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「舞ちゃんは大きくなったら何になるの?」  千聖が舞に将来の話をした時、℃-uteは結成されたばかりでインディーズデビューさえしていなかった。 舞はこの質問を受け、悩むまでもなくさらっと答えを返した。 「ちさとのお嫁さん。舞が千聖をもらってあげるからね」 「お嫁さんって、僕と結婚をするの? 僕のパパとママがしてるみたいに」 「そう。舞がもらってあげる。決まりね」 「あっ、でも僕が舞ちゃんをもらってあげるんだよ。だって、そういうものだって聞いたよ」 「いいの。ちさとの場合、頼りなさそうだから、逆でいいの」  千聖は不服があったが、舞が必死に言い聞かせてくるのを見て、仕方ないと反抗するのをやめた。 すると、舞は納得した様子でにっこり笑い、頭を千聖の肩に預けてきた。 幼いながらも恋人のように寄り添う二人が、この時交わした約束は今では遠い過去の出来事に過ぎない。 記憶の断片に残ってはいても、それは舞だけであり、千聖は覚えていないかもしれない。 そんな不安が舞にはあり、自分から距離を置いた事への後悔が激しく押し寄せてきた。 その間に、千聖は舞美と何かあったのだろうか。 わからない、何もかもが泡となって消えていく。 「舞ちゃんは可愛いから、きっと男の子からいっぱいモテるよ」 「いっぱいモテたら嬉しいけど、やっぱり一人の人に愛される方が嬉しいじゃん。舞美ちゃんは違うの?」 「う~ん、それもそうだね。そっか、舞ちゃんおっとな~♪」  茶化すように舞美が騒ぐの対し、舞は怒りを抑えて大人しくしている。 ごくたまに、こうして年齢差が逆転する珍しい現象が起こる。 そんな場合、舞はいつも姉として慕う舞美の普段はみせない部分に惹かれていた。 実姉と比べても一緒に過ごすのは変わらなく、むしろ多いのではないかと思うほど、舞美お姉ちゃんと過ごしてきた。 舞美お姉ちゃんは舞にとって、かけがえのない血のつながらない姉である。 あれ程大きくなったら舞美ちゃんみたいになりたいと思った舞だが、今程舞美になりたいと思ったことはない。 あの場に、自分ではなく舞美がいる事に対する嫉妬、渇望、悲嘆が入り交じって湧き上がる。 何故、これ程までに自分は思っているのに応えてもらえないのか。  あの約束はもう忘れてしまった方がいいのだろうか、そう舞が途方に暮れていると、近づく足音が一つ。 「見ちゃったか~残念だったね。ま、仕方ないよ。ちっさーは舞美が好きみたいだし」  同情するとばかりに声をかけてきたのは、愛理だった。 愛理は以前から二人の関係に気づいてた口ぶりで話しかけている事から、千聖が男である事もお見通しだろう。 どうやら、二人はいなくなったのか、声が聞こえなくなっていた。 愛理はそのタイミングを見て、舞に声をかけてきたようだ。 「舞ちゃんさ、ちっさーを異性として好きなのかな?」  今度は笑顔になり、名案があると言葉以上に顔からして匂わせてきている。 千聖を男だと知っている事からしても、愛理には隠す必要のないことに思えた。 「そうだよ。それがどうかした?」  舞は自分でも、先ほどあった事が頭から離れずにいるため、棘のある言い方をしていた。 愛理が悪いわけではないのは頭では理解しているのに、心が穏やかにあろうとはしていない。 荒々しい波のように理性を飲み込まんと、感情の波が押し寄せては引いていた。 「そんなに怒らないで。私は舞美ちゃんよりも、むしろ舞ちゃんを応援したいの。だって、不公平でしょ」 「不公平? どうして?」 「だって、ちっさーは舞ちゃんの気持ちを知っておきながら、弄んでいるじゃない。悪い男だよ」 「ちさとを悪く言わないで。舞美ちゃんとの事だって、甘えてるだけだよ」  そうではないのは誰よりも間近で見た自分がよく知っていながら、舞はそう応えずにはいられなかった。 そうすることで、自分を少しでも納得させたいと頭が記憶を書き換えようとしてくる。 あの二人を支えとして、同時に失う辛さは計り知れないのだ。 舞にはどちらもいなくなってはほしくない。 「舞ちゃん、そんな風にみえてないでしょ。本当の事をいいなよ。あの二人はお互いを恋愛相手としてみてるよ」  残酷に突きつけられる言葉は、普段からメンバーの中でも一番大人しい愛理が発した。 これも嘘だといいたいが、目の前に立つ愛理が涙で霞んでも、愛理は愛理として存在している。 何だ、まるで自分を傷つけるためにここまで来たのか、愛理は・・・ どうしたいのだ、愛理は。 「滅多に泣かない舞も泣くんだね。ま、そうだよね。うん、決めた。舞ちゃんに力かしてあげるよ」  いきなりの事で頭がついていかない自分を置き去りにして、愛理は勝手に話を進めている。 どうやら、愛理が舞に協力して千聖を振り向かせようとしてくれるらしい。 何だ、そんな事か、と舞は笑うしかなかった。 「事務所にも行ってあるんだ。舞ちゃんと舞美ちゃんと私、栞菜とえりかちゃん、なっきぃに分かれて祝おうって。  岡井千聖の誕生日サプライズをソロイベントの日にしようって」 「誕生日を誰に祝ってほしいか、簡単にわかるよ。二人が揃うんだから。それでね、その日は・・・」  そして、怪しいとは十分知りつつも、舞は愛理の言葉を信じてみることにした。
