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 春になり、僕らは目前に迫った新アルバムイベントとBerryz工房との合同コンサートの準備に追われていた。 とくに僕らの場合はアルバムイベントもあるので、そちらの練習にも力を入れていて、気が抜けない。 舞美ちゃんは今年に入ってから、安部さんとのユニットもあったりするし、何だかモーニング娘。さんのミュージカルの 応援ユニットにも参加するって話をマネージャーさんから聞いている。 今日も汗だくになりながら踊る姿をみて、全力投球すぎて倒れはしないか心配になる。 いつでも笑顔でいて疲れたりはしないのかな、安部さんみたいに何が面白くて笑っているみたいにはならないでほしいな。 「ちさと君、どこをずっとみつめているのかな~。あれ、もしかして舞美ちゃんかな? 図星か」 「え、えりかちゃん。べ、別にいいじゃないか。舞美ちゃん、今日も頑張ってるなって思っただけだよ」 「そうかい、そうかい。いやいや、君のあの告白には驚かされたよ。思わず、『でも嘘なんだよ』って言いたくなったよ」 「嘘ならいいんだけど、事実なんだからしょうがないよ」 「まぁね、ちょっと確かめさせてもらっちゃったしね」  舞美ちゃんをみつめる僕に声をかけてきたのは、この前、この僕が男の子だと教えたえりかちゃんだった。 本格的にレッスンが忙しくなる合間を縫って、僕はえりかちゃんと栞菜をレッスンスタジオの近くのケーキ屋さんに誘った。 二人と向かいに座り、僕はどこから話したものかと悩みながら、ゆっくりとキッズになる前から説明をしだした。 はじめは二人とも僕とこんな場所に来るのが珍しいからと、笑っていたが話していくうちに笑いが消えていった。 それもそうなんだろう、僕が言っている事は冗談なんてものじゃないのだから。 「僕ね、二人には内緒にしていたけど、実は・・・男の子なんだ。黙ってたりして、ごめんね」  しばらく黙って聞いていた二人のうち、えりかちゃんが『えぇ~!?』と叫び声をあげ、身を乗り出して、顔をじっとみつめてきた。 当然の反応だろうな、えりかちゃんの反応は。 僕が男の子だと知った時の反応としては、他のメンバーの反応の方が珍しいくらいなんだと思う。 間近でみるえりかちゃんの顔は彫りが深くて、人によく外国人だと間違えられるというのも判る造りをしている。 舞美ちゃんとは種類の違う美人さんなのだ。 その美人さんに身を乗り出して、顔を近づけられたら照れてしまうのは男なら無理はない。 だから、えりかちゃんには申し訳ないけど、ちょっとだけ体を後退させた。 「ちさとが男の子・・・え、えぇ~!?マジ?」  えりかちゃんは目を丸くして、口は片方を吊り上げ、見ているこっちが驚くくらいの顔をしている。 僕は身を縮こませて、えりかちゃんの顔をちらちらと窺いながら、栞菜の方をみてみた。 栞菜は右手で身体を抱えるようにして、僕をちらちらと見ながらも結局は俯いてしまうという様子だ。 急に顔色もよくなくなっているみたいだし、栞菜には話すべきじゃなかったのかな。 女の子たちで組んでいるはずなのに、男の子が実は混じっていましたなんて洒落にならないものな。 栞菜からすれば、それよりも自分の花園がどこぞのオス蜂が蜜を吸いに荒らしにきたようなものかもしれない。 何せ、栞菜はラジオ放送で好きな男の子のタイプを『私、女の子が好きです』って言っちゃうつわものだし。 「うん、実はそうなんだ。これはもう他のメンバーは知っていて、それでもいていいって皆言ってくれたんだ。  二人にもいずれは話すつもりでいたんだけど、遅れちゃった」 「そ、そうなんだ。ふぅ~ん、ちさとが男の子ね。ま、わからなくもないかな。ね、栞菜」 「え!?うん、確かにちっさーは男の子っぽい仕草をよくしてたし、見た目も男の子っぽかった」 「だよね、言われてみれば納得できてしまうんだよね。意外や意外。そうだったか」  拍子抜けするような早さで、えりかちゃんもまた男の子である事を納得してしまった。 