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「痛いって。こらっ、そんなにいつまでも蹴るなよ」
「あんたみたいな浮気者は身体で覚えないとダメなんでしょうね。だから、そうしてるの」

 舞ちゃんは一回蹴っただけでは満足できず、こうして会話している間も何度も蹴ってくる。
すねを狙ってきたりして、ちょっとばかり悪さが過ぎる気がして仕方無い。
舞波ちゃんが実は男で、ハロプロを辞めた後の話(前回に全部話しているから話すことないんだけど)とかが聞きたいだけなんだ、と説明できたらどんなにいいか。
説明しても、舞ちゃんには「そんな嘘言っても信用しない」とか言われるのが目に見える。
なら、愛理を説得して僕にそんな笑顔を向けないで、と言えば済む問題でもない。
だって、愛理はああして僕が舞ちゃんに怒られているのを見るのが好きなんだろうから。

「ねぇ、ちょっとちょっと」
「うわっ、愛理。ちょ、ちょっと、な、何!?」

 突然の愛理の登場に、僕と舞ちゃんは驚きながらも愛理の方に振り向いた。
舞ちゃんは何だか敵意を剥きだしにして、さっきの笑顔は何なの、と言いたげな剣幕だ。
対する愛理はそんな僕らにいつもと変わらない笑みを絶やさずに送ってきて、余裕と顔に書いてある。

「ちっさーを借りたいんだけど、許可もらわないとかなぁ~って思って」
「べ、別にぃ。舞のものでもないから、お好きにどうぞ。シッシ」、と動物を追い払うように手を振る舞ちゃん。
「ありがとう。んでは、借りていきまぁ~す。さ、行こう行こう」

 愛理は機嫌の悪い舞ちゃん相手にも怯まず、堂々とした態度で僕を連れていく。
何か一言でも言おうと振り返った僕に、舞ちゃんはあっかんべえと舌をみせて、ふんと鼻を鳴らした。
その態度に、さっきまで謝ろうと考えていた僕も、すっかり頭に来てあっかんべえと返してやった。

「いいですよぉ~だ。べぇ~」
「むぅ~ふぅんだ。あんたなんか知らない」

 何なんだ、あいつ。
いつもは「あんたは舞のものなんだからね」とか、人を自分のもの扱いするくせに、変な見栄張ってさ。
あげく動物扱いして追い払うなんて、とんでもない奴だ。
あいつが謝ってきても、ぜぇ~ったい許さないからな。
そうさ、許すもんか。
僕は今にも噴火しそうな感情を抑えながら、愛理に着いて行った。

「全く二人とも喧嘩しちゃって。仲がよろしいことで。そういうところ、二人がお似合いって気がするな」

 舞ちゃんから少し離れたところで、愛理が僕らのやり取りが面白かったのか、くすくす笑い出した。

「わ、笑うことないだろう。いつものことじゃんか」
「そうだったね。それですぐに仲直りでしょ。可愛い夫婦喧嘩ですこと」

 さっきのことも自分でもああいうのはよくないとわかっていても、どちらも譲り合おうとはしない。
どちらかが「ごめん」と、切り出すまでは喧嘩はずっと続く。
続くといいつつも、何時間か経つと相手が隣にいないことの寂しさを思い知らされて、どちらからともなく謝っている。
メンバーもそれをよく知っているから、僕らが喧嘩してもほっておかれるのが毎度おなじみである。

「あ~馬鹿にしてるな、僕らのこと。舞ちゃん知ったら怒るぞ」
「馬鹿にしてるっていうか、微笑ましいっていうか。本当に中学生同士のカップルみたいで可愛いなぁって」

 本当に中学生同士のカップルみたい、か。
もしも僕らが同じ学校の生徒として出会えていたなら、間違いなく舞ちゃんに告白していたかもしれない。
生意気で、口が悪くて、すぐに怒るどうしようもない女の子だけど、舞ちゃんは最高に可愛い女の子だ。
舞美ちゃんがいなければ、の話だけど。

「さて、舞ちゃんとのことは私にはどうでもいいの。それよりお話を聞かせて」

 愛理の言葉で僕は本題も忘れて、舞ちゃんと同級生で出会えていたなら、と妄想してしまっていた。
いけない、僕は別の用事でここに呼ばれたんじゃないか。
愛理の言う『お話』とは、この間も話した舞波ちゃんとのことに決まっている。

「もう愛理には舞波ちゃんの思い出は全部話したはずだよ。今度は何が聞きたいの?」
「聞き洩らしがないか心配でさ。だって、ちっさーってすぐに大事なことを忘れちゃうから、最初の出会いの頃から思い出してもらいたくて」
「ないと思うな。だって、オーディションの頃まで遡っても僕は舞波ちゃんのこと知らないし」
「何かあるでしょ。如何にも二人が仲が良くなるきっかけが、実はそこにあったとかさ」

 オーディション・・・僕は大好きなタンポポの『恋をしちゃいました』を唄って合格まで進んだんだ・・・あっ。
舞波ちゃんも『恋をしちゃいました』を唄ったって言っていたっけ。
そうだ、それを話した瞬間に僕らは一気に溶け込んでいけたんだったな。

「オーディションで僕と舞波ちゃんは同じ『恋をしちゃいました』を唄ったんだよ。それがきっかけといえば、きっかけかな」
「あっ、それ知ってたかも」
「知ってたの? なら、聞くことなかったのに」

 どこまで知っているのかわからない愛理のとぼけた顔をみて、溜息をつきながら僕はちょっぴり呆れていた。

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