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「舞ちゃんが最近私と一緒にファッションの事をよく話すようになったわけわかる?」 「そういう年頃になったから?」 「鈍いんだね、ちっさーは。あなたに振り向いてほしいからに決まってるじゃん。  そう考えれば、つい最近になってあんなにファッションに興味を持ち出した理由も納得できるんだよね」  舞ちゃんがお洒落に気を使うようになったのは僕でもわかってはいたが、原因が僕にあるとは想像もしていなかった。 年頃だから当然、それくらいの認識しかなかったのは、僕がそういうものに目覚めていないからだろうか。 お母さんが買ってくる服を着るのが普通の僕には、女の子のファッションに関する感覚がわからない。 だから、舞ちゃんが僕に振り向いてほしいからお洒落をするのもわかるんだけど、飲み込めない部分が残る。 こういう面はまだ子供なんだな、僕ってやつは。 参ったな、舞ちゃんの事もこれくらいしかわからないのに高校生の舞美ちゃんの事になると余計にわからないぞ。 舞美ちゃんが普段、どんな事に喜びを感じ、笑い、悲しみ、怒り、涙するのか、それがわからないのに好きになってくれるかな。 でも、突拍子もない発言をする舞美ちゃんの感覚をわかろうとするのには無理があるかな。 わかろうとするなら、自分も舞美ちゃんになるくらいでないと、他人には共感なんて出来なさそうだ。 「そんな舞ちゃんの気持ちを踏みにじりたくないでしょ、ちっさーは。なら、私の言う事聞いてね」 「うん、まぁ」 「愛理にはなるべく私が話しかけるようにするから、ちっさーはりぃちゃんに話しかけたりしてほしいんだ。  ずっと一緒にいるのは無理でも、これくらいなら出来るでしょ」  やる、出来る、が前提で話が進む栞菜の話に、僕はもうやる道しか残されていなかった。 やらなかったら栞菜が舞ちゃんに何を言い出すわからない。 こんな事なら栞菜には舞美ちゃんの話はするべきじゃなかったな、と後悔し始めた。 だけど、一緒に活動してきたメンバーに後ろめたい気持ちを抱えたまま活動するよりはましだったのを思えば、 やっぱり後悔はあるけど話してよかったんだ。 「わかった、それくらいならやるよ。だから、舞ちゃんには舞美ちゃんの話はしないでね」 「平気、ちっさーが約束を守ってくれるなら私は絶対に言わないよ」  栞菜とりぃちゃんの事を約束し、僕は再びレッスンに戻っていった。 それからの日々は、アルバムイベントが迫って、栞菜との約束はどこか頭の隅にいってしまっていた。 完全に忘れたわけではなかったというと言い訳になるけど、それでも約束を実行に移せなかったのは悪かったと思う。 僕にはよみうりランドのイベントが何よりも楽しみだったし、舞ちゃんといる事が楽しかったせいだ。 舞ちゃんも進学する嬉しさからか、ここのところは笑顔が多い。 たまに人を殺せる視線を浴びせることがあって、それにはさすがの僕でも震え上がってしまう。 そんな面も僕には魅力的にうつるんだよ、とは照れていえてないけれど、好きだったりする。 でも、本当にこんなどっちも好きなままでいいわけがなく、愛理から注意を受けた。 「ちっさー、舞ちゃんと仲良くしてるけど、そんな事でいいの?」 「うん、舞美ちゃんにはバスツアーで拒否されちゃってから、僕からはあんまり話しかけてないかも」 「でしょ。舞美ちゃんはちっさーが悲しんでるんじゃないかって心配してるぞ。前みたいにしてあげなよ」 「僕もそうしたいよ。でも、でも、ついタイミング逃しちゃって、話しかけられなくなってる」 「言い訳しないの、君は誰が好きなんだっけ?」 「舞美ちゃんです」 「なら、舞美ちゃんの悲しむことはしないこと。いい?」 「はい」  愛理はラジオ収録の日から、随分変わった気がする。 接し方を含めて、一緒にいる時の空気や雰囲気が優しくなった。 これには僕のことを認めてくれるような気がして、本当の意味でいい仲間になったと思っている。 僕だけ愛理とりぃちゃんから置いてけぼりをくっていたから、誰かに認められるのはわけもなく嬉しい。 愛理は僕にとって、やっぱり仲間であると同時にライバルだし、愛理にもそう思ってもらいたい。 