このグループのメンバーはどうにも一般的な考えの女の子はいないらしい。 栞菜は不安そうな顔で僕を何度も窺ってきているから、やっぱり信じられないのだろう。 そうだよな、この間もプロレスごっこをして取っ組み合いになってるんだもんな、栞菜とは。 栞菜は身体を僕にすっごい密着させていたのも、僕が女の子である前提があったからなんだよな。 となると、もう気軽に舞ちゃんと僕のプロレスごっこには参加しないかもしれない。 「私は信じたくないけど、ちっさーがそう言うならそうなんだね。でも、どうして隠してた私たちに告白する気になったの?」 「あ、そっか。舞美たちには話したくせに私たちには内緒にしてたなんて酷いにもほどがあるぞ。  言いたい事があるならさっさと白状をしたまえよ、ちさと君」 「僕ね、あの・・・舞美ちゃんを好きなんだ。一人の女の子として好きになっちゃったんだ」 「えぇ~!?」  本日、何度目かのえりかちゃんの『えぇ~!?』が店内に響き渡る。 周りの人たちはえりかちゃんの叫び声に驚きながらも、静かにしなさいと視線に込めて睨んでくる。 視線を感じたえりかちゃんは苦笑いして、片手を頭の後ろに持っていき、何度もごめんなさいと頭を下げた。 えりかちゃんは最近収録したBerryz工房とのDVDマガジンでも、結構ノリノリでおばあちゃん役やっていたって言うし、 里田さんみたいにバラエティ出演が決まったら喜んで出演するのが目に浮かぶ。 そしたら、きっと司会者の人や他の出演者の人たちも笑うような回答を連発する気がする。 「ちさと君、何を笑ってるのかな~君はさっきとんでもない告白をしたんだよ。わかってるの?」 「わかってるよ。それに舞美ちゃんには一度告白はしてるんだ。悩みっていうのは、その」  僕はあのバスツアーのあった日の出来事を話してみた。 栞菜は真剣に聞いてくれているのに、えりかちゃんは頷いてはくれるのにそれがかえって心配になってくる。 本当に聞いてくれているのか、はたまたただ頷いているだけなのか、さっぱりわからない。 『うぅ~ん』とえりかちゃんが声をあげる頃、僕の話は終わった。 「そうだね、舞美がずっとメンバーでいてほしいって言って、自分から誘ったくせにダメっていうかな。  舞美がお風呂入ってる間に、ちさと君、いけない事でもしちゃったんじゃないか。おい、このスケベ」 「そ、そんな事するわけないだろう。馬鹿馬鹿しい。エッチな事なんかするもんか」 「エッチな事とは言ってませ~ん、さては下着を嗅ぐとかそんな事を想像したんだろう。うっひゃ~青春真っ只中だね」 「えりかちゃんの馬鹿。してないもんはしてないんだ。それにさっきみたいなのを誘導尋問って言うんだぞ」 「難しい言葉よく知ってるね~エッチな小説でも読んで覚えたか?」 「お姉ちゃん、ちっさーに悪いよ。悪乗りはそのへんにしといたら。舞美ちゃんもやっぱり恥ずかしかったんじゃないかな。  男の子だって知っちゃったわけだし、今まで通りに何もかもがいくわけないよ」  栞菜の言うことは尤もだった。 舞美ちゃんがいくら優しくて、何でも受け入れてくれる人でもこればっかりは別問題なんだ。 僕が男の子であったりしなければこんな気持ちにならずにすんだし、舞美ちゃんにも苦しい思いをさせずにすんだのに。 ずっといていいとは言ってくれたけど、それにだって期限はあるんだから、℃-uteにはいられないのかな。 僕は泣き虫だな、こんな事で涙を流すなんてさ。 「ちさと、泣くな。あんたがいけない事なんてないんだよ。私はあんたがいなくなったら、寂しくて泣いちゃうよ。  一緒に動物のお墓を立ててくれる人いなくなっちゃうでしょ」  えりかちゃんは頼れるな、と僕が思った瞬間だった。 えりかちゃんは僕の隣の席に移動し、泣き出した僕を抱きしめて、優しく包み込んでくれた。 この時、えりかちゃんがいなかったら僕には涙をどう止めていいかわからなかったと思う。 付き合ってくれたえりかちゃんがいなかったら、そんな事とても考えたくなかった。
