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 栞菜との約束が愛理に漏れたらしい事がわかり、僕は愛理に呼び出されることになった。 自分のいないところでそんな約束が交わされていた事が許せないらしく、愛理はすっかりご機嫌斜めだ。 「ちっさー君、あれはどういうことなのかな? 栞菜に私をりぃちゃんと引き離す約束してたっていうじゃん」 「えぇと、何だっけ。ちょっとわかんないな。あはは、ごめんごめん」 「へぇ~しらばっくれるんだ。知らないと思っているみたいですけど、バレバレですから」 「しらばっくれてなんてないよ。してない約束をしてるとは言えないじゃん」  愛理がキッズ時代にはよくしていた座った目をして、僕を睨みつけてきている。 自分でもあの頃を思い出して、生意気だったと言うあの目だ。 僕は当時、そんな目をして自分だけは特別だと思っていた節のある愛理を遠ざけていた。 嫌いなどではなく、苦手、というのが僕の心情をよく表していると思う。 同じ歳なのに、私は何でも知っているということが多くて、僕はついていけなかった。 りぃちゃんにしても、皆から可愛いとチヤホヤされていたし、気づけば自然と舞ちゃんと遊ぶのが多かった。 舞ちゃんも生意気だけれど、愛理とは違って子供らしい意地の張り方をするから、僕は苦手ではなかった。 愛理は大人ぶろうとしていたから、どうにも話がしづらかった。 怒ると今も話しづらい、こんな風に。 「ちっさー、惚けるんだね。これは本人が口を滑らせたんだし、黙ってても無駄だよ。素直になりなよ」 「えっ・・・栞菜が自分で言ったの? 本当に?」 「そうだよ。栞菜がちっさーにお願いして割り込むようにお願いしたって言ったの。だから、ちっさーも隠さなくていいよ」  さっきまでの尋問にあうみたいな重い空気はなくなり、静かな雰囲気になった。 愛理の顔から怒りが消え、笑顔になったので僕はちょっと怖くなってきた。 かえって、これが嵐の前の静けさのような気がするからだ。 どうしてここで笑顔になれるのか知りたいよ、とっても怖い。 「さ、君も素直になりたまえ。正直にいえば、私は許すよ。胸に抱えてるばかりではなく素直になりなって」 「素直になってるよ。僕は知らないって言っただろう? 愛理こそ、そんな話をどこで聞いたのさ」 「本人だって言ってるじゃないか。ちっさー、今なら許すよ。10を数え終わったら、後で謝っても許さないから」  いくよ、と掛け声をかけて10からカウントダウンしていく愛理。 まるで死の宣告をされているみたいで怖かった僕は、待ったをかけて話すよと言ってしまっていた。 しまった、と思ったときには既に遅く、愛理は手を下ろしてまたにっこりと笑った。 つい慌てて、話すと言い出した自分が憎らしい。 終わった事とはいえ、栞菜を裏切っているみたいで申し訳ない気持ちになってきた。 「やっぱりね。どおりで栞菜がやたらとちっさーに視線を送ってるなと思った」 「えぇ~と、栞菜から話を聞いてたんじゃないの? だから気づいたって言ってたじゃん」  愛理は鈍感な僕をみて、やれやれと首を横に振って呆れ顔を作った。 「あれはね、そういえば君が話すだろうと考えての作戦なんだよ。ちっさー、甘いね」 「嘘。じゃあ、愛理はそれだけで気づいたっていうの? 何もかも」 「さすがにそれだけじゃないよ。だって、栞菜がやたらとりぃちゃんを邪魔者扱いするし、ちっさーの方へいったらって  言ってきてね。これは何かあるなと思って、自分なりにどういうことか考えてみたってわけ」 「す、すっごいね・・・探偵になれるよ。キューティー探偵事務所またやるなら、愛理主役だね」 「こんなんで探偵出来るわけないでしょ。お世辞言ってもダメだよ。それと、君には言わなくちゃならないことがある」  言わなくちゃならない事が何なのかさっぱりわからず、僕は首を傾げる。 どうにもこうにも愛理が言おうとしているものが想像がつかず、空いた間がまた不安を煽る。 何だ、何を言おうとしているんだよ。 僕は掌に汗をかきだし、ズボンで汗を拭おうと手を擦りだした。 また別の緊張感が僕を不安にさせだした頃、愛理はようやく切り出してきた。 「舞美ちゃんと舞ちゃん、ちっさーはどっちをより好きなのかってこと。はっきりさせた方がいいよ」  考えてもみなかった事だ。 僕はメンバーだけでなく、キッズの皆が大好きで、いつまでも一緒にいたいと思う。 それとは違う感情をもって、僕は舞美ちゃんを一人の女の子として好きになってしまった。 