「舞ちゃんは大きくなったら何になるの?」  千聖が舞に将来の話をした時、℃-uteは結成されたばかりでインディーズデビューさえしていなかった。 舞はこの質問を受け、悩むまでもなくさらっと答えを返した。 「ちさとのお嫁さん。舞が千聖をもらってあげるからね」 「お嫁さんって、僕と結婚をするの? 僕のパパとママがしてるみたいに」 「そう。舞がもらってあげる。決まりね」 「あっ、でも僕が舞ちゃんをもらってあげるんだよ。だって、そういうものだって聞いたよ」 「いいの。ちさとの場合、頼りなさそうだから、逆でいいの」  千聖は不服があったが、舞が必死に言い聞かせてくるのを見て、仕方ないと反抗するのをやめた。 すると、舞は納得した様子でにっこり笑い、頭を千聖の肩に預けてきた。 幼いながらも恋人のように寄り添う二人が、この時交わした約束は今では遠い過去の出来事に過ぎない。 記憶の断片に残ってはいても、それは舞だけであり、千聖は覚えていないかもしれない。 そんな不安が舞にはあり、自分から距離を置いた事への後悔が激しく押し寄せてきた。 その間に、千聖は舞美と何かあったのだろうか。 わからない、何もかもが泡となって消えていく。 「舞ちゃんは可愛いから、きっと男の子からいっぱいモテるよ」 「いっぱいモテたら嬉しいけど、やっぱり一人の人に愛される方が嬉しいじゃん。舞美ちゃんは違うの?」 「う~ん、それもそうだね。そっか、舞ちゃんおっとな~♪」  茶化すように舞美が騒ぐの対し、舞は怒りを抑えて大人しくしている。 ごくたまに、こうして年齢差が逆転する珍しい現象が起こる。 そんな場合、舞はいつも姉として慕う舞美の普段はみせない部分に惹かれていた。 実姉と比べても一緒に過ごすのは変わらなく、むしろ多いのではないかと思うほど、舞美お姉ちゃんと過ごしてきた。 舞美お姉ちゃんは舞にとって、かけがえのない血のつながらない姉である。 あれ程大きくなったら舞美ちゃんみたいになりたいと思った舞だが、今程舞美になりたいと思ったことはない。 あの場に、自分ではなく舞美がいる事に対する嫉妬、渇望、悲嘆が入り交じって湧き上がる。 何故、これ程までに自分は思っているのに応えてもらえないのか。  あの約束はもう忘れてしまった方がいいのだろうか、そう舞が途方に暮れていると、近づく足音が一つ。 「見ちゃったか~残念だったね。ま、仕方ないよ。ちっさーは舞美が好きみたいだし」  同情するとばかりに声をかけてきたのは、愛理だった。 愛理は以前から二人の関係に気づいてた口ぶりで話しかけている事から、千聖が男である事もお見通しだろう。 どうやら、二人はいなくなったのか、声が聞こえなくなっていた。 愛理はそのタイミングを見て、舞に声をかけてきたようだ。 「舞ちゃんさ、ちっさーを異性として好きなのかな?」  今度は笑顔になり、名案があると言葉以上に顔からして匂わせてきている。 千聖を男だと知っている事からしても、愛理には隠す必要のないことに思えた。 「そうだよ。それがどうかした?」  舞は自分でも、先ほどあった事が頭から離れずにいるため、棘のある言い方をしていた。 愛理が悪いわけではないのは頭では理解しているのに、心が穏やかにあろうとはしていない。 荒々しい波のように理性を飲み込まんと、感情の波が押し寄せては引いていた。 「そんなに怒らないで。私は舞美ちゃんよりも、むしろ舞ちゃんを応援したいの。だって、不公平でしょ」 「不公平? どうして?」 「だって、ちっさーは舞ちゃんの気持ちを知っておきながら、弄んでいるじゃない。悪い男だよ」 「ちさとを悪く言わないで。舞美ちゃんとの事だって、甘えてるだけだよ」  そうではないのは誰よりも間近で見た自分がよく知っていながら、舞はそう応えずにはいられなかった。 そうすることで、自分を少しでも納得させたいと頭が記憶を書き換えようとしてくる。 あの二人を支えとして、同時に失う辛さは計り知れないのだ。 舞にはどちらもいなくなってはほしくない。 「舞ちゃん、そんな風にみえてないでしょ。本当の事をいいなよ。あの二人はお互いを恋愛相手としてみてるよ」  残酷に突きつけられる言葉は、普段からメンバーの中でも一番大人しい愛理が発した。 これも嘘だといいたいが、目の前に立つ愛理が涙で霞んでも、愛理は愛理として存在している。 何だ、まるで自分を傷つけるためにここまで来たのか、愛理は・・・ どうしたいのだ、愛理は。 「滅多に泣かない舞も泣くんだね。ま、そうだよね。うん、決めた。舞ちゃんに力かしてあげるよ」  いきなりの事で頭がついていかない自分を置き去りにして、愛理は勝手に話を進めている。 どうやら、愛理が舞に協力して千聖を振り向かせようとしてくれるらしい。 何だ、そんな事か、と舞は笑うしかなかった。 「事務所にも行ってあるんだ。舞ちゃんと舞美ちゃんと私、栞菜とえりかちゃん、なっきぃに分かれて祝おうって。  岡井千聖の誕生日サプライズをソロイベントの日にしようって」 「誕生日を誰に祝ってほしいか、簡単にわかるよ。二人が揃うんだから。それでね、その日は・・・」  そして、怪しいとは十分知りつつも、舞は愛理の言葉を信じてみることにした。 [[←前のページ>43]]   [[次のページ→>45]]

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