 春になり、僕らは目前に迫った新アルバムイベントとBerryz工房との合同コンサートの準備に追われていた。 とくに僕らの場合はアルバムイベントもあるので、そちらの練習にも力を入れていて、気が抜けない。 舞美ちゃんは今年に入ってから、安部さんとのユニットもあったりするし、何だかモーニング娘。さんのミュージカルの 応援ユニットにも参加するって話をマネージャーさんから聞いている。 今日も汗だくになりながら踊る姿をみて、全力投球すぎて倒れはしないか心配になる。 いつでも笑顔でいて疲れたりはしないのかな、安部さんみたいに何が面白くて笑っているみたいにはならないでほしいな。 「ちさと君、どこをずっとみつめているのかな~。あれ、もしかして舞美ちゃんかな? 図星か」 「え、えりかちゃん。べ、別にいいじゃないか。舞美ちゃん、今日も頑張ってるなって思っただけだよ」 「そうかい、そうかい。いやいや、君のあの告白には驚かされたよ。思わず、『でも嘘なんだよ』って言いたくなったよ」 「嘘ならいいんだけど、事実なんだからしょうがないよ」 「まぁね、ちょっと確かめさせてもらっちゃったしね」  舞美ちゃんをみつめる僕に声をかけてきたのは、この前、この僕が男の子だと教えたえりかちゃんだった。 本格的にレッスンが忙しくなる合間を縫って、僕はえりかちゃんと栞菜をレッスンスタジオの近くのケーキ屋さんに誘った。 二人と向かいに座り、僕はどこから話したものかと悩みながら、ゆっくりとキッズになる前から説明をしだした。 はじめは二人とも僕とこんな場所に来るのが珍しいからと、笑っていたが話していくうちに笑いが消えていった。 それもそうなんだろう、僕が言っている事は冗談なんてものじゃないのだから。 「僕ね、二人には内緒にしていたけど、実は・・・男の子なんだ。黙ってたりして、ごめんね」  しばらく黙って聞いていた二人のうち、えりかちゃんが『えぇ~!?』と叫び声をあげ、身を乗り出して、顔をじっとみつめてきた。 当然の反応だろうな、えりかちゃんの反応は。 僕が男の子だと知った時の反応としては、他のメンバーの反応の方が珍しいくらいなんだと思う。 間近でみるえりかちゃんの顔は彫りが深くて、人によく外国人だと間違えられるというのも判る造りをしている。 舞美ちゃんとは種類の違う美人さんなのだ。 その美人さんに身を乗り出して、顔を近づけられたら照れてしまうのは男なら無理はない。 だから、えりかちゃんには申し訳ないけど、ちょっとだけ体を後退させた。 「ちさとが男の子・・・え、えぇ~!?マジ?」  えりかちゃんは目を丸くして、口は片方を吊り上げ、見ているこっちが驚くくらいの顔をしている。 僕は身を縮こませて、えりかちゃんの顔をちらちらと窺いながら、栞菜の方をみてみた。 栞菜は右手で身体を抱えるようにして、僕をちらちらと見ながらも結局は俯いてしまうという様子だ。 急に顔色もよくなくなっているみたいだし、栞菜には話すべきじゃなかったのかな。 女の子たちで組んでいるはずなのに、男の子が実は混じっていましたなんて洒落にならないものな。 栞菜からすれば、それよりも自分の花園がどこぞのオス蜂が蜜を吸いに荒らしにきたようなものかもしれない。 何せ、栞菜はラジオ放送で好きな男の子のタイプを『私、女の子が好きです』って言っちゃうつわものだし。 「うん、実はそうなんだ。これはもう他のメンバーは知っていて、それでもいていいって皆言ってくれたんだ。  二人にもいずれは話すつもりでいたんだけど、遅れちゃった」 「そ、そうなんだ。ふぅ~ん、ちさとが男の子ね。ま、わからなくもないかな。ね、栞菜」 「え!?うん、確かにちっさーは男の子っぽい仕草をよくしてたし、見た目も男の子っぽかった」 「だよね、言われてみれば納得できてしまうんだよね。意外や意外。そうだったか」  拍子抜けするような早さで、えりかちゃんもまた男の子である事を納得してしまった。 このグループのメンバーはどうにも一般的な考えの女の子はいないらしい。 栞菜は不安そうな顔で僕を何度も窺ってきているから、やっぱり信じられないのだろう。 