加する事になった℃-uteは女の子七人組でスタートした。
キッズでの活動があったから、僕らは結成の時点で家族みたいに仲のいいグループになっていた。
女の子同士なのに頬っぺたにチュッとかは当たり前で、抱き合ったりするのは日常茶飯事。
スタッフの人からもこんなに仲のいいグループは初めてだって褒められる、そんなグループだ。
ただ、それには抵抗感があった僕はキスしないとばつが悪い気もするので、程ほどにはキスもするにはしていたんだ。
それと今回のキスでは全然違うのは、鈍感な僕にもわかる。
舞ちゃんは目を瞑り、顔をあげているんだから、これは唇と唇でキスをしようってことだ。
「ちさと、早くしてよぉ~来ないならこっちからいくよ」
「ま、待ってよ。僕からいくからちょっとだけ待って」
「じゃあちょっとね。1、2、3、4、5。はい、おしまい」
「早すぎだよぉ~僕、女の子とキスなんて初めてなんだから緊張しちゃうんだ」
「舞だって男の子とは初めてだもん。ね、早くぅ」
別に焦らしてるわけじゃないんだ、僕の決心がつかないだけだ。
本当の意味でファーストキスを舞ちゃんとする。
ダメだ、緊張しすぎて僕からいくなんてとても無理だよ。
かといって、舞ちゃんからキスさせるのもそれはそれでどうもなって子供ながらに思う。
決心がつかない僕は舞ちゃんとどうキスしようか顔の角度を色々と動かしてみる。
どれもイマイチしっくりこないから、頭を振ってるおかしな人みたい。
「ちさとぉ~」
「ご、ごめんよぉ。だって、どんな感じでしたらいいかわからなくって」
「もうこっちだって緊張してるんだから早くしなさい」
「わ、わかったから焦らせないで」
僕はようやく決心がつき、舞ちゃんにキスしようと顔を近づけていく。
と、ここでおかしなことに気づく。
舞ちゃんの顔が近い、いや、近づいている。
僕も近づけていってるから近づくのは当たり前なんだけれど、舞ちゃん自身が近づいているような気がする。
目の錯覚かな、とも思った一瞬、舞ちゃんの唇が僕の唇に触れた。
僕と舞ちゃんの唇が触れたのはすっごい短い。
僕にはその時間が永遠くらいに感じられたんだ、とっても長く。
「ちさとが遅いから舞からいっちゃった。次はちさとからキスしてね」
「・・・舞ちゃん・・・ぼ、僕・・・」
「プロレスには負けてもキスくらいはちさとからしてよね、男の子なんだから」
女の子って奴は本当にわけがわからない。
キスしてドキッとしたとかいいつつ、次の瞬間にはケロッとした顔で別のことができるんだから。
僕にはキスの余韻が大きくて、とてもじゃないけれど何か手がつけられるような状態じゃなかった。
突っ立ってる僕を取り残して、舞ちゃんは憧れの人舞美ちゃんに「お姉ちゃん」とか言いながら抱きついていた。
舞美ちゃんもよしよしなんて頭を撫でて、実の妹みたいに可愛がる。
僕もああして頭を撫でてほしいけれど、自分じゃああは出来ないとわかってる。
だから、舞美ちゃんには悪戯をしてしまうことが多い。
たとえば、ちょっと前だと舞美ちゃんのお弁当にお砂糖いれて困らせてやろう、とご飯に振り掛けた。
舞美ちゃんは味も恋も鈍感だから、僕が好きだって事にも気づかなかった。
ストレートに好きだ、って言えれば問題ないけれど、男なら誰でもする好きな子に悪戯することしか出来ない。
情けないよ、全く。
「ちさと、聞いてる?そろそろデビュー近いんだって」
「誰が?」
「うちら。℃-uteがね、来年の春にデビューするってスタッフの人が言ってたの」
「へぇ~嬉しいなぁ。僕、夢が叶うよ」
「でしょ~舞もね、皆でデビュー出来て嬉しいな。でも・・・」
舞ちゃんはでもの続きは言わなかった。
たぶん、めぐも一緒にデビューしたかったね、って言うつもりだったんだ。
めぐこと村上愛は僕らのメンバーの一人で、この話が出る前に男の人と歩いている写真を撮られた後で辞めてしまった。
ファンの皆には学業専念でやめた事になってるけれど、本当はあれが原因なのはメンバーは全員知ってる。
そのせいもあって、しばらくは皆ピリピリした日が続いて、外を歩く時はずっとカメラに気をつけて歩いた。
「僕はデビュー出来るだけで嬉しいんだ。それだけが夢で活動してきたんだからさ」
