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 僕らを後ろから抱きしめたまま、舞美ちゃんはしばらく停止していた。 たぶん、頭が今の状況についていっていないんだろう。 当然といえば当然の状況だし、愛理や舞ちゃんと違って頭脳派でもないから混乱してるな。 僕が逆の立場でも同じようなことになっていただろうし、舞美ちゃんの気持ちはわからないでもない。 この体勢でいる数秒間が長く感じられ、気持ちが悪くなってきた。 受け入れられなかったらどうしようかなんて、そうならなければわからないのにもう考えてしまっている。 今までにバレた三人が特殊だったと考えるしかないよ、簡単にはこんな事受け入れられるはずないんだ。 だから、舞美ちゃんが受け入れられなかったとしても恨んだり、怒ったりしたらいけない。 僕が知ってる舞美ちゃんならきっと言ってくれるはずだ、平気だって。 「男の子ってちっさーが?」  まずは舞美ちゃんはまた質問してきた。 整理がついていないから、確認の意味もこめて聞いてくるのは当然だよ。 僕はこれに「うん」とだけ言って、頷いた。 舞美ちゃんは待って、と言った後に僕から離れて首を傾げて唸っている。 「ねぇ、本当に?」 「だから、さっきから頷いているじゃないか。うん、って」 「だよね・・・ちっさーが実は男の子で、だけど℃-uteのメンバーで活動していて・・・え、えぇぇぇ~」  ここでようやく理解したらしい舞美ちゃんは、叫び声をあげて驚いた。 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、「どうしようどうしよう」と騒いでいる。 舞美ちゃんらしい反応で安心した反面、僕はこの後が肝心だってことを思い出した。 まだちゃんと舞美ちゃんの口から「平気だよ」でもいいから、受け入れてくれた合図がほしい。 舞美ちゃんに受け入れられなかった時のことを考えると、少し気持ちがめげてしまう。 「いつから男の子だったの?」 「いつからって最初からだよ。生まれた時から僕は男の子で、オーディションには女の子のふりして受けたんだ」  『いつから男の子だったの?』なんて間抜けな質問するのは舞美ちゃんしかいないよね、後にも先にもさ。 皆、知ってももう少しまともな質問しそうだよ、さすがのえりかちゃんでもさ。 「ちょっと考えさせて・・・」  両方の頬に手を当てて、考え込むこと約五秒。 舞美ちゃんはついに僕に受け入れるか受け入れないかの返事をくれた。 「ちっさーはちっさーだよ」 「じゃ、じゃあ、僕はメンバーでずっといていいんだね」 「もちろん。男の子でも女の子でも大事な℃-uteのメンバーだから、そんな事関係ないよ。これからもずっと一緒だよ」 「ま、舞美ちゃん・・・大好きだ」 「こ、こらぁ~いきなり抱きついてきてぇ。甘えん坊なんだから」 「だ、だ、だってぇ~嬉しいんだよぉ~舞美ちゃんが辞めてとか言ったらどうしようか不安だったんだ」  僕はずっと不安を抱えたまま、℃-uteの活動を続けてきたんだ。 いつか男の子だってバレて、皆から遠ざけられて唄うことも出来ずに℃-uteからいなくなる事を想像した。 体がだんだん男の子らしくなっていくと、今度は僕が男になってしまって大好きな℃-uteの歌が唄えなく事も想像した。 とくに中学生になってからのこの半年は不安だらけの毎日だった。 それ以上に楽しいことが多い毎日でもあったから、℃-uteの活動を続けられることが出来たんだ。 「ちっさーがいて、私がいて、えりがいて、なっきぃがいて、愛理がいて、舞ちゃんがいて、栞菜がいて、  皆がいないと℃-uteじゃないの。もう誰かが抜けるとかそういうのは嫌だよ」  舞美ちゃんなりに考えてくれていたんだ、僕がバレたらどうなるかってことを。 バレたらきっと今みたいに活動は出来ないから、六人で活動することになるんだろうな。 六人で活動するメンバーを想像したら、自分がいないことの悔しさを感じてしまった。 