そうだよな、この間もプロレスごっこをして取っ組み合いになってるんだもんな、栞菜とは。 栞菜は身体を僕にすっごい密着させていたのも、僕が女の子である前提があったからなんだよな。 となると、もう気軽に舞ちゃんと僕のプロレスごっこには参加しないかもしれない。 「私は信じたくないけど、ちっさーがそう言うならそうなんだね。でも、どうして隠してた私たちに告白する気になったの?」 「あ、そっか。舞美たちには話したくせに私たちには内緒にしてたなんて酷いにもほどがあるぞ。  言いたい事があるならさっさと白状をしたまえよ、ちさと君」 「僕ね、あの・・・舞美ちゃんを好きなんだ。一人の女の子として好きになっちゃったんだ」 「えぇ~!?」  本日、何度目かのえりかちゃんの『えぇ~!?』が店内に響き渡る。 周りの人たちはえりかちゃんの叫び声に驚きながらも、静かにしなさいと視線に込めて睨んでくる。 視線を感じたえりかちゃんは苦笑いして、片手を頭の後ろに持っていき、何度もごめんなさいと頭を下げた。 えりかちゃんは最近収録したBerryz工房とのDVDマガジンでも、結構ノリノリでおばあちゃん役やっていたって言うし、 里田さんみたいにバラエティ出演が決まったら喜んで出演するのが目に浮かぶ。 そしたら、きっと司会者の人や他の出演者の人たちも笑うような回答を連発する気がする。 「ちさと君、何を笑ってるのかな~君はさっきとんでもない告白をしたんだよ。わかってるの?」 「わかってるよ。それに舞美ちゃんには一度告白はしてるんだ。悩みっていうのは、その」  僕はあのバスツアーのあった日の出来事を話してみた。 栞菜は真剣に聞いてくれているのに、えりかちゃんは頷いてはくれるのにそれがかえって心配になってくる。 本当に聞いてくれているのか、はたまたただ頷いているだけなのか、さっぱりわからない。 『うぅ~ん』とえりかちゃんが声をあげる頃、僕の話は終わった。 「そうだね、舞美がずっとメンバーでいてほしいって言って、自分から誘ったくせにダメっていうかな。  舞美がお風呂入ってる間に、ちさと君、いけない事でもしちゃったんじゃないか。おい、このスケベ」 「そ、そんな事するわけないだろう。馬鹿馬鹿しい。エッチな事なんかするもんか」 「エッチな事とは言ってませ~ん、さては下着を嗅ぐとかそんな事を想像したんだろう。うっひゃ~青春真っ只中だね」 「えりかちゃんの馬鹿。してないもんはしてないんだ。それにさっきみたいなのを誘導尋問って言うんだぞ」 「難しい言葉よく知ってるね~エッチな小説でも読んで覚えたか?」 「お姉ちゃん、ちっさーに悪いよ。悪乗りはそのへんにしといたら。舞美ちゃんもやっぱり恥ずかしかったんじゃないかな。  男の子だって知っちゃったわけだし、今まで通りに何もかもがいくわけないよ」  栞菜の言うことは尤もだった。 舞美ちゃんがいくら優しくて、何でも受け入れてくれる人でもこればっかりは別問題なんだ。 僕が男の子であったりしなければこんな気持ちにならずにすんだし、舞美ちゃんにも苦しい思いをさせずにすんだのに。 ずっといていいとは言ってくれたけど、それにだって期限はあるんだから、℃-uteにはいられないのかな。 僕は泣き虫だな、こんな事で涙を流すなんてさ。 「ちさと、泣くな。あんたがいけない事なんてないんだよ。私はあんたがいなくなったら、寂しくて泣いちゃうよ。  一緒に動物のお墓を立ててくれる人いなくなっちゃうでしょ」  えりかちゃんは頼れるな、と僕が思った瞬間だった。 えりかちゃんは僕の隣の席に移動し、泣き出した僕を抱きしめて、優しく包み込んでくれた。 この時、えりかちゃんがいなかったら僕には涙をどう止めていいかわからなかったと思う。 付き合ってくれたえりかちゃんがいなかったら、そんな事とても考えたくなかった。 [[←前のページ>25]]   [[次のページ→>27]]

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