「舞も、ちさとがいてくれて嬉しい。ずっと一緒にいたい」
舞ちゃんとはデビューが近づく頃には、もう何度もキスをしていた。
ただディープキスという舌を入れるキスまではしたことがない。
そこは好きだって言いつつ、プロレスごっこが出来てしまう年頃だったからその先には踏み込んでなかった。
そんな僕を遠目で見守る舞美ちゃんを意識していても、舞ちゃんとプロレスごっこする自分が恥ずかしかった。
「ちっさーと舞ちゃんはまだ子供だね」、って何気ない言葉がショックだった。
女の子のふりをしなきゃならないはずの僕は、舞美ちゃんに男の子として意識してほしい気持ちでいる。
バレたら、℃-uteにはいられなくなるって言うのに。
「デビューしたら、きっと忙しくなるね。そしたら、前みたいにデートできなくなるね」
「大丈夫だよ、その分いっぱいいられるじゃないか」
「でも、その時はちさとは女の子じゃん。男の子のちさとといっぱいいたいの」
舞ちゃんはこの頃になると、独占欲を発揮して僕は舞ちゃんのもの扱いになっていた。
悪い気はしない、でも僕には舞美ちゃんの事もあったから複雑な気持ちがしていた。
メンバー内だから恋愛なんて思われない、それだけが唯一の救いだ。
恋愛は禁止、めぐの事があって以来益々厳しくなった。
だから、メンバーは恋愛出来ない鬱憤を別のところで発散させようと色んな事に取り組んだ。
フットサルもその一つで、僕はボールを蹴って走るとやっぱり男の子だから血が騒いだ。
監督からも「岡井は筋がいい」と褒めてくれたから、僕はやたらと頑張った。
舞美ちゃんにかっこいい、なんて思ってもらえるとは思わずにがむしゃらにボールを蹴った。
そんな僕に舞美ちゃんが振り向いてくれるチャンスが到来した。
僕よりも背が高くて、優しくて、何にでも全力投球な舞美ちゃんに気づかれてしまったんだ。
本当ならショックを受けるはずの僕も、舞美ちゃんになら気づかれてもよかった。
やっと僕の想いを告げられるんだから。
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僕が参加する事になった℃-uteは女の子七人組でスタートした。
キッズでの活動があったから、僕らは結成の時点で家族みたいに仲のいいグループになっていた。
女の子同士なのに頬っぺたにチュッとかは当たり前で、抱き合ったりするのは日常茶飯事。
スタッフの人からもこんなに仲のいいグループは初めてだって褒められる、そんなグループだ。
ただ、それには抵抗感があった僕はキスしないとばつが悪い気もするので、程ほどにはキスもするにはしていたんだ。
それと今回のキスでは全然違うのは、鈍感な僕にもわかる。
舞ちゃんは目を瞑り、顔をあげているんだから、これは唇と唇でキスをしようってことだ。
「ちさと、早くしてよぉ~来ないならこっちからいくよ」
「ま、待ってよ。僕からいくからちょっとだけ待って」
「じゃあちょっとね。1、2、3、4、5。はい、おしまい」
「早すぎだよぉ~僕、女の子とキスなんて初めてなんだから緊張しちゃうんだ」
「舞だって男の子とは初めてだもん。ね、早くぅ」
別に焦らしてるわけじゃないんだ、僕の決心がつかないだけだ。
本当の意味でファーストキスを舞ちゃんとする。
ダメだ、緊張しすぎて僕からいくなんてとても無理だよ。
かといって、舞ちゃんからキスさせるのもそれはそれでどうもなって子供ながらに思う。
決心がつかない僕は舞ちゃんとどうキスしようか顔の角度を色々と動かしてみる。
どれもイマイチしっくりこないから、頭を振ってるおかしな人みたい。
「ちさとぉ~」
「ご、ごめんよぉ。だって、どんな感じでしたらいいかわからなくって」
「もうこっちだって緊張してるんだから早くしなさい」
「わ、わかったから焦らせないで」
僕はようやく決心がつき、舞ちゃんにキスしようと顔を近づけていく。
と、ここでおかしなことに気づく。
舞ちゃんの顔が近い、いや、近づいている。
僕も近づけていってるから近づくのは当たり前なんだけれど、舞ちゃん自身が近づいているような気がする。
目の錯覚かな、とも思った一瞬、舞ちゃんの唇が僕の唇に触れた。
僕と舞ちゃんの唇が触れたのはすっごい短い。