ずっと憧れてきて、嫉妬して、追い抜こうともがいてきた相手なんだし。 「誰にでも優しいのはよくないよ、ちっさー。それがいつかちっさーの身を滅ぼすことになるからね」 「うん、了解。最近は愛理と話すのも楽しいよ」 「私もね、ちっさーとは友達になれた気がするの。今でも仲間だけど、友達ってより深い関係だと思うから」 「友達か、いいね。愛理とはずっとライバルでもいたいんだよ、そこも忘れないでね」 「ちっさーも負けず嫌いだもんね。ライバルって言うなら、それもありだよ」  今にしてみれば、愛理には栞菜の話をしておけばよかったのかもしれない。 愛理はエッチな事に好奇心がありすぎて、栞菜を女の子に興味をもたせたのは愛理だった、と栞菜は話していた。 愛理は好奇心を追求するなら何でもするタイプで、栞菜はそれの被害者といえる。 つまり、元から栞菜が女の子に興味があるわけではないらしく、℃-uteに入ったおまけみたいなものらしい。 こうなると、愛理ってつくづく罪作りな女の子だな。 栞菜はあんなにも真剣なのに、愛理は男でも女でもいいんだから。 でも、恋愛面で二股をかけそうになっている僕がいえる立場でもないから、ここは黙っておく。 「どうした、ちっさー。溜息なんかついて、らしくないぞ」 「うぅん、愛理って将来は恋愛で人を振り回すのかなって思ってさ」 「馬鹿だな、全然恋愛経験もないのに、それはないだろ。ちっさーこそ、人を振り回すなよ」 「わかってるさ。お互い、肝に命じようよ。一途に恋愛するって」 「いいよ、ちっさー君。君が舞美ちゃんを好きなのに、舞ちゃんにも手を出したら許さないからね」  2008年の僕の誕生日、ファンクラブ限定のソロイベントはまさにどちらを取るか悩まされる事になる。 舞美ちゃん、舞ちゃん、そして愛理によるサプライズは愛理が仕組んだとしか思えない組み合わせだった。 ここでどちらかを選べ、口に出さなくてもそういわれているプレッシャーを感じた。 にっこり笑っているはずの三人の顔が、この時だけは怖くなった。 そして、僕はまだ、恐怖のサプライズが待つソロイベントを知らなかった。
「舞ちゃんが最近私と一緒にファッションの事をよく話すようになったわけわかる?」 「そういう年頃になったから?」 「鈍いんだね、ちっさーは。あなたに振り向いてほしいからに決まってるじゃん。  そう考えれば、つい最近になってあんなにファッションに興味を持ち出した理由も納得できるんだよね」  舞ちゃんがお洒落に気を使うようになったのは僕でもわかってはいたが、原因が僕にあるとは想像もしていなかった。 年頃だから当然、それくらいの認識しかなかったのは、僕がそういうものに目覚めていないからだろうか。 お母さんが買ってくる服を着るのが普通の僕には、女の子のファッションに関する感覚がわからない。 だから、舞ちゃんが僕に振り向いてほしいからお洒落をするのもわかるんだけど、飲み込めない部分が残る。 こういう面はまだ子供なんだな、僕ってやつは。 参ったな、舞ちゃんの事もこれくらいしかわからないのに高校生の舞美ちゃんの事になると余計にわからないぞ。 舞美ちゃんが普段、どんな事に喜びを感じ、笑い、悲しみ、怒り、涙するのか、それがわからないのに好きになってくれるかな。 でも、突拍子もない発言をする舞美ちゃんの感覚をわかろうとするのには無理があるかな。 わかろうとするなら、自分も舞美ちゃんになるくらいでないと、他人には共感なんて出来なさそうだ。 「そんな舞ちゃんの気持ちを踏みにじりたくないでしょ、ちっさーは。なら、私の言う事聞いてね」 「うん、まぁ」 「愛理にはなるべく私が話しかけるようにするから、ちっさーはりぃちゃんに話しかけたりしてほしいんだ。  ずっと一緒にいるのは無理でも、これくらいなら出来るでしょ」  やる、出来る、が前提で話が進む栞菜の話に、僕はもうやる道しか残されていなかった。 やらなかったら栞菜が舞ちゃんに何を言い出すわからない。 こんな事なら栞菜には舞美ちゃんの話はするべきじゃなかったな、と後悔し始めた。 だけど、一緒に活動してきたメンバーに後ろめたい気持ちを抱えたまま活動するよりはましだったのを思えば、 やっぱり後悔はあるけど話してよかったんだ。 「わかった、それくらいならやるよ。