ファンの人たちを突然いなくなって悲しませたりなんかしたくないんだ。 僕をいつも可愛くなったね、って応援してくれる人たちがいたからこそ頑張ってこられたんだ。 だから、その想いに応えるためにも僕は℃-uteのメンバーとして唄っていきたい。 「ありがとう、舞美ちゃん。あ、あ、あのね・・・僕が舞美ちゃんを好きって言った気持ちは本当だよ」 「うん?あぁ~それなら私もちっさーの事好きだよ」 「ち、違うんだぁ。僕はね、男の子として舞美ちゃんが好きなんだ」 「え、えぇぇぇ~」  また驚くんだから、舞美ちゃんは・・・ 愛理とも約束してキスはしたけど、ここまできたら舞美ちゃんに僕の気持ちを伝えなきゃ。 僕の気持ちを受け取ってくれるかはわからない。 こればっかりはメンバーとか関係ないから、予想なんて全然できない。 フラれてしまっても、僕はそれを舞美ちゃんが出して答えとして受け入れるつもりでいる。 じっと目をみつめ、返事を待つ。 舞美ちゃんが告白してから、みるみるうちに顔が赤くなって俯いて「そ、そんなぁ」って言っているのが聞こえる。 サバサバしてるようで、こういうところが女の子全開なのはズルいよ。 まるで僕がそういうの弱いのを知っているみたいだから。 顔を上げ、見上げる僕と視線がぶつかった舞美ちゃんがゆっくりと返事を聞かせてくれた。 「あ、あのね、まだちっさーを男の子として好きとかはわかんない。だって、男の子って知ったの今日だから。  ただね、告白するのって勇気がいるじゃない?勇気を振り絞って、告白してくれて嬉しかった」  照れ臭そうに笑う舞美ちゃんの笑顔は最高だった。 ちゃんとした返事は聞かせてもらってないけど、今回は告白できたんだから進展したんだ。 舞美ちゃんが僕を男の子としてみてくれるんだから、まだまだ見返すチャンスはある。 その時まで、僕は℃-uteとしても一人の男の子としても『全力投球』していくつもりだ。 舞美ちゃん、それまで岡井千聖を大きな愛でもてなしてね。
 僕らを後ろから抱きしめたまま、舞美ちゃんはしばらく停止していた。 たぶん、頭が今の状況についていっていないんだろう。 当然といえば当然の状況だし、愛理や舞ちゃんと違って頭脳派でもないから混乱してるな。 僕が逆の立場でも同じようなことになっていただろうし、舞美ちゃんの気持ちはわからないでもない。 この体勢でいる数秒間が長く感じられ、気持ちが悪くなってきた。 受け入れられなかったらどうしようかなんて、そうならなければわからないのにもう考えてしまっている。 今までにバレた三人が特殊だったと考えるしかないよ、簡単にはこんな事受け入れられるはずないんだ。 だから、舞美ちゃんが受け入れられなかったとしても恨んだり、怒ったりしたらいけない。 僕が知ってる舞美ちゃんならきっと言ってくれるはずだ、平気だって。 「男の子ってちっさーが?」  まずは舞美ちゃんはまた質問してきた。 整理がついていないから、確認の意味もこめて聞いてくるのは当然だよ。 僕はこれに「うん」とだけ言って、頷いた。 舞美ちゃんは待って、と言った後に僕から離れて首を傾げて唸っている。 「ねぇ、本当に?」 「だから、さっきから頷いているじゃないか。うん、って」 「だよね・・・ちっさーが実は男の子で、だけど℃-uteのメンバーで活動していて・・・え、えぇぇぇ~」  ここでようやく理解したらしい舞美ちゃんは、叫び声をあげて驚いた。 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、「どうしようどうしよう」と騒いでいる。 舞美ちゃんらしい反応で安心した反面、僕はこの後が肝心だってことを思い出した。 まだちゃんと舞美ちゃんの口から「平気だよ」でもいいから、受け入れてくれた合図がほしい。 舞美ちゃんに受け入れられなかった時のことを考えると、少し気持ちがめげてしまう。 「いつから男の子だったの?」 「いつからって最初からだよ。生まれた時から僕は男の子で、オーディションには女の子のふりして受けたんだ」  『いつから男の子だったの?』