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舞ちゃん編Ⅱ章 2」(2008/09/02 (火) 00:45:45) の最新版変更点

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 リハーサルは順調に進み、あっという間に最後まで通しを終えていた。 リハーサルが終了すると、千聖は真っ先に舞美ちゃんに駆け寄っていき、ニヤニヤしながら声をかけた。 舞美ちゃんは千聖の頭を撫でてあげ、まるでお姉ちゃんが弟を甘やかすみたいに見える。 ℃-uteが出来た頃、この二人がこんなに仲良くなるなんて私には想像できなかった。 私には二人は大事な人であっても、二人がお互いを大事な人としてみるなんてありえない、はずだった。 そう思った私に、現実はこうしてありえない状況が目の前にある。 「今日みたいに遅刻はしちゃダメだからね。そうだ、コンサート中に罰ゲームやろうよ。罰ゲームさ」  悪戯っ子な千聖が、とびっきりの悪戯を思いついた時にする得意げな顔で罰ゲームを提案する。 舞美ちゃんは「無理だよぉ~」とか言って、甘えた声で罰ゲームを拒否している。 本人がとくに意識したわけでもないんだろうけど、舞美ちゃんは困ったときは甘えた声を出すことが多い。 いつも家ではお兄ちゃん二人に囲まれているから、ああやって助けてもらっているのかもしれない。 愛しの舞美ちゃんが甘えた声を出すからか、千聖のやつニヤニヤして「どうしようかな」とか焦らして意地悪をしている。 「ちょっと~罰ゲームはなし。いきなりやれって言われても、無理だよ」 「平気だって。そんなに難しいことはスタッフさんもやらせないからさ。じゃあ、スタッフさんに言ってこよう」 「こら~待ちなさい!! 千聖、こらぁ~」  舌を出し、楽しそうに追いかけられながら逃げる千聖と、追う舞美ちゃん。 二人がどこかへ消え去ったのを見送り、残された私は楽屋へとトボトボと帰る。 帰る途中、またしても私は嫉妬だけじゃなくて、悔しい思いが混じっているのはどうしてなんだろうか考えていた。 悔しい思いでいるのは舞美ちゃんに千聖を取られたからなのか、千聖に舞美ちゃんを取られたからなのか。 どちらなのか、私にはわからない。 考えれば考えるだけ、惨めな思いを自分がするだけなのだから、もうこれを考えるのはやめにしたい。 大事な人を憎むなんて、自分がとっても悪い人間に思えるから・・・ 「舞ちゃん、さっきはごめんね。やっぱり遅刻が許せなかった?」 「舞美ちゃん・・・」  一人、楽屋の隅で黙って座っていたら、いきなり舞美ちゃんから声をかけられた。 「リーダーなのに遅刻はダメだよね。リーダー失格かな、とか言って」  無理をしているのがみえみえだ。 自分でも言いたくないくせにリーダー失格なんて口にするから、自然と顔が引きつっている。 馬鹿だな、舞美ちゃんは。 私はここで仕方ないな、と思って、つい笑ってしまった。 乗せられたくなんてなかったのに、舞美ちゃんのペースになっている。 「もう千聖ったらね、罰ゲーム面白いからしようってスタッフさんに声かけにいったんだよ。信じられないでしょ」  ダメだな、私も。 私に怒ってないよと言ってほしくて、しゃべりっぱなしの舞美ちゃんをみていたら、さっきまでの怒りとかがなくなっている。 嫉妬や悔しさで苦しかったはずの胸も、舞美ちゃんの笑顔をみていたら、許してあげる気になってきたのだから。 お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだ。 好きな人を奪っていこうとも、舞美ちゃんは私のお姉ちゃん。 どんなにえりかちゃんがファッションセンスがあってアドバイスをくれても、舞美ちゃんにはなれない。 「馬鹿」 「え、えっ? い、いきなりどうしたの? もたれかかってきて」 「気にしないの。これで許してあげるんだから安いもんでしょ」 「う、うん」  舞美ちゃんの肩に寄りかかると、不思議と温かい気持ちになる。 舞美ちゃんの人柄が目にみえない何かになって、怒っていた私の気持ちをリラックスさせてくれるのかもしれない。 これからも、千聖とのことで悩みは続くとは思う。 でも、私にはこの人がずっとお姉ちゃんなんだ。 お姉ちゃん、今日はこれで私の怒りは抑えてあげるね。 「舞ちゃん、甘えん坊だな~お姉ちゃん、そろそろ着替えないとコンサート始まっちゃうのに」 「あとちょっとだけ。そうしたら、許すから。あとちょっとだけ」  あとちょっとだけ、こうさせて、舞美お姉ちゃん。 [[←前のページ>舞ちゃん編Ⅱ章 1]]   [[トップページ]]

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