だから、舞ちゃんには舞美ちゃんの話はしないでね」 「平気、ちっさーが約束を守ってくれるなら私は絶対に言わないよ」  栞菜とりぃちゃんの事を約束し、僕は再びレッスンに戻っていった。 それからの日々は、アルバムイベントが迫って、栞菜との約束はどこか頭の隅にいってしまっていた。 完全に忘れたわけではなかったというと言い訳になるけど、それでも約束を実行に移せなかったのは悪かったと思う。 僕にはよみうりランドのイベントが何よりも楽しみだったし、舞ちゃんといる事が楽しかったせいだ。 舞ちゃんも進学する嬉しさからか、ここのところは笑顔が多い。 たまに人を殺せる視線を浴びせることがあって、それにはさすがの僕でも震え上がってしまう。 そんな面も僕には魅力的にうつるんだよ、とは照れていえてないけれど、好きだったりする。 でも、本当にこんなどっちも好きなままでいいわけがなく、愛理から注意を受けた。 「ちっさー、舞ちゃんと仲良くしてるけど、そんな事でいいの?」 「うん、舞美ちゃんにはバスツアーで拒否されちゃってから、僕からはあんまり話しかけてないかも」 「でしょ。舞美ちゃんはちっさーが悲しんでるんじゃないかって心配してるぞ。前みたいにしてあげなよ」 「僕もそうしたいよ。でも、でも、ついタイミング逃しちゃって、話しかけられなくなってる」 「言い訳しないの、君は誰が好きなんだっけ?」 「舞美ちゃんです」 「なら、舞美ちゃんの悲しむことはしないこと。いい?」 「はい」  愛理はラジオ収録の日から、随分変わった気がする。 接し方を含めて、一緒にいる時の空気や雰囲気が優しくなった。 これには僕のことを認めてくれるような気がして、本当の意味でいい仲間になったと思っている。 僕だけ愛理とりぃちゃんから置いてけぼりをくっていたから、誰かに認められるのはわけもなく嬉しい。 愛理は僕にとって、やっぱり仲間であると同時にライバルだし、愛理にもそう思ってもらいたい。 ずっと憧れてきて、嫉妬して、追い抜こうともがいてきた相手なんだし。 「誰にでも優しいのはよくないよ、ちっさー。それがいつかちっさーの身を滅ぼすことになるからね」 「うん、了解。最近は愛理と話すのも楽しいよ」 「私もね、ちっさーとは友達になれた気がするの。今でも仲間だけど、友達ってより深い関係だと思うから」 「友達か、いいね。愛理とはずっとライバルでもいたいんだよ、そこも忘れないでね」 「ちっさーも負けず嫌いだもんね。ライバルって言うなら、それもありだよ」  今にしてみれば、愛理には栞菜の話をしておけばよかったのかもしれない。 愛理はエッチな事に好奇心がありすぎて、栞菜を女の子に興味をもたせたのは愛理だった、と栞菜は話していた。 愛理は好奇心を追求するなら何でもするタイプで、栞菜はそれの被害者といえる。 つまり、元から栞菜が女の子に興味があるわけではないらしく、℃-uteに入ったおまけみたいなものらしい。 こうなると、愛理ってつくづく罪作りな女の子だな。 栞菜はあんなにも真剣なのに、愛理は男でも女でもいいんだから。 でも、恋愛面で二股をかけそうになっている僕がいえる立場でもないから、ここは黙っておく。 「どうした、ちっさー。溜息なんかついて、らしくないぞ」 「うぅん、愛理って将来は恋愛で人を振り回すのかなって思ってさ」 「馬鹿だな、全然恋愛経験もないのに、それはないだろ。ちっさーこそ、人を振り回すなよ」 「わかってるさ。お互い、肝に命じようよ。一途に恋愛するって」 「いいよ、ちっさー君。君が舞美ちゃんを好きなのに、舞ちゃんにも手を出したら許さないからね」  2008年の僕の誕生日、ファンクラブ限定のソロイベントはまさにどちらを取るか悩まされる事になる。 舞美ちゃん、舞ちゃん、そして愛理によるサプライズは愛理が仕組んだとしか思えない組み合わせだった。 ここでどちらかを選べ、口に出さなくてもそういわれているプレッシャーを感じた。 にっこり笑っているはずの三人の顔が、この時だけは怖くなった。 そして、僕はまだ、恐怖のサプライズが待つソロイベントを知らなかった。 [[←前のページ>28]]   [[次のページ→>30]]

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