僕にはその時間が永遠くらいに感じられたんだ、とっても長く。
「ちさとが遅いから舞からいっちゃった。次はちさとからキスしてね」
「・・・舞ちゃん・・・ぼ、僕・・・」
「プロレスには負けてもキスくらいはちさとからしてよね、男の子なんだから」
女の子って奴は本当にわけがわからない。
キスしてドキッとしたとかいいつつ、次の瞬間にはケロッとした顔で別のことができるんだから。
僕にはキスの余韻が大きくて、とてもじゃないけれど何か手がつけられるような状態じゃなかった。
突っ立ってる僕を取り残して、舞ちゃんは憧れの人舞美ちゃんに「お姉ちゃん」とか言いながら抱きついていた。
舞美ちゃんもよしよしなんて頭を撫でて、実の妹みたいに可愛がる。
僕もああして頭を撫でてほしいけれど、自分じゃああは出来ないとわかってる。
だから、舞美ちゃんには悪戯をしてしまうことが多い。
たとえば、ちょっと前だと舞美ちゃんのお弁当にお砂糖いれて困らせてやろう、とご飯に振り掛けた。
舞美ちゃんは味も恋も鈍感だから、僕が好きだって事にも気づかなかった。
ストレートに好きだ、って言えれば問題ないけれど、男なら誰でもする好きな子に悪戯することしか出来ない。
情けないよ、全く。
「ちさと、聞いてる?そろそろデビュー近いんだって」
「誰が?」
「うちら。℃-uteがね、来年の春にデビューするってスタッフの人が言ってたの」
「へぇ~嬉しいなぁ。僕、夢が叶うよ」
「でしょ~舞もね、皆でデビュー出来て嬉しいな。でも・・・」
舞ちゃんはでもの続きは言わなかった。
たぶん、めぐも一緒にデビューしたかったね、って言うつもりだったんだ。
めぐこと村上愛は僕らのメンバーの一人で、この話が出る前に男の人と歩いている写真を撮られた後で辞めてしまった。
ファンの皆には学業専念でやめた事になってるけれど、本当はあれが原因なのはメンバーは全員知ってる。
そのせいもあって、しばらくは皆ピリピリした日が続いて、外を歩く時はずっとカメラに気をつけて歩いた。
「僕はデビュー出来るだけで嬉しいんだ。それだけが夢で活動してきたんだからさ」
「舞も、ちさとがいてくれて嬉しい。ずっと一緒にいたい」
舞ちゃんとはデビューが近づく頃には、もう何度もキスをしていた。
ただディープキスという舌を入れるキスまではしたことがない。
そこは好きだって言いつつ、プロレスごっこが出来てしまう年頃だったからその先には踏み込んでなかった。
そんな僕を遠目で見守る舞美ちゃんを意識していても、舞ちゃんとプロレスごっこする自分が恥ずかしかった。
「ちっさーと舞ちゃんはまだ子供だね」、って何気ない言葉がショックだった。
女の子のふりをしなきゃならないはずの僕は、舞美ちゃんに男の子として意識してほしい気持ちでいる。
バレたら、℃-uteにはいられなくなるって言うのに。
「デビューしたら、きっと忙しくなるね。そしたら、前みたいにデートできなくなるね」
「大丈夫だよ、その分いっぱいいられるじゃないか」
「でも、その時はちさとは女の子じゃん。男の子のちさとといっぱいいたいの」
舞ちゃんはこの頃になると、独占欲を発揮して僕は舞ちゃんのもの扱いになっていた。
悪い気はしない、でも僕には舞美ちゃんの事もあったから複雑な気持ちがしていた。
メンバー内だから恋愛なんて思われない、それだけが唯一の救いだ。
恋愛は禁止、めぐの事があって以来益々厳しくなった。
だから、メンバーは恋愛出来ない鬱憤を別のところで発散させようと色んな事に取り組んだ。
フットサルもその一つで、僕はボールを蹴って走るとやっぱり男の子だから血が騒いだ。
監督からも「岡井は筋がいい」と褒めてくれたから、僕はやたらと頑張った。
舞美ちゃんにかっこいい、なんて思ってもらえるとは思わずにがむしゃらにボールを蹴った。
そんな僕に舞美ちゃんが振り向いてくれるチャンスが到来した。
僕よりも背が高くて、優しくて、何にでも全力投球な舞美ちゃんに気づかれてしまったんだ。
本当ならショックを受けるはずの僕も、舞美ちゃんになら気づかれてもよかった。
やっと僕の想いを告げられるんだから。
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