でも、愛理は思春期によくある年上のお姉さんに対する”憧れ”を好きだと思い込んでいないかという。 「舞美ちゃんをただの憧れのお姉さんだと思っていない? 本当に女の子として好きなの?」  そんな筈はないさ、僕は舞美ちゃんといるとすごくドキドキしてしまう。 この胸の高鳴りを説明するなら、恋という以外何があるって言うんだ。 嫌だ、僕は”憧れ”だなんて認めないぞ。 僕は舞美ちゃんを好きで、好きで、好きでたまらないんだって自信が誰よりもある。 あの笑顔が向けられる度に、僕は舞美ちゃんを何度抱きしめたくなったかわからないって言うのに。 それを”憧れ”だなんて、いくら愛理が観察が得意だからって馬鹿げている。 「舞ちゃん、あの子と一緒にいる時はどうなの? 実は舞ちゃんといる時が一番幸せだったりしないの?」  それは幸せだ、幸せに決まっている。 舞ちゃんだって僕は好きだ。 好きな気持ちを恋愛かどうか判断するには早いし、違う気がするんだけど、はっきりとは言い切れない。 舞ちゃんはいつだって僕の側にいてくれた。 『ちさと、いつか大きくなったら・・・まいと・・・』  いつか舞ちゃんと交わした約束、それが急に記憶の奥底から蘇ってきた。 僕が舞ちゃんの頬っぺたにキスをして、照れた舞ちゃんと一緒に撮った写真の後に言われた言葉。 大事な言葉のはずなのに、肝心なところが途切れてしまって、何を言われたのかわからない。 あの時、確かに僕は返事をしていたはずだ。 思い出せないのがもどかしい。 きっと、きっと、その言葉を僕は守らなくちゃならないんだ。 「ちっさー、私がしている事はお節介だと思う。でもね、一番大事に想う人を二人もいたら変だよ。でしょ」  確かに愛理のしている事はお節介なんだろう。 これは愛理に言われるまでもなく、僕が自分で決めなくてはならない事だから。 それでも、愛理が言う通りに一番大事な人が二人もいたらおかしいのかもしれない。 僕には舞美ちゃんも舞ちゃんも同じくらい大事だけど、どっちか一人に決めろなんて無理だ。 二人とも大事な人には違いないんだ。 「私から提案があるんだけど、今度のソロイベント。誕生日にサプライズ用意しておくね。その時までには決めておきなよ」  サプライズがあの組み合わせによるお祝いだなんて思いもしなかった。
 栞菜との約束が愛理に漏れたらしい事がわかり、僕は愛理に呼び出されることになった。 自分のいないところでそんな約束が交わされていた事が許せないらしく、愛理はすっかりご機嫌斜めだ。 「ちっさー君、あれはどういうことなのかな? 栞菜に私をりぃちゃんと引き離す約束してたっていうじゃん」 「えぇと、何だっけ。ちょっとわかんないな。あはは、ごめんごめん」 「へぇ~しらばっくれるんだ。知らないと思っているみたいですけど、バレバレですから」 「しらばっくれてなんてないよ。してない約束をしてるとは言えないじゃん」  愛理がキッズ時代にはよくしていた座った目をして、僕を睨みつけてきている。 自分でもあの頃を思い出して、生意気だったと言うあの目だ。 僕は当時、そんな目をして自分だけは特別だと思っていた節のある愛理を遠ざけていた。 嫌いなどではなく、苦手、というのが僕の心情をよく表していると思う。 同じ歳なのに、私は何でも知っているということが多くて、僕はついていけなかった。 りぃちゃんにしても、皆から可愛いとチヤホヤされていたし、気づけば自然と舞ちゃんと遊ぶのが多かった。 舞ちゃんも生意気だけれど、愛理とは違って子供らしい意地の張り方をするから、僕は苦手ではなかった。 愛理は大人ぶろうとしていたから、どうにも話がしづらかった。 怒ると今も話しづらい、こんな風に。 「ちっさー、惚けるんだね。これは本人が口を滑らせたんだし、黙ってても無駄だよ。素直になりなよ」 「えっ・・・栞菜が自分で言ったの? 本当に?」 「そうだよ。栞菜がちっさーにお願いして割り込むようにお願いしたって言ったの。だから、ちっさーも隠さなくていいよ」  さっきまでの尋問にあうみたいな重い空気はなくなり、静かな雰囲気になった。 愛理の顔から怒りが消え、笑顔になったので僕はちょっと怖くなってきた。 かえって、これが嵐の前の静けさのような気がするからだ。 どうしてここで笑顔になれるのか知りたいよ、とっても怖い。 「さ、君も素直になりたまえ。正直にいえば、私は許すよ。胸に抱えてるばかりではなく素直になりなって」 「素直になってるよ。僕は知らないって言っただろう? 愛理こそ、そんな話をどこで聞いたのさ」 「本人だって言ってるじゃないか。ちっさー、今なら許すよ。