なんて間抜けな質問するのは舞美ちゃんしかいないよね、後にも先にもさ。 皆、知ってももう少しまともな質問しそうだよ、さすがのえりかちゃんでもさ。 「ちょっと考えさせて・・・」  両方の頬に手を当てて、考え込むこと約五秒。 舞美ちゃんはついに僕に受け入れるか受け入れないかの返事をくれた。 「ちっさーはちっさーだよ」 「じゃ、じゃあ、僕はメンバーでずっといていいんだね」 「もちろん。男の子でも女の子でも大事な℃-uteのメンバーだから、そんな事関係ないよ。これからもずっと一緒だよ」 「ま、舞美ちゃん・・・大好きだ」 「こ、こらぁ~いきなり抱きついてきてぇ。甘えん坊なんだから」 「だ、だ、だってぇ~嬉しいんだよぉ~舞美ちゃんが辞めてとか言ったらどうしようか不安だったんだ」  僕はずっと不安を抱えたまま、℃-uteの活動を続けてきたんだ。 いつか男の子だってバレて、皆から遠ざけられて唄うことも出来ずに℃-uteからいなくなる事を想像した。 体がだんだん男の子らしくなっていくと、今度は僕が男になってしまって大好きな℃-uteの歌が唄えなく事も想像した。 とくに中学生になってからのこの半年は不安だらけの毎日だった。 それ以上に楽しいことが多い毎日でもあったから、℃-uteの活動を続けられることが出来たんだ。 「ちっさーがいて、私がいて、えりがいて、なっきぃがいて、愛理がいて、舞ちゃんがいて、栞菜がいて、  皆がいないと℃-uteじゃないの。もう誰かが抜けるとかそういうのは嫌だよ」  舞美ちゃんなりに考えてくれていたんだ、僕がバレたらどうなるかってことを。 バレたらきっと今みたいに活動は出来ないから、六人で活動することになるんだろうな。 六人で活動するメンバーを想像したら、自分がいないことの悔しさを感じてしまった。 ファンの人たちを突然いなくなって悲しませたりなんかしたくないんだ。 僕をいつも可愛くなったね、って応援してくれる人たちがいたからこそ頑張ってこられたんだ。 だから、その想いに応えるためにも僕は℃-uteのメンバーとして唄っていきたい。 「ありがとう、舞美ちゃん。あ、あ、あのね・・・僕が舞美ちゃんを好きって言った気持ちは本当だよ」 「うん?あぁ~それなら私もちっさーの事好きだよ」 「ち、違うんだぁ。僕はね、男の子として舞美ちゃんが好きなんだ」 「え、えぇぇぇ~」  また驚くんだから、舞美ちゃんは・・・ 愛理とも約束してキスはしたけど、ここまできたら舞美ちゃんに僕の気持ちを伝えなきゃ。 僕の気持ちを受け取ってくれるかはわからない。 こればっかりはメンバーとか関係ないから、予想なんて全然できない。 フラれてしまっても、僕はそれを舞美ちゃんが出して答えとして受け入れるつもりでいる。 じっと目をみつめ、返事を待つ。 舞美ちゃんが告白してから、みるみるうちに顔が赤くなって俯いて「そ、そんなぁ」って言っているのが聞こえる。 サバサバしてるようで、こういうところが女の子全開なのはズルいよ。 まるで僕がそういうの弱いのを知っているみたいだから。 顔を上げ、見上げる僕と視線がぶつかった舞美ちゃんがゆっくりと返事を聞かせてくれた。 「あ、あのね、まだちっさーを男の子として好きとかはわかんない。だって、男の子って知ったの今日だから。  ただね、告白するのって勇気がいるじゃない?勇気を振り絞って、告白してくれて嬉しかった」  照れ臭そうに笑う舞美ちゃんの笑顔は最高だった。 ちゃんとした返事は聞かせてもらってないけど、今回は告白できたんだから進展したんだ。 舞美ちゃんが僕を男の子としてみてくれるんだから、まだまだ見返すチャンスはある。 その時まで、僕は℃-uteとしても一人の男の子としても『全力投球』していくつもりだ。 舞美ちゃん、それまで岡井千聖を大きな愛でもてなしてね。 [[←前のページ>11]]   [[次のページ→>13]]

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