10を数え終わったら、後で謝っても許さないから」  いくよ、と掛け声をかけて10からカウントダウンしていく愛理。 まるで死の宣告をされているみたいで怖かった僕は、待ったをかけて話すよと言ってしまっていた。 しまった、と思ったときには既に遅く、愛理は手を下ろしてまたにっこりと笑った。 つい慌てて、話すと言い出した自分が憎らしい。 終わった事とはいえ、栞菜を裏切っているみたいで申し訳ない気持ちになってきた。 「やっぱりね。どおりで栞菜がやたらとちっさーに視線を送ってるなと思った」 「えぇ~と、栞菜から話を聞いてたんじゃないの? だから気づいたって言ってたじゃん」  愛理は鈍感な僕をみて、やれやれと首を横に振って呆れ顔を作った。 「あれはね、そういえば君が話すだろうと考えての作戦なんだよ。ちっさー、甘いね」 「嘘。じゃあ、愛理はそれだけで気づいたっていうの? 何もかも」 「さすがにそれだけじゃないよ。だって、栞菜がやたらとりぃちゃんを邪魔者扱いするし、ちっさーの方へいったらって  言ってきてね。これは何かあるなと思って、自分なりにどういうことか考えてみたってわけ」 「す、すっごいね・・・探偵になれるよ。キューティー探偵事務所またやるなら、愛理主役だね」 「こんなんで探偵出来るわけないでしょ。お世辞言ってもダメだよ。それと、君には言わなくちゃならないことがある」  言わなくちゃならない事が何なのかさっぱりわからず、僕は首を傾げる。 どうにもこうにも愛理が言おうとしているものが想像がつかず、空いた間がまた不安を煽る。 何だ、何を言おうとしているんだよ。 僕は掌に汗をかきだし、ズボンで汗を拭おうと手を擦りだした。 また別の緊張感が僕を不安にさせだした頃、愛理はようやく切り出してきた。 「舞美ちゃんと舞ちゃん、ちっさーはどっちをより好きなのかってこと。はっきりさせた方がいいよ」  考えてもみなかった事だ。 僕はメンバーだけでなく、キッズの皆が大好きで、いつまでも一緒にいたいと思う。 それとは違う感情をもって、僕は舞美ちゃんを一人の女の子として好きになってしまった。 でも、愛理は思春期によくある年上のお姉さんに対する”憧れ”を好きだと思い込んでいないかという。 「舞美ちゃんをただの憧れのお姉さんだと思っていない? 本当に女の子として好きなの?」  そんな筈はないさ、僕は舞美ちゃんといるとすごくドキドキしてしまう。 この胸の高鳴りを説明するなら、恋という以外何があるって言うんだ。 嫌だ、僕は”憧れ”だなんて認めないぞ。 僕は舞美ちゃんを好きで、好きで、好きでたまらないんだって自信が誰よりもある。 あの笑顔が向けられる度に、僕は舞美ちゃんを何度抱きしめたくなったかわからないって言うのに。 それを”憧れ”だなんて、いくら愛理が観察が得意だからって馬鹿げている。 「舞ちゃん、あの子と一緒にいる時はどうなの? 実は舞ちゃんといる時が一番幸せだったりしないの?」  それは幸せだ、幸せに決まっている。 舞ちゃんだって僕は好きだ。 好きな気持ちを恋愛かどうか判断するには早いし、違う気がするんだけど、はっきりとは言い切れない。 舞ちゃんはいつだって僕の側にいてくれた。 『ちさと、いつか大きくなったら・・・まいと・・・』  いつか舞ちゃんと交わした約束、それが急に記憶の奥底から蘇ってきた。 僕が舞ちゃんの頬っぺたにキスをして、照れた舞ちゃんと一緒に撮った写真の後に言われた言葉。 大事な言葉のはずなのに、肝心なところが途切れてしまって、何を言われたのかわからない。 あの時、確かに僕は返事をしていたはずだ。 思い出せないのがもどかしい。 きっと、きっと、その言葉を僕は守らなくちゃならないんだ。 「ちっさー、私がしている事はお節介だと思う。でもね、一番大事に想う人を二人もいたら変だよ。でしょ」  確かに愛理のしている事はお節介なんだろう。 これは愛理に言われるまでもなく、僕が自分で決めなくてはならない事だから。 それでも、愛理が言う通りに一番大事な人が二人もいたらおかしいのかもしれない。 僕には舞美ちゃんも舞ちゃんも同じくらい大事だけど、どっちか一人に決めろなんて無理だ。 二人とも大事な人には違いないんだ。 「私から提案があるんだけど、今度のソロイベント。誕生日にサプライズ用意しておくね。その時までには決めておきなよ」  サプライズがあの組み合わせによるお祝いだなんて思いもしなかった。 [[←前のページ>39]]   [[